なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
なりきり郷の内部の気温が、ある程度制御されている……みたいな話は、いつぞやかにもしたことがあると思う。
春頃はどことなくぽかぽかとしていて、軒先で居眠りでもしたくなるような陽気になっていることがほとんどだし。
夏頃は日差しが強く、ともすれば日焼けをしそうなほどのそれに、どこか涼しげな場所で休みたくなるよう気分になってくるし。
秋頃は落ち葉を集めて焼き芋してみたくなるし*1、冬頃であれば寒さで吐く息が白くなったりもするし*2……みたいな感じに、その気温は季節に見合ったモノとして、厳密・もしくは
「……って話を、上条さんはここに来た当初に説明されたはず……だと思っていたんですけどねぇ?」
「ははは、その通り。原則、この施設内における各階層の環境って言うのは、自然な四季を迎えられるように調整されている……というのは、紛れもない事実だよ」
「……じゃあなんで、この秋も深まろうかという九月も終わり頃、まるで夏頃かのように、空からの日差しが燦々と照り付けて来ているわけなんでせうか!?」
「ふむ、実におかしなことを聞くな、君は。──そんなこと、私が知るはずがないだろう?」
「なんでだよ!基本的には一通り説明できるぞ、って言ってたじゃねーか!」
「ははは、どこぞの正しさの権化の言ではないが、
「秋口だから長袖の方が作業しやすいぞ、って指示をまともに守った結果の愚痴なんだから、こっちとしては真面目に聞いてほしいところなんですけどねぇなんですよなんだってばよの三段活用!!」
「呼んだってばよ?」
……なにこれ?
そんな疑問を脳裏というキャンパスに描く今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は今、ラットハウスの軒先で謎のコント?的なものを行っている上条さんとライネス達を眺めている最中なのでした。
なんでこんなわけのわからないことになったのか?
それはそう、とある人物の一言がきっかけとなるものなのでした。
……と、言うわけで。
「はぁ、もみじ狩り?」
「そうそう、もみじ狩り。この時期大変なのよー」
ちょっとした出張的なモノから戻ってきた私が、いつものごとくゆかりんルームでだらだらしていた時のこと。
ゆかりんがチラシと共に話題に出したのは、そんな──一
もみじ狩りと言えば、秋頃に紅葉によって鮮やかな色が付いた木々を見て楽しむ、というとても穏やかな行事のはず。
少なくとも、ゆかりんがちょっとシリアス入ったような表情で話すものでは、決してないはずなのだが……?
というか仮に物騒な話だとすると、去年の今頃にその辺りの話をされてなければおかしい、となるわけなのだし。
「あー、うん。だって去年の貴方は、エリちゃんとダンテ君に付きっきりでハードラックしてたでしょ?」
「ハードラックって……ええと、その口ぶりだと面倒ごと区分になるの?もみじ狩りって」
……などという私の言葉は、去年の貴方は別の用事に掛かりきりだったでしょ、という発言によってひっくり返されることに。
いやまぁ、確かにこの時期はみんな大好き(震え声)ハロウィンの時期。
エリちゃんがこの組織に所属している以上は、トラブルがやって来るのはもはや確約されたようなもの……というのは、確かな話なのだけれども。
「ちょっと子ネコぉ?私は別に、トラブルを呼び込みたくて呼び込んでる……ってわけじゃないんだけど?」
「えー?ホントにござるかぁ~?」
「イラつくわねその顔と言葉……刺すわよ?」
「
いやまぁ、刺されたと言ってもフォークでサクッ、って感じだけどさ?
で、突き刺していたケーキを口に放り込んだあと、そのフォークで私の額を
「仮に私の
「そいつは買い被りすぎだよエリちゃん。私だって色々と傷付くんだぜ?」
「さて、どうだか。……って、いやいやそうじゃなくて。別に私も貴方を進んでぶっ刺したい、ってわけじゃないんだから、その辺りの話は広げなくてもいいのよっ」
なお、エリちゃんからは殺しても死ななさそう、みたいな評を頂くこととなった。……その言い方だと、私が数千万本単位で刈り取られそうな気がするので止めて貰えません?*6
……『
ゆかりんが唸り声をあげるもみじ狩り、どうにも言葉通りのモノだとは思えない、というのは確かな話。
なので、改めて行事の内容について尋ねたのだけれど……。
「……めっちゃ規模の大きいお祭り?」
「そうそう」
彼女から返ってきたのは、このもみじ狩りには色々な行事が複合されているのだ、ということだった。
具体的には、『なりきり郷設立記念祭』『新人歓迎会』『なりきり秋のパン祭り』などなど。……なんか一個変なの混ざってない?*7
まぁともかく、この時期に重なってくる色んな催し物を、一度に纏めて大きな祭りにしてしまったもの。それこそが、通称もみじ狩りなのだそうだ。
「……そういえば、元の掲示板の設立記念祭も十月だったわね」
「去年は神在月だのなんだののせいで、まともなことにならなかったけど……今年は違うわよ!」
「おお、ゆかりんが燃えている……」
で、去年の十月~十一月はエリちゃんによるハロウィン侵食により、色々と予定が潰れたり変更になったりしたため、今年こそはまともに祭りを成功させたい、ということで各所が燃えているのだとかなんとか。
……その一貫がエリちゃんの監視強化な辺り、なんというか彼女の影響の強さを思い知らざるを得ないわけだけど。もう素直に時期ずらした方がいいんじゃない?
「そうはいかないわよ!今年は
「魔物て」
「私が言うのもなんだけど、ハロウィンをなんだと思ってるのよ貴方達……」
なんてこちらの提案は、即刻却下。
こっそり耳打ちしてくれたジェレミアさんによれば、去年が細々としたモノになってしまったこともあり、関係者が大幅に増えた今年はとかく大掛かりなモノにする予定なのだそうで。
そうなれば暫定トップ、もといスレ主のゆかりんのこと、はりくりまくりの空回りしまくりだとかなんとか。……大丈夫かなー、これ。
あとエリちゃん、それは本当に君が言うことじゃないと思います。*8
行事成功のため、燃えに燃えるゆかりん。
その姿を見た私は、これはろくなことにならないぞー、とため息を吐くことになるのでありました。
「一昨年はまだ私一人だったし、去年は色々と都合が合わなかった。……が、今年の我がラットハウスを見たまえ、戦力充実強大無比、買ったも同然だと思わないかい?」
「寧ろ一昨年はライネス一人だった、ってことの方が驚きなんだけど?」
「ぴか、ぴかぴかぴ」*9
時間は現代に戻りまして。
このもみじ狩り、性質としては高校などの学園祭に近いものがあるのだそうで、住民達が様々な催し物や出店などを開くことになっており、事情を知る関係者なども外から招いて、約一月間に渡るお祭り騒ぎに終始するのだとか。
その間普通の仕事とかどうすんねん、という感じだが……そこら辺も人員を分けて対応するのだそうで。
……とにかく、万事全てが祭りに直結する、みたいなのが本来のこの場所でのもみじ狩り、ということになるらしい。
ある意味ではなりきりとしての面目躍如、ってことになるのだろうか?……まぁ、普段からお祭りみたいなもんやろ、と言われるとぐうの音もでないのだけれど。
話を戻して。
そのお祭り騒ぎを目前にして、各所がやらなければならないこと。それこそ、自分達のホームベースとでも言うべき場所の、大掃除である。
「外からの来賓も迎える以上、年末の大掃除並みに重要なんだよ」
「それはまぁ、わかるけどだな……やっぱりこの日差しはおかしいって、めっちゃくちゃ暑いんだけど……」
何度も言うように、このお祭り騒ぎは外部からのお客さんもいつもより多く見えるもの。
ゆえに、いつもより念を入れて掃除をして、いつもより念を入れて催し物をしていかなければならない……ということになるらしく。
移動屋台ってこういう時手入れが楽だよねー、みたいなことを言いながら、ホースから水を出して車体を磨くヘスティア様とエウロペ様……なんていう、世にも不思議なものを見掛ける機会に恵まれたりしたわけである。
……この暑さもあって服装は水着だったが、あれははたして公衆の面前に出しても良いものだったのだろうか……?
ともかく、掃除が大事、ということに相違はなく。
ゆえに私達も、ライネスからの召集を受けてラットハウスの大掃除に駆けつけた、というわけなのであった。
……あったのだが、問題が一つ。上条君が言ってる通り、ヘスティア様達の服装から分かる通り、秋口だというのに暑いのである。
いやまぁ、流石に真夏真っ盛り、というわけではないのだが……ほこりを警戒して長袖を着てきたら、暑さで汗が滲んでくる程度には暑い、ということには間違いなく。
「何故こんなに暑いのでしょうか……?」
「基本的には例年の気温を元に気温を決めてるらしいけど、外との温度差が激しいからちょっと調節した、みたいな話をゆかりんから聞かされたような……?」
「ゆかりちゃんなにやってるのー!?」
まぁ、性格には現場からそういう報告が上がっているわね、ってゆかりんが言っていただけであって、ゆかりんが調節しているわけではないけれど。
両手を上げて「もー!」と怒るココアちゃんに微笑ましげな視線を向けつつ、こうしてぐだぐだな感じにラットハウス大掃除作戦が始まったのであった……。