なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

431 / 1297
幕間・季節外れの大掃除は宝の山

「台所が一番大変かなー、って思ってこっちに来たんだけど……見た限りここが一番問題無さそうですね……」

 

 

 大掃除開始の合図と共に、とりあえず私は建物内に舞い戻ったわけなのだけれど……それは別に外の日差しから逃れるため、というわけではないのであしからず。

 普通であれば日々の様々な調理の結果として、油汚れとかが一番凄いことになるのが厨房の常なのだから、こうして店の中に戻るのは本来とても理に叶った行動、ってことで別におかしくないのだ。……うん、本来なら。*1

 

 

なに、気にすることはない(川´_ゝ`))。汚れというものもまた、日々の積み重ねによってこびりついていくもの。ゆえに、毎日適切な処理を続けていれば、溜まる汚れというのも最小限に抑えられるものなのだからね」

「それを意識してできる人が、はたして何人いることやら……まぁでも、流石ですねウッドロウさん」

「なに、昔取った杵柄……みたいなものさ」*2

 

 

 が、それはあくまでも普通の厨房についての話。

 このラットハウスの厨房を任されているのは──一昔前ならば人員足らずで、ライネスが受け持っていたのだが。今年に入ってからは優秀なコックとして、ご覧の通りウッドロウさんが加入している。

 そのおかげということなのか、厨房内には油汚れどころか、調理によって発生した食材の小さなカスすらほとんど落ちていない……というよりも、ぶっちゃけ新品レベルの綺麗な状態に保たれている、というのが真実なのだった。

 これが王族の仕事か……?(褒め言葉)

 

 一応高貴な身分のはずの彼に、ここまで完璧な管理をさせるのはどうなのだろう?みたいな気分が沸き上がってくるわけだけど……聞けば好きでやっていることなので問題ない(なに、気にすることはない)、とのこと。

 ……それ、別に魔法の言葉とか、そういう類いのものではないはずなんですけどね……?

 

 まぁ、特段労力を必要としないのであれば、それはそれでいい。

 仕事が一つ減ったところで、やるべきことがなくなるなんてこともないのだし。

 

 

「……で?こうして店の表に逆戻りしてきた、と?」

「まぁ、外観の掃除の方も、結構大変そうな感じだったし」

 

 

 そんなわけで、厨房の掃除に関してはそのままウッドロウさんに任せ、おめおめと外へと戻ることになる私なのであった。

 

 ……いやまぁ?外からの窓拭きとか、壁の汚れ落としとか。そういうの、空を飛べる私が手伝った方が早いし?*3

 みたいなことを述べたところ、外で掃除の監督をしていたライネスは確かに、と一つ頷きを返してくるのでしたとさ。

 ……ニヤニヤ笑い付きの頷きなんで、若干こっちを揶揄する意図もあるのだろうけど。勇み足で中に入った癖に戻ってきてやんの、ぷぷぷー!……みたいな?

 

 

「流石にそんな品のない笑いは浮かべないがね。……ともあれ、掃除は上から*4とも言うことだし、折角だから屋根の方から掃き掃除でもして貰うとするかな?」

「へいへーい。……ところで、魔法とか使ってホコリも汚れも吹っ飛ばす、っていうのは……」

「周囲の店からキレられることを許容できるのであれば、別にやってみてもいいが?」

「……やめときまーす」

「懸命な判断だね」

 

 

 で、そうして空を飛べる私が頼まれたのは、掃除の基本である『上から下』──すなわち普段は放置されている屋根の上の汚れやホコリを、下へと落とすことなのであった。

 なので、折角だから箒に跨がって上まで飛んで行こうか、なんてことを考えていた私は、そういえば魔法で雨とか風とか起こして、汚れやホコリを全部流せば楽なのでは?……みたいなズルを思い付いたわけなのでございます。

 

 ……まぁ、ライネスの発言によってラットハウスの周辺──他の店やら家やらの住人達が、こちらをニコニコと見つめている(威嚇している)ことに気付いて、きっぱりと諦めることになるんだけども。

 流石に宿儺君とか波旬君とかに笑顔で見つめられては、私も肝を冷やすってもんでね?

 

 楽って中々できないものだなぁ……なんて風に一つ息を吐いて、そのまま箒に跨がって屋根の上までひとっ飛びする私。

 ……魔女系のキャラを名乗るのであれば、やっぱり箒で飛ぶってのは定番中の定番、だよねぇ。

 

 

「ですよねぇ。やっぱりこう、箒で飛ぶっていうのはなんだかいいですよねぇ」

「ねー。──そっちみたいに魔女帽とローブってデフォ衣装を合わせるとなお完璧、みたいな?」

「いいですねぇ。……あー、でもこの格好だと、掃除とかの動き回る作業には向いていないんですよねぇ」

「んー……一応ローブって、元々は汚れから中の服を守るためのもの、だったような……?」

 

 

 みたいなことを考えながら飛んだ結果、屋根の上で同じようなことを考えていたらしい、どこぞの魔女さんと言葉を交わすことになったのである。

 

 ……うん、多分某『私です』の人、イレイナさんだと思われるわけなのだけれど。

 どうにもアニメ版、かつ美化された部分で構成(【継ぎ接ぎ】)されたキャラになっていらっしゃるようで。*5

 

 

「なんと言えばいいのでしょうか。こう……我が事ながら蕁麻疹が走る、みたいな?私、そんなに清廉潔白でもなくないですか?……みたいな」

「私は話半分にしか聞いたことないけど……原作だとわりと毒舌腹黒自己中心的キャラ、なんだっけ?」

「そうそう、そうなんです。まぁ、どっちでも美少女である、ということは変わらないんですが」

「アニメ版はいい意味でキノみたいなもの、ってやつですかねー」

「あー、キノ。確かに、旅人特有の価値観とかは、彼女の影響とか合ってもおかしくないのかも?」*6

 

 

 こくこくと頷く彼女は、どうにも自分の存在に違和感マックスらしく。……首を捻りながら、魔法ですいすいと屋根の上のホコリを集めていたのだった。

 

 まぁ、どこぞのお兄様もアニメ化では微妙にキャラが矯正されていたみたいだし、ラノベとかなろう系がアニメ化する際にはよくあること、なのだろう。*7

 実際、文字なら読み飛ばせる描写も、映像付きでやられるとくどさが悪目立ちしたりするみたいだし。

 

 そんな感じに、あんまり気にしても仕方ないですよーと声をかけ、彼女の真似をしてホコリを風で一纏めにする私である。

 いや、吹っ飛ばすのはあれだけど、一所(ひとところ)に纏めるんなら問題はない、っていうね?

 

 

「……目の前で自分より高度なことをやられると、ちょっと凹むんですけど?」

「それはもう、私チートキャラですので。目に余るようであれば、視界から外して無視しておくのがおすすめですよ?全うに取り合うとストレス値稼ぎまくりですし」

「それご自分で仰います?」

 

 

 なお、自身の技術をあっさりと真似したことに、イレイナさんはどことなくおかんむりな感じなのだった。

 

 なので、あくまで効率化に比重を寄せているので、他の人でも教えれば真似はできると思う……みたいなことを呟けば、耳聡くそれを聞いていた彼女は『私にも教えて下さいません?』と声を掛けてくるのだった。

 だから、このあと滅茶苦茶練習した。*8

 

 

 

 

 

 

「汚れやホコリを圧縮した結果、ゴミ箱に入るくらいの大きさになった件」

「纏めすぎ……ってわけではないか。所詮は塵が積もって塊になった程度、ここでは黄砂が飛んでくるなんてこともないのだし、汚れとしてはそれなりと言うべきか」

 

 

 数分後、屋根の隅々まで風と水を使って汚れやホコリを集めた私は、そのごみをやりすぎにならない程度に圧縮して下に持ち帰っていた。

 イレイナさんに関しては、上で別れを済ませたので今は付近にはいない。

 

 

「旅系のキャラか。どこぞのモトラド*9乗りならば、やはり三日ルールでここを出ていくのかね?」

「だろうねぇ。……もしくは、ここが千階層分あるから、それを一つずつ巡っていく……なんてことになるかもしれないけど」

「そっちの方が、管理者側としては楽だろうけどねぇ」

 

 

 図らずもイレイナさんが話題に挙がったため、恐らくはそういう旅系作品の走りだと思われる、どこぞのモトラド乗りを思い出すこととなる私達。

 今のところ彼女がここにいる、みたいな話を聞いた覚えはないが……もし仮にいたのであれば、彼女のような旅人の管理には上が悩むことになる、というのはなんとなく想像できてしまう。

 

 特に彼女は根無し草、意識して一所に留まらないことを(滞在は三日までと)決めているため、そんな彼女の舵を取るのはとても苦労しそうだ。

 ……まぁ、スピンオフ版の方が大変そう、というのも確かな話なのだが。あっちはfateで言うところのユニヴァース枠だし。*10

 

 

「ところで気になるのだけれど、彼女が仮に現れるのであれば、やはり突然後書きが始まる、なんて怪現象が起こったりするのだろうか?」*11

「後書きの国?……んー、どうだろう。あの作品の後書きへの意欲には目を見張るものがあるけど、実体化したり他所で語られた時まで、本家の法則が侵食してくるとは……いやどうだろ、わからんな……」

 

 

 で、思わず話は弾み、話題に挙がるのは彼女の作品には付き物……って言い方はおかしいが、特に作者が情熱を注いでいた『後書き』についての話。

 作品の丁度中頃になる辺りに置いてみたり、先に書いてみたり、カバー裏にいたり……とまぁ、そのバリエーションには事欠かなかったわけだが。

 

 もし仮に彼女──キノがこの世界にいたのなら、その辺りの法則も連れてくるのか否か。

 それは、なりきり達全てに繋がる命題のようなものでもあり、少し判断に困ってしまう私達なのであった。

 

 

「……せんぱい?」

「んー?なんだいマシュ、私達は後書きとはどんな場所に合っても後書きなのか、はたまた後書きとは()()()()()()()()()()()であり、それ以外を論ずるのはナンセンスなのか否かを討論しようとしているんだけど……」

「いいから、掃除してください」

「……はい」

 

 

 ……なお、実際にはどうでもいいことをぐだぐだ話し続けることで、仕事をサボっているのだとマシュには見抜かれてしまったため、二人してこってり絞られることになるのだった。

 ち、違う!クリボー(キノ)が勝手に!

 

 

「そのうちパースエイダー*12で脳天ぶち抜かれそうだねぇ」

「痛いのは嫌だなぁ」

「せーんーぱーいー?」

「はーい、マシュも不安よね。キーア 動きます」*13

「最初からそうしてください……」

 

 

 まぁ、あまりにも適当言いすぎ、ということは私も自覚していたので、そのあと無茶苦茶真面目に掃除したのだが。

 でもここでふざけてないと、最近のシリアス分を中和できない予感ががが。

 

 ……なんて私の主張は、マシュには暖簾に腕押しなのでありました。

 

 

*1
特に換気扇はとても酷いことになる。年末の大掃除の時に、酷い油汚れに悩まされることも多いだろう

*2
言うは易く行うは難し。いわゆる理想論であり、毎日ちゃんと片付けていれば大きな問題には発展しない……という考え方だが、毎日が()()()()()()()()()()()。時間的余裕・精神的余裕・肉体的余裕といったモノが日々変動することは避けられず、ゆえに毎日同じ作業をできるかどうか、というのはその作業の負担の如何によると言っても過言ではない

*3
高所作業の面倒臭さは言うに及ばない、ということ。フォークリフトを脚立代わりに使う人間がいるのも、大本を辿ると『高所作業の為の準備や安全確認など、本来行うべきことが多すぎる(要するにめんどくさい)』ことによるモノであるというのが大半である。無論、これらには更に『高所からの落下によっての死亡率というのは、意外と低い。それは、()()()()()()()()()()死なないから』と言ったような、別種の理由によって勝手に肯定されたりしている。──つまりは『事故は滅多に起きない』を理由にして、なあなあに済ませてしまっている……ということ。いわゆる現場猫案件、ということだ。……それはそれとして、もし空中での落下を気にする必要がなくなったとすれば、高所作業が飛躍的に楽なものになるというのは言うまでもないことだろう。今までなあなあに済ませていたものを、確たる理由で本当に省略できるようになるのだから

*4
一般的な地球環境において、物は上から下に落ちる、と認識しても間違いではない。なので、人が気付かないうちに色んなごみが見えない上の方に貯まっている、というのはよくあること。特にカーテンのサッシなどは、意外とホコリっぽくなっていることが多い。なので、上の方にあるホコリや汚れを先に落とさないと、それらが下に落ちてきて折角綺麗にした場所を汚してしまうかもしれないぞ、ということ

*5
『魔女の旅々』の主人公、イレイナのこと。異名は『灰の魔女』。原作の内面描写や一部の所業が省略されたアニメ版から受ける印象のまま、元の彼女を見ると恐らくは驚くことになると思われる。まぁ、完全に美化されているのかと言われれば違うのだろうが。似たようなことになっているキャラクターに、『魔法科高校の劣等生』の主人公・司波達也が存在し、そちらも原作での内面描写等が省略された結果、いわゆる俗な部分が見えなくなったりしている

*6
『キノの旅』シリーズの主人公、キノのこと。国々を旅する人物であり、死生感はわりとシビア。ただ、情によって動く部分もなくはない……と、旅人主人公としてはスタンダードな感じ

*7
逆に、原作では一行しかないような描写が、他の媒体では描写もりもりになっていることもある

*8
元ネタは『このあと滅茶苦茶セックスした』。別にR18作品の台詞というわけではなく、とある人物がネットで発したことで『このシチュエーションはいいね』みたいな感じで広がったのだとされる。どんな作品でも文末に付け加えるだけで『そんな感じ』を匂わせられる、ある意味伝家の宝刀。使いやすいのか、『セックス』の部分を他のモノにされることも

*9
二輪車。空を飛ばないものだけを指す

*10
『学園キノ』のこと。いわゆるスターシステムだが、原作とはキャラも作風も全然違う

*11
『キノの旅』シリーズの作者、時雨沢恵一氏は『後書き』というものに並々ならぬ情熱を持つ人物として有名である。……文中に挟まるのは、もはや中書きなのでは?

*12
『キノの旅』における銃器の名称。由来はフランス語での『説得者(persuader)

*13
『〇〇は不安よな。××、動きます』は、芸人松本人志氏がネットで発した言葉を元ネタとする言葉。不安な相手に対してその不安を取り除くような、かっこいい台詞……かどうかは、その時の状況による

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。