なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・商売は世知辛いもの

「よぉし、確認取れたしこれで問題なし!」

「でかした!」

 

 

 ゆかりんに連絡を取った私達は、返ってきた彼女からの了承の言葉に、俄に沸き立っていた。

 どうやら向こうの方も、その手の話が出てくることについては想定していたらしく、付属するグッズなりなんなりに『二次創作です』的なモノであることを示す、こちらが用意した(しるし)を付けていればオッケー……というような感じの許可を、既に先方に取り付けていたらしい。*1

 なんて懐の深い人達なんだ原作者……みたいな感じに感動していた私達だが、どうやら事は単に相手が寛大である、という形で片付けられるものではないようで。

 

 

「なるほど、このマークを明記すること自体が、こちら(逆憑依)の関係者であるという証明にもなるから、迂闊に外に漏らせばすぐに誰がやったのかバレる……ということか」

「ある意味では、海賊版*2の証明……みたいなものだと言うわけですね」

「王下七武海的な?」*3

「それそのうち『イラネ』ってされない?」

 

 

 今回向こうから用意されたマークは、『公式公認』を示すものではなく寧ろその逆──すなわち『公式非公認』を示すもの。

 このなりきり郷に出入りすることができる人間自体が限られているということもあり、言うなれば『そのマークが付いた商品を持っている人間自体が、極端に限られている』はずのもの、という風にも捉えることができる。

 

 つまり、このマークが付いた商品が、もし仮にフリマサイトなどの一般層に出回っていた場合。それは何者かが外に流した──すなわち()()()()()()()()()()()()()()()()()、という証明にもなるのである。*4

 ゆえに、これらの商品が人の目に付くような場所で見つかった時点で、『偽物です』と断じてしまうことにより原作者などへの影響をそのまま消してしまえる、ということに繋がるわけなのだ。

 

 無論、世間から海賊版扱いされることに一言物申したい、という者も少なくはないかもしれないが……。

 

 

「一般人に迷惑を掛ける方が遥かにダメ、ということで納得して貰うというわけだな」

「なんだかんだ言って、一応はなりきりだからねぇ、私ら」

 

 

 ライネスの言葉に、然りと頷く私。

 姿形、性格に能力などなど、あらゆる面で本人に近い存在ではあるものの……起点としてはやはり『なりきり(逆憑依)』である私達は、どこまで行っても本物だと胸を張れるものではない、みたいな?

 一シーズン前の互助会組なら、あれこれと文句が挙がっていたかもしれないが……少なくともこちら(なりきり郷)でそういった文句が挙がる、ということはないだろう、多分。

 

 ともあれ、グッズとかを付けるのに問題がないと言うのであれば、そこからなにをおまけに付けるのかなどの話の方を優先すべき、というのは間違いないだろう。

 

 先述した通り、いつも通りの営業ではダメだというのは、『付加価値を付ける』という案について他の面々からもゆかりん達に確認が来ている、という点で現状把握ができる。

 なにせそもそもの話、通常の運営下において郷内の店の営業というのは、原則稼ぎが出ないものとなっているからだ。……正確には利益と損益がほぼ同じ、という感じだろうが。

 

 材料費・光熱費・水道代などなど……。いわゆる原価に当たるものも含め、郷内の全ての商品は()()()()というのがここでの常識だ。

 それはこのなりきり郷内での需給のバランスが、基本的に同程度で釣り合いが取れているから、ということが大きいわけだが……だからこそ、その輪の外からやって来た外部の人からはお金を取る、という方式になっている理由にもなっているわけで。

 

 その理由を覆し、郷の中の人からもお金を取るようになる以上、求められるクオリティというかサービスというかは、相応に期待値が上がっているという風に考えることもできる。

 この前の話(前話)ではないが、売上額を競う以上は数だけ捌いても意味がなく、そして数的に一番多い郷内の人々は、原則金を払う気がない……。

 ゆえに、彼らに金を払わせる気になるものを作る、と言うのが第一目標になるのであった。

 

 

「……なんか、凄まじく人聞きが悪いな、これ」

「なに、気にすることはない。金銭感覚が麻痺している、というわけではないのは、出張組などを見れば一目瞭然なのだからね」

「あー……大本を辿ると、ここでの金銭ってものに価値がないから、っていうところの方が大きい……ってことか?」

「そういうことだ。お金を払っても貰っても、()()()()使()()()()()()()()。郷内において金銭についてのあれこれを背負うのは、そこにいるはるか君のような外から来た者達だけ。……無論、外から来る役人達のように、外貨を稼ぐ相手のようなモノも存在はするが……彼等から得られた金銭というのは、郷の外で活動する者達の資金源として回収される。一般市民に区分される私達にとって、馴染みが薄いものになるというのはある意味では明白なこと、だというわけさ」

 

 

 なお、その横ではまだまだ新人扱いの上条君が、さっきの私達の言葉から感じられる悪いイメージについて、声を上げていたが……解説するウッドロウさんの言う通り、これに関しては『お金を払う気がない』というよりは『お金を貰う必要性がない』からこその問題だと言える。

 外に出た時には、きちんと対価としてお金を払う人しかいないことからわかる通り、郷の内部に限定して貨幣文化が淘汰されてしまっている、ということの方が大きいのだ。

 

 感覚的には共産主義の理想の世界、というべきか。*5

 誰かより資本を多く持つ、ということになんの優位性もない状態なので、そもそも資本を集めようという気が起こらない。

 それゆえ、貨幣に意味がなくなり、結果としてモノに価値が付けられなくなっている、というか。

 

 無論、何度も言うように外から来た人達からは、金銭を受領しているが……それも貰った側からお上に横流し、みたいなもの。

 個人が金銭を持ち続けるということは──キャラクター性として守銭奴である場合くらいのもので、それ以外はみんな共同財産みたいなことになっているのである。

 

 

「……そう聞くと、なんだかここがディストピアっぽく思えてきたんだが?」

「なるほど。市民上条、貴方は幸せですか?」

「幸せでーす!幸せなんで吊るさないでくださーい!!」

「本当にそうですか?私は貴方が毎度毎度『不幸だー!』と叫んでいる、という風に報告を受けているのですが?」

「残機を確実に減らそうとするの止めてくれませんかー!!……あ、いや、抗議とか口答えとか、そういうことではなくてですねー!!」

「……いや、なんで唐突にパラノイア始めてるんだい君達」

 

 

 まぁ、富むことに意味がないというのは、今の人にしてみれば理解のできない考え方であることもまた事実。

 普通の価値観を持つ上条君は、それを聞いて思ったことをそのまま口に出していたけれど……うん、そういうこと言われるとウルトラヴァイオレット(UV)様したくなるよね!……とばかりに彼の日頃の発言を咎めてあげれば、ライネスからはなに遊んでるの君達、みたいな視線を向けられることになるのだった。

 

 ……むぅ、かようちゃんでも呼んでくればよかったかな?『幸福安心委員会』的な意味で。*6

 

 

*1
現実にも『同人マーク』という、自身の著作物の二次創作を認めることを表明するマークが存在したことがあった。なお、こちらはいわゆるTPP(環太平洋経済連携協定の略称)導入による著作権の非親告罪化を警戒してのものである為、(二次創作に対する例外規定などが盛り込まれた)現状は使われていない。なお、『非親告罪化』とは被害者以外が起訴できる罪のこと。二次創作の場合、原作者が問題ないと表明しても別の人物に起訴される、という危惧がなされたことがあったので、同人マークというものが考案された、という形となる。なお、この辺りは『二次創作を公式が認めたり認めなかったりすることによる問題』ゆえに、曖昧にしておきたいと思う者も多いようで、議論は中々進んでいない

*2
他国の著作物を許可を得ずに複製したもの全般を指す言葉。また、自国内のモノにも使われたりする。正規品より安いモノが多いが、その分粗雑であることも多い。また、正規品とは違い元の著作者に利益が一切ない為、これが蔓延ることにより、著作者の生活を破綻させる可能性も否定できない。現代では娯楽が多くなった為、利用者側は『著作者が潰れようと、他の娯楽に移れば良い』なんて考えをしている人も少なくないとかで、わりと深刻な問題となっている。……なお、著作者に利益がないのが問題なので、そういった違法アップロードを逆に管理して宣伝として使い著作者にも利益を還元させる……という、ちょっと意味のわからない対策を持ち出した作品も存在していたり(邪神がドロップキックしそうな作品を見ながら)

*3
『ONE PIECE』に登場してい()制度・あるいは肩書き。政府から認められた海賊とでも言うべき存在で、彼らの行動をある程度認める代わりに、彼らの得ている利益の幾らかを政府に献上させる、という形で協力していた。現在は制度が撤廃されているので存在しない

*4
『個人で楽しむ分には合法』とは、著作権などでよく言われるもの。CDなどの著作物をコピーして聞く行為は、あくまでそれを非営利目的で使っている分には問題がない、というやつである。これが認められていないと、TASなどは基本的に全部違法となる(TASを作る際、基本的にはエミュレーターを使用することになるが、それらは公式の機械では使えない、ということがほとんど。その為、ソフトの中身を一度エミュレーターが使える環境に移動(コピー)させなくてはいけない。この『コピー』の部分が、現状ではグレーな部分となっている。これを他人にあげたりしてしまうと、例え無償でも著作権法違反に引っ掛かる)

*5
全てを平等に分けあう世界。全ての財産を共同で所有することで、貧富の差を無くそうとする活動。因みに、社会主義とよく混同されるが、社会主義は正確には共産主義の前段階だと言われる(財産の共同所有の為に、国がそれを管理するという形になっている。共産主義は国すら必要としない)

*6
初音ミクの楽曲の一つ、うたたP氏作の『こちら、幸福安心委員会です。』のこと。歌詞のがTRPG『パラノイア』を大きく意識したモノとなっている。内容はとってもディストピアはい、私はとても幸福です!義務ですから!

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