なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……はぁ。まぁいいわ。代わりにキーアにいっぱいお酒奢って貰うから」
「いやまぁ別にいいけど……お酒だけでいいの?」
「もちろん、おつまみだってお願いするわ!」
「はいはい」
数分後、どうにか気を持ち直した侑子の姿に、一つ安堵のため息を漏らし。
改めて、でっかくなってしまったアグモン君……もといウォーグレイモン君を見る私達。
こちらが侑子の介抱をしている間、彼は何故かお面屋の手伝い(寧ろ店番)をしていたわけなのだけれど……。
「そういえば、なんで屋台の手伝いなんかしてるの?」
「こっちに来たボクはお腹を空かせていたんだけど、ここの店主の人が『店の手伝いをしてくれたら、ご飯を食べさせてあげよう』って言ってくれたから、その人が戻ってくるまで店番してるんだー」
「あー、なるほど?」
彼の話を聞く限り、どうにもお腹が空いたのでご飯を貰うためにお手伝いをしている、というのが正解ということになるらしい。
……らしいのだが、そもそもウォーグレイモンが現実に生息していたとしたら、それこそビックリするさ!……案件なので、その時点で彼が普通ではない──『逆憑依』関係者であることは明白。
つまり、郷のルールに従うのであれば、彼もまた
……とまぁ、そんなわけで。
「……あれ?ゴジハム君?」
「おや、キーア達じゃないかなのだ。みんな揃ってなにしてるのだ?」
「えっと……」
五分ほどしてやって来たのは、なんと悪い大人なんて言葉とは無縁……無縁?そうなゴジハム君なのであった。*1
……え?ということはもしかして、仮称悪い大人ってゴジハム君のことだったんです?
そんなこちらの困惑を他所に、彼は肩から掛けていた大きな鞄に腕を突っ込んで、中をごそごそと
「はい、おまちどおさまなのだ。いきなりこっちのものを食べるとお腹を壊しちゃうかも知れないから、このデジタルフードで徐々にこっちのものに慣らすといいのだ」
「わぁ、ありがとー」
「……んん?」
彼は鞄の中から、ペットフードみたいな見た目の固形物の入った袋を取り出すと、ウォーグレイモン君にそれを渡したのだった。
受け取ったウォーグレイモン君の方は、なんの疑いも見せずにその食事を食べ始めたのだけれど……ええと、さっきまでの話を聞くに、ウォーグレイモン君はこっちの食べ物を食べられないんです……?
更なる困惑がこちらを襲う中、固まった私達(特にBBちゃん)を見て、ゴジハム君が不思議そうに首を傾げていた。
「……?BBからなにも聞いてないのだ?『長い間電子の世界に滞在していたのですから、例え元が現実の人間を核にした存在だとしても、なんの対処もなしに違う法則の世界のモノを摂取すると、アレルギー反応のような症状を引き起こすかも知れないので注意が必要です』……って言ってたのだ」*2
「……いや、全然聞いてないですね……」
「ありゃ、なのだ」
そうして、不思議そうな顔のまま彼が話してくれたところによれば。
今のウォーグレイモン君は、実体と非実体の切り換えがまだまだ不安定で、下手に
実際、計測データの上では酸素や日光に対して、微弱ながら抵抗反応が検知されたため、経過観察も兼ねて彼に摂取させる食事については暫く制限した方がいい……ということになったのだとか。
無論、酸素や日光という、常に触れあわなければいけないモノに対しての対策は取った上での話だが。
で、経過観察用の食事というのが、先ほど彼に渡されたペットフード状の食事──通称デジフード。
特殊な加工を施すことにより、実体と非実体の中間の性質になるように調整されたこれを慣らしとして摂取し、徐々に現実の食べ物に切り換えていく……という行程を取ることが推奨されるとかなんとかで……まぁ要するに、幼児に対しての離乳食みたいなものなのだとか。
ゆくゆくはギガパッチを軽量化したうえで、各世界用の形態の移行をスムーズに行えるように調整し、アレルギーのような反応も起こさないようにするということを目標に、あれこれ研究が続いている……というような話を、
「びぃーびぃーちゃーん?」
「ひぃっ!?ちちち違います誤解です単なる伝達ミスですぅぅぅっ!!?」
こっそーり、抜き足差し足でこの場から離脱しようとしていたBBちゃんの肩をがっしりと捕まえ、その肩越しから覗き込むように彼女の顔を見つめる。
ホラーテイストマシマシのその行動には、さしものBBちゃんも肝を冷やしたようで。
矢継ぎ早に飛び出してくる言い訳を
「今度水辺の聖女とのスパーリング組んどくから、逃げないように、ね☆」*3
「ぴえん……」*4
やらかしたBBちゃんへのお仕置きについてはまぁ、このくらいにしておくとして。
今のウォーグレイモン君を祭りの喧騒の中に連れ出すと、色々食べたくて仕方なくなるのは目に見えている。
が、体の慣らしが済んでいない今の状況下では、いわゆる生殺しみたいなものでしかなく。
食べられないものを指を咥えて見るしかない、というのはストレス以外の何物でもないだろう。
なので、当初の予定は捨て置いて、彼のことはこのままゴジハム君にお願いする……ということで話が決まるのだった。
「ごめんねゴジハム君。なんだか面倒を押し付けるみたいな感じになっちゃって……」
「別に構わないのだ。いつも銀ちゃんから被っているあれこれを思えば、こんなの屁でもないのだ」
「その話を聞いて、私の中の銀ちゃん株が急暴落したんですが?」
「……?そもそも銀ちゃん株って、特定状況でもなければずっと最安値じゃないのだ?」
「……………それもそっか!」
「仕方のないこととはいえ、お労しや銀時さん……」
一応、本来一緒に連れていくはずだったこともあって、面倒を押し付けるような形になってしまったことになるので、こちらから謝罪を申し入れたのだけれど……ゴジハム君は笑って許してくれるのだった。……ついでに銀ちゃんの評判を下げつつ。
流れ弾がでかすぎやしねーか?!……みたいなツッコミが飛んできた気がしたがスルーしつつ、代わりになにかお土産でも持ってくるよと約束して、漸くお面屋を離れる私達であった。
「……で、いつの間に買ったのそれ?」
「貴女達が詳しい話を聞いてる時。あっちの竜人さん、真面目に働いてたから」
「……結果的にとはいえ、放置してたこと怒ってたり?」
「別に。そんなことで拗ねたりしないわ。子供じゃないもの」
(……拗ねてないならそれはそれで問題なんだよなぁ)
……なお、何故か売ってた『マジカル聖裁キリアちゃん』のお面を購入し、斜めに被るようにして装備している綾波さんという、こっちの胃を攻撃してくる劇物も発生したが……とりあえずスルーすることにした。
縁日で売ってるプリ◯ュアのお面みたいなものだろうから、気にするだけ無駄だと悟ったというところもなくはない。
まぁ、しれっとわたあめ屋とかにも『キリアちゃん』柄の袋が並んでいた時には、流石に膝から崩れ落ちそうになったけども。*5
「有名税、というやつですね……」
「ははは全国ネットって強いなぁ!」
「下手に独占配信とかだとぉー、あんまり噂にならなくてよくない……ってきらり聞いたことあるにぃ☆」
「あー、独占配信であれば制作費の問題は解決しやすいが、話題性は取り辛い……というやつだな」
「一挙公開も難しいとは聞くね。なんでも、最後まで見ている人と見ていない人の間で、話題の同期が取り辛いからだとか」
「週刊連載って、意外とニーズにあってたのねぇ……」*6
そうして、人気者は辛いなぁ!(やけくそ)な話題から、現代の作品公開の難しさについての話題にシフト。
不特定大多数の人間が見るような場所では、ネタバレ云々についての話題はよく火種になっているし、全ての人が納得できるような仕組みというのは難しいのだろう。
そういう意味で、公式側から『話していいのはここまで』みたいな線引きができる週刊連載というのは、意外とよくできているんだなぁとしみじみしてしまう私達である。
実際、原作ありきの作品の場合は
「ははは。相変わらず変な話題で盛り上がってるねぇ、君達」
「そのお声は……五条さん?」
「はいどうもー、みんなの愛しき隣人五条悟でーす。……いや、そこで冷めた視線向けられても困るんだけどね?」
「いや、あんまり笑えないなって。
「……あれー?なんかドシリアスな意味で捉えられてるー?」*7
「んもー、五条お兄さんってば空気が読めてないんだゾー!」
「ああうん、それはまぁ原作からしてそんな感じだから今更っていうか」
「いや開き直るなし」
なお、そうして染々と語り歩く中で、ぶらぶらと街を歩いていた五条さんに遭遇することになり、なし崩し的に彼も同行者に取り込む形になるのだった。……仲間がぞろぞろ増えてくぞ!