なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「こんにちわ、次元の魔女さん。噂の方はかねがね」
「ご丁寧にどうも、そっちの話もそれなりに聞こえてるわよ、最強の呪術師さん。……まぁ、ここにいる私は実体ではないのだから、貴方のことをしっかり認識できているとは言い辛いのだけど」
「ははは。それはまぁ、お互い様ってことで」
「……なんだろう、なんかいきなり謎のフラグ的なものばら蒔いてないかな、この二人?」
「せんぱい、その発言は流石にメタが過ぎるのではないかと」
「おおっと」
険悪……というのとは違うのだけれど、なんだかよくわからない距離感で会話する侑子と五条さんの二人に、思わず小さく首を傾げつつ。
結果としてわりと大人数になってしまった私達はと言えば、ところどころの屋台にフラフラと近寄って商品を物色しながら、あちこち練り歩いていた*1のだった。
「ところで、あちこちでメカクレ布教に勤しんでいる私なわけだが……中々上手くいかないのは、何故なのだろうね?」
「……寧ろなんで上手く行くと思ったの?バカなの?」
なお、行く先々でメカクレ布教を始めるバソに関しては、そろそろふん縛るかパーティメンバーから追放した方がいいんじゃないかなー、などと思ってしまう私である。
「なるほど、『世にも珍しい紳士的な海賊の私がパーティから追放されたら、驚くことにメカクレパラダイスが向こうの方からやって来た』というような感じになるというわけだね?──素晴らしい、追放というのも存外悪くないものだ」*2
「……なんでこう、そこまで自分に都合のいい妄想だけ垂れ流せるの君?私ちょっと感心しちゃったんだけど?」
「せんぱいせんぱい、そうやって構ってしまうから付け上がる……ということなのではないでしょうか?」
「!?(マジで!?という顔)」
「ははは。なんというか、どこに行ってもマシュ君からの視線は変わらないね」
(自覚があるのであれば直して欲しいのですが?という顔)
……話が進まないので、この辺で一度バソの話は切って。
年に一度のお祭り騒ぎであるということもあってか、ほとんどの住民達がなにかしらの屋台を出しているわけなのだが。
「おーいキーア、こっちこっちー!」
「ヘスティア様、こんにちわ。今日はジャガ丸くんの屋台じゃないんですね?」
「風の噂に聞いた話によれば、この祭りでは
その内の一つ、ヘスティア様達の移動屋台を見付けた私達は、その手前で客引きをしていたヘスティア様に誘われるまま、彼女の近くへと歩を進めることとなったのだった。
……で、既に私が口にしたように、今日のヘスティア様達はいつものジャガ丸くん──コロッケ的なホットスナックではなく、まったく別の商品を売りに出している。
「なんでもこの時期には、はろうぃん……?というお祭りもあるのでしょう?エリザちゃんからそう聞きました」
「エリちゃんから?そりゃまた、なにか問題とかは起きませんでしたか?」
「?いいえ、とっても優しい子でしたよ。私にも、丁寧にあれこれと教えてくれたの」
(流石のエリザベートさんも、エウロペさん相手では下手なことをできなかった……ということでしょうか……?)*3
その商品と言うのが、時期を同じくする祭り・ハロウィンの主役である
……エウロペ様は少なくとも去年より前からここに居るはずなのに、なんでハロウィンのこと知らないんだろう?……みたいな疑問はあれど、多分エリちゃんがいるから危なくないように隔離されてたんだろうなー、的な(どこぞの主神とかの)過保護の気配を感じたため、とりあえず言及せずにおく私である。*4
ともあれ、いつもの販売物と違うその商品達はそこそこ好評のようで、こうして私達が会話する間にもそれなりの数が捌けていっている。
……で、実はそれを売っているのはヘスティア様でも、ましてやこうして目の前でニコニコしていらっしゃるエウロペ様でもなく。
「
「はいはんなまー、エーくん。さっきぶりねー。……あととりあえず、食べ物売ってる時に『
「
可愛らしく飾り付けられた、中にカップケーキの入った袋を手渡しているのは、先ほどチラッと言及されていたエーくんなのであった。
「今の私にはタロスもタウロスもいないけれど……この子がね、『だったら僕が『ないと』になってあげるよ』って言ってくれて。もう、私嬉しくて嬉しくて……」
「あーうん、なるほど。エーくんの方から手伝いを申し入れたってことですね……」
どういう電波を受け取ったのかは定かではないが、どうやらエーくんはこの女神二人の手伝いをするべきだ、みたいな閃きを受け、それに従って彼女達の元に馳せ参じたらしい。……ナイト云々は、そのせいだろう。
無論、そんなことをすればエウロペさんが感激頻りになるのは目に見えている。……どこぞのスペースな王妃みたいにならなくてよかった、と内心ちょっと胸を撫で下ろしている私であったが、表情には出さない。*7
「うんうん、きらりんにはエウちゃんのその気持ちぃ、とっっ………ってもよく分かるにぃ!エーちゃん、とっても賢くてかわゆいんだよね~☆」
「ええ、ええ!とっても良い子で、私思わずちょっと涙が……」
「……なんだかよくわからないけど、エウロペが楽しそうでなによりだよ」
(状況はよくわからんが……この小娘も苦労しておるのだろうな)
なお、なんかよくわからないけど、きらりんとエウロペ様がエーくんいいよね、で同調していた。……波長的なものが噛み合ったのだろうか?
それとその横でなんとも言えない苦笑を浮かべるヘスティア様を見て、サウザーさんが何故かうんうんと頷いていたけど……どういう思考展開が発生したのか、ちょっと気にならないでもない私なのであった。
カップケーキのおまけだという、もちもちのエーくんスクイーズマスコット*8をにぎにぎしながら、再び屋台巡りを再開した私達。
マシュがしきりに「これは大丈夫なのでしょうか……」と呟いていたが、大丈夫大丈夫。
これはあくまでも
……だから、間違っても
「それって、最早認めているようなもんじゃないのかなぁ……」
「はっはっはっ。鬼太郎、時には目を逸らすべきことというのも、世の中には多く転がっているものなのだよ」
「やだ、バソにフォローされてる……!?」
「あっはっはっ。キーアさんは相変わらずだなぁ」
みたいなやり取りを挟みつつ、それでも変わらずに屋台を回る私達。
なんやかんやで私達も有名人……ということなのか、今まであまり関わったことのないような人達も、こちらを見ては声を掛けてくる。
「わぁ、キーアさんですよね?実はファンなんですー」
「は、はぁ。ど、どうも?」
「で、ですねー。実はうちの商品を一つ貰って欲しくてですねー」
「……あー、宣伝ってことですか?」
「そうですそうです!……いえ、ちょっと烏滸がましいかなー、とは思ったんですけど……」
「いや、別に大丈夫ですよ。単に食べながら歩けばいいんですよね?」
「あ、ありがとうございます!」
その内の一つ、とある屋台では、特に見覚えのない女性から唐突にファンだと告白された挙げ句、体よく歩く広告塔になることをお願いされたりしたわけなのだが……。
ついでにみんなの分の串カツを買って戻ったら、何故かマシュとBBちゃんが頬を膨らませていたのだった。
「……この二人は、どうしたの?」
「さぁ、自分の胸に聞いてみたらいいんじゃない?」
「……?お胸さんお胸さん、私の胸は何故そんなに哀れなほど薄っぺらな*10ぐふぅっ!」
「……いや、そういう意味じゃないし、なんで自爆してるのよ貴方」
よくわからなかったので、近くにいた侑子に尋ねてみたのだけれど……彼女はニヤニヤ笑うばかりで、答えてくれる様子はないみたい。
なので仕方なく、彼女のアドバイス通りに自身の胸に問い掛けてみたのだが……後輩二人とは比べるべくもないその絶壁に、私の意識は一瞬吹っ飛ぶことになるのだった。……はっ!?私はなにを?
「はいはい、ご馳走さまー。で、これからどうする?とりあえずこの階層の店に関しては見終わったんじゃないかなー、と思うわけなんだけど」
「ふぅむ……今回の祭りにおいて、部外者が立ち入ることのできないエリアというのはあるのか?」
「うん?そうだね……あー、機密に抵触しそうなところは流石にあれだけど、それ以外なら大体開放されてるみたいだね。……で?それを聞くってことは、どこか行きたいところがあるのかな?」
なお、五条さんはいつも通りですね、とでも言わんばかりに笑ったあと、私の両手から串カツをひょいと取って、みんなに配り始めるのだった。
で、その流れの中で次は何処に行こうか、とみんなに彼が問い掛けたわけなのだけれど……真っ先に声をあげたのはサウザーさん。
その発言の内容的に、どうやら何処か見たいところがある、みたいな感じだったのだけれど……?
「うむ、確かここには北斗真拳伝承者の一人──トキが居ると聞いてな。一度、きらりの拳を見せておきたいと思っていたのだ」
「……にょわ?きらりの拳?」
その内容は、私達も直接会ったことはない──けれど、ブラックジャック先生の発言により、居ることだけは以前から判明していた人物。
北斗伝承者にして四兄弟の次男、銀の聖者・トキにきらりんの拳を見せたい、という突拍子もない話なのだった。