なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あー、トキさんかぁ……」
「その口ぶりだと、知っているのか?」
「話だけはねー。ブラックジャック先生がここに居る、ってことは一応匂わせてたから」
サウザーさんから飛び出した言葉に、昔先生が語っていたことを思い出してしまう私である。
あの時話題に挙がっていた人物の中で、未だに顔を見たことがないのは『冥土帰し』『八意永琳』それから『トキ』の三人ということになるわけなのだが……。
そう考えてみると、寧ろ実際に会ったことのあるロー君の方が例外、ということになるのかもしれない。
だって、あの時言及されていたもう
「そもそもの話として、居るのかね?エインフェリア。あれ、区分的には死者の霊の類いだろう?」
「それ、
「……それもそうか」
「おおい、話が逸れているわけだが?」
「おおっと、ごめんごめん」
まぁ、私みたいな一部例外を除いて、魔法やスキルなどの技能は、原則自身の出身作品のモノしか使えない……というのが基本なわけで。*1
必然的に、『キュア・プラムス』が使えるのは『ヴァルキリー・プロファイル』系列の作品を原作に持つキャラクター……つまりはエインフェリアなどに限られることとなる。
エインフェリアとは、雑に言えば英雄と呼ばれるような死者達の霊のこと。*2
なので、『逆憑依』の原理的に成立しうるのか?……みたいな疑問が出てくるのも、ある意味ではおかしなことではない。
おかしいところがあるとすれば、それを言っている人がサーヴァント──エインフェリアとはほぼ類型である、英霊そのものである
ともあれ、今回の祭りは一月に渡る、とても長い祭り。
余裕なんて幾らでも沸いてくるようなものなので、特にその行為自体に問題がないのであれば、誰かの要望を聞いて動くことは吝かではない。
「じゃあ、探してみよっか?トキさんのこと」
「おお……すまぬな、キーアよ」
「いいってことですよー」
と、言うわけで。
これからの第一目標に『トキさんの捜索』が加わることとなるのだった。
まぁ、目標が決まったからといって、特に劇的な変化があるか?……と言われるとそういうわけでもなく。
「……ううむ、結局は地道な聞き込みが主体となるわけか」
「現状だと、ブラックジャック先生に聞いてみるのが一番早いのかもしれないけれど……何分先生も、祭り中は暇ってわけでもないみたいだからねー」
「ままならぬものよな……」
こうして第一目標として定めたものの、それを早急に達成するということは難しい。
なにせ、こちらの持っているトキさんについての情報と言えば、『ブラックジャック先生が話題として挙げていた』──というものだけ。……つまりは
更には直接先生に彼の所在を尋ねようにも、祭りの期間中は先生の方も、郷の各所で来客達の健康状態の確認を行うために、あちこち移動しているのだそうで。
結果、元の診療所に姿はないので、先生自体の所在も不明……と、出だしから思いっきり躓いてしまっている状態。
だからまぁ、祭りを楽しんでいる間……すなわち
「……というか、なんで今なの?別に今みたいな祭り時じゃなくて、なんにもない平時にでも来てくれれば、こんなにドタバタする必要はなかったんじゃないかなー、って思うんだけど……」
「貴様な……忘れているのかもしれんが、曲がりなりにもここは俺達にとっては別組織。気軽に来訪できる場所ではないのだぞ?」
「ふーむ……?」
そんな優先度で大丈夫か?*3
……的な思いもなくはなかったので、射的に興じながら訪ねたところ、サウザーさんから返ってきたのは呆れたような視線。
拳を見て貰うというのは、言い換えれば喧嘩を売っているとも言える……みたいなことになるらしく、平時にやったらそれこそ問題になるわ、的なお叱りの言葉を頂いたわけなのだが……。
「……その論理で行くと、私ってば火種以外の何者でもなくね?」
「む、それは何故だ?」
「いやだって、
「けしかけ……っ?い、いや、貴様はなにをしておるのだ……?」
「なにって……そりゃもう、ある意味では今サウザーさんがしようとしていること?」
「ぬぅ?」
きらりちゃんの拳を見て欲しいというのは、正確には彼女の拳法──きらりん真拳が、方向性的に医療目的の北斗真拳に近しいモノであるため、というところが大きいだろう。
言うなれば、彼女をちゃんとしたところで師事させたい……というのがサウザーさんの言葉の真意、ということになるわけで。
だったら、その辺りをちゃんと申請しておけば、特に問題はなく渡航許可?……っていうのもおかしいけど、普通に受理されてたと思うんだけども。だって既に私がやってるし。
思い起こすのは、リムルさん相手の様々な鍛練の数々。……いやまぁ、私が面倒を見ていたのは初期も初期で、育成方針を固めてからは
ともあれ、既に人材交流的なものはやっていた、ということは事実。
なので、モモンガさんにもその辺りの話を交えて説明すれば、普通に許可は取れるんじゃないかなー、と思う次第なわけなのであった。
……まぁ、サウザーさんの反応を見るに、多分その辺りの話については全然聞かされていなかったのだろうけど。
「んー……やっぱり好戦的な人が多いってのもあって、聞いてくる人には開示するけど、聞いてこない人にまでは教えていない……みたいな感じなのかなー」
ううむ、と唸りながらモモンガさんの運営方針について思いを馳せる私。
こちらとは別ベクトルの問題児が多い互助会、そのトップともなれば、私よりも遥かに所属人員の癖というかやらかすことというか、そこら辺の事情に詳しいことは確かなはず。
なので、もしかした私には想像も付かないような、遠大な理由が隠されているのかも知れない……。流石モモンガさんだな!()
「へっくしょい!」
「あら。アンデッドでも風邪を引くことがあるのかしら?」
「……いや、病気系列は完全耐性のはずだ……大方、キーア嬢辺りにでも噂されているのだろう」
「なるほど、それは十分にあり得る話ですわね……」
「ねーぇー!?コンサートを聞いてくれるのはー、私的にも嬉しいんだけどぉー!!結局のところ、私はいつまで歌っていればいいわけー!?」
「む、これは失礼した。できればもう少しサンプルを取っておきたいので、あと三曲ほどお願いできるだろうか?」*5
「さささ三曲ぅ!?」
(……原作で冥界関係の人とかに好評だったし、暫く部屋の中で缶詰になることが決まっているから、気分転換も兼ねて……って感じでお願いしたライブだったけど。──まさか先にエリちゃんの方が音を上げるとは、予想外だったわね……)
……なんか、謎の電波を受信した気がするけど置いといて。
ともあれ、サウザーさんのお願いは、
それを理解したサウザーさんは、なんとも微妙な表情でぬぐぅと呻き声をあげるのだった。
「……あ、あー☆サウザーちゃんがぁー、きらりんのために色々考えてくれてたってことぉ、きらりんはとっても嬉しく思ってるよぉ?」
「……うむ、まぁ、貴様の面倒を見るのは今に始まった話でもないからな、苦にはしておらんさ」
「……ほう、やっぱりサウザーPでしたか。大したものですね」
「あ、サウザーさんがプロデューサーになるのはお断りします」
「どうしたのきらりん!?言葉使いが変だよ!?」*6
「ツッコミどころはそこではないと思うわけだが?」
まぁ、この二人がコンビみたいなもの、というのは見ていればわかる話。
どうにもきらりんの反応的にPちゃんではないらしいが……杏ちゃんみたいなもの、ということは恐らく間違いではないだろう。多分。
「なるほど。じゃあ私はサウザーに飴をあげればいいわけね?」
「突然なにを言い出すのだ貴様は!?」
「あっはっはっはっ。それって対価いるやつなの、魔女さん?」
「そうねぇ、ちょっとなにか奢って貰ってチャラにする、って感じでどうかしら?」
「何故揃って俺を弄ろうとする!?」
……なお、杏ちゃん=サウザーさんの図式がやけにツボったのか、侑子と五条さんの二人に弄られ倒すサウザーさん、などという不思議なものが見られたわけだが……これ、写真にでも残しとけば向こうで話題になるかもねぇ。
「あれこれ話しているうちに、すっかりお昼になってしまいましたね」
「まぁ、あちこちで買い食いしてたから、そこまでお腹は空いてないんだけどね」
「BBちゃん的には、折角ご飯が食べられるので今のうちにあれこれ制覇しておきたい気分なんですけど!」
「いや、それにしても食べ過ぎ……というやつなのでは……?」
「サウザーおじさん、デリカシーが無いぞ……」
「何故俺は今バカにされた?!」
「それくらいはちゃんと考えて欲しいにぃ……」
それからぐだぐだと会話を続けつつ、あちこちでトキさんの影を探してみていた私達。
路地裏の窓とか新聞の隅とか、色々見てみたものの特に手掛かりは見付けられず、そのまま間食だけが増えていく感じではあったが。……え?探した場所的に本気で探してないだろうって?*7
ともあれ、そうしてブラブラしていれば、必然時間も過ぎていくというもので。
時刻は大体正午くらい、歩き回っていた割りにはあまり空腹を感じない状況に、ちょっと食べ過ぎたかなーなんて感想をみんなで溢していたのだけれど……。
「この特徴的な音声は……選挙カー!?」
「元の方もよく真似していらっしゃいますよね……」
ふと公共放送に乗って聞こえてきたのは、ガチ勢極まった結果、見た目本人なのに別人ですぅー、と主張することとなった少女・周央ゴコの声。
街頭演説みたいなよく通る声で彼女が伝えるのは、これから始まろうとしている大きなイベントについてのお知らせ。
祭りと言えば、な催し物の一つ。
大食い大会が今から始まる、というその言葉に、私達は思わず顔を見合わせることになるのだった……。