なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「一時はどうなることかと思ったけど……問題ないって言って貰えてよかったねぇ」
「そんなの当たり前ですー!なにも、どこかの星の戦士みたいに吸い込んで食べよう*1、みたいなことを考えていたわけではないんですから!」
「……おい、その発言を聞いてオグリが『その手があったか』みたいな顔をしているから、それ以上余計なことを言うのは止めておけ」
エントリー受付にて確認したところ、先のBBちゃんの説明は全面的に受け入れられ、無事に参加することができたわけなのだが……代わりに、吸い込んで食べたりするのはダメですよ、と釘を刺さされることとなった。
まぁ確かに、容量無限で
なお、その理論で行くと一応胃袋に収まる量、という限界があるオグリちゃんや悟空さんは吸い込んでいい、ということになるため、二人が目を輝かせていたが……お願いだから止めてください(白目)
……ここには居ないが、もし仮にエー君が参加しようとすると断られるのだろうなぁ*2、なんてことを考えながら、大会の進行を待つ私なのであった。
「参加者の皆さんは、こちらのゼッケンを装着してくださーい」
「はいはーい」
係員からゼッケンを受けとり、一緒に渡された安全ピンで服に取り付ける。
なお、その係員さんはモブっぽい顔をしていたが、正確には『係員のなりきり』らしい。……久しぶりに見たな、モブ系なりきり。
「あの方達がオリジナル扱いにならない、というのも不思議な話ですよね~」
「機会があれば、その辺りの許容値的なものも調べてみたいねぇ」
「……世間話に華を咲かせるのはよいが、結局俺達は単なる記念参加ということで良いのだな?」
「あ、ごめん言い忘れてた。
「────なんて?」
BBちゃんと他愛のない話をしながら、競技開始の合図を待っていた私は、呆れたような視線をこちらに向けながら、改めてこの大食い大会での私達のスタンスについて尋ねてくるサウザーさんに、そういえば言ってなかったことがあったと思いだし、それを伝えたわけなのだけれど……。
返ってきたのは、自身の上司から予想だにしなかった答えが返ってきた……みたいな感じの顔。……まぁ要するに、
そんなに絶望するような話をしたかなー、と思いつつ子細について説明しようとした私は。
『デュエル開始の宣言をしろ、遊矢!!』
『デュエル開始ィィィ!!……俺、なんで猫にアゴで使われる、みたいなことになってるんだろうな……』
「あ、ごめん始まっちゃった。詳しくは
「おい貴様ァァァァ!!?ルビが不穏だった気がしたがァァァァッ!!?」
折悪く大会開始の宣言が
すまんなサウザー、説明はあとだ、今は目の前の
──そして、戦いは熾烈を極めた。
襲い来る様々な
第一の試練、激辛料理。
流石に食べられない級の辛さのものが来ることはなかったが……初っぱなから数が食べられない系の料理が来たことにより、一部の
……なお、私はこの時点で脱落である。辛いの苦手な奴に辛いもん食わそうとすんなー!(※
第二の試練、ラーメン。
それも、一杯一杯が通常の二倍の量という、必然的に早食いを要求される強敵。
チンチラ食べていては、麺がスープを吸って再現なく肥大化していくそれを、ひたすら数を重ねていく苦行のような行程。
これもまた、トップ層のペースに呑まれ自身のペースを見失い、そもそも制限時間の最後まで立っていられずに失格となっていく者が多く居た。
そして最後の刺客、寿司。
前者二つに比べれば小物に見えて、大会発案者の悪意が詰め込まれたこの料理に、多くの選手が苦しめられた。
「……─%#&*@※↓↑←→☆□▽〒∞≒∟∑∵ッ!!!?」
『おおっとオグリ選手、突然口元を押さえて足をバタバタさせております!一体どうしたと言うのでしょうか!?』
『あー、あれだな。
『その通りだ、ピンクいの。この寿司のネタの中には、大体百個中三割の確率でわさびが、更にその中の一パーセントには特製山盛りわさびが含まれている』
『なんですかその、当たっても嬉しくないガチャ……』
一つ目の妨害は、わさび。
大食い用のネタの場合、数をこなすこともあってわさびは抜いてある、ということも珍しくはないが……ここではその逆、まるでロシアンルーレットかのように、突然わさび山盛りになっていることがある。
職人の繊細な技巧により、外からではわさび山盛りに気付けないようになっているそれは──自身でレーン上の皿を取って食べていく、いわゆる回転寿司方式となっている決勝の舞台においては、不可避の地雷以外の何物でもない。
幸い、わさびの辛さは鼻を抜ける辛さ*6──カラシなどとは違い時間経過で解消されるものだが、辛さに耐える時間という浪費を強要してくるそれは、出来れば引きたくないものの一つだろう。
──だが、妨害は一つに留まらない。
「……ぬ、なんだこの……『アタリ!特製ネタ確定』?」
『おお、更に当たりがでるとは。中々に幸先が良いではないか』
『いやホントにガチャじゃないか。……で、この特製ネタってのは一体?』
『うむ。現代の回転寿司と言えば、多種多様なネタがあるというのが一番の特徴だろう。だが見るがいい、レーン上に並ぶ寿司ネタの数々を』
『ゴコさんも気付きましたか、私も気付きましたよ。……これは酷いことになりそうです』
「おまちどおさまー!特製ラーメンでーす!」
「おい待て、これはさっき食わされた奴ではないのか!?」
「違いますよー、さっきのは醤油ですがこっちは
「……どっちも同じではないか!?」
「ちがいますよーっ」
「これだからしろうとはダメだ!」
「いや誰だこいつら!?」*7
皿の上のネタを食べ終えた結果、そこに書かれていた文字。
そこにあったアタリの文字に困惑するサウザーさんの元に、運ばれて来たのは第二ステージで散々食べされられたラーメン(※さっきの1.5倍)。
思わず大声をあげるサウザーさんの横で、どこかで見たことあるような警察二人が解説をしていたが、一先ず置いておいて。
第二の妨害、豊富な品揃え。
現代の回転寿司においては、見るからに寿司じゃないものも取り揃えている、というのは最早スタンダードとなっている。
ケーキやパフェのようなデザート類は当たり前、フライドポテトのなどの軽くつまめるサイドメニュー的なものもあれば、カツ丼やラーメンのような『それは最早サイドではなくメインだろう』みたいな感想を抱くようなものも普通に置いてあるのが、現代の回転寿司である。
そしてそれを反映したのが、このアタリシステム。
一部の皿に印字された『アタリ』の文字は、それぞれ次に参加者達が食べるネタを
なんとこの当たり、量が幾ら多かろうが・食べるのがどれほど大変だろうが、全て
極々稀に、多重の意味で当たりと言えるような──高級プリン一つ、みたいなパターンもあるにはあるみたいだが、そのほとんどはサウザーさんのラーメンのような、寿司一貫より遥かに食べるのに労力を要するものばかり。
お一人様用チゲ鍋*8やらお一人様用焼き肉*9やら、それ単体で大食い競争に出してもいいやつですよね?……みたいなものが飛び出してくる様には、流石の私も顔面蒼白になるのであった。……初戦敗退してて良かったー。
そして、待ち受けるのは最後の妨害……。
「あ、同じ商品が四つです、やりましたね?」
「え、ちが、味付けとかっ」
「原材料が同じなので同じ扱いでーす。ではー、『ファイヤー』!」
「うわああああ食べた皿がゼロにぃいいいいゼロぉぉぉっ!!」*10
『ははは、ルルーシュ君を探すスザク君みたいな断末魔ですねー(棒)』
それこそが、オワニモ──もとい、『同じネタ四つ食べちゃダメ』システムである。
時の究極魔法の名前を冠するこのシステム、特に捻りもなくパズルゲームの『ぷよぷよ』を元ネタとしたものであり、その名の通り同じ商品──同じ材料で作られたネタを四つ食べた場合、その皿が回収され食べた分にカウントされなくなる代わりに、他の参加者にお邪魔ぷよ……もとい、妨害行為を行うことができる、というシステムである。
単に食べる速度によって勝敗が決まるのであれば、勝てる人間が限られてしまう……という、なりきり故の問題点を解消するために生まれた妨害達の一つであるが、確かに特定のネタを四つ消費して先の当たり(棒)達を他の参加者に振る舞う、というのは駆け引き的には面白い、と言えなくもないだろう。
……問題があるとすれば、これは最終戦──既に腹八分目を優に越している状況下で、そんな妨害手段に意識を割ける人間がどれほど居るか、ということだろうか。
正直、皿のカウントが減ってしまうのが痛すぎる気がするのだが。いやまぁ、他の参加者全員への妨害行為、という時点でコスト的には割りと破格なのも確かなんだけども。
でもやっぱり、絶望したようにテーブルに沈んだ参加者の姿を見ると、『ばたんきゅー』などと茶化すのも憚られるというか。……マグロとかの魚の種類で一括りになるせいで、軍艦とトロと大トロと叩き、みたいな感じでも妨害に化けるのは……ねぇ?
なお、一番の問題はというと。
「ひぇー、こんなに食べても怒られないんか。すっげぇふとっぱらだな~」
「むぅ、流石に悟空は早いな。私も負けてられないぞ」
「……いやこのお二人、ホントに胃袋に限界があるのか、BBちゃんとしては疑わしくなってきたんですけど……?」
このように、トップ層にはなんの問題にもなっていない、ということなのだった。……頑張れサウザーさん!(なげやり)