なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……話は終わったか?」
「そういうサウザーさんは、消化は終わりましたか?」
「終わるわけないだろうが……人をなんだと思っている……」
「南斗拳士ってお堅いのね。こっちじゃもう終わってるわよ」*1
「人を水星扱いするなと言うべきか、そもそもあの二人と一緒にするなと言うべきか……」*2
「見るからにお腹が膨れていらっしゃっても、次の瞬間には凹んでいる……なんてこともザラですからね……」*3
私とBBちゃんの話が終わるのを見計らってか、サウザーさんが声を掛けてくる。
見れば、その腹は豊満であった。……もとい、胃は膨れたままだっただったわけだが、トップ二人の体型が既に戻っていることを鑑みるに、サウザーさんはフードファイターには向いていないのかもしれない。……BBちゃんはそもそも体型変化しないので例外。
ともあれ、少なくとも物理的な限界がある胃袋を持っている人は、あの二人みたいな超速消化がないと話にならないのだろう。
……などという世迷い言的な妄言を垂れ流しつつ、いい加減説明して欲しそうにしている彼に向き直る私である。
恐らく、彼はこう尋ねたいのだろう。──何故、あの二人を相手にしながらも、優勝する気概は捨てずに挑めと言ったのか、と。
「んー、私たちって、これに参加する前になにしてたっけ?」
「なにって、そんなもの決まっておろう。トキの奴を探して……探して……?」
「──気付いたみたいだから明言するけど。これも我が策のうちってわけよ」
どっこい、その理由についてはとても簡単かつ明快──ちょっと触れるだけでなんとなく察せられるようなものだったりする。
私たちがこの大会に参加する前にしていたこと。
それは、大枠としては食べ歩きだとか、周囲の店への突撃だったわけだが……そこには定められた
そう、北斗神拳の歴史上、もっとも華麗な技の使い手とも呼ばれる銀の聖者──トキの捜索である。
さて、トキの捜索を第一目標と定めつつ、それを放り出して大食い大会に参加していたのは何故だったか?……そう、彼の所在が一切不明だったから、である。
では、何処に居るのかわからない相手を探す時、一番簡単な方法とはなんだろうか?
「──なるほど、向こうに見付けて貰えばよい、ということですね」
「その通り。幸いにして、さっきの大食い大会は郷内全域に配信されてるものだったから、向こうがテレビも見れないような状態でもない限り、ほぼ確実に見付けて貰えるってわけ」
得心したように頷くマシュに、私も頷きを返す。
そう、中央ステージで行われている催し物は、原則として郷内の全域に配信が行われているのである。
最初のオープニングセレモニーもそうだし、さっきの大食い大会もそう。これからあとに行われる数々の催し物も、例外なく全て配信されているのだ。
いわゆるメインラインというやつで、なにを見ていいのかわからないとか、とりあえずなにか見たいみたいな要望に答えるためのものでもあるらしいが……ともかく、宣伝やらなにやらをするのに、この大舞台を利用しない手はない。
確実に優勝はできないとわかっていながら、さっきの大食い大会に参加している人が案外多かったのも、それが自身の出し物・店などの宣伝になるというのが大きい。
つまり、それほどの拡散力があるこの場所を利用すれば、こちらからは見付けられずとも向こう・トキさんの側からこちらを見付けて貰うというのは、十分に可能なのである。
「けどよー、その論理には穴がねーか?」
「ほう、その心は?」
「
が、ここまで話したところで、コナン君から疑問の声が上がる。
さっきの大会に出ることで、サウザーという人間が今なりきり郷にいる、とアピールすることはできた。
しかし、例え多くの人々に彼の姿を印象付けられたとしても、肝心のトキさんに届かなければ意味がない。……これは、さっき私も触れていた問題点。
「正直、そこに関しては数打って行くしかないから……」
「……いやちょっと待て、無性に嫌な予感がしてきたわけだが?」
「はっはっはっ。諦めたまえよ、聖帝君。こういう時のキーア嬢は、梃子でも動かないぞ?」
「デスヨネー」
コナン君に言われずとも触れていたことからわかる通り、その問題点についての解消法は、既に考えてある。
……といっても、単純に『これから始まる中央ステージでのイベントに、サウザーさんを参加させ続ける』というだけの話なのだが。
実際、宣伝効果を期待している&今は仕事時間外or店や出し物には別の人間が付いている、みたいな感じの──いわゆる
彼らの集まりにサウザーさんを参加させ続ければ、とりあえず『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』作戦は遂行できるだろう。……
「人を奈々様ボイスにしようとするでないわっ!!」
「むっ、私を呼んだだろうか?」
「ぬぉわっ!?呼んでない呼んでない!言葉の綾だ、綾っ!!」
「そうか、邪魔したな」
「あー……そういえば、次は薪割り大会だっけ?」
「
「いやホントになんでもありかよ……」
なお、ちょっとテイルズでシンフォニーしてそうなキャッチフレーズを私が口走ったことに、サウザーさんが過剰反応した結果、たまたま通り掛かった翼さんに不思議そうな顔を向けられることとなったが割愛。
……毛利さんの発言を信じるのであれば、次の催し物はどうやら薪割り大会になるらしい。
文字通りになにを使ってもいい、というハチャメチャ具合が既に試合前から醸し出されているが……とはいえ所詮は薪割り大会。わざわざ放送するほどの華があるものなのだろうか?と疑問に思っていたのだが。
「……木人拳じゃん!?」*5
「あーなるほど、翼さんが居たのは
デモンストレーションとして行われた、大会の一部内容の公開。
そこでは、不思議な力によって動き始めた木製のからくり達を、様々な得物を使って粉砕していく姿を見せられたのだった。……まさかのジャ○キー。
それを薪と言い張るのは如何なものかと思ったが、確かにこういう種目が混じっているのであれば、放送に耐え得るエンターテイメントを提供することも、そう難しくもないのかもしれない。
思わずうんうん、と頷いてしまう私たちなのであった。
「……って頷いている場合かっ!!二つ目の問題点についての話が、終わってないではないか!!」
「……ちっ、このまま行けば大会開始の時間になって、全て有耶無耶にできたものを……!」
「おィィィィッ!!?」
……うん、残念ながらサウザーさんはごまかされてくれなかったのだが。はいはい、説明しますよー。
「では話を戻しまして、『向こうが接触してくる理由がない』って問題についてだけど──」
「ついてだけど?」
「──正直、これについては
「……はぁ?」
と、いうわけで。
触れられていた第二の問題点、『例えトキさんがこちらに気がついたとしても、積極的に接触してくるかはわからない』という話についてだが。
これに関しては、正直
「俺だからこそ勘違いした……?」
「今の状況下だと──毛利さんもそうだし、マシュやバソもそうかな」
「ふむ、私もかい?」
この場でコナン君と同じ勘違いに陥る可能性があるのは、先に述べた四人だけ。それ以外の人に関しては、仮に先の状況に立ちあったとすれば、恐らく普通にここまでやってくるだろう、というのは想像だに難くない。
「おっ、オラわかったゾ!」
「流石しんちゃん。じゃあ、みんなに答えを教えてくれる?」
「ほっほ~い」
四人以外はのこのことやって来る、と言われて首を捻っていたし、その四人も腕組みをして唸っていたわけだけど……ピンと来たのか、しんちゃんが右手を挙げて主張をしてきたことで、周囲の視線が自然と彼に集まっていく。
その光景に思わず「いや~ん」と体をくねらせたしんちゃんだったが……周囲が真面目な空気に包まれていることに小さく冷や汗を垂らしながら、ごまかすように一つ咳払いをするのだった。
「んとねー、オラだったらー……風間君とかがテレビに出てたら、きっと探しに行くと思うんだゾ」
「……!なるほど、私の場合だとアキトさんとか艦長とか……ともかく、
「ルリちゃんも気付いたみたいだから、答えを言うけど……同じ作品出身のキャラがいたら、
「あー、そっかそういえば!僕らって大体一作品に一人しか来てないんだった!」
「……なるほど」
そんな彼が述べた言葉に、ルリちゃんがなにかに気付いたように視線をこちらに向けてくる。
なので、ここで答え合わせ。正解は、『逆憑依』の条件の一つ──一つのスレから来訪するのは一人のみ、という原則により、同じ作品出身の人物を発見したのなら、とりあえずは会話してみたいと思うのが当たり前、というとてもシンプルな話だった。
先の四人は、同作出身者が既にいるため、この辺りの感情の機微を少しわかりにくくなっていた、というわけである。
まぁ、もし仮に未だ会ったことのない同僚達が突然現れたら、彼ら彼女らも『会いたい』『会話してみたい』と思うだろう、というのもまた想像だに難くないわけだが。
話を戻して、トキさんに関してだが。
少なくともこのなりきり郷において、彼と出身を同じくする人物というのは聞いたことがない。
無論、医療系キャラとして、人脈自体はきちんと持ち合わせているだろうが……彼がなりきりとして孤独な身の上になっている、というのはほぼ間違いないだろう。
そんな状況下で、テレビに映るサウザーさんを目にしたとすれば、どうなるか。
「……なるほど、ちょっと会話してみたい、くらいのことは普通に考えてもおかしくないというわけか」
「そーいうこと。だから、仮に向こうの目に止まりさえすれば、特に変な状況になっていない限りは自動的に出会いが確約されるってわけ」
「なるほどな。……む?いや待て、変な状況とはなんだ?」
恐らく、積もる話でもあるとばかりに会いに来ようとするだろう。一種の郷愁みたいなものである。
なので、とりあえずはトキさんにサウザーさんを見付けさせる、というのが第一目標達成の近道、ということになるわけなのだが……実は、もう一つだけ問題があったりする。
「……トキさんが
「あー……」
その問題──相手がトキはトキでもトキ違いである可能性について触れたことで、サウザーさんは思わず天を仰いでしまうのだった。……是非もないね!