なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なるほどな、それは盲点であったわ……」
「ここにいる面々は、割りと純正よりの人ばかりだけど、だからといって相手までそうだとは限らない……普通に【継ぎ接ぎ】だとか【複合憑依】だってパターンもあるってことか」
「そーいうこと。……私としては、けものフレンズ辺りが怪しいんじゃないかなーって思ってるんだよね」
「確かに。二次創作などでも、頻繁に採用されている印象のあるお方ですね……」
思わずお通夜みたいな空気になりながら、問題点を挙げていく私たち。
現状、これから飛び出してくる相手として、一番可能性が高いのは『けものフレンズ』のトキということになるだろう。*1
彼女本人は、トキとは似ても似つかない華奢な美少女だが……二次創作などでは、名前繋がりで華麗な拳法を使いこなす人物……動物?として描写されていることも少なくない。*2
ブラックジャック先生に
そのため、実際に『トキ』として彼が紹介していた相手と遭遇した結果、サウザーさんが『違う、違う違う!』となる可能性は、少なからずどころかかなりの確率で存在している、といえるわけなのであった。
「……いや、別に見た目がどうであろうと、中身が俺の知るトキであるのならば、なにも問題ないのでは……?」
「なんか哲学じみた話になってきた件」
なお当のサウザーさんはというと、中身がちゃんと『北斗の拳のトキ』であるのならば、見た目については些細なこと……みたいなことを言い始めてしまう始末。……いや、いいんですかそれで。
まぁ、あくまで彼が求めているのは、別に同僚との楽しい談話などではなく、
で、あるならば。求めている助言が入手できるのなら、ちょっとやそっとの容姿の変化に関しては気にするだけ無駄……みたいな考え方は、このなりきり郷においては決して間違った選択だとは言えないだろう。
代わりに、どいつもこいつも軽々と【継ぎ接ぎ】しやがって、プリテンダーかなんかかお前ら!……みたいなツッコミは、どこまでいっても絶えることはないのだろうが。*3
「よーし、サウザーさんの決意がそこまで固いのであれば、もはや私から言うことはなにもない!存分に木人を殴り倒してきたまえ!」
「うむ、任され……いや待て、ホントにヤらなきゃダメ?」
「……ここで足踏みすんなし!」
ともかく。
彼がそこまで言うのであれば、こちらとしても後顧の憂いなく送り出せるというもの。
なので、とりあえずはこのあとの薪割り大会で活躍して来なさい、とその背を押すことになったのだが……ここに来て微妙に尻込みなどし始めたため、仕方なしにその背をせっつく*4ことになるのであった。……なんとも締まらない話である。
「で、そうして僕達は夜までに行われる演目、その全てに参加し続けたというわけなんだけど……」
「ものの見事になんの成果もなし。……ここまでくると、いっそ笑えて来るというものだよ」
「解せぬ……」
「お、『ポケモン元』~」
「それを言うなら『本家本元』ね、しんちゃん」
「お~、そうそうそれそれぇ~ん。侑子お姉さん物知りぃ~」
まぁどれだけ張り切っても、結果が伴わなければ意味がないんですけどね、初見さん。*5
時に参加メンバーが増えたり減ったりしたものの、原則として出ずっぱりの必要がある……ということで、昼から晩まで職務を全うしたサウザーさんが、現在ボロ雑巾状態で地面に転がっているわけなのだけれど。
そこまでやってもなお、トキさんからのアプローチの気配は一切ない。
ここまで無反応だと、もしかしたら【継ぎ接ぎ】や【複合憑依】などではなく、同名の別キャラのことを先生は例に挙げていたのかも……みたいな気分も沸いてきてしまう。
例えば、さっきの予想と同じく『けものフレンズ』のトキを挙げていたとして、【継ぎ接ぎ】でもなんでもない純正(?)のトキちゃんであった場合、いくらサウザーさんが頑張ったとしても、彼女の琴線に触れることはない……ということになる。
いやまぁ、原作の彼女に医療系の要素が全くない以上、彼処で挙げる例としてはおかしなことになるので、実際にはなにかしら混ざっている、ということにはなるのだろうけども。
……とはいえ、トキちゃん自体は色々混ざりやすい要素が点在しているため、なにがおきてもおかしくないというのも間違いではない。
キャラクターの特徴として『音痴』があるので、エリちゃん成分が混じってエリザベートシリーズとかになっている、なんて可能性もなくはないわけだし。
「エリザシリーズ……完成していたの」*6
「気軽に地獄を顕現させようとするでないわ……」
「あ、起きてきた」
ハロウィンだし、なくもないよなぁ……なんて風に戦々恐々としている私に対し、痛む体に鞭打って立ち上がったサウザーさんが弱々しいツッコミを投げてくる。
……流石にぶっ通し八時間の祭り参加は、色々堪えたようだ。それでいて結果が伴わないともなれば、愚痴の一つや二つ沸いても仕方ない、ということなのだろう。
「まぁ、エリザシリーズは適当言ったとしても……ここまでなんの反応もないと、想定される『トキ』がなにか違う、みたいなことを想定しなきゃいけないってのも間違いじゃないでしょ?」
「まぁ、それはそうだな。……綺麗なアミバという線もあるしな、
「あー……」
ともあれ、丸一日潰してなんの成果も得られませんでした、というのが今の状況なのだから、なにかしらの対案を考えなければいけないというのは確かな話。
その取っ掛かりとして、『トキがトキではない』可能性というのは、結構大きなウェイトを占めると言えるだろう。
そう、今サウザーさんが言ったように、相手がトキではなくその偽物──アミバの方である、というのは真っ先に思い付いて然るべきパターンである。
アミバとは、北斗の拳のキャラクターの一人であり、トキにそっくりな偽物である。
その性格は卑劣にして非道、元々ケンシロウの兄弟は全て敵、という予定だったのを撤回した結果生まれたキャラクターであるため、実力自体は割りと高い……が、それでも本物には及ばない、いわゆる三下系のキャラクターという設定がなされている。
なお、変なところで人気というか知名度というかがあり、その縁なのか『イチゴ味』ではトキの後継者として認められる、というなんとも救われる結末まで与えられているキャラだったりもする。
……問題は、その『イチゴ味』での彼。
基本的にこの作品での彼は寡黙であり、言葉を発することはほとんどない。
そして先述したように、原作のような非道・卑劣さは鳴りを潜め、トキの後継者として認められるほどの技の冴えを持っており──つまり、一見しただけでは彼がアミバなのかどうか、というのは確証が得られないのだ。
一応、アミバは髪が黒く、トキは髪が白いという違いはあるものの……それは逆を言えば、髪色以外の判別に関してはそのキャラクター性に頼る必要性がある、ということでもある。
髪が白いアミバが居たとして、必要以上に物を言わなかったとしたら、もはやそれがトキなのか否か、真実を知ることは不可能に近い。
なにせ、声も背丈も見た目も同じなのである。
そこまで似ているとなると、もはや自己申告を信じる他ないとしか言い様がない。
そういうわけで、もしブラックジャック先生が見たのが『綺麗なアミバ』であるのならば、間違えてしまっても彼を責められない、ということになるのだ。
「……ん、いや。それはおかしいんじゃないか?だって綺麗なアミバってのは、サウザーさんと同じ原作──それも原作とスピンオフみたいにずれていない、完全に同じところ出身ってことになるんだろう?」
「……確かに、同郷の相手とは一先ず話してみたくなるもの……という前提に間違いがないのでしたら、例え綺麗なアミバさんだとしても、接触してこないというのはおかしな話になります」
「……むぅ、ということはやはり、最初の予想が正解ということか?」
「あー、医者なトキちゃん?……となると、方向性的には桃香さんとかに近いタイプってことかな……?」
だが、その考えにはコナン君が異を唱えてくる。
ここまでの前提である『同作出身者とは一度話したくなる』がある以上、例え相手がトキ本人ではなくても──いや寧ろ、サウザーさんと同じ
この欲求は『逆憑依』──なりきりである以上大なり小なり必ず抱くものであるため、それが起こらないということはまずあり得ない。
例え個スレで鍛えた猛者といえど、同じ作品を愛したモノとして話くらいはしてみたくなる、というのが普通なのだ。なので、そこに関しては考慮する必要は(ほとんど)ない。
そうなると、件の
その場合、【継ぎ接ぎ】で成立するとなるとやはり名前繋がりで『北斗の拳のトキ』の方が優先度が高いはずなので、他の医者要素が【継ぎ接ぎ】で混じる、ということはほとんどあり得ないだろう。
つまり、桃香さんのように『設定段階で別の要素が組み込まれている』と考えるのが自然な話だろう。
「……つまり、俺の行動は全くの無駄だったと?」
「断言はできないけれど……まぁ、はい」
「──いや、断言するのはまだ早いぞ」
「!?」
結論を話し終えた結果、疲労からか膝を付くサウザーさん。
無理もない、何度も言うが今の彼は数々の難行を越えた身。結局優勝は一度もできなかったけど、その身に蓄積された負荷は恐らく誰よりも多い。
……つまりは裏優勝というわけだが(?)、ゆえに今の彼を情けないと詰ることはできまい。
だが、私たちの間を駆け抜けたその声は、今の彼の姿を──聖帝の情けない姿を、責めるようにその耳朶を叩く。
その声が、今の今まで求め続けた男の声であることに気付き、皆が声の主の方へと視線を向け。
「──すまない、遅くなったと謝罪させて貰おう」
「ムキムキのトキちゃんッ!!?」
「……む?」
そこに佇む、