なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「mu○enでよく見る光景だこれー!?」
「ああ、カラー弄ってキャラの見た目を別キャラみたいにするって奴だね。最近だとメルブラとかで、一時期カレー先輩をマシュちゃんカラーにする……みたいなのが流行ったとか聞いたけど」*1
「そのあと実際にマシュちゃんが実装されることになって、色々騒然としたりしてたわねー」
「代わりにアルクさんがFGOで実装されたこともあって、巷では『交換留学』なんて風に呼ばれたりもしていましたね……」*2
「おーい君たち、現実逃避はそのくらいにしておきたまえ」
目の前に現れた巨漢……
そりゃそうだ。だってこれ、見た目を簡潔に説明するのであれば『けものフレンズ』のトキちゃんの格好をした、『北斗の拳』のトキなんだもの。
……ご丁寧に揉み上げ部分の色が違ったり、赤系のタイツを履いたりしている辺り、見間違えようもない。ついでに視覚的ダメージも凄い()。
五条さんは格闘ゲームでのカラバリを例として挙げていたけれど……どっちかというとこれはMMDで見たことがある、という風に例えた方がいいかもしれない。……なんで参照元が実在してるんです?(困惑)*3
……ともかく。
今この場に現れた彼……彼女?が、こちらの探していたトキであるらしい、というのはさっきの台詞から察することができる。
と、なれば。この場はこの方を探し求めていらっしゃったサウザーさんに、あらゆる全ての権利を譲渡して、私たちは遠巻きに見守っているのが最善なのでは?それがベストなのでは?
「おいバカふざけるなっ、俺をこんな地獄に放り出すつもりかっ!!?」
「おおっ、サウザーおじさん、小声で叫ぶとか器用だゾ」
「しーっ!しーっ!!」
「……?そもそも、なんでみんなはそんなにおろおろしてるの?トキおじさん、単に仮装してるだけだゾ」
「…………はい?」
「……おっと、これはすまない。私の格好が、皆に無用の混乱をもたらしてしまったようだ。着替えてくるので、少し待っていて貰えるだろうか?」
「え?は、はい……?」
「すまない、すぐ戻る」
「え、ええー……?」
そんなこちらの言葉に過剰反応したサウザーさんが、小声で叫ぶという何気に器用なことをしながら抗議をしてくる。
その横ではしんちゃんが、そんな彼の行動に感心したように頷いていたわけなのだが、……そのあとに続く言葉に、私たちは大いに首を捻ることに。
ええと、仮装?
困惑と共に思わず視線をトキさん……ちゃん?に向ければ、彼は一瞬だけ不思議そうに首を傾げたあと、なにかに気が付いたようにハッとした顔を見せ、こちらに『着替えてくるから待っていて欲しい』と告げてくる。
一方的なその宣言にこちらが生返事をすれば、彼はすぐ戻ると言い置いて、何処かへと小走りに去ってしまうのだった。
……その物言い的に、彼はトキちゃんinトキさんではない、ということなのだろうか?つまり、あの格好にはなにかしらの意味がある、と?
思わず周囲と顔を見合わせるも、本人が去ってしまった以上答えは出ず。
仕方なしに、灯りも消えた舞台の傍らで、ボーッと彼の帰りを待つことになる私たちなのであった。
「すまない、遅くなった」
「あ、いえ。全然大丈夫です、はい」
結局、トキさんは十分もしないうちに戻ってきた。
その格好は、こちらが見慣れた……というと変な感じだが、ともかく『北斗の拳』のトキとして、皆が思い浮かべるであろう白装束に変化していたのである。
色違いの揉み上げに関してはウィッグかなにかだったようで、現在は普通の白い髪に戻っていた。
……まぁ要するに普通のトキ、というわけなのだが……ええと、ということは?
「挨拶が遅れたようだ。私はトキ、北斗真拳の伝承者候補であり、殺人拳の宿命を持つそれを、医学のために役立てることを志した男だ」
「あ、はい。ご丁寧にありがとうございます。……こちらの紹介は必要ですか?」
「是非、お願いしたい」
腰を折ってこちらに深々と礼をする彼の姿は、なるほど『北斗の拳』という一種の末法の世界において、一番の人格者と称されるのも頷けるほどの風格を漂わせている。
そのあまりにもまともな反応のせいで、こちらも思わず敬語になってしまったわけなのだが……いやでも、さっきの
そんな風に困惑しながら、挨拶をされた以上は返さねば、といった感じでこちらも自己紹介を返していく。
都合五分ほど掛けてこちらの紹介を終えると、彼は小さく頷きながら「なるほど」と小さく声を溢し。
「
「……ええと、つかぬことをお伺いしますが……噂、とは?」
「幼子のような見た目ながら、多くを繋ぐに足る器を持つ好人物……そう伺っている」
「い、いやー、それほどでもー……?」
「お、キーアお姉さんが照れてるゾ」
「う、うるさいやいっ」
そうして彼から告げられた言葉に、思わず照れてしまう私であった。
作中屈指の好人物からそう言われてしまえば、照れるのも仕方なしというか。……だからその、からかわないで頂戴マジで!
自分の台詞を使われたこともあってか、やけに絡んでくるしんちゃんに(照れ隠しで)ぐりぐり攻撃を返していると。
「それと、とんだトラブルメーカーだから、関わるつもりならば気を付けろ……とも言い含められていたな」
「……よーし、今度ブラックジャック先生に会うことがあったら、あることないこと広めちゃうぞー」
「あ、その時はBBちゃんにお任せを☆地球の裏側にだって、一瞬で広めて見せますので☆」
「……はっ!い、いえ!流石にそういう影響が広範囲になるのものは如何なものかと!」
(……一瞬迷ってたな、彼女)
一瞬にして手のひらを返されたため、ブラックジャック先生にはしっかりお返ししておこう……と決心することになるのだった。
具体的にはロリコンですって広めてや……え?それは半ば事実みたいなものだから意味がない?*4
まぁ冗談はそのくらいにしておくとして。
こうして話している分には、特に変なところもない普通のトキ、って感じの人に見えるわけなのだけれど……。
「……ええと、つかぬことをお伺いするのですが」
「なにかな?私に答えられることであれば、なんでも答えよう」
「じゃあ、私のことどれくらい
そうなってくると、余計にさっきの服装が引っ掛かってくる。
見た目こそ筋骨隆々のマッチョであったが、確かにあの服装は『けものフレンズ』のトキのもの。
つまりは女装ということであり、なおかつ特に恥ずかしがる様子もなかった辺り、趣味とかだったりするとちょっと反応に困ることになるわけなのだが……。
「ああ、先ほどの格好か。あれは治療のために必要だったので、知り合いに用立てて貰ったモノなのだ」
「はい?ち、治療?なんの?」
そうして恐る恐る発した問い掛けに、返ってきたのは予想外の言葉。
……え、治療に必要だった?……あの服装が?どういうこっちゃ?
思わず耳を疑う私たちに、トキさんは特に憤慨するでもなくその理由とやらを教えてくれる。で、その理由と言うのが──、
「……フレンズの治療?」
「ああ。どうにも最近こちらにやって来た子のようだったのだが……なにか恐ろしい目にでもあったのか、警戒心が高く、近付くことすらままならなかったのだ」
怪我をしていた、とあるフレンズの治療。そのために、トキちゃんの姿に扮していたと言うのだ。
なんでもそのフレンズは酷い怪我を負っていたため、早急に治療をする必要があったのだが……ここに来るまでの間に余程恐ろしい目にでもあったのか、とにかく警戒心が強すぎて近付けなかったのだという。
それは、迂闊に近付けばその近付いた相手が怪我を──それも下手をすれば、重症レベルの大怪我を負いかねないような剣幕であり。それゆえ、対応に苦慮していたのだそうだ。
そもそもの話、フレンズとは動物が人の姿を得た存在*6であり、アニメ一作目の作風に似合わず、実際はわりと脅威的な戦闘力をも持ち合わせた存在でもある。
……作中でもセルリアンと戦ってるからそれはわかる?ならまぁ、普通の人が近付いたら危ない……というのもなんとなくわかるだろう。興奮しているのだから尚更である。
医療関係者というのは、一部のキャラを除いて荒事は専門外、というキャラも少なくない。……ロー君やえーりんなどの存在から勘違いしやすいが、本来戦闘できないキャラの方が多い職業なのだ。*7
そのため、その場にいた他の医療者達は彼女に近付くこともままならず──結果、トキさんが治療を担当しようと名乗り出たのだそうだ。
北斗の拳のトキと言えば、その実力は広く知られている。
ゆえに、ちょっと興奮している患者がいたとしても、抑えることは難しくない……と、周囲を納得させることも簡単であった。
問題は、それでもなお治療には危険が伴うものだった、ということにある。
確かに、幾ら相手がフレンズだとはいえ、秘孔使いであるトキさん相手では分が悪いのは確かな話。
……が、治療を目的とするのであれば──暴れ回る彼女を抑える必要がある、というのは自明の理。そして、秘孔を押して大人しくさせようにも、そもそもその前段階の抵抗の時点で、勢い余って怪我を悪化させてしまう可能性を思えば、余り手荒なことはできないという風にもいえる。
つまり、手負いの虎のようなモノである彼女に対して、抑える役も治療役も全部トキさん、というのは幾らなんでも無茶があったのだ。
いざという時に自身の安全を確保することができる、という意味で彼は治療側からは外せない。かといって、彼と同じレベルの武芸者は、少なくともその場付近にはいない。
そうして困りに困った結果、思い付いた対策と言うのが──、
「一時的な【継ぎ接ぎ】の使用、というわけだ。幸いにして、私の名前はトキであり、彼女達フレンズの仲間にもトキはいる。ずっと偽り続けるのは無理だとしても、治療の間相手を安心させる程度には、【継ぎ接ぎ】の効力も持つだろう……というお墨付きも得てな。結果、私があの姿をして彼女の治療をする、ということになったわけだ」
「……色々とツッコミどころはあるんですけど、とりあえず一つだけ。そのお墨付きをくれた相手、っていうのは……」
「無論、君達も知っている人物──ドクター・アンバーだ」
「琥珀さんンンンンッ!!」
仲間がやって来たと誤認させ、治療の間だけでも安心させる……という、思いの外真面目な理由からくる女装だったのだった。
……理由はとても真面目でシリアスな感じなのに、出力されたものが理解を拒むんですけど!?