なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あーうん、さっきの服装が必要に駆られてのものだった、ということはよーくわかりました……」
「すまない、私も彼女を救うことを優先していたもので、途中から自身のしている格好の奇抜さについて、いつの間にか失念してしまっていたのだ……」
見た目はトンチキ以外の何物でもないというのに、その格好をする理由に関しては、とってもシリアス……という、なりきり郷では稀によく見る感じの現象によって引き起こされた珍事だった、ということをトキさんの説明から理解してしまった私たち。
まぁ『逆憑依』関連の研究の最先端を突っ走る人物であり、かつ押しも押されぬ第一人者でもある我らが琥珀さんがお墨付きを与えたというのだから、実際にそれ以外の手段は考えられなかったのだろうし、それで上手く行ったというのも、彼の言葉からして真実なのだろう。
そうなってくると、こちらとしてもさっきの彼の格好について、咎めたり困惑したりするのはスゴクシツレイ……という思考にたどり着いてしまう。
そういう事情も手伝い、ここまでの話で抱いた感想やらなにやらについては、一先ず脇に置き。そのまま別の考察に話を移そう、という雰囲気になっていくのだった。
「……え、えーと。もしかして、ここに来るまでの時間がこんなに遅くなってしまった理由、っていうのは……」
「お察しの通り、というものだ。彼女の治療と病室への搬送。そしてその他の細々とした手続きなど、あの場で必要な処置を全て片付ける、ということを最優先した結果──こうして、周囲が暗闇に包まれてしまうほどの時間になってしまった……ということになる」
「やっぱり……」
で、その別の考察というのが、彼がこんなに遅い時間になってからここにやって来た理由。
同じフレンズであるという風に擬態をすることで、ようやく彼女の興奮を静め、簡易的な治療を施すことに成功したわけだが……それが出先・かつろくな装備もない状態で出くわした事態であるというのであれば、その場ですぐにできる治療というのは、どうしても応急処置的なモノに限られてしまう。
ゆえに、話を聞く限り身元不詳・住所不定である彼女の本格治療を、早急かつ迅速に行わせるために、付近の医療施設に彼女を運び込み、かつ相手方の医師達に納得のいく説明を行う……という課程が必要となってくる。
無論、その
それらを加味して考えると──例えば最初の大食い大会の時点で、トキさんがテレビに映る
病人であるフレンズの少女のことも、放り出して知らんぷりすることができない以上、どうしても『同僚に会いに行く』という行為は、結果として優先度が最低レベルになってしまう。……まぁ、そこで選択肢から完全に消える、ということにならない辺りに、なりきりというものの悲哀が見え隠れするわけだが……一先ずその辺りに関しては割愛。
ともあれ、自身の服装がおかしなことになっている……というすらも忘れてしまうほどに集中していたこと、それからこの場に突然現れたということも合わせて──彼がほんの少し前まで、病院にて自身のするべき戦いを続けていた……ということは、容易に察せられてしまうレベルの事実だった、と推測できるわけである。
……うん。つまりはアレだ、こう……最初彼の女装姿を見て、ちょっと引いてしまったことを思わず後悔してしまうような、そんな真っ当かつ正当な理由によって引き起こされた珍事だった……ということになってしまうわけで。
「……いやホント、なんかもう色々とスミマセン……」
「?……いや、何故私は突然、皆から謝られているのだろうか……?」
結果、その事実に思い至った過半数以上の人間達が、あまりの申し訳なさから深々と頭を下げる……という、端から見ると『救世主・トキ』に頭を垂れる信者達、みたいか光景が繰り広げられる運びとなってしまうのだった。*1
……いやホント、人を見た目で判断するのは、止めようね!*2
「……で?事実を知っていたたまれなくなった結果、少しばかりギクシャクとしながらもうちまでやって来た……と?」
「まぁその、はい。……一応、この時間帯でもまだ開いてる店ってどこだろうなー……みたいなことが脳裏を過った、ていうのもなくはないんだけど」
「……いやまぁ、こうしてうちにお金を落としてくれる、っていうのは大いに大歓迎なわけだけども。……そこでうちしか選択肢が出てこない辺り、もう少し馴染みの店ってもののレパートリーを増やす、という努力もした方がいいんじゃないのかい君達?」
「……いやごめんて。面倒事が起きる度に利用してる、って言いたいのはよく分かるから、マジごめんて」
所変わって、深夜のラットハウス。
そろそろ夜食を取るような時間になってしまいそう……ということもあり、とりあえず場所を移そうと提案した私たち。
その提案に快く了承を示してくれたトキさんを引き連れて、さて何処で話の続きをしようか……と思案することになったわけなのだけれど。
結局、こういう時に向かう場所なんて決まっているようなもの……みたいな意識がみんなの中にあったのか、満場一致に近い形で、ラットハウスへと移動することに決まったのであった。
まぁ、出迎えてくれたライネスからはご覧の通り、うちはなんでも屋とか相談所とかじゃないんだぞ?……みたいな視線を向けられることになったのだが。
ええと、夜食とかバンバン頼むから許して?
ラットハウスに入るのは初めて、なんて人も引き込んだ辺り、宣伝としてはこれ以上ないってのも間違いじゃないんだし、ね?ね?
そんな風に彼女の機嫌取りをしながら、ふと見渡した店内は──これまた見事に、ハロウィン仕様へと変化している。
単純な料理の美味しさだけでは、この祭りを勝ちぬくことはできない……ということで、あれこれと案を出したというのは以前話した通り。
つまり、現在店内がハロウィン一色になっているのは、そうして捻り出した案の一つによるもの、ということになるわけである。
「まさか、ハロウィンに起きる様々なトラブルを逆手に取って、それをアトラクション扱いにして客を呼び込もう……なんて案が出てくるとはね……」
「簡単に言うと、使えるものはなんでも使う、それが例えエリザであろうとも……ってやつだね」
「……凄まじいまでの敗北フラグ、というやつではないのかな、それは」
「んー、利用したつもりでいたら寧ろ利用されていた、みたいなやつ?もしくは、そもそもエリちゃん自体が死亡フラグだから、迂闊に触れた時点で大間違い……みたいなやつ?」
「……どちらにせよ、学士殿が憤死することだけは間違いなさそうだな」*3
ハロウィンが一種の厄物となってしまっているのは、皆さんご存じの通り。
これがもしチェンソーマン系の作品だったり、はたまた呪術廻戦系の作品だったりすれば、間髪入れずにハロウィンの悪魔だのハロウィンの特級呪霊だのが発生してもおかしくない、そんな感じの無辜っぷりなわけなのだが……とりあえず、五条さんがそこら辺に言及しない辺り、今のところはその兆候はないのだろう、多分。
で、あるならば。
ハロウィンが引き起こす事態というのは、もはや自然エネルギー───放っておいても沸いてくる(場合によっては)無害なモノとカウントしても、なんら問題はない。
つまり、それを前提として店を運営することも、なんらおかしいことではないのである。
……え?お前さんハロウィンに頭を侵されていやしないかって?ははは、そんなことナイナイ。
「ハロウィン最高!ハロウィン最高!お前もハロウィン最高と叫びなさい!」
「せんぱい、台詞は悪魔寄りなのに、躍りにはマフティー性が溢れてしまっていますが大丈夫なのでしょうか!?」
「というか、収拾付くのかいこれ?」
鳴らない言葉をもう一度描きそうなダンスをびしばし決める私は、恐らくきっと多分ハロウィンとはなんの関係もないのです。ないったらないのです。
……まぁ、冗談は置いといて。
ハロウィンになれば自然と聖杯が発生する、みたいな
例え今の彼女が軟禁状態に近いのだとしても、それで影響が完全にシャットアウトできるなら、そもそもみんなハロウィンを恐ろしいものなんて風に思うはずもなく。
ゆえに、多分なんか起こるだろう、と期待するのはなにも間違いではないのである、
「つまりはそう、勝ったぞライネス、この
「……いやまぁ、先に敗北フラグを立てまくることで、逆にフラグ成立条件を折ろうとしているのは分かるんだけどさ?……それ、私の出自的に洒落にならなくなりそうじゃないかい……?」
「…………は、ハロウィンだから多分、人死には出ないはずだから…………」
「最近のハロウィン、普通にバッドエンド分岐とかあったみたいだけど?」
「……………」
飾り付けもハロウィン、気分もハロウィン。
これだけウェルカムハロウィンしておけば、逆に悪いフラグやらなにやらは潰れてしまうというのがこの場所の特徴。
つまりは変なことは回避でき、かつ美味しいところだけ持っていけるはず……!!
みたいな、獲らぬ狸の皮算用的ハロウィン運用だったわけなのだが、ライネスの発した言葉に思わず口ごもる羽目になる私である。
……あー、四次だとそういえばエルメロイって死亡フラグかー。
調子にのり過ぎたかもなー?やばいかもなー?いやでも、ハロウィンならば死者はきっと恐らくでないはず……。
という希望も、最近のイベント傾向から反対意見が挙がり。……早速暗雲の立ち込めてきたハロウィン運用に、ちょっと後で作戦会議しなおした方がいいかも、などと冷や汗を掻くこととなる私なのでありました。