なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・そして祭りはまだまだ続く

 結局、あのあと遅くまで飲んで騒いでいた私たち。

 途中でサウザーさんが、『どこかタイミングの良い時にでも、お前にきらりの拳法についての見解を任せたい』……とトキさんに頼み込むという、当初の目的を果たす姿があったりもしたわけだが……それはまた別の話。

 

 ともあれ、宴会後それまで騒いでいたのが嘘のように、速やかに現地解散した私たちは、その足で就寝前の身支度を終わらせ、次の日に備えて床に付いたわけなのだけれど……。

 

 

「はぁーい!グッモーニンキーアちゃん!!」<ババ

「……あー、はい、おはよーございます……」

「なによなによ、どうしたのよもー!なんかテンション低いわよー!?」

「寧ろ、なんでゆかりんはこんな朝早いにも関わらず、そんなにハイテンションなんですかい……?」

「そりゃもー、今日は侑子がねー、エリちゃんの面倒を見るの変わってくれる……って約束してくれたんですものー!フリーなのよフリー!今日の私は一日フリー!ひゃっほい束の間の休息ぅー!」

「あー……こっち(現実)に干渉する手段をゲットしたから、侑子の方もわりと張り切ってたりする……みたいな感じ……?」

「多分ねー!まぁ、広範囲を動き回るのはまだ様子見した方がいい……みたいな話を琥珀ちゃんからされたりもしてたみたいだから、今日のところは最上階でゆっくりしてる、って風にも言ってたけどねー!」

「なるー」

 

 

 人の寝ている寝室へ、突然突撃してきたゆかりんによって叩き起こされた私は、寝ぼけ眼で目蓋を擦っていたのだった。

 

 スキマから上半身をひょっこりと出し、こちらを眺めているゆかりんに対し、私が思うことはというと……なんでこのロリバ……幼女はこんな朝っぱらから元気なんだろうか、ということ。

 あれか?幼女と老女という、共に朝に強い属性が混ざることによって、朝に対しての耐性が乗算されてる……とか、そういうやつなん?*1

 ……そんな感じの胡乱な考えが浮かんでは消えている辺り、やはり頭が働いていない私である。だから朝は苦手だって言って以下省略。

 

 なお、いつもならばこうして騒いでいる人がいると、マシュからの『お静かに!』的なお叱りが飛んでくるはずなのだけれど……今日のマシュは、朝からラットハウスでのお仕事中。

 十月中の基本となる動きの最終確認も兼ねているとかで、朝から張り切って家を出ていく彼女の背に手を振る私、なんて光景が繰り広げられたりもしていたのであった*2。……無論、その時の私は半分寝ていましたが、なにか?

 

 なのでまぁ、今の私はそうして二度寝していた最中、突然大声で起こされたというわけでして。

 ……余計に脳が動いていない、覚醒しきれていないということは、なんとなく察して貰えるのではないだろうか?

 っていうか三度寝したいんだけど、ダメ?あくびが凄いんだけどマジで。

 

 

「ダーメーよー!今日は付き合ってくれる、って約束でしょー!?三度寝なんて許さないわよー!!」

(・ワ・)「()()()()()あかつきをおぼえず、ですなー」

「春でも秋でも眠いものは眠い……天高く馬肥ゆる秋……肥ゆるのにはよく食べてよく寝るのが確実……ぐぅ」

「だーかーらー!ねーるーなー!」

「ああああやめて前後に揺らさないでぇぇぇ……」

「ゆるされよ ゆるされよ エリザの呪いをゆるされよ」

「あああやっぱりぃぃいなんかノリがエリちゃんっぽいって思ってたぁぁぁあぁ」

 

 

 今日は休みを満喫するのー!とばかりにこちらを前後に揺らしてくるゆかりんに対して、世のお父さん達は休みの度にこういう目に合わされてるのかなぁ、なんて共感を抱く私なのでありました。ぐぅ。

 

 ……なお、なんかテンションがエリちゃんに侵食されてない?と遠回しに伝えたことで、さっきまでの様子が嘘みたいに大人しくなったので、ちょっと悪いことしたかなー、みたいな気分にもなるのでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

「……よもや能力まで使ってくるとは思わなんだ」

 

 

 そうぼやく私の脳は現在とても冴え渡り、先ほどまでの眠気はどこへやら。

 

 ……ゆかりんが能力で眠気を飛ばす、などという暴挙を繰り出して来た結果だが、これはこれでなんとも言えない気持ちである。

 なんだろう、体の方はまだ休みたいって言ってるのに、脳の方はもう大丈夫だよって言ってるみたいな?いや、逆かもしれん……。

 

 

「……おかしいわね、眠気そのものを飛ばしたはずなんだけど……?」

「あーうん、その辺りは私の体が変ってだけだから」

「……?ええと、やっぱりおかしなことになってるみたいな……」

「あー、ごめんごめん。言い方が悪かったや。私の設定的に、他人からなにか補助とか攻撃とか受けると()()()()()効果が変になる、ってこと」

「ああなるほど。……なるほど?」

 

 

 首を捻るゆかりんに、暫くほっとけば()るから気にせんといて、と返し。改めて、玄関前から辺りを見回す私。

 

 二日目ということで、流石に初日程の熱はないものの──住宅街であるこの位置からでも判るくらいには、人の往来もいつもより激しくなっている。

 まぁ、そもそも一つの都市くらいには人間が居る、とも聞いていたので、それらが祭りを期に動き出せばこうもなる、ということなのだろうが……。

 

 

「……それにしても、凄い人だかりねぇ」

「今年はいつものお偉い様方に加えて、互助会の人達も加わってるしねー。あと、最優秀賞に輝いたところへの豪華商品の話が広まった、っていうのも大きいのかも」

「豪華商品?」

 

 

 それにしたって多くない?という気持ちから言葉を溢せば、ゆかりんから返ってくるのは豪華商品とやらの話。

 一応、店などで売り上げの競争をする……という話は聞いていたが、それの結果としてなにかしらの景品が出る、という話は聞いていなかったような……?

 

 そうして不思議そうな顔をしていた私を見て、ゆかりんもまた首を傾げていたが。

 

 

「……あ、そういえばそうだったわ。貴女達、昨日はずっと中央ステージで演目に参加し続けていたんだものね、そりゃ知らないわよねー」

「あー、郷内放送の方?」

「そうそう、組織運営委員会からのお知らせの方」

 

 

 なにかに気付いたように手を打ったあと、こちらの行動ゆえに情報の伝達がうまく言っていなかったのだ、と悟るのだった。

 

 以前少し触れたと思うのだが……このなりきり郷には、郷の中のみで放送されている独自のテレビチャンネルが存在する。

 で、その内の一つが、今回中央ステージのイベント全てを配信している、私達がトキさんへの連絡のために全力活用したモノというわけだけど……それとは別に、表の世界で言うのなら『N◯K』に相当するようなチャンネルが存在する。

 

 そちらは、平時であれば各所のニュースばかりを放送している、いわゆるお堅い感じのチャンネルなのだが……それは祭り期間中の今も変わらず。

 基本的には、運営からのお知らせなどの『重要だけどエンタメではない』ものを放送し続けているのだ。

 ……つまり、件の『豪華商品』とやらの話は、そちらのチャンネルで告知されたものなのだろう。

 ずっと舞台に齧り付いていた私達が、そのお堅いチャンネルを見る暇などあるわけもないので、そりゃまぁ知らなくても仕方ない……みたいな感じというか。

 

 そのチャンネル──通称運営板で発表された豪華景品の内容に──、

 

 

「『流れ星の指輪(シューティングスター)』が景品の一つに入ってるのかー、なるほどー。……『流れ星の指輪』ぁ!?マジでッ!?」

「今年は初参加だし、上役(うわやく)としては部下達のやる気を煽るのも仕事だろう……みたいなことを言いながら、モモンガさんが提供してくれてねー。一応、本物みたいな無茶苦茶なアイテム、ってわけじゃないみたいだけど、景品としては十二分でしょ?」

「出所がモモンガさんって時点で、単純なファンアイテムとしても最高峰だものね……」

 

 

 モモンガさんが提供したという、『流れ星の指輪』があったと言うのだから、思わず驚いてしまう私であった。

 

 この指輪、本来であれば小型の聖杯、と呼んでも差し支えない超級アイテムである。

 オーバーロードにおける超位魔法『星に願いを』*3を三回まで発動することができる、という超レアアイテムであるこの指輪は、本来──即ちゲーム世界では、二百以上ある選択肢の内から、有用な効果十個を例示し、選択した一つを叶える……という効果を持っていた。

 それが異世界に転移した時に、『使用者の望みを叶える』願望器へと変貌したのである。

 

 まぁ、作中においてはワールドアイテムが起こした事象は解除できなかったり*4など、『なんでも』とは言えない部分もあるようではあったが……それでも本来の『星に願いを』の性質、『発動時に経験値消費を必要とする』『その際追加で経験値を消費することで、効果を強化することができる』の併用で、叶えられる願望の範囲はかなり広くなっているはず。

 

 ……なにが言いたいのかというと、こんなところで景品としてPON(ポンッ)☆と出すようなモノではない、ということ。

 そもそも課金アイテムで、かつガチャの大当たりアイテムだから希少も希少、モモンガさん的にも手放したくないはずのモノのはずなのだ。

 

 というか、である。

 もし仮に、本当に『流れ星の指輪』であるのならば──この祭りは実質聖杯戦争と化し、血で血を洗う大抗争に発展しかねないわけで……。*5

 よもや、その辺りの危険性が判らぬ御仁(ごじん)*6、ということもあるまい。

 

 なので、彼の意図を確かめるために、ゆかりんに視線を向けたわけなのだけれど……。

 次いで彼女の口から出てきたのは、『本物ほどではない』との言葉。

 聞けば、そもそもこの指輪は彼が持ち込んだアイテムではないのだという。

 まぁ、願望器じみたアイテムとか、『逆憑依』の原理的にはスロットを圧迫すること間違いなしの激重アイテムなので、さもありなん。

 

 じゃあどういうアイテムなのかと言えば──所持していると、ちょっと運が良くなる指輪、ということになるらしい。

 先述の『使用者の望みを叶える』の部分がマイルドになった結果、ということらしいのだが……元の性能から考えると、弱体化甚だしいと言わざるを得まい。

 

 とはいえ、だからこそ景品としては丁度よい、ということもあって、モモンガさんはこの指輪の提供を決めたのだとか。

 で、重要なこの指輪の出所なのだけれど……。

 

 

「ああ、それは私が彼に頼まれて投影したものだな」

「なにやってんすかエミヤさん」

 

 

 モモンガさんから話を受け、実際に『星に願いを』を発動して見せて貰い。

 

 創造の理念を鑑定し(どのような意図で)

 基本となる骨子を想定し(何を目指し)

 構成された材質を複製し(何を使い)

 製作に及ぶ技術を模倣し(何を磨き)

 成長に至る経験に共感し(何を想い)

 蓄積された年月を再現し(何を重ねたか)

 

 そして、あらゆる工程を凌駕し尽くし、幻想を結び指輪を()った──凝り性のエミヤさんの仕業であった。*7……なにやってんのこの人!?

 

 

*1
子供と老人は朝に強い、という話。つまり人間の朝に対する耐性は谷なりに変化している……?なお、子供側の『朝が強い』は個人差が大きい為一概には言えないが、老人側の『朝が強い』は基本的な生き物の性質(加齢と共に睡眠の必要量が減る)なので、基本的には共通である

*2
仕事に行く夫の背を見送る妻的な風景

*3
オーバーロードにおける『位階魔法』よりも上、と設定されているカテゴリーの魔法が属する『超位魔法』の一つ。読みは『ウィッシュ(wish)アポン(upon)(a)スター(star)』で、意味はそのまま『星に願いを(掛ける)』。魔法詠唱者として95レベルに到達しなければ覚えられず、かつ覚えられたとしても自身の経験値を消費する必要がある(説明文的に1レベル分の経験値を100%として、10%ごとに選択肢が増え、最終的に10の選択肢が提示される仕組み。200以上の選択肢から選ぶ形になる為、まともに扱うのであれば最低でも50%くらいは経験値を消費する必要があるだろう)。指輪による効果の場合、発動時の経験値100%分を肩代わりしてくれる上、魔法詠唱者でなくとも使えるし、更にはランダム効果も出来うる限り有用なモノを優先して例示してくれるという優れもの。作中のモモンガは、ボーナスも給料も全部注ぎ込んだ上でようやく入手したとされるが、あくまでガチャなので一発で当てた人も居るらしい

*4
作中において、シャルティアが洗脳された時に『星に願いを』で解除しようとしたことがある。結果はその効果がワールドアイテム『傾城傾国』によるモノであった為、失敗した

*5
エリちゃんが居て、聖杯っぽいものがあるのでハロウィンだな、と言い張ることも可能

*6
他人に対する敬称の一つ。類似のものには『お方』『お人』などがある

*7
上の六行は、『投影六拍』と呼ばれるもの。ルビの方は、『fate/extra』シリーズで加えられたモノを漢字に直したもの

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