なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なに、話は至って単純でね。この祭りに参加するに辺り、我らが首領殿はなにか貢献できることはないか、と悩んでいたのだよ」
なに気軽に指輪の複製なんかしてるんですか?
……みたいな話から、自然とエミヤさんへの事情聴取が始まったわけなのですが。
いや、色々とツッコミどころが多すぎて、なにから聞けば良いものやら?……みたいな感じになっていたこともあり、とりあえず『何故そんなことになったのか?』という、ことの始まりの部分から話を聞いていくことになったのでした。
そうして彼の口から語られたのは……思わず、頭を抱えてしまうような事実だったのです。
「私としても、自身の投影が、今現在どれほどの域にまで到達しているのか?……ということに興味があってね。無論、相手はスケールダウンしたとはいえ、紛れもない願望器……本来であれば、私ごときに手が届くような代物ではないのだが……」
「原理を簡潔に言えば『決められた魔法を発動するだけ』っていう指輪だから、
「その通りだ。無論、いつかは私一人の力で、例え劣化品であろうとも投影してみせたいところだが……今の私は道半ば、自身にできる全力を見極めるという意味でも、良い経験になったよ」
「えー……」
あの指輪──『流れ星の指輪』はつまるところ、『星に願いを』をノーコストで三回発動できる
それを考慮するに辺り、一番難しいのは恐らく指輪に込められた超位魔法の再現だろう。そしてそれは、恐らくエミヤさんでは手の届かない領域にある。
だが、見方を変えればどうだろう?
過程はどうあれ、その指輪を使ったことによって『星に願いを』が発動するのであれば、それは『流れ星の指輪』の劣化品として十分な性能を持っている、と言い換えることもできるのではないだろうか?
要するに、彼がしたことはこうだ。
投影した指輪の中に『星に願いを』を封じることができるようにした・それができるような指輪を投影した、ただそれだけのことなのである。……まさかの中抜き投影!
いや、それでいいんです?……みたいなツッコミも沸いてこなくもないが、無理なものは無理と諦めるのも、成長のためには必要なことである。
寧ろ『魔法を込められる宝石』の投影という、ある意味では別方向の難しさを誇る技術への挑戦ということもあり、彼は『自身が挑む価値のある仕事だ』と、張り切ってしまったのだという。
……そう、張り切ってしまった。
張り切ってしまった結果、成功してしまったのである。
「
「や、やめいやめい!わしをそのような目で見るでないわ!!」
「イヤだって、『宝石の投影』なんて話が持ち上がったとして、そこに食い付く可能性がある人物のうちの一人じゃん、ミラちゃんってば」
「あら、ということは、私の関与も読めてたってことかしら?」
「凛ちゃんは一応別軸の人だし、どうかなーとは思ったんだけど……エミヤさんのすることには興味を持ちそうだし、関わっててもおかしくはないかなーとは思ってたよ。……まぁ、まさかなのはちゃんまで関わってるとは思わなかったけど」
「にゃははは……その、宝石に魔法を込める……って部分が、レイジングハートを再現するのに使えるんじゃないかなー、って思ってしまいまして……」
場所を近くの喫茶店(ラットハウスではない)に移した私達は、そこで更なる下手人達の事情聴取も合わせて開催。
……そう、今回のあれこれに関わっていたのは、エミヤさんだけではなく。
その隣で現在小さくなっているなのはちゃんと、それから万年金欠気味・それ横にいる凛ちゃんの属性じゃない?……みたいなツッコミを入れたくなるミラちゃんもまた、この一件に関わりを持ち合わせていたのだった。
なお、凛ちゃんはニマニマ笑っているものの、どちらかと言えばなのはちゃんとミラちゃんとの橋渡し的な意味合いが強かったようで、区分的には傍観者に割り振られていたり。
……これは、彼女が
まぁともかく、以前の邂逅の時に『どうせだから』と交換していた連絡先から、『宝石の投影についてなにかアドバイスなど貰えないだろうか?』と頼ってくる声あれば、人の良い凛ちゃんとしては手伝わないという選択肢はなかった、というわけである。
「まぁ、本当にアドバイス程度だけどね、私がしたこと。そもそもの話、魔法工学の類いならなのはの方が専門だし、私自身は『宝石魔術使いの遠坂凛』ではないから、宝石魔術関連の話もミラの方が詳しいことになるわけだしね」
「……いや、誤解しておるようじゃから一応突っ込んでおくが、わしも別に宝石魔術使いというわけではないからの?あくまでも魔封爆石の作成に、宝石を用いるというだけの話であって……」
「それこそ、この話においては一番の専門家、ってことでしょ?だってエミヤお兄さんが求めていたのは、『魔法を封じ込められる宝石』──貴方の世界で言うところの精錬石だったんだから」
とはいえ、彼女は同じ姿形をしているとは言えど、『宝石魔術使いの遠坂凛』ではない。
ゆえに、どうしてもできるアドバイスには限りがあり──そういえば友達である高町なのはは、こう言った工学系の魔法を使う類いの魔法少女だったなと思い出し、彼女にも協力を頼んだのだ。
「……そしたらまぁ、なのはの方が私より熱中しちゃってね。結局、あれこれと活用できそうな技術を持っている人のところを訪ねて回って──」
「なるほど、その結果琥珀さんにも話が飛んでいったと」
「そうですけどぉー!!なぁんで私、こんな簀巻きにされてるんですかぁー!?」
「そりゃだって、事件のあるところ琥珀さんの影あり……みたいなところ、少なからずあるわけですし?」
「それ貴方が言いますかー!!?」
で、そこから話は急加速していき──丁度アイテム作りに心血を注ぎ始めていた琥珀さんの耳にも話が入り、結果一大プロジェクトとして密かに進行していた、ということになるのだった。
……また琥珀さんか、と思ったそこの君。
外ならいざ知らず、なりきり郷の中で彼女が全く関係ない事件とか、そっちを探す方が難しくなっている、と覚えておくといいぞ!
移動前にゆかりんに頼んで、琥珀さんを捕まえに行った私の
……え?お前も事件には大概関わってるだろうって?
アーアーキコエナーイ!今回私のせいじゃないからキコエナーイ!!
「まぁ、理由とか経緯とかはわかりました。……で?効果に関しても間違いはないので?」
「何度か皆と実験も繰り返したのでね。概ね間違っていないはずだ」
簀巻きにした琥珀さんを上から吊るしたまま、関わった人物達への事情聴取は続いた。
結局、全てを聞き終えるのには一時間くらい掛かったわけだが……その結果を纏める限り、一応危険性はない……らしい。
らしいと言うのは、一応彼らも実証実験も繰り返してはいるものの──結局は大事にしないようにと、関わる人間を最小限にしていたため。
要するにサンプルデータが少ないので、例外パターンが多いということである。……まぁ、そこを埋めるための琥珀さんというわけでもあるのだが。
「まぁ、はい。色々とデータ自体は持っていますので、仮想空間内で代入した数値で確認とか、結構な回数させて頂きました。ですから、現実で起きる結果とは、そう大きな乖離はないはずです」
「んー、つまり……
「そこは否定できませんね。それこそキーアさんとか、観測できてないデータが多すぎたので実験対象には含めていませんでしたし」
「あれ、そうなんですか?キーアさんって、もう結構な日数をここで過ごされているはずですよね?」
琥珀さんの手に掛かれば、実際に検証しなくとも、持ち合わせているデータを使えば、ある程度どういう結果が出るのかとかは計算できてしまう。
つまり、問題を引き起こすのも彼女だが、上手く解決できるのも彼女ということ。
ゆえに、あの指輪の安全性はある程度担保されている、と言い換えてしまっても構わないのだが……それでも、穴はある。
例えば、互助会に所属するメンバーのデータは、向こうから提供されない限りは数例しか持ち合わせていない。そのため、彼らがあの指輪を手に入れた場合の結果に関しては、若干ながら未知数の部分が存在している。
また、私が持った場合についても、ちょっとばかり検証が難しい。何故ならば、私のデータを彼女はほとんど持っていないのである。
「全く持ち合わせていない、というと語弊があるんですけどね。……簡単に言ってしまいますと、キーアさんのデータは参考にならないものばかりなんです」
「それはまた……理由は?」
「彼女の持っている技能によるものでしょう。ぶっちゃけてしまいますと、本来正数をとるはずのデータが負数になったり、何かしらの数値が出るべき場所で『不定』と計測されたりと、ちゃんとした数字もあるのですが、その大半が無意味な数値ばかりになってしまっているんですよね……」
「まぁうん、そりゃそうだよねとしか言えないんですけどね、本人からすると」
「はぁ、なるほど……?」
身長・体重程度ならばいざ知らず、それ以外の数値に関しては、ランダム性の塊でもある私の場合、全て不定になる。
なので、実験の際には参考にならない、なんて変なことになるわけである。……いやまぁ、実際に持たせて貰えれば、結果は一つに収束するとは思うけどね?
ともあれ、一般的な使用において、なにかしらの問題が発生することはない……というお墨付きが出た以上、あまり気にしても仕方ないというのも確かな話。
元々の『流れ星の指輪』の効果を聞いて、是が非でもと欲しがる人もいるかも知れないが……。
「仮にそうなってもちょっと運がよくなる、ってだけなら問題はない……そうだよね?」
「まぁ、私も確認してオッケー出したわけだから。なにかあったら責任は取るわよ」
「んー、なら私は静観するべきかなー。まさか誰が勝つとか、予測できるわけでもないし」
店を出している、即ち参加権があるのはなりきり郷の面々だけ。未だに力に飢えている人が居る気配のする、互助会の人々はそもそも手に入れる余地がない。
ならば、警戒しすぎるのも無意味か……ということで、同じようなことを繰り返さないように、と関係者達への厳重注意で済ませようとしたところで。
「話は聞かせて貰いました!なりきり郷は滅亡します!」
「またこのパターンかよ()」
店内に飛び込んできた桃香さんの言葉に、思わずため息を吐くことになるのだった。……なんでや!