なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「はいはいそれで?今回はなにがどうなって、なりきり郷が爆発するなんて結果に至るので?」
「わぁ、私への扱いがとっても雑ー。……いやまぁ、最近の私の登場の仕方がかなりマンネリ化している、ということに関してはぐうの音も出ないわけなのですが」
入ってきて早々、店員にアイスコーヒーを頼みながら近付いてくる桃香さん。
実質初対面のなのはちゃんが、とてもビックリした顔で彼女のことを見つめているのだが……ああうん、この人こういう人なので、できれば慣れてくださいとしか言えない私である。
「さて、それでは今日も楽しく、滅亡回避のための会議と行きましょうか」
「……一つ聞きたいのだが、もしかして今回のそれは、私たちのせいということになるのだろうか?」
「……ええと、非常に申し上げにくいのですけど、そうなりますね」
「…………」
「うわぁ!?無言で切腹しようとするなぁ!?」
「離してくれたまえ、こんなの正義の味方失格だっ!!」
「おおおお、落ち着いてくださいエミヤお兄さん!?」
なお、このタイミングで彼女が現れた、ということに勘の良いエミヤさんは勝手にSANチェック失敗していた。……これだから無駄に
錯乱するエミヤさんをどうにか落ち着かせ、改めて桃香さんから今回の事件の概要を聞く私達。
それによれば、どうにもあの景品の『流れ星の指輪』、とんでもない欠陥が潜んでいるのだという。
「と、いうと?」
「あの指輪は、本来のそれを再現しようとしたものの、現状の技術力では不可能な点が幾つか存在し、それゆえに
「まぁ、はい。効果が変わってるなー、みたいな感想も無くは無かったし……」
本来、『流れ星の指輪』とは使用することで『星に願いを』と呼ばれる超位魔法が発動する、というアイテムである。
それは言ってしまえば
これがどういうことかというのは、すぐに気が付くはず。
要するに、用意した材料は近しいモノだが、結果として出力されているものが違っている……という、先ほどから何度も話題に上がっている部分に問題がある、ということだ。
「……ああ、『使用する』という部分の再現が、どうにも上手くいかなくてね。どうやら『魔法を込める』という部分との噛み合いが良くないようだったのだが……」
「そうなの。多分、エミヤお兄さんが使う『魔術』と、モモンガさんが使う『魔法』が、大本の設計が違うから上手く繋げられない……みたいな感じだったの」
「あー、そりゃそうだよね。原理からして違うものを組み合わせるのは、中々に骨が折れる作業だし」
そんなことになってしまった理由は、当初エミヤさんが、投影した宝石に『星に願いを』を発動させようとしていたがため。
つまりは、
あの指輪は『星に願いを』の本来の発動コストを肩代わりするモノ、という風に解釈することもできる。
それゆえ、単純に『星に願いを』を使えようになる指輪、といった形で構築してしまうと、単に『星に願いを』の起動式が刻まれているだけの指輪、という形で出力されてしまうのだ。
……違いがわかり辛いかもしれないが、単純に言うのであれば【使うと
高位の魔法詠唱者にしか覚えられない、という前提
「まぁ、そちらに関しては、問題なく投影できてしまったわけなのだが……」
「できたの?!」
「回路の丸写しと、さほど変わらないからな。寧ろそれができなければ、電化製品など投影できるはずもないだろう?」
「た、確かに……」
なお、その『星に願いを』を使えるだけの指輪に関しては、特に失敗することもなく投影できてしまったらしい。
これは、そもそもの投影魔術というものが、大儀式などで必要な貴重品を短期間肩代わりするためのもの、という性質を持つものであるから……というのも理由にあるのかもしれない。
大きな魔力を流すことで壊れることがあったり、時間経過で消えてしまうという問題があったとしても、本来必要な道具に求められる効果自体は、問題なく果たすことができる……というのは、要するに安い部品に代えても電子回路自体を阻害するわけではない、ということに似ている。
要するに、投影による問題はあくまでも出力の部分だけにあり、それ以外の──効果の写し取りの部分に関しては、別にエミヤさんの投影だけに限らず、そもそも機能として付随しているのではないか、ということ。
その範囲が、機械における部品の一部なのか、はたまた全体なのかという違いだけで。
……ともあれ。
起動式の提供をモモンガさんから受けている上、そういった回路構築に強いタイプの魔導師である、なのはちゃんのサポートも受けている以上、『星に願いを』を使える宝石の投影というだけならば、そこまで難しい話でもないというのは分からないでもない。
単に用意した宝石に、予め用意された起動式を焼き付けるだけで済むのだから、必要な機材さえあれば他の人にも再現可能な技術、という風にも言えるのかも。……いやまぁ、そのための機材がそもそも存在しないという話ゆえに、エミヤさんが投影しているという部分もなくはないのだが。
話を戻して。
つまるところ、『星に願いを』専用杖みたいなものなら、最悪投影によって量産することもできるけれど。*2
そこから一歩進んだ部分──『流れ星の指輪』そのものの投影には、問題点が多数点在している。
そこに込められた魔法──込められた魔力の再現。
これができてしまえば、いつも彼がしている宝具の投影のように、一工程で終わってしまう話なのだが……対象の物品が彼の
なればと、宝石に魔法そのものを込める、という方式にすると──その魔法が起動型である、という部分に問題を生じることとなる。
「コストの肩代わりに関しては、最悪内部に魔力を多く込める……という形にすることで対処が可能だ。そもそもの話、あの指輪も
「起動式の丸写しができるんだから、それを組み込むこと自体も特に問題はなかったの」
二人の言う通り、必要なものは違わず用意できている。
それを組み合わせた時にエラーを吐いた理由こそが、互いの相性の悪さ。
聞くところによれば、回路的には内部電源で動くはずなのに、何故か外部からの電源供給を受けようとして、結果機能不全を起こしたのだという。
「恐らくは、だが。私の用意した精錬石を、この起動式はコストの供給源だと認識できなかったのだろう。そのため、必要な
「それが可能になっていると、結局最初に作った指輪と変わらないの。だから、外部供給はできないような回路構成にしていたの」
「結果、コストが足りないので不発……というわけだな」
「えー……」
技術体系が違うことによる動作不良。
それを引き起こした試作品の指輪は、結果なにも起こらずに暫くののち破損したのだとか。
……外部供給を断つために、魔法を発動しているのは指輪自身、という回路を作ったこともあり、恐らくは
思わずドン引く私だが、対する二人は涼しい顔。
……色々とツッコミたいところはなくもないが、とりあえず流して次の話へ。
「原因を琥珀と共に探査した結果、『想定される結果が多すぎる』ため、必要十分な量であるはずの精錬石内の魔力を『まるで足りていない』と認識していたようでね。……結局、単一の機能を常に発動している、という形でしか安定しなかったのだ」
「大雑把に言うと、『運気を良くしたい』という願いを叶えた状態として選択肢を削っている、という形ですねー」
最終的に用意された対策は、『星に願いを』の大雑把な効果範囲を、最初から一つだけに絞っておくというもの。
この場合は『運が良くなるように』みたいな感じの願いだそうだが……ともかく、それによって『願いの探査』に掛かる負荷の軽減や、『既に願いは受理されている』という結果を用意することによる、精錬石の電力源としての再認知などを引き起こし、ようやくまともに稼働するに至ったのだとか。
……話だけ聞いていると、どこの工学系の番組だという感じだが……ともあれ、とても苦労に苦労を重ねて完成したものである、ということはよーく伝わってくる。
……伝わってきたのだが、同時にどこが『アカン』のか、なんとなーく分かってきてしまって、冷や汗たらたらの私である。
「……えーと。とりあえず聞きたいんだけど、その『運が良くなる』っていう効果は、大体どれくらい期間のあるものなの?」
「期間?……そうだな、指輪の中の魔力が尽きるまで、だろうか?」
「じゃあ、願いの単一化のためにしていることは?」
「え?えーと……願いの選択肢の例示の前に、『願いはこれです』って処理を割り込ませてる……みたいな感じなの」
「なるほどなるほど。で?『指輪自体に魔法を使わせる』って部分は、変更したりしてるの?」
「……まぁ、現状の技術力ですと、そこを変えるとまともに機能しませんでしたので……特段、書き換えたりはしていませんね?」
次々に訪ねていく私に、三人は不思議そうな顔をしている。
なおその隣の凛ちゃんは、本来の彼女とは違って機械系にも強いのか、私達の話を聞きながら次第に表情を曇らせていって……。
「あー、うん。確かに、ちょっとボタンを掛け違えば滅んでもおかしくないわね」
「「「ええっ!!?」」」
はぁ、とため息を付いて、三人をジト目で見つめ始めることになるのだった。