なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・因果は巡って戻ってくる

「いや……いや?そもそも月の聖杯戦争の時点でも思っていたことだが……どういう因果だ?何故間桐桜、ないしそれと類似する人物が関わる聖杯戦争は、どれもこれもヤバいことになるのだ!?」

「どうどう、落ち着いてエミヤさん」

「これが落ち着いていられるか……っ!」

 

 

 先ほどまでの話を聞いて、すっかり錯乱状態になってしまったエミヤさん。これにはどこかの世界の普通の間桐桜さんも激おこ。

 ……と告げれば、なにか琴線に触れるモノでもあったのか、エミヤさんは途端に大人しくなってしまうのであった。……しつけられてますねぇ。

 

 冗談はともかく、うっかりにうっかりが重なって大惨事、というのは最早いつものこと。

 現状ではそうなる可能性が高いと言うのだから、どうにかして対処するしかないというのは、もはやいつものことである。

 

 

「ただねぇ、もう一つ気になることがあってねぇ……」

「この状況で、なにかまだ起きる余地があるの?」

 

 

 ただ、実はこれとは別に、気になることが一つある。

 思わずくらーい顔でため息を吐いてしまった私に、凛ちゃんが不思議そうな顔を向けてくるが……よく考えて頂きたい。

 なりきり郷で起きる騒動と言うのは、大抵全部一所(ひとところ)に転がり落ちてくるものだということを。

 

 

「……あ゛」

「あー……そういえばそうでした。ちょっと監視を強化した程度で、どうにかなるはずもありませんでしたね……」

「な、なんですか皆さん一斉に……まるでこの世の終わりを迎えるかのような……顔……」

 

 

 突然お通夜な感じになってしまった一部の人々に、BBちゃん以下数名がビビり始めたが……そうして周囲を見渡す内に、喫茶店内に飾られていたとあるポスターが視界に入る。

 

 ──半ば強制的に謹慎状態となったが、それくらいで抑えられるわけもなく。

 せめてもの気分転換に、と企画されたその()()()

 ()()()()()、自身のために歌うと酷いことになると予め知っている彼女は、このライブくらいは成功させたいと思っていて。

 原作でとある英雄王が褒めたように、そうなればまず間違いなく優秀賞──そうでなくともかなりいい順位を狙うことも不可能ではない、そんな人物。

 

 そう、()()()()()()()()()、エリザベート・バートリー。

 そんな彼女のライブが、表彰式前最後の演目として、企画されているということを示すポスターが、そこに貼り出されていたのだった。

 

 

「……そういえば、指輪とエリちゃんってのも一種のベストマッチでしたね……(白目)」*1

 

 

 思わずそう溢す私の言葉に、皆が皆白目を剥くのであった。

 ……なおゆかりんは、BBちゃんを呼ぶ前辺りの時点で気絶していたので無事だった。……無事かなぁこれ!?

 

 

 

 

 

 

「……エリちゃんはなにも悪くないのに、結局エリちゃんのせいで世界が滅びそうな件について」

「やっぱり、全てはハロウィンに回帰して行くのね……」

 

 

 なんかもうずっと白目剥いてるような気がしてくる今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか?私たちは胃が痛いので、胃に優しい飲み物を追加注文したところです。

 

 ……そこら辺は置いといて。

 よもや、ハロウィン回避のため、それからエリちゃんのモチベーションの維持のために企画したライブこそが、滅亡へのカウントダウンを予感させることになるとは、世の中恐ろしいものである。

 いやまぁ、ひとっつも笑い話にならないわけなのだが。

 

 そしてこれのなにが問題なのかと言うと、今さらこのライブを中止にはできないということが大きいだろう。

 

 

「あーうん、どう考えてもエリちゃん泣くよねこれ……」

「ギャン泣きだな、もう顔面総崩れレベルでギャン泣きだな」

「ヤスリじゃ戻んないねぇ」

「……いや、寧ろ子女の顔をヤスリがけするなと、ツッコミを入れるべきなのではないか?」

「それは確かに」

 

 

 いやまぁ、顔面総崩れと言われて型月民が想像するやつだと、単にヤスリがけした程度では戻らない、と思われても仕方ないだろうけども。*2

 

 話を戻すと、今回のライブに関しては、エリちゃんが言い出したことではなく、こちら側──正確にはゆかりんたち上層部が提案したものである。

 

 ハロウィンとエリザ粒子の親和性の高さは言うに及ばず、この間の本家では、何故かシンデレラ化する始末。

 この上やっぱり今年も、エリザベートwithハロウィンの気運が高まっているというのだから*3、そりゃもう警戒してもし足りないというもの。

 

 なので、この祭りの空気の中、エリちゃんは一人寂しく缶詰め生活を送ることを、半ば強制されてしまっている。……これが、本当に原作の彼女なら……いや、最近の彼女はわりと真面目に頑張ってるし、本家本元でも変わらないかな?

 まぁともかく、元々の『エリザベート・バートリー』というキャラ自体が、()()()()()()()()()()()()()()に強い拒否感を抱く人物であることも合わさって、こちらが罪悪感を覚えてしまう、というのは仕方のない話なのだ。

 

 

「……そういう理由もあって、彼女のためにライブの予定を取っておいたのだけれど……表彰式とかもあるし、ハロウィン当日からは一日ずれていることもあって、大丈夫だろうと高を括っていたんだけど……(白目)」

「ああうん、全部裏目ってるね……」

「なーんーでーよー!!!」

 

 

 だから、祭りのラストライブ──十月三十一日は丸々表彰式で埋まるので、その前日が出し物としては最後のタイミングとなる──における大トリとして彼女のライブを行わせることにより、フラストレーションなどの諸々を発散させてあげよう、という善意を抱いても、同じようになにもおかしくはないのである。

 

 そしてその知らせを受けたエリちゃんが、みんなの期待に答えられるようなライブにしなきゃ、と張り切るのもまた、おかしい話ではない。

 ……おかしいことがあるとすれば、出し物というのは大体後出しの方が有利、ということだろう。

 

 

「あー、うん。どんなに凄い映像を見せられたとしても、それを見てから日が空いてしまうと、記憶の中のそれは元のそれとは少なからず変質してしまう。だから、感想ってのはそれを見た日に纏めるのが一番いい、ってやつよね?」

「無論、記憶の中のそれを繰り返し吟味することで、見えてくる新しい感想というものも存在するわけだがね。……どちらが上、ということは本来ないはずだ」

「仰る通りです。ですがぁ……その、本気のエリザベートさんって、わりとレベルが違いますからね……」

「かの英雄王のお墨付きだからな。……口惜しいが、彼の審美眼については認めざるを得まい」

 

 

 例えどれほど素晴らしい演目であれ、それを見た時の思いをいつまでも維持する、ということは難しい。

 それゆえ、評価を下す際はできれば対象を見た直後が望ましい、ということになる。

 無論、長時間吟味した答えというのも、別に間違いというわけではないだろうが……仮に同じレベル・もしくは上のレベルの『素晴らしいもの』を見せられたとして、最初に見たものの評価を正しく下せるだろうか?後発のモノと比較せず、その作品単体の評価を……だ。

 

 恐らく、先ずもって不可能だろう。

 ほぼ確実に、あとに見た作品に引き摺られた評価が飛び出すはずだ。

 それくらい、『知ってしまう』ということは強い力を持つ。そして、()()()()()()()()()()()というのは、実際にその域にあるモノなのである。

 原則的に自身のためにしか歌わないので、ほぼ聞くことはできないが──それでもなお、その声だけで『天上のもの』とあの英雄王に言わしめるのが、エリちゃんなのだ。

 

 ──なれば、他者のために歌う彼女の歌声は──まさにアイドル。人の心を震わせる、真の芸術として我々を席巻することだろう。

 ……要するに、演目の一番最後──フィナーレとして、ケチの付けようのないモノになる可能性がとても高い、ということである。

 

 そうなれば、投票用紙に記載される『良かったモノ』も、最大三つまで選べることも相まって、まず間違いなく彼女が入ってくることだろう。

 そして、この投票形式においては()()()()()()()()()時点でかなり有利であり、その結果彼女が優秀賞を取る可能性はとても高い。

 そうして彼女が、なにも知らず優秀賞を取ってしまえばどうなるか?……抑えていたハロウィンが溢れだして世界は滅ぶ。THE() END(エンド)ってね!(やけくそ)*4

 

 なお、この話をエリちゃんに伝え、ライブを止めることは無論可能だろう。その場合、容易く世界の滅亡は回避できるはず。……そう、彼女の涙と引き換えに。

 

 

『ああうん、いいのよ別に。だって私、エリザベートだもの。暗くて狭い部屋に押し込められて、惨めに日々を過ごすのがお似合いな悪党だものね……』

 

 

 とかなんとか彼女に言われた日には、良心が咎めるどころの話ではない……。

 

 

「下手するとそっちでも(こっちの心が)死ぬ……」

「そんなに!?」

「あー、まぁ、本家の方でも変な扱いするとちょっと申し訳なくなる時がありますし……それがもっと『良い子』になっているのなら、そりゃもう血を吐いてもおかしくはないかもですね。特に八雲さんの場合、既に無理を強いてしまっているわけですし」

「げふぅ!?」

「ホントに血を吐くやつがあるかぁ!?」

 

 

 ご覧の通り、想像しただけで死屍累々である。

 ……これが、元のエリちゃんみたいにもうちょっと傍若無人であるのなら、咎める良心も減ってライブは中止、というだけで済んだのかも知れないが。

 

 ここのエリちゃんは既に、わがままを言わず・あまり好きではない個室に自ら閉じ込められることを望み・ハロウィンになにかすると不味い、みたいな自己認識もあって・それでいてライブに関しても自分からやりたいと言わない……という、色々我慢させてしまっている状態。

 これで気不味くならないのなら、そいつの血はなに色だーっ!!*5……と言わなきゃいけないくらいの話である。

 ……元は同じエリちゃんなのに、対応に差がありすぎる……いやまぁ、積極的にハロウィンしようとしない、って時点で評価爆上がり、ってところもあるんだろうけども。

 

 ともかく、現状でライブを止めるのはほぼ不可能。

 そして、もしも彼女が現在の予想通りに優秀賞をゲットし、賞品の指輪を手に入れてしまえば──それはそれでめっちゃ曇ることになるのも半ば確定的。

 つまり、私たちは秘密裏に、今巻き起こっている問題たちを解決する必要がある──!

 

 

「……無理では?」

「そこをどうにかするのよー!!!」

 

 

 思わず弱音を吐いてしまう私に、ゆかりんは消沈した気分を吹き飛ばしながら、気丈に叫んでみせるのだった。……多分空元気である()。

 

 

*1
『fate/extella』でのエリちゃんの行動。そっちではある意味良い結果をもたらしたが、こちらでは善意しかないのに最悪なことが起きようとしている……

*2
『レジライ』こと『レジスタンスのライダー』、もとい『クリストファー・コロンブス』のとある笑い方と、『ぼっち・ざ・ろっく』の主人公・後藤ひとりの(感情の高ぶりによって)崩れた顔に対しての、他の仲間達の対応から。顔が崩れている、と表現されることがある両者だが、仮にも女の子であるぼっちちゃん(後藤ひとりのあだ名)の方が扱いが酷い気がするのは如何に

*3
作中時間は10月2日なので、まだ何が来るのか分かっていません

*4
元々はとあるRTA動画においてとある人物が発した言葉。ややこしい経緯があるのだが、発言者が変な語源を連発した結果、動画の最後に発した言葉、くらいに覚えておくとよい(実態を話し始めると、この発言者は他人のRTA動画を垂れ流して生放送をしていた……という部分やら、『絶対に許さない』ネタと同じような経緯がある、などの話をしなければいけなくなるので)。なお、何故か『ポプテピピック』でパロディされ、世間一般にも知られるようになってしまった

*5
『北斗の拳』、レイの台詞である『てめえらの血はなに色だーっ!!』から。義憤によって立った彼の台詞であり、義星を背負う彼の『義』が帰って来た瞬間でもある

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