なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・無理でもやるんだ、今ここで

「あー、実はもう一つ、悪い知らせがあるのですが……聞きたいです?」

「あによー、これ以上一体どんな悪い話があるってのよー……」

 

 

 善意によって引き起こされる最悪の事態とか、誰も悪くない分余計に胃に来るよね……。

 みたいなゆかりんの愚痴を聞いていた私たちは、恐る恐るとばかりに声を挙げた琥珀さんの方に視線を向け、彼女がなにを言おうとしているのかを注視することに。

 

 本気で申し訳なさそうな辺り、どうにもかなりの厄介ごとの様子。……はてさて、これ以上どんな悪い話が転がってくるというのか、みたいな感じに身構えていた私は。

 

 

「……キーアさん、アウトです」

「いきなりなにっ!?」

 

 

 突然のアウト宣言に、思わず大声をあげることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

「ああいえ、先ほど『キーアさんのデータは、参考にならないので仮想環境でも実験には使っていない』……というような感じのことを言っていたでしょう、私?」

「……あーはいはい、確かにそんな感じのことを言ってたねー」

 

 

 突然の爆弾発言のあと居住まいを正した琥珀さんは、小さく咳払いをしたのち、改めて続きを話し始める。

 

 その内容によれば、件の黒聖杯擬き──仮に『流れ星の指輪(シューティングスター)・オルタ』とでも呼ぶけど。

 そのオルタ指輪の実験において、仮想環境を使って安全性の確認を執り行った、というようなことを彼女が言っていたと思う。

 ──そしてその時、『(キーア)のデータは色々と参考にならないので、実験では使わなかった』というようなことも、合わせて述べていたはずだ。

 

 

「……あー、もしかして……」

「そう、あくまでももしかして、の話ですが。仮にキーアさんがあの指輪に触れた場合、もしかしたらエリザベートさんが触るよりも、酷いことが起きる可能性があります」

「一応聞いておくけど……世界滅亡より酷いことってなに……?」

「そこに関しては断言できませんが……様々な要因から、万に一つも貴女に指輪を触れさせる可能性が合ってはならない、と私は考えます、はい」

 

 

 それはつまり、エリちゃんが触った結果については予想できるが、私が触った場合については()()()()()()()()()ということでもある。

 

 ……つまり──もしかしたら、私があの指輪に触ったとしても、おかしなことなんて一切起こらずに、普通に確保できてしまうかもしれない。

 だが()()()()()()、私が触れることによって起きるモノが、エリちゃんが触れた場合に起きるそれよりも、遥かに酷いことを引き起こす可能性もある、ということ。

 

 現状、エリちゃんがあの指輪に触れるというのは、去年のハロウィンの時の本家FGOのような、バッドエンド確定の選択肢であるが。

 私の場合のそれは、まるでロシアンルーレットかなにかのように、無事な可能性も破滅の可能性も、共に判別できないので危なっかしすぎる……といった感じになるか。

 

 ……まぁつまり、大丈夫じゃなかった時の被害が()()()()()()()()ので、現状では対策班からは除外しておいた方がいい、という判断にならざるを得ないということである。

 最近あんまり主張してないけど、私ってばカテゴリ的に魔王だしね。

 そりゃまぁ、願いの叶う器なんぞに触れれば、世界補正的にヤベーことになる……というのはわからないでもない。*1

 

 ……だったらキリア(聖女)モードになっとけばいいって?

 その姿をエリちゃんに見られたら(なにかしら感付かれて)アウトだし、そもそも今の世界認識(アニメ情報)的に、キーアとキリアは元は一つのものが分かたれたモノ──言うなればスペリオルドラゴンとかと同じ系列扱いなので、正直指輪君がどう判断してくるかわかんないのでダメですね……。*2

 第一、中身の管制人格がBBちゃんのコピーなので、単純に私をイコール先輩扱いして原作みたいな暴走を始めかねないし。*3

 

 

「……あーうん、確かに私が触れて大丈夫か、と言われるとちょっと疑問なのは確かね。それを踏まえたうえで聞くんだけど……()()()()()()()?」

「問題はそこなんですよねー……」

 

 

 ともあれ、私があの指輪に触れない方がいい、ということだけは確かな話。

 ……なのだが、そうなってくると別の問題が一つ。

 ──この一件の解決に当たって、他の面々の力だけで解決に持っていけるのか、ということが大きな疑問となる。

 

 一番簡単……いや、言うのが簡単なだけで、実行するのは凄まじく難しいだろう、って話は置いとくとして……ともあれ、対処として思い付くのは『純粋な魅力勝負で、エリちゃんライブに勝利すること』。

 ここにいる面々が一つの店などに肩入れして、とにかく盛り上げまくればまぁ、万に一つくらい勝てるかもしれない。

 

 ……知れないが、その場合はかなり不自然な状態になることは目に見えているため、他方から疑われることは間違いなし。

 ここのエリちゃんはそもそものハイスペック*4を自覚し、ある程度使いこなせているため、そのような目立つ店があれば、なんとなーく()()()()()()()()()()、ということに気が付いてしまうだろう。

 結果、彼女は自身のライブにおいて()()()()()

 すなわち、戦略的敗北*5──試合に勝って勝負に負けた、という結果に落着してしまうわけである。

 

 今回の私たちが求められているのは、一部の疑念の余地もない勝利。文句の付けようのない完全勝利である。

 それには、『①:指輪の確保=優勝』『②:エリちゃんのライブの成功』が絶対条件であり、それを満たすには『エリちゃんに裏でなにかが起こっている、と悟らせない』というサブ条件が付随している。

 

 ……いやまぁ、一応『表彰式前に、指輪をどうにかして無力化する』というパターンも考えられなくはないが……既に指輪が景品として存在するということは、その効果を含めて郷全土に通達済み。

 単純に破壊するだけならまぁ、なんとかできなくもないだろうが……その場合は()()()()()()()()()()()()ということを、わざわざ衆目に晒してしまうことになる。

 つまり、自動的に勝利条件の②の方に抵触することになるわけで、あまり現実的な案だとは言えないだろう。

 

 ……仮にスキマとか使って、別所に移動させて処置をするにしても、今の指輪は不発弾のようなもの。

 要するに対処するための時間が足りていないので、結局表彰式に間に合わない。

 というか、下手すると無力化するために触った人間を介して、中のCBBちゃんが行動を開始する……なんて可能性もなくはない。

 その場合の被害は、恐らく私やエリちゃんが触った時よりも小規模のモノで収まるだろうが……どちらにせよ、()()()()()()と周囲に知らせてしまうことは確かである。

 

 

「時期も悪いんですよねー……なにか良くないことが起こったら、すぐにハロウィンに結びつけられてしまいますので……」

「あー……もうエリザベートさんの悪名は、なりきり郷全土に広がってしまっていますもんねー……」

 

 

 ため息を吐きあう琥珀さんとBBちゃんが、それぞれ口にしているように──今の時期になにか変なことが起これば、それは自動的に()()()()()()()()()()()()という風に、周囲には受け取られてしまう。

 これが例えば新年だとか、クリスマスやバレンタインであれば、それこそそっちの行事によるものという認識になり、合わせてエリちゃんも気に病むことが無くなるのだが……少なくとも十月中に起こる悪い出来事は、彼女に罪悪感を抱かせずにいることはほぼ不可能。

 

 つまり先ほどの勝利条件①が、指輪の確保だけで終わっているのは──安全に、かつ確実に対処をするのであれば、解析のために触るのは十一月以降にならざるを得ないから、という条件もあるからである。

 

 

「まぁ、偽物と交換して先に研究を始めておく、ということもできなくはないですが……」

「その場合琥珀さんが封印処理で抜けちゃうから、余計に人手が減るんだよねー……」

 

 

 無論、その場合は先に景品の指輪を偽物と交換しておく、という対処も考えられるのだが……その場合は私が触れられない以上、確実に封印できるのはこういった物品の扱いに慣れている琥珀さんだけ、ということになる。

 そうすると、滅亡云々の話を伝える相手もこれ以上増やすべきではない……という前提もあり、その選択をするとかなり限られた人員で①の条件の対である優勝を果たさなければいけない、ということになってしまう。

 

 最初に交換してしまっているのだから、指輪に触れる心配もないってことで私が手伝ってもいいのでは?……と思われるかもしれないが、裏で手を貸すならともかく、私が表立って手伝ってる時点でなにかある、と思われてしまうのでアウトである。

 ……いやまぁ、実際私が手伝えれば結構早いんだろうなー、とも思うのだが。

 

 

「それはそれで、他からズルいって言われかねないんだよねー……」

「ゆるされよ ゆるされよ いがいとにんきものなの ゆるされよ」

 

 

 それはそれで、単純に卑怯と言われるとなにも言えなくなるのである。……なんやかんやで有名人だからね、私。

 

 実際、今回ラットハウスのあれこれに口を出した件がどこから漏れたらしく、ライネスが客から愚痴られた……みたいなことを言っていたので、どこかに肩入れし過ぎると心証が悪くなりかねないのだ。

 そういう意味でも、私はやっぱりアウトだった、ということである。

 

 因みに、だったら偉い人であるゆかりんが手伝うのもアウトなのでは?……みたいな疑問については。

 

 

「……ドジっ子メイドでも目指す?」

「悪かったわね不器用で!!」

 

 

 能力使うのは流石にアウトなので、そこは縛るとして……そうなってくると、彼女の戦力値って見た目そのまま、要するに幼女一人分くらいでしかないのよね。

 ……八雲紫が好き、というような人への請求力はあるかもしれないけれど、それだけで大局を動かせるモノではない、と判断されてるらしく、彼女がどこかを手伝うことはわりと容認されている、というのが実情なのでした。

 

 まぁともかく、現状のミッションは次のようになる。

 使えるメンバーはゆかりん、BBちゃん、ビワ、桃香さん、エミヤさん、凛ちゃん、なのはちゃん、ミラちゃんの八人。

 この面々で、どうにかして数多の強豪を打ち破り、見事祭りの優勝を勝ち取ること。

 それが、私たちが求める完全勝利である。

 

 

「……ぶっちゃけ無理じゃね?」

「…………」

 

 

 ……まぁ正直、ちょっと条件と人員が見合ってない感が凄まじくて、挑む前から無謀感マシマシになってるんだけどね!

 ……いやマジでどうしよう?

 思わず苦笑いを浮かべるほかない私なのであった──。

 

 

*1
一般的に悪役だと思われている存在が、『願いを叶えるアイテム』を手に入れた場合に周囲がどう思うか、ということ。また、そういう作品が多いので再現判定を受ける可能性がある、ということ。どう考えてもろくなことにならない

*2
光と闇は敵対するモノであるが、存在としてはどちらも兼ね備えてこそ、というもの。どこかの神様も、諸行だけ見るとわりとヤバいことしているが、これがかの神が全てであるがゆえに(一見して)悪性をも持ち合わせていること、およびその悪性はあくまで人々への試練の象徴であり、なにがあっても信仰心を失わずにいられるか試しているだけ、という風に見ることができる。なので神様が『すっげぇワルの敵が使ってくるヤツ』とかをしてきても問題はないのである()

*3
彼女が無茶をしたのは、結局愛の為。なので人類悪の資格がある(キアラパターン(自分だけが人間)が許されるのなら、先輩だけが人間で、先輩だけを愛する……というパターンも許されるだろう、という話)。なお価値観がAIなので、最悪体がどうなっても生きてるんなら問題ない、みたいな判断を下している節もあったり

*4
実はエリちゃんは結構スペック高めである(作中でもトップサーヴァント級、みたいな評価を貰ったことがある)

*5
雑に言うと大規模目標を果たせなかった、ということ。例えば手段としての戦争には勝ったが、戦争を起こした目的である土地の入手はできなかった……というようなパターンのこと。まさに『試合には勝ったが、勝負には負けた』である

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