なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「二度も三度も出てきやがって……」
「ああ、また消えていく……」
突然現れたサンマ鬼を、思いっきりぶん殴って倒した私。
そうして、以前と同じように光の粒子となって消えていく鬼をぼーっと眺めていたら、当時と同じような声が聞こえた気がしたので、そのままスルー。
……あの人と会わせてしまうと、アルトリアの教育に悪い(主に食の嗜好的な意味で)ので、今はちょっと関わりたくない……みたいなアレである。*1
「あら酷い。一緒にご飯を食べた仲なんですし、もう少し仲良く致しませんか?」
「やーめーろーよー!イヤだって言ってるじゃんかー!」
「イヤよイヤよも好きのうち、ですよ?」
「思った以上に押しが強いよこの人!?」
なお、こちらが邪険に扱ったとて、向こうが素直に引いてくれるとは限らない……という、ある意味当たり前の理論によって、赤城さんは笑顔を浮かべながら、こちらへゆっくりと近付いてくることになるのだった。
……やめろー!金持ちオーラで目が潰れるー!!
「……そもそも郷の中の店って普通はお金を取らないんだから、ランチが五桁するっていうのは変な話なんじゃないのか……?」
「いやですねハーミーズさん。わざわざお金を取るってことは、すなわち
「はははなるほどなるほど、ちょっと赤城がなに言ってるのか分からない、ってことがよーくわかったぞー()」
「あらあら」
横から話を聞いている限り、どうにも以前と変わりない()らしい、赤城さんとハーミーズの二人。
元気そうなのは良いことだが、できればそっちはそっちで固まっていて欲しかった気分の私である。ただでさえ艦娘系は少ないんだし。
……そこまで考えて、そういえば船系擬人化キャラは増えないな?なんて疑問が脳裏を過り。
「それも仕方のないことなのですよ、キーア」
「うわびっくりした。……いや、どこから出てきてるんですかシュウさん?」
「ふふふ、これもまたちょっとしたグランゾンの力の応用、というやつです」
「それ言っとけばなんでも許されると思ってません?あと言外にグランゾン完成した、って匂わせるのも止めません?」
「フフフ……メタルジェノサイダー」
「デッド・エンド・シュート!?」*3
ぬるり、という擬音がぴったりな感じで現れたシュウ・シラカワさんによって、それには理由があるのだ、と知らされることとなるのだった。
……いや、それはそれでいいんだけども、本当にどこから出てきてるの貴方?っていうかそれ、私のクーラーボックスじゃない?
……なんてこちらの懐疑の視線もなんのその、意味深な笑みを浮かべたシュウさんは、そのまま解説を進めていくのだった。
以前から、機械系の物体は『逆憑依』の付随物としては持ち込みにくい、みたいなことを言っていると思う。
それに照らし合わせると、大本が船舶という大きな機械の塊である彼女達は、そもそもの時点で成立し辛いモノになっているのだそうな。
「ウマ娘は『ウマソウル』というものを持っているので成立し辛い、みたいなことを言っていたことがあるでしょう?その原理に沿うのであれば、彼女達は大本の船舶と、そこに宿る船の魂。その両者を必要とするもの、と言うことができますね。……必然的に、成立のし辛さは最初の時点で証明されてしまっているのですよ」
彼の語る通り、人気があるのに数が居ない、という共通点のあるウマ娘もまた、その存在の根幹には自分以外の別の魂、すなわちウマソウルというものを必要としている。
この『一つの体に複数の魂、ないし要素を持つ存在』というのは、単純計算で再現のために二人分の労力が必要であるため、中々現れない……というのが、現在での『逆憑依』の説明の主流なのであるからして、それに則る限りウマ娘も艦娘系のキャラも、共に増え辛いものとして認識される……ということになるのであった。
「なるほど……そう考えると、最初から二人居るってのは凄いことなんだねー」
「いや、凄いことはわかるが、一纏めにされても困るわけでね?私と赤城は一応、出身作品としては別なのだから」
なので、しみじみと二人を眺めることになる私である。
なにせ、彼女達二人は私がここに来た時点で既に所属していた者達。……いやまぁ、正確なことを言えばマッキーとかも最初の方からいる人、ということになるわけだけど、彼女に関しては互助会所属なので置いとくとして。
ともあれ、彼女達が最初から居た、ということは紛れもない事実。
それだけ、彼女達が成立するに足る再現度を持っていた、ということでもあるので、思わず拝んでしまってもおかしくはないわけである。
……あるのだが。
ハーミーズさんとしては、『艦娘系』と一括りで纏められることには不満がある模様。
まぁ確かに、艦これとアズレンはゲーム製も違うので、纏められても会話が噛み合わないなんてこともあり得るわけで、そこら辺の不満が口に出た、ということなのだろうが……。*4
「あー、そうだっけ。ややこしいなー、纏めたりはできないの?」
「いや、無理だ「ええと、耳でも生やせばいいのかしら?」できるのか、まさか!?」*5
「いえ、冗談ですよ?冗談。まぁ、カチューシャでも付けてそれなりに意識すれば、姿くらいは変えられるかも知れませんけどね?」
「い、いや、それは流石に……」
突然赤城さんが発した言葉により、こちらはちょっとしたパニックに。
いやいや、耳生やしただけでキャラが変わるとか、そんなこと……。
「……そこで何故我を見る?」
「…………そういえば結構キャラ変わる人いたなー、と思いまして」
「ああ、なるほど。【継ぎ接ぎ】ですね」
……わりとキャラを変えてしまっている実例がいたことを、視線を逸らした先にいたハクさんを見たことで思いだし、思わず頭を抱えることになるのだった。
シュウさんの言う通り、同名キャラの多い艦娘系キャラは、【継ぎ接ぎ】によるキャラ変には特に強い親和性があるだろう。
その順応性は、恐らく【顕象】達のそれに勝るとも劣るまい。
思わぬところで、【継ぎ接ぎ】させちゃいけないタイプがいることに気がついてしまった私は、思わず閉口することになるのであった。
「で、そうして戦慄してたらいつの間にか高級料亭に連れ込まれてたってわけ」
「誰に対しての説明文なんだ、それは……?」
そうして恐れ戦いていたら、いつの間にか赤城さん御用達の飯屋に連れ込まれていたため、再度戦慄する羽目になった私です。
考え事してると注意力が散漫になっちゃうからね、仕方ないね。
……まぁ、赤城さんの奢りだというので、一先ず胸を撫で下ろしたわけだが。生憎今持ち合わせないしね!
「意外ですね、キーアさんなら結構お持ちなのかと思っていたのですけれど」
「いいですか赤城さん、何度も言いますけど郷の中は、普通大抵のモノが無料なんですよ、財布を持ち出すことなんてほとんどないんですよ」
「そうですかねぇ。私はそろそろカード払いにしようかな、なんて風に思ってますけど」
「色々ツッコミたいところはあるけど、とりあえず……カード使うとこあんの
「のーぅー?これってなにを頼んでもええんかのー?」
「ああやめてハクさん!それヤバいやつ!!値段が特にヤバいやつー!!」
なお、赤城さんのせいで変な知識が増えることとなったが……あんまり多用する知識というわけでもないので、脳の片隅に放り投げ。
変わりに、メニュー表を開きながらなにを頼もうかなー、なんてことを呑気に述べていたハクさんの様子に、思わず悲鳴をあげることになるのだった。……いやだって、颯爽と五桁ランチ選んでるんですものこの人!!
「いいですかハクさん?うなぎってのはね、高けりゃ旨いって訳じゃないんですよ!?」
「む、そうなのか?」
「ええまぁ、そうですね。基本的には天然と養殖くらいしか違いがありませんから。で、牛肉のように養殖の方が一般的、というわけでもない以上、品質は大きく変動することはありませんし」
「なる、ほど?」
なお、選んでいたモノの一つに、高いからと言って良いものになるわけではない……という、うな重の特上が含まれていたため、赤城さんと一緒に説明することに。
まぁうん、肉とかは味を磨くことができるけど、うなぎに関しては天然物の方が上ってことになってるから、養殖みたいに味でランク付けをする……ってことは基本的にできないんだよね。
なので、うな重における並とか特上の違いは、基本的にうなぎを使っている量によるもの、ということになるわけである。*6
騙された、みたいな顔をしているハクさんの様子にため息を吐きながら、とりあえず穏便に終わらせるようにしよう、と心に誓う私なのであった。