なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……なるほど、エリちゃんはネット世界で練習をしてたんだね」
「まぁ、あのHMDは結構高性能で?声も外に漏れないって聞いてたから、じゃあ電脳世界で練習するのがいいんじゃない?……ってことになったのよ。そもそも、元のエリザベートは
ニヤニヤ笑う侑子に差し出されたHMDを被り、ダイブした先はいつも通りの『tri-qualia』。
こっちでは普通にハロウィンが開催中で、その繋がりでエリちゃんの装いも変化。
現在の彼女の姿は去年のハロウィン時の服装・シンデレラエリちゃん*1のものとなっており、道行く人達からは時折スクショを求められたりしている。
……まぁうん、普通に見てる分には珍しいアバターで済むもんね。同時に、できれば歌うのは止めてね、って挨拶も多かったのだけれど。
「……ネット民に浸透しすぎじゃないかしら、
「まぁほら、ネットで仕事をすると流行り廃りは押さえとかなきゃ、ってなること多いし……」
「それにしたって、よ!」
なお、道行く人のほとんどからそんな感じのことを言われ続けたため、現在のエリちゃんは御機嫌斜め。
ゆえに、まず私がすることは、彼女の機嫌を取りなすことなのであった。……まぁほら、流石に
「……まぁ、チェイピ城を持ち出すよりは、まだマシだって言い分はわからないでもないけど」
「ただあれ、チェイピ城が顕在の時は居たはずの領民達が見当たらないから、実はチェイピ城はチェイピ城で別のところにある……なんて可能性もあるらしいけどね?」*2
「……いや待ちなさい、
「おおっと、ツッコミ過ぎた。戻ってこーい、エリちゃーん」
まぁあの城はあの城で、それまで居たはずのモノがシンデレラ城になったりした結果、ハロウィン成分すらどっかに置いてきた感じになってしまっているので、その内『大逆襲』とかなんとか付いた上でカムバックしてきそう、なんて予想もあるのだが。
……元々のハロウィンって、割りと血なまぐさいところもあるから、なんか変なフラグが眠っててもおかしくないし。*4
……などと言ってみたところ、エリちゃんから返ってきたのは『城まで増えるってどういうことよ』、という至極全うな指摘。
人が増えるのはまだ聞いたことがあるが、確かに城が……それも同一の城が増えるという話は、トンと聞いたことがない。
いやまぁ、
「……まぁ、うん。いつまでもFGOの話をしていても仕方ないし、もっと建設的な話をしましょう、建設的な話っ」
「ん?……ああ、そうねぇ」
まぁ、fateキャラが多いとしても、別にここは型月世界ではない。
同一世界観の存在が集まることによる、概念的な侵食を気にする必要性は、今のところ存在しない。
つまり、こうして私たちがエリちゃんの真実を追ってみたところで、それは動画サイトに転がっている一山幾らの考察動画と、価値的にはさほど差がない……という風にも解釈してしまえるわけで。
ゆえに、彼女から飛び出した『建設的ではない』という言葉も、なるほどと頷いてしま……ああうん、わかったから無言でぽかぽか殴らないでエリちゃん。
別に『tri-qualia』はデスゲームとかじゃないから、こうして殴られ続けて体力を全損したとしても、特に問題はないけれども。
だからといって、無意味にサンドバッグにされるのは真っ平ごめん*5、というわけで。
「うん、適当な返事したのは謝るからさ?……お願いだから泣き止んでくれる?」
「誰のせいだと思ってるのよー!!」
涙目になっている相手って、どうしてこんなに罪悪感を煽られるんだろうなぁ……なんてことを思いながら、半泣きのエリちゃんを宥めることになる私なのであった。……自業自得?そうねぇ……。
数分後、どうにかしてエリちゃんの機嫌を元に戻した私は、さてこれからどうしたものか、と頭を捻ることとなっていた。
そもそもの話、私は『tri-qualia』にログインすることを目的にしていたわけでもなければ、エリちゃんの機嫌取りをするためにやって来たわけでもない。
……いやそこのエリちゃん、不思議そうな顔しないで頂戴。
確かにさっきまで貴方のご機嫌とりしてたのは私だけど、それはゆかりんに『仕事なーい?』って聞きに来たけど、どうせ今すぐ回される仕事なんてエリちゃんの世話くらいしかげふんげふん。
……まぁともかく、目についたので対処したというだけで、それがメインではないのは確かな話なのだから。
「まぁ、メインの仕事を探してたけど出鼻を挫かれた……って形になって、そのままずるずるとサブの仕事をこなしてる……って感じだから、暇なのも間違いじゃないんだけども」
「あら、暇だったの貴女?なぁんだ、最初っからそう言ってくれれば良かったのに」
「……んん?もしかしていらんフラグ踏んだ感じ?」
「なにか言った?」
「なにも言ってません、
誰が閣下よ!……と憤慨するエリちゃんに謝罪しつつ、内心焦る私。
いや確かに?仕事がないので暇だなー、的な感じでここにやって来たのは間違いないし?現状一番問題を抱えていそう──もとい、仕事のタネになりそうなのはエリちゃんの周囲、というのも決して間違いではない。
……が、しかし。それは『エリちゃんからの依頼を受けていい』ということとイコールではない。
現状が聖杯戦争みたいになっているので、彼女のことを手伝い過ぎるのはご法度、という部分もあるが──『
……なにが言いたいのかって?つまり今の私は余計なトラブルを呼び寄せるフラグを踏んだっぽい、ってことだよ!(白目)
……うん、ゆかりんとかから『エリちゃんのサポートをして欲しい』と頼まれたのであれば、そこまで問題ではないんだけど……。
これがエリちゃんから直接依頼を受けた、ということになると、彼女からの期待度とかの諸々のパラメーターが変動し──最終的に
……なに言ってるかわからん?大丈夫だ、儂にもわからん()
……元のエリちゃんに比べ、性格面で改善の見られるここのエリちゃんだが。
その存在が持つ因果とでも言うべきものまでは、そうそう変えられるものではない。
つまり、『エリザベートが聖杯に縁深い』という性質は、彼女がエリザベートとしてある程度の再現度を保有する以上、切っても切り離せぬモノであって。
その結果、彼女の善意は必要以上に善果、すなわち
で、ここからは更なる追加情報なのだが──彼女の引き起こすトラブルの
より正確に言えば、
今回の『優勝すると黒聖杯が顕現するかも?』案件は、問題の悪化の理由に彼女の存在があるものの、それは彼女が積極的に関わりに行った結果のモノではない。
単に彼女が
……つまり、この状況において彼女は
なので、ここで彼女が協力者を得て、なにかを始めようとすると──自動的に彼女が主役である別の物語が始まり、エリザベートが騒動の中心になるので──聖杯がポップする。なんで?(素)
唯一救いがあるとすれば、彼女の行った善果に対する報酬として顕現するモノであるので、『流れ星の指輪・オルタ』みたいに聖杯そのものがダメ、ということにはならないということになるのだろうが……そもそも聖杯そのものがトラブルの元であることを思えば、どっちにしろ止めてくれとしか言えないというのは誰にだってわかることだろう。
そして、実はこれが一番の問題なのだが──ここのエリちゃんは普通に良い子なので、余計なことをするな、と言い辛いのだ。
基本的には善行を為しているので、止めろとも言い辛いし。
聖杯云々の話から矯正するようにしようとすると、こっちが想像する以上にガチ凹みして、暫く自分から謹慎したりする。……要するに、周囲の良心を咎めまくるのである。
そもそも、それがあるからこそ彼女に知られないように優勝しよう、ということになっていたのだから──これの回避が難しいのは言うまでもない。
なので、彼女が必要以上に張り切らないように、できればゆかりんを間に挟んだ形で仕事をお願いしたかったのだけれど……うん、もうこれ別のサブイベ始まり掛かってますよね?
侑子ってばなにしてくれてんの?!……的な恨み節が脳裏を過るが、そもそもエリちゃんの耳に万が一にも聖杯云々の話が入らないように、情報統制を行っていたのはこっち。
……つまり侑子がなにも知らないのは私たちのせいなので、恨むに恨めないことにすぐに気が付き。
これはどうにかして、エリちゃんの手伝いをパパっと終わらせるしかない、と悲壮な覚悟を決めようとした私は。
「あら、奇遇ねお前たち」
「その声は──グッビー!グッビーね?!久しぶりグッビー!」
「グッビー言うな!」*8
これまた突然に現れたパイセンにより、更なる混迷へと誘われることとなるのであった──。