なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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幕間・祭も終わりが近付いて

「やれることはやったけど、どうなるかは正直わからない」

 

 

 そんな感じのことを、エミヤさんから聞いた私。

 ……まぁうん、所々で使われていたエリちゃんへの挨拶『歌は結構です』が、その実ラストライブでの彼女の活躍を楽しみにした上での言葉だった……ということを思えば、どれほど万全に準備したとて不安は拭えないのは仕方のない話、なのだけれど。

 

 そうして思案する今日は、出し物の最終日。

 すなわちエリちゃんライブの当日であり、そして今は朝の時間帯である。

 

 結果の発表は明日・かつ途中経過などを知らせてくることは無いので、要するに明日のその時まで悪い意味での心臓のドキドキは止まらない、ということになるわけだが……。

 

 

「……まぁうん、なるようにしかならないわよね」

 

 

 直接の手伝いを禁止されていた私にできることと言えば、みんなが全力を出しきったのだと信じることくらい。

 絆の力が私たちの力だ!……的な感覚で、とにかく果報を待つこととなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ──素晴らしいものを見る時、時間はとても早くなる……という話がある。

 実際の時間と体感時間は本来別のものであり、それゆえ体感時間が先走ってしまうとしばしば現実の時間を置いてけぼりにしてしまう、みたいな理由から来るものらしいが……ともあれ、具体的な名前こそ付いていないっぽいものの、この現象が科学者達に歴として認められたもの、ということには間違いないだろう。*1

 

 ……問題があるとすれば、それが本当なら起きて欲しくなかったものだった、ということだろうか。

 

 

「……感動で泣くって言うの、実はよく分からなかったのよね」

「色々見てるっぽいのに?」

「体に引っ張られてるところもあったし。……まぁ、凄いなーくらいの感想を抱くことはあったのよ?」

 

 

 観客席に座っていた侑子は、その(まなじり)から一筋の涙を流し、呆然としたような口調で感想を吐き出し続けている。

 その反対ではゆかりんが『うっうっ……立派になって……!』と、君は親御さんかい?みたいな感想を溢していて。

 

 

「……悔しいが、これは無理だな」

「ああ全く、末恐ろしいな彼女は。──だって、これで全てってわけじゃないんだろう?」

「再現度はわりと高い方のエリザベートさんですが……それでも、彼女の全てを写し取れているわけではありません。──すなわちそれは、本来の彼女が本当に他人のために歌えるのなら、今以上のモノを作り出せるかもしれないということ。──もしかしたら、あのエリザベートさんも、いつかはその域に──」

 

 

 別所では、エミヤさんやマシュ、ライネス達が感嘆と諦めを交えたような感想を吐きながら、静かに拍手を続けている。

 

 ……まぁうん、ここまで言えばわかるだろうけど。

 現在はエリちゃんのラストライブ終了後。彼女の今の全力を受けきった観客達は──よもやこれほどとは、と総員スタンディングオベーションとなっていたのだった。

 

 そして、驚きは観客達だけに走るものではない。

 それを為して見せたエリちゃん自身にも、その驚きは波及していたのだった。

 

 

「……えっ、えっえっ、なにこれスッゴい、みんながスッゴく私のこと褒めてくるわ!?」

「エリちゃん……(ほろり)」

 

 

 褒められなれていない子、みたいな反応を示す彼女に、思わず涙がちょちょぎれそうになる私である。

 

 ……よもや、他人のために本気で歌うというのが、ここまで彼女のポテンシャルを跳ね上げるとは。恐ろしいと言うほかないだろう。

 っていうか、マシュの言う通りエリちゃんの再現度はほどほど、言うなればまだ成長の余地があるということであり──いつか頂にたどり着いた時、一体どれほどのモノを見せてくれるのか……なんて期待感まで煽ってくる始末である。

 

 

「──寧ろ、今の彼女は一つレベルが上がったところ、ということなのかも知れませんね」

「まぁうん、上がってるって言ってもいいかも。……ただまぁ、良いことばかりじゃないんだよなぁ……」

「……ん、どうしたデーモンガール。あのドラゴンガールが成長することに、なにか問題でもあるのかい?」

「大有りよ……負けじゃんどう考えても……」

 

 

 まぁ、この状況下でのレベルアップは、正直絶望感マシマシなんですがね?

 

 彼女の成長を喜ばしげに眺めるアルトリアの隣、誘ってみたら意外と付いてきたダンテ君が、怪訝そうな声を返してくる。

 それに対して大きくため息を吐きながら──私は彼女の優勝を確信した言葉を吐くのだった。

 

 ……いやだって、ねぇ?

 いつだったかの、ダンテ君と一緒に観ることとなった独占ライブ。

 あの時は、自分のためと他人のため・その両方が混じってしまった混沌めいた歌こそが彼女の本領であり、ゆえにこそ私たちは不協和音の方にも耐性があるのにぶっ倒れたわけでしょ?

 それが見てごらんなさいよ、今の私たちの状態。……ダンテ君も私も、至って健康体でピンピンしてる。

 

 すなわち、今の彼女には以前のような不安定さはなく、常に天上の歌声を披露し続けたということ。

 つまり減点要素が一切なかった、ということでもあり。

 ……もうちょっとブレが出るんじゃないかなー、なんて予想は無惨に砕かれ、付け入る隙は一切ないという他の参加者への逆風状態。

 

 ……っていうか、そもそもエリちゃんがラストライブになってるの、期待はされてたけど同じように『密かにネタになることも期待した』上での選抜なので、ここまで上手く填まるとは誰も思ってなかったのである。

 いやまぁ、一部の人は『今のエリちゃんなら、良いとこ行くのでは?』とは思ってただろうけど……少なくとも、さっきお出しされたレベルのモノが出てくるとまで思っていた人はいなかった、というか。

 

 えーと、分かりやすく言うと……百点はどの出し物も出せないだろう、ってことを前提として──優勝争いする人達の評価点数が、大体七十点前後と仮定し。

 ある程度自身のあれこれについて理解を深めたエリちゃんならば、多分七十台後半は出せるんじゃないか、って思ってたら。

 実際にお出しされたのは八十から九十台に迫るであろう高得点確定の演技だった、みたいな感じというか。

 更に、これからの研鑽次第では九十台後半、ともすれば百点も見えてくるのでは?……というような期待を煽る演技だったので、誰もが拍手をしている……と。

 

 ……うん、負けですねどう考えても(白目)

 事実、感動から徐々に戻ってきたらしいゆかりんは、涙を流したまま顔を青くする、というそれ絶望顔じゃない?……みたいなことになっており、なんというか色々心配になってくる有り様と化していた。

 

 いやーほんと、どうしようねこれ?

 

 

 

 

 

 

「子゛ネ゛コ゛ぉ゛ーっ!!?」

「はっはっはっ、やっぱりこうなったよチクショーがぁっ!!(やけくそ)」

 

 

 まぁはい、感動冷めやらず次の日になったわけですが、案の定エリちゃんが優勝して指輪ゲット、ということになりまして。

 

 んでまぁ、何故かここでモモンガさんがサプライズ、彼の手から直接の下賜を、というシチュエーションが用意される運びとなり(聞いてなかったらしいゆかりんが『えっ?』と更に絶望してた)、その結果として彼の負のオーラを吸収した指輪は、遂にエリちゃんの手に触れて顕現。

 現れた超巨大メカエリチャン*2との、仁義なき戦いが大勃発する運びとなったのでありました。……ミサイルは止めろー!!

 

 

「うむぅ、まさかそのようなことになっていようとは……」

「すみませんねぇうちでは日常茶飯事なんですよ!……っと、ごめんマシュお願い!」

「言われずとも……!『いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)』!!」

「ぬおわっ!?あちちち!?」

「あ、すすすすみませんモモンガさん!?」

 

 

 観客席とかにも無差別に攻撃をばら蒔いているので、一先ず防御組と攻撃組でメンバーをわけ対処に当たっているが……まさかの没技・『メイガス百連発(超人姉妹同盟)』まで使って来ているため、わりと切羽詰まっている感じである。*3

 ……っていうか、指輪がメカエリちゃんに変形する際に、コクピット部にエリちゃんを取り込んでしまっているため、それを先にどうにかしないことにはまともに攻撃もできないというか……なんにせよじり貧だよ、じり貧!

 

 

「なるほど、ではこちらも切り札を切るとしましょう。──グランゾン、アークション!」*4

「って、シュウさん!?今グランゾンっつったこの人!?」

 

 

 余裕がないのでみんながてんやわんや、対悪宝具である城を近くで顕現させてしまったため、悪属性の人々に間接的にダメージを与えてしまって謝罪するマシュとか、なんとも言えない光景も散見されたが……一番問題だったのは、ここぞとばかりにグランゾンを御披露目し始めたシュウさんだろう。……ここを地獄に変える気ですか貴方!?

 

 

「──いいでしょう。集いなさい姉妹達。我ら姉妹の絆によりて、敵を殲滅せしめる神槍となるのです。──メガ・チェイテ・ランサー、アクティベート」

「わぁ、メカエリちゃん達が集まってでっかい槍になったぞー、かっこいー」

「しっかりしてくださいせんぱい!?とりあえず離れますよ!?」

「──ふっ、ならばこちらも奥の手を見せましょう。『試作縮退砲』……またの名を、『ブラックホールディスラプター』。事象の狭間に掻き消えなさい──!!」

「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛!!?」

 

 

 現れた異様・グランゾンの姿に、本気を出さねばならないと理解したメカエリちゃんは姉妹達を束ね、巨大な槍と為す。

 すなわち、エリちゃんの槍の巨大版。……のちの惨状が目に見えるようなんだけど、最早笑うしかねー()

 

 対するシュウさんも、最近許された()らしい試作縮退砲こと『ブラックホールディスラプター』で迎え撃つ構え。*5

 ……これは死んだかも、なんて感想を抱きながら、周囲の全ては極光のうちに飲まれていくのであった……。

 

 

 

 

 

 

「……なんなのであるか、この事態は」

「んー、ネコの気まぐれレシピというやつなのだな。裏側気取りは置いていかれる前兆、すなわちバックダンサーみんな風邪で休み、と」

「……ええい、我輩が言うのもなんであるが、敢えてこう宣言させて貰うのである!──強制リセット、執行!」*6

 

 

 なお、どこかでそんなことを呟いた人のお陰で、なりきり郷が消滅する、なんて大惨事は最終的に回避されることになるのだった。……あーうん、よくあるやつですねわかります。

 

 

*1
特に名前は付いていないが、楽しいことをしていると時間が早く流れる、というのは確かな話なのだそう。なお、歳を取ると一年が早くなる、という事象の方には『ジャネーの法則』という名前がついており、そちらは『経験したことが増え、多くのことが既知になるから』なのだとか

*2
三代目ハロウィンのあれ。まさにスーパーロボット

*3
メカエリチャンの設定上の技の一つ。量産型メカエリチャン達を呼び寄せ、それを敵に突撃させるという技。元ネタは『MeltyBlood』におけるメカヒスイの技『超人姉妹同盟』なのだが、もう一方の名前である『メイガス百連発』の方は、『真マジンガー衝撃!Z編』におけるマジンガーZの必殺技『ロケットパンチ百連発』が元ネタであり、そちらは無数のロケットパンチで相手を攻撃したあと、それらが合体して巨大なロケットパンチになる……というもの。もう見れば元ネタだってわかるパロディ加減

*4
イントネーションは『ビッグ・オー、アークション!』と同じ

*5
アプリゲーム『スーパーロボット大戦DD』で登場したグランゾンの新武装。かつては『試作型縮退砲』の名前で、プレイステーション版の『スーパーロボット大戦α』にのみ登場していた。ネオ・グランゾンの縮退砲を先出ししたもの、みたいな感じなのだが、その当時は『ネオ・グランゾンでしか使えない』はずの装備だった為、(試作と付いてはいるものの)ファンからは不評だった。『ディスラプター』の方は、産みの親とも言える阪田雅彦氏の全面監修で作成されており、設定面の不備はない

*6
『機神飛翔デモンベイン』の二週目以降で起こる特殊エンドのこと。本来負けイベントのはずの場所で勝ってしまうことで、黒幕(邪神)が匙を投げるという珍しい事態に陥ってしまう。それを引き起こすのが彼・ドクターウェストなので『我輩が言うのもなんであるが』、ということ。つまりは『爆発オチなんてサイテー!』




幕間終わり、閉廷!
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