なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
施設の中は綺麗な方が良い
「……あの、せんぱい?大丈夫ですか?」
「んー?なにがー?」
季節は秋も終わり頃。あれだけ活発だったエリちゃんも、そろそろ冬眠の準備をしてそうだなー、なんて感想が浮かんでくるような、そんな時期。*1
郷内に植えられているいちょうの木々も、いつの間にやら鮮やかな黄色に染まっていて。
そうして地面に落ちてきた葉っぱを掃き集めながら、私はぼーっと空を眺めていたのだった。
つい先日の(祭云々の)騒動によって、すっかり記憶の彼方に追いやられていたけれど……父の危篤の報に合わせて実家に戻った折、色々と問題が噴出していた……というのは確かな話。
その辺り、本当なら対処とか対策とか、色々と考えなければいけないことが山ほどあるんだけど……。
(対処って言っても、今のところどうしようもないんだよなぁ)
むぅ、と唸りをあげる私。
……
ついでに言うのなら、今の
なので、今の私ができることと言えば、話題そのものを掘り返さないこと、ということになるのだが……。
(……まぁ、ゆかりんが話してないのなら、大丈夫……なわけないんだよねぇ)
はぁ、と一つ息を吐く。
その辺りのことについて、マシュはなーんにも聞いてこないけど……
彼女の父は、
なので、私の父が入院したとなれば、その見舞いに来るのは当たり前のこと。
なにせ、彼女の家族があの地に引っ越してきた時、あれこれと世話を焼いたのがうちの家族だったからだ。……言うなれば、家族ぐるみの付き合いである。
そうして付き合いをしている内に、あれこれと問題が見えてきたわけだけど……決して悪人ではない、はず。
だから、そうして仲良くなった相手が入院した、となれば見舞いの一つや二つ、とばかりにやって来ることは容易に想像でき。
そうして容易に想像できるからこそ、マシュがまったく気付いていない、なんてことはあり得ない。
(……まぁ、今は別のことに夢中だから、ってこともあるんだろうけど)
ただ、少し前ならいざ知らず、今の彼女がその辺りのことについて、一切触れてこない理由……というのは、なんとなく予想が付く。
そう、単純にそれよりも
(返事が欲しい、ねぇ)
もう一度、今までのそれよりも深いため息を吐く私。
今の状況で、それを望むのは高望みしすぎだろう。マシュも、
ゆえに、口を噤むことしかできなかったわけだが──同時に、その解決法についても示してしまったため、彼女はとかく張り切っている、という状態。
……言わなきゃよかった、なんて後悔が浮かんで来るが、同時に彼処で口にしない、という選択肢もなかったので、最早頭を抱えるしかない私なのであった。
いやまぁ、表面上は単にアンニュイになってるだけ……っていう風にしか見えないだろうけどね?
「……ああもう、早く帰ってこないかな、キリア」
「?お母様が、どうかなさいましたか、せんぱい?」
「……マシュの汚染が思ったより深刻だった件について」
「え?……あっ」
そうな風に再度ため息を吐いて──今ここに居ない、キリアのことを思う。
彼女が帰ってこない内は、話が進むことはないだろう。少なくとも、私に纏わる話については、確実に。
そんな思いを込めての言葉は、マシュの精神汚染が大変なことになっている、という事実だけを克明に映し出し、更に私の胃にダメージを与える結果となるのだった……。
「そういうわけだから、仕事ちょーだい!」
「また唐突ねぇ」
家の前の掃き掃除を終わらせ、その足でゆかりんルームに足を運んだ私たち。
今回の祭のあれこれを書類に纏めるため、机の上の資料とにらめっこをしていたゆかりんは、こちらの様子に呆れたような、はたまた感心したような嘆息をあげるのであった。
……まぁうん、製造上の不備、ってことで(指輪に纏わる)責任は折半になったうえ、第三者である西博士によって、なりきり郷の強制リセット機能の外部起動が行われた──などの迅速な対処により、どうにか被害は
だからといって報告の義務が免除されるかと言えば、それは別の話。
ぶっちゃけると一般層……とは名ばかりの政府高官の縁者達が祭に参加していたため、彼らを納得させられるだけの再発防止策を提示しなければならない、ってことになってしまったらしく。
それが出来なかった場合、最悪両組織の運営の停止、なんてことにまで議会が紛糾してしまったのだとかなんとか。
「まぁ、あくまで口でそう言ってるだけで、実際のところ解散処分になることはない、とは思うんだけどね?」
「まぁ、ここって下手すると、一つの国レベルの人口と資源生産力があるからねぇ」
無論、解散処分はあくまで口実であり、どうにか納得の行く対策をでっち上げて欲しい、というのが向こうの大体の意見らしいのも確かなのだが。
人を轢いてしまうから車は止めよう、という話にはならないように。
はたまた、赤ちゃんに食べさせると不味いから、ハチミツの販売を止めよう、なんて話にはならないように。
物事において、負の面が一切ないもの……というのは実は存在しない。良点は見方を変えれば欠点となり、欠点もまた見方を変えれば良点となりうるがゆえに。
今回の場合で言えば、ともすれば世界を滅ぼしうる力を持っている、ないし組み合わせなどによってそこに手が届く者がいる、ということは事実であるが。
かといってそれらの力を持つ者達が、皆揃って世界滅亡を望むかと問われれば、それはまた別の話だということ。
その理由は人によってまちまちだが──少なくとも、わざわざ火を起こさなければ火事に勝手になることはない、というのは確かな話である。
それらを踏まえれば──なりきり郷や互助会というのは、火薬の保管庫と見なすことができる。
確かに危ないものが保管されているが、適切な処理や使用法を守っていれば、寧ろ人に有益な効果をもたらすモノがつまった場所、という風に。
「火薬と違うところは、火薬そのものが自分達の危険性をある程度理解して、素直に保管庫に収まってくれる……ってとこかしら?」
「本来のアライメントが悪の人も、大体話せばわかってくれたからねぇ」
その上で、二人の言う通り勝手に保管されてくれる、なんて性質もあるのだ。火種を持ち込まない限りは、実に良い関係を築くことができるだろう。
だからこそ、ここを崩す、なんてことにはしたくない。
単純な益の問題からしてもそうだし、それを為した時に起こる
──勝手に保管庫に収まってくれるとは言うが、それがここ以外の場所でもそうだという保証はないのだから。
首輪を付けさせる為の新しい組織を作ったとして、それに恭順してくれる保証はどこにもない。
そもそもの話、両組織が共謀してことを起こせば、国家転覆だって難しい話ではない──それくらいの経済力も持ち合わせているのだ、こちらは。
無論、それを無闇に奮うことはないが──事が事であるのならば、こちらが躊躇することは(恐らく)ないだろう。
そうして戦争めいたことになれば、日本側にほぼ勝ち目はない。……いや、こちら側の人々の親族などを人質に取り、膠着状態を作ることは可能だろうが……そうなってくるとゆかりんが問題になってくる。正確には、彼女みたいなキャラクターが、だが。
「何処にでも、ってわけじゃないけど──最悪総理官邸とかには
「そんなことする気はないけど、やれるって時点で向こうには抑止力になってるよねぇ」
移動において、距離や場所の無視、ということを現行の人類は行うことができない。
その為、仮に戦争になった場合に唯一有効だと思われる人質作戦も、向こうのトップを押さえることができる空間系能力者がいる限り、ほぼ焼け石に水にしかならないのだ。
つまり、勝ちの目は一切ない、と言い換えてしまっても間違いではない。
それ以外にも、奇跡的に戦争にならなかった場合でも、人員の幾つかを諸外国にかっ拐われる、なんて可能性も否定はできない。
「あー、うちの原作でもそういう話出てたねぇ」
「呪術師のエネルギー源としての利用、みたいな話だったかしら?」*3
「そうそう。……まー確かに?単にタービン回し続けろっていうなら、赫と蒼でちょっと異相差でも作ってあげれば、わりと永遠に回し続けてられそう……みたいな感じはあるからねぇ」
漫画の中、夢物語のそれらを実際に扱える……という話に、食い付かない人間がいるだろうか?いや、居ないはずだ。
五条さんが言うように、今ある諸問題のうち幾つかは、私たちが介入することで解決できるもの、というものも少なくない。
例えば錬金術なら、金属系のほとんどに対応できるうえに現実にはないオリハルコンなどの特殊金属さえも手に入れられる……かもしれないし。
電気の発電についても、五条さんみたいにほぼ無限にタービンを回し続けるなんて対処以外にも、ピカチュウ達のような電気能力者達に直接生み出して貰う、なんてこともできる。
まさに宝の宝庫。多少無理をしてでも、確保に走る国は少なくないだろう。
そういったあれこれを考慮すると、この場所を解散する、というのはデメリットの方が遥かに大きいのである。
だがだからといって、問題が起きたことそのものは変わらない。
ゆえに、なにかもっともらしい対策を講じて欲しい、なんていう風なお願いが飛んできた、ということになるのであった。
「まぁ、引け目もあるしねぇ」
「そういうわけだから、一緒に考える?」
「遠慮しまーす失礼しまーす」
「あっ、早っ」
なお、私としてはそんなめんどくさいこと考えてらんねー、っことで、さっさと部屋を抜けようなんて考えになったことを、ここにお知らせいたします。……頭脳労働はのーせんきゅー!頑張って二人とも!
「よ、良かったのでしょうか……?」
「ホントに悩んでるなら、こっちが向かう前に向こうからなにか言われてるだろうからへーきへーき」
「そ、それもそうですね……」
逃げる時、マシュがちょっと後ろめたそうにしていたけど……ホントに助けがいるなら最初からそう言ってるはず、と納得させ、私とマシュは別階に向かったのでしたとさ。