なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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探し人はなかなか見付からない

「……それで、結局せんぱいは何処に向かっていらっしゃるのです?」

「ええと、人を探しているのですが……特に何処かに(たむろ)している、というタイプの方でもないので、探すのに苦労している最中……という感じですかね?」

「なる、ほど?」

 

 

 突然のコズミック変態の襲来から暫し。

 目的の人物を探すため、あちこちを移動している私とマシュだが……お目当ての人物の姿は、今のところ見付かっていない。

 

 もしかしたら、こちらの襲来を事前に察知し、方々を逃げ回っている……とかかもしれない。

 そう溢せば、マシュは「せんぱいに追い掛けられて逃げるとは……不届きものめ」的なことを言っていたが……まぁうん、私が彼女達にやったことを思えば……まぁ、うん。

 思わず視線を逸らし、愛想笑いを浮かべるほかないというのも、まぁ仕方のない話というか。

 

 不思議そうに首を傾げるマシュにはなんでもない、と告げ、再び探し物を続ける私である。

 

 

「あ、キーアじゃない。どうしたの?……というか、なんでそっちの姿なの?」

「別の用事でこちらに来たのですが、ついでだから彼女達の顔でも見ていこうかと思いまして」

「彼女……?……あ、マシュちゃんこんにちは」

「は、はい。ご無沙汰しておりますアスナさん」

「……えっと、別に畏まる必要はないのよ?別に」

「い、いえ!せんぱいとは別方面で、アスナさんのことは尊敬しておりますので!できれば先生、などと呼ばせて頂ければ!」

「……その、キーアちゃん?貴方からももう少しフランクで構わない、って言ってあげてくれない?私からだと、こんな感じだから……」

「いいんじゃないんですか、先生。実際、それに近いことはされているのでしょう?」

「そ、それは、そうなんだけど……」

 

 

 そうして通行中に出会ったのは、この前の祭の時には顔を合わせることの無かった人の内の一人、アスナさん。

 アスナとアスナで被っちゃうでしょ?……みたいな理由から、祭に関しては中継だけ見ていたようだが……そんな彼女、いつの間にかマシュにとても慕われていたのだった。

 

 いつ繋がりを得たのか、ということはわからないが……いつの間にやら料理の先生として、マシュが師事を乞う間柄になっていた、とのこと。

 実際、原作の結城明日奈は料理上手、ゲーム内でも料理スキルをカンストレベルで極めているほどの料理の鉄人である。

 それに倣って、ここのアスナさんも密かに料理上手なのだ。

 ……そもそもの話、FGOの方の頼光さんの要素も混じっているので、料理が下手なはずもないのだが。だってあの人、キッチンメンバーに加わってないだけで、和食は普通に上手い人だし。

 

 そういうわけで、いつの間にやら料理の師匠となっていたアスナさんは、こうしてマシュからは尊敬の眼差しを受け続けているわけだけど……本人的には歳が近いこともあって、もっと友達っぽい感じになりたいとのこと。

 なので、たまーに二人が揃うと、私の方に『どうにかして~』オーラが飛んでくるのだが……。

 

 

(キリトさんの首根っこを捕まえる手腕……見習いたいものでしゅ!)

「……何故かは知りませんが背筋が寒くなるので、そのままの関係で良いと思いますよ?」

「そんなー」

 

 

 ……今より二人が親しくなると、なんか知らんが私の身に危険が及ぶ気がしたので、毎度こうして断り続けているのだった。

 まぁうん、別に嫌われてるわけじゃないんだし、それでいいんじゃないカナー?

 

 

 

 

 

 

 アスナさんと別れ、再び探し人を求めてあちこちを移動する私たち。

 道中、こちらでの知り合いにも何人か遭遇したりしたのだが……。

 

 

「さ、先ほどは驚いてしまいましたが。友人が訪ねて来たのですから、挨拶しないわけには参りませんわね!私、メジロマックイーンと申します。宜しければメジロ、とお呼びくださいまし」

「し、失礼致しましたメジロさん!先ほどはとんだ御無礼を……」

「いえ、今が良ければ全てよし、ですわ」

 

 

 先ほどの怒気?的なモノが引いた結果、改めて挨拶をしに来たマッキーとマシュが仲良くなったり。

 

 

「おう、キリアか。こっちにはどのくらい居るつもりなんだ?」

「目的の方が見付かれば、さっさと帰るつもりだったんですが……」

「……なるほどな。その様子だと、尻尾すら見付けられてねぇ、と」

「そうなりますねー」

「あー、手伝えたら良かったんだが……悪いな、俺は今から仕事だ」

「お気になさらず。また害獣駆除ですか?」

「まぁ、そんなところだ。……ところで、なんでそっちの嬢ちゃんは、俺のことをキラッキラした目で見てやがんだ……?」

「以前タイランしてた時の繋がりですね、わかります」*1

「は?」

(いつか、本家本元のご指導を受けてみたいものでしゅ……)

 

 

 いつぞやかのタイラン繋がり、ということからか、偶然出会ったソルさんに対して、キラッキラの尊敬の眼差しをぶつけるマシュと、そんな視線を受けて思わずたじたじになるソルさんの姿が見れたり。

 

 

「……ああ、こちらも色々あったが、今のところは問題はない……と言えるだろう」

「そうですか。では、向こうに戻った時にそう伝えておきますね」

「すまない、お願いする」

「……ところで、何故ここにシャナちゃんが……?」

「……別に。深い意味はないわよ」

「ああ、先日の祭で知り合ってな。アドバイザーとして、色々手伝って貰っているのだ」

「へー……」

「……なによその目は。燃やすわよ」

 

 

 あまりに出会えないので、ということで向かったモモンガさんの部屋では、何故かシャナがソファーでごろごろしていたため思わずキョトンとすることとなり。

 

 まぁ、そんな感じに、ある意味互助会の中を楽しんだ、というわけなのだった。……相変わらず、目的の人物は見当たらないけどね!

 

 

「まぁ、どうにかその片割れは見つけることに成功した、というわけなのですが……」

「なんじゃああああ!?」

「何故岡田さんのような叫び声を……?」

「文字の上だと、おじいちゃん口調とさほど変わらない叫び方だから、ということでしょうか……?」

 

 

 まぁ、あちこち探してたお陰で、どうにか探し物の片割れ──ミラちゃんの方は見付けることができた、というわけなのだが。

 祭が終わって以降、なんか露骨に避けられていたが……なんにせよ、見付かってよかった。はっはっはっ。

 

 

「ええい離さんか、どうせわしをぼこぼこに折檻するつもりなんじゃろ!薄い本みたいに!薄い本みたいに!」

「私にそういう猟奇的な趣味はありませんよ、まったく。……はい、これ」

「……ぬ?」

 

 

 まぁ、そうして逃げていた理由は、どうやら気まずかったから、らしいが。

 なにせ前回の騒動、彼女が関わったことで事が大きくなった、という面もなくはないので。……なお、他の下手人であるエミヤさん・なのはちゃん・凛ちゃんの三人は、普通に禊を終えて大手を振って歩いているし、特に気に病む様子もなかった。

 

 エミヤさんは原作が原作だけに、こういう騒動にはある程度耐性(諦め)があるし(とはいえ、自分がその片棒を担ぐことになるとは思ってなかったので、ちょっと動揺したりはしていたみたいだけど)、他二人はそもそもそういうのが日常茶飯事な、なりきり郷出身者である。

 気に病むだけ無駄、というのは最初から把握済みというわけだ。

 

 

「なのでまぁ、気に病むこと自体は間違いではないですが……所詮はこんなもの、です。世界が滅びなかったのだから、結果オーライですよミラちゃん」

「……慰めてくれておるのはわかるんじゃが、これは一体?」

 

 

 なのでまぁ、そういうのに一人だけ耐性のないミラちゃんが、変に気に病んでいるのではないか?……と、ちょっと気にしていたのである。

 ご覧のように案の定だったため、来てよかったと言うべきだろうか。

 

 まぁ、それはともかくとして。

 彼女に慰めの言葉を掛けながら、差し出したのは小さな箱。

 紺色のそれはとても軽いが、しかしどことなく高貴な空気を醸し出している。

 ……ぶっちゃけると指輪箱なのだが、そんなものを差し出される理由がわからないミラちゃんは、先ほどから私とマシュの顔を交互に眺めているのだった。……主にマシュの方を気にしている、とも言っておく。

 

 

「…………」<ゴゴゴゴゴ

「の、のぅ?もしかして実はわし、今から車裂きの目にあうとかそういうことではない……よな?」

「はっはっはっはっ」

「普通に笑うでないわ!!?」

 

 

 その指輪箱は一体(どういうことでしゅか、ミラさん)?……とでも言いたげなマシュの視線に晒され、思わずガタガタと震えているミラちゃんが面白いので、思わず笑ってごまかす私。

 とはいえこの状況を続けると、どう考えても私も恐怖に震える羽目になるので、ここで種明かし。

 指輪箱の中に鎮座していたのは、一つの指輪。

 ()()()()()()()()()が特徴的なその指輪を見て、彼女は明確に「ひっ」と息を飲んだのだった。*2

 

 

「実は、事件の解決後、爆心地の中心部からこの指輪が出土しまして。念のため次元遮断などを駆使して確認したところ、中身の制御AIは掻き消え、代わりに何度でも利用可能な精錬石のような状態になっている……ということがわかりまして。折角ですので、そういうものをご入り用なミラちゃんに差し上げましょう、と会議で決まったのです。──で、それを私が渡しにきた、というわけですね」

「のう?実は凄く怒っておるじゃろお主ら?わしのことぼこぼこにしたくて仕方がないやつじゃろお主ら???」

「いえいえそんなことは。責任、という意味では私たち全てが背負うべきもの、誰か一人だけが悪いわけではありませんので、これは純粋な好意からの贈り物ですよ?」

「嘘じゃー!!そのアルカイックスマイルには裏しかないやつじゃー!!!」*3

 

 

 中に入っていた悪いものは消し飛び、元々の『精錬石の填まった指輪』に戻ったこの指輪。

 無論、当初これを手に入れる権利を得たエリちゃんは辞退したし、他の面々も欲しい人が居ればあげますよ、と続々辞退。

 

 結果、これの所有者を決める時の会議に居なかったミラちゃんに、所有権が移動した……というだけであって、悪意なんてとてもとても。

 

 そう誠実に伝えたものの、その笑顔が悪魔に似ている(要約)とかなんとか言いながら、彼女はいやじゃいやじゃと首を横に振り続けるのだった。むぅ、単なる親切心なのに。

 

 

*1
※66話参照

*2
四角い宝石が三つ、それを流れ星に見立てた模様が入っている

*3
アルカイクスマイルとも。古代ギリシャのアルカイク彫刻に見られる表現の一つで、感情表現を抑えつつ口だけはしっかりと微笑んでいる、という表情のこと。生命感・幸福感を表すものだとされているが、目が笑っていないので怖い、と見られることも多い

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