なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「快く受け取って頂けてよかったですね」
「あれを快く、と言っても宜しいのでしょうか……」
泣いて喜ぶミラちゃんの懐に指輪を捩じ込み、ついでに所有者の刻印もしてあげた私は、その足で更なる探し物のために次の場所へと移動を開始していた。
なお、件の指輪は返品不可なので、しっかりかっちり使ってあげて欲しい、と伝えておいた。
所有者の刻印もしてあるから紛失しても戻ってくるし、使用回数が上限突破してるから使ってもなくならないし、まさに彼女には持ってこいだな!
……え?恨み?そんなもの一切ありませんよ???*1
ともあれ。
最初の目的を達成するのに結構な時間を浪費してしまったため、もう一つの目的に関しては早々に片付けたいところである。……あるのだが、どうにもこちらも先のミラちゃんと同じく、こっちの追跡から逃げ続けているということは間違いないようだ。
なにせ、道中で話を聞いた幾人かが、そんな感じのことを話していたからね!
「なにも取って食おう、というわけでもないのですから、素直に出て来て欲しいものなのですが……」
「私が言うのもアレなのですが……せんぱいのそのお顔が悪いのでは……?」
「おおっと、慈悲の心が顔に」
あらやだマシュまで。
私は単に薄く微笑んでいるだけだというのに、みんな酷いんだからー。(棒)
……まぁ、笑顔の形は威嚇だったとか、相手への服従の証だったとか、わりと良い意味を聞かないというのは本当なのだが。*2
それが今となってはよい意味として捉えられているのだから、なんというか進化というものの不思議を感じざるを……え?ごまかすな?
こほん。
ともかく、別に相手を害しよう、なんて意図が私にないのは明白。
なので恐れず慌てず、素直に私の前に出て来て欲しいと切に願うばかりなのです。
なにせ、これは仮にも一時師事をした相手への、無償の愛なのですから。そう、愛なのですよマシュ。
「……そういうところが避けられる理由なのでは?」
「ンンンンン」
思わずよく分からないうなり声をあげながら、マシュのツッコミを受ける羽目になりましたが私は元気です()
はてさて、探し物を再開して早一時間。
相も変わらず相手は見付からず、仕方ないので食堂まで戻ってきた私たち。
「……そもそもの話なのだが、探すことで逃げられるのであれば、いっそ探さないのも手なのではないかね?」
「それでーす!よくぞそこに気が付きましたとも!」
「なんで沖田さんなんですか……?」*3
そこで、デザートを運んできてくれたエミヤさんからの入れ知恵により、罠を貼って相手を待ち構える作戦を立てたわけなのだけれど……。
「……まさかここまでうまく行くとは」
「ほぎゃー!!?離して欲しいッスー!!言っときますけどクモコさん、雨の日も風の日もちゃんと修行してたッスよー!!?こんなことされる謂れはないはずッスよー!!?」*4
「ええ、それは知っています」
「だったら何故ー!!?」
「?師とは理不尽なものだから、というだけのことですがなにか?」
「鬼ー!!悪魔ー!!!ちひろー!!!!」
「訴訟も辞さない」
「絶対に許さない」
「……!?今謎の人影が……!?」
まぁなんというか、すんなり取っ捕まえることができたのですよ、これが。
天井から伸びる紐によって吊り上げられている、一つの影。
それは、下半身が蜘蛛の体・上半身は人の体という、いわゆるアラクネの姿の生き物。*5
……まぁぶっちゃけるとクモコさん第二形態なのだが、その上半身は元ネタとはまったく違うものに変化していたのだった。
で、その上半身というのが、
「……育て方で変化する、というところが引っ掛かっちゃったのでしょうかねぇ」
「どうだろうなー。なんとなーく無害な奴になりたい、みたいな願いが反映された結果、かもしれないぞ?」
「響さんは無害と言い張るには、ちょっとアレではないでしょうか……?」
「──ああ、酷い話だ。古い鏡を見せられている」*6
「いやちげーから!クモコさんサバイバーズ・ギルトを拗らせて戦場に突撃したりしねーから!ッス!」
なんとまぁ、びっくりすることにジナコ・カリギリではなく、ヒビキ・タチバナ……もとい、『戦姫絶唱シンフォギア』の主人公・立花響の姿だったのです。まぁ、そっちよりちょっと髪長いし、なんなら眼鏡も掛けていたりするのだけれど。
並行世界の彼女の姿*7ですらない辺り、なにか属性が混ざった結果なのだろうが……うーん、リムル君の言う通り、できる限り
響ちゃんならまぁ、大体の場合良い子だし。……え?原作の境遇がわりとアレだから参考にするには微妙?
まぁともかく。
自分は悪い蜘蛛じゃないッスよー、無害な蜘蛛ッスよー……と涙ぐましくも主張するクモコさん、一先ずは問題なしと太鼓判を押してあげたいところである。
……あと、さらっと吊られている彼女の下でご飯を食べているリムル君も、原作とは違う姿に進化していたのだった。
さもありなん、彼の姿の変化は、本来とある人物を捕食した結果のもの。
その原因となる事件が起きないうえ、初期形態からステ振り直しみたいなことになっているのだから、姿形が変わるのは寧ろ自然なことなのである。
「その出力結果がテリーというのは、少々疑問を感じなくもないわけですが」
「少なくともジジイになるつもりはなかったから、とりあえず男性……って願ったら、なんかこうなってた」
「ドラクエ繋がり、ということなのでしょうか……?」
なお、その姿は何故か『ドラゴンクエスト』シリーズのキャラクターの一人、テリーみたいな感じになっていたのだが。……目付きがちょっと優しげなのもあって、どちらかと言えば青年期のトランクスの方が近い気もするけど。*8
ともあれ、仙術系からドラクエに派生した彼は、相変わらず覚えているものもドラクエ系の呪文が多い。
意外とドラクエ系のキャラを見掛けないのもあって、貴重なドラクエ系呪文ラーニングの相手となっているのも確かなのであった。
「ルーラとか、覚えられたら便利だしなー」
「しっかりと『3』以降の仕様のようだしな。……まぁ、私には使えなかったのだが」
「エミヤさんは呪文の素養もないのですね……」
特に、行ったことのある街へ飛ぶことのできる呪文・『ルーラ』は人気のものの一つで、あまりにも皆が覚えたがるため、モモンガさん直々に習得制限のお触れが出たというお墨付きである。
……まぁ、普通の魔力とは微妙に違うものを使うとかで、覚えられなかった人もそれなりに多かったのだが。エミヤさんなんかがよい例である。
……え?私?そりゃ普通に覚えましたがなにか?っていうか教わる前から使えたし。
モモンガさんには「まさか位階魔法、いやまさか超位魔法も……?」なんて風に聞かれたけど……うん、使えない方がおかしいよね、ってことで普通に使えますよ、はい。
まぁ、正確には『似たようなことができる』であって、厳密には超位魔法をそのまま使っているわけではないんだけどね、私の場合。
……でも下手すると『星に願いを』っぽいことできると言われれば、一人だけ課金ガチャし放題みたいなもんなので羨望の眼差しを向けられたわけだけど。
そのあとしっかりと
まぁ、その辺りの話は置いといて。
今回こっちに来るに辺り、ついでではあるけど確認したかったこと。
それは、最近進化したというクモコさんの様子を確かめること、だったわけなのでした。
「いえまぁ、ミラちゃんから多少は聞いていましたので、問題はないことはわかっていたのですが……どうせ近くまで来たのですから、直接確かめるのも良いかと思いましてね?」
「だからって宙吊りにするのは酷いッスよ!!」
「それを言うのなら、わざわざ避ける方が悪いでしょう?……というか、何故逃げたのですか?」
「こうなることがわかってたからッスよ……だってキリアさんスパルタなんッスもん……キーアさんの方ならまだしも、その姿だと凄女力マシマシじゃないッスか……」
「……む」
「……どうやら逆効果、だったみたいですね、せんぱい?」
「そのようですね……よもやこちらの姿の方にトラウマがあるとは。
なお、彼女がここまで執拗に逃げ続けていたのは、聖女モードの方がスパルタだった、という記憶があったからとのこと。
……最初のうちはキーアの姿の方が
そこまで厳しくしたつもりはないんだけどなぁ、なんて風に首を捻りつつ、いい加減グロッキーになり始めたクモコさんを下に下ろしてあげる私。
数分ぶりの地面の感触に安堵したらしいクモコさんは、ふぅと息を吐くとさらにその姿を一変させる。
……アラクネ形態から人に変化したわけだが、その姿はちょっと野暮ったい感じの立花響、という感じのもので、なんというか変な違和感をこちらに叩き付けてくるのだった。
「なんなんスか藪から棒に……」
「いえ、立花響と言えば元気っ子かやさぐれっ子の二択、今の貴方のような図書館で本を読んでそうなパターンはちょっと違和感が凄くてですね?」
「なるほど深層の令嬢だと。いやー、クモコさんも隅に置けないッスねー」
「……その変な自意識過剰感も、違和感と言えば違和感ですね」
「違和感しかないじゃないスか私への印象!!?」
なんというか、陰気というか湿っけというか、本来の立花響からは感じない空気感が立ち込めているため、目の前に立たれた時の違和感が酷いのである。
その違和感と来たら、先ほどの下半身アラクネ状態の響とどっこいどっこいなレベル。……上半分同じなのになんで?みたいな感じというか。
いやまぁ、多分ロングスカート履いてるのが追加された違和感の正体なんだろうなー、とは思うのだが。……中途半端に蜘蛛子さん要素が出ている、というか。鎌とか振り回して来そう、みたいな?
しないッスよそんなこと!?と声をあげるクモコさんに笑みを向けながら、はてさてどうしたものかと首を捻る私なのであった。