なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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一昔前は異形から人型になるとブーイングが酷かった

 さて、こうして彼女に出会ったのだから目的は達した……とは言い難かったりする。

 

 

「え、そうなんですか?」

「そもそも、なんのためにこっちに来たんスか、お二人とも」

「おや、聞いてません?一回滅んだんですよ、この世界」*1

「……はっはっはっ。またまたご冗談を。そんなことになってたら、クモコさん達こうして談笑なんかしてられないじゃないッスかー」

「…………」

「……え、なんでみんな黙るんスか?……えっえっ」

 

 

 私の言葉に、マシュが首を傾げるが……そのまま彼女の疑問に答える前に、クモコさんが『私たちがこちらに来た理由』について問い掛けてくる。

 こっちとしては、その質問には『なに言ってんだこいつ』的な感情しか抱かないわけなのだが……見ている限りでは、本気で疑問に思っている様子。

 

 ……性格の基本がジナコなこともあり、恐らく外のお祭り騒ぎについては無視を決め込んでいたのだろうなぁ、なんて思いつつ、改めて先日起こったことを告げると。

 彼女は一笑に付したのち、周囲の反応がおかしいことに気付いて奇声をあげ始めるのだった。

 ええと、なにその反応……?

 

 

「……恐らくは、だが。こうして立花響の姿を模している以上、本来であればトラブルには首を突っ込むつもりでいたのだろう。本人のそれとは違って、あくまでも内申点目的ではあるだろうが、な」

「なるほど。立花さんの姿である以上、トラブルを解決するように動くのが自然。その姿を周囲に見せることで、自身に敵意や害意はないということを示すつもりだった……ということですね?」

「俺はちゃんと誘ったんだぜ?……まぁ、『tri-qualia』に夢中になってたから、全然気付かなかったみたいだけど」

 

 

 どうやらクモコさん、本当なら祭……というよりトラブル?には参加する気満々だったらしい。その理由は、打算多めのモノではあったようだが。

 

 だが、その前に『tri-qualia』──面白いゲームに出会ってしまい、ジナコ的本能ゆえに叶わずのめり込んでしまった、とのこと。

 ……アスナさんが祭期間中にログインした時、聞き覚えのある声のキャラクターと遊んだりした……みたいなことを言っていたけれど、もしかしたらクモコさんだったのかもしれない。黒髪の剣士だった、って言ってたし。*2

 

 まぁともかく。

 本来の目的を忘れ、別の遊びに夢中になってしまっていたことに負い目を感じたらしい彼女は、今こうして奇声をあげ続けるだけのマシーンと化している、ということなのであった。

 うーん、どれだけ見た目を着飾ってみても上手くいかない時は上手くいかない、ということだろうか?

 

 

「うぐっ、なんだか知らないッスけど胃に痛みが……っ!!」*3

「ストレス性胃炎ですか?良いお医者さんをご紹介しますよ……って、そうじゃなく」

 

 

 思わずお腹を押さえて踞るクモコさんに苦笑を返しつつ、労るような声を掛けて……いや違うわそうじゃないわ、と頭を振ることとなる私。

 そういえばこの話、まだやること残ってるってところから派生したやつやんけ、普通の談話みたいに終わっちゃアカンわ。

 

 

「……なんかこう嫌な予感がするんスけど、クモコさん帰っちゃダメッスか?」

「無論ダメですよ?なにせ今回の目的の一つは、貴方達がどらくらい成長したのか、というのを確かめることも含まれているのですから」

「……あれ?なんか知らないうちに、俺も巻き込まれる流れになってる……?」

 

 

 露骨に嫌な顔をするクモコさんに笑みを返しつつ、我関せずとばかりにご飯を食べていたリムル君を引き込み、これからの予定を語る私。

 突然話を振られた形になったリムル君はといえば、イケメンなその顔を唖然の色に染め、こちらの言葉を反芻しているのだった。

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで。突発的生き残りクイズ、過酷でドン!のお時間でございます」*4

「なんなんスかその物騒極まりないコーナー!?」

 

 

 と、言うわけで。

 場所を移して訓練場、いつぞやかの時と同じロケーションに、今回は別な方がお一人。

 無論、ここまで付いてきているマシュなのだが……これは相手の成長を確かめる目的の模擬戦なので、オルテナウス装備の方でお願いをしている。

 

 

「見た目的にはそっちの方が痛そうじゃないか……?」

「いいえ、マシュは本来は盾兵──誰かを守る時にこそ力を発揮する騎士。攻撃面にパラメーターを振っているこちらでは、彼女本来の持ち味は生かしきれないので、総合的には脅威度は下がるのです」

「……いえその、せんぱい?……間違いではないのですが、あまり吹聴しないで頂けますと……」

「ご心配なくマシュ。一通り確認したあとは、今出せる全力を見るために、貴方にも全力を出して貰う予定ですので」

「……そのお言葉で、クモコさんがお顔を真っ青にされているのですが……」

「俺もちょっと胃が痛くなってきたんだけど、不戦敗ってことで見逃して貰えねー?」

「ダメでーす」

「ダメかー……」

 

 

 なお、これは彼女に手加減をして貰うためのもの。

 攻撃性能という点では、確かにオルテナウス装備の方が強いが……マシュの強みは防戦にこそある。

 そのため、総合力では通常の装備より劣ることとなり──結果として手加減になっている、ということになるのだった。

 ……いやまぁ、基本的な立ち回りは変わっていないから、油断するとあっさり足元を掬われるわけだけど。

 

 なお、対峙している二人はと言えば、クモコさんは響アラクネーモード、リムル君は呪文使いモードといった感じで構えている。

 ……見た目が響ちゃんみたいだからと言って、別にアームドギアを纏ったりはしないらしい。

 

 

「いやまぁ、見た目だけなら寄せられるんッスよ?こう糸でちょちょいっとすれば」

「おお、それは凄いじゃないですか」

「見た目だけの完全なハリボテ、硬度も無いので殴られたら普通にくしゃっとなりますけどね!」

「えー……」

 

 

 姿だけは真似られるよ?……と述べながらクモコさんが見せてくれたのは、下半身の蜘蛛部分にまでしっかりと鎧を着込んだ姿。

 ……だったのだけれど、どうにも単に糸で見た目を再現した、というだけであって防御性能はまったく無いらしい。

 なので、罷り間違ってノイズと出くわすことになっても、普通に塵にされてお陀仏するだろう……という彼女の主張に、思わず真顔になる私なのでありました。

 

 まぁ、そんな感じで模擬戦前の会話は終わり。

 早速とばかりに二人の動きを、マシュへの指示を通して確認していたのだけれど……。

 

 

「ほう、蜘蛛の三次元軌道を上手く使っていますね」

「ふっふっふっ、ゲームの経験も活かせるので一石二鳥ッスー!」

 

 

 まずクモコさんだが、単純に以前よりも体力・速力などが大幅に上昇していた。

 上半身がジナコではなく響ちゃんであることもあってか、どうやら運動はそれなりに得意、といえるくらいにはなっているらしい。

 それに加えて、糸を使っての三次元軌道なども駆使してくるので、普通に良い感じの戦闘ができているのだった。

 ……まぁ、速力と体力はあっても火力がないので、マシュの防御はまったく抜けていないわけなのだが。

 

 

「そこを俺がカバーする、っと」

「リムルさんは、攻撃系よりも補助系に力を入れていらっしゃるのですね?」

「まぁ、あんまり表だって戦いたくはないからなー。別に補助でもレベルは上がるし」

 

 

 それをカバーするのが、リムル君の操る多種多様な呪文達である。

 

 バギ系で風を起こして相手の体勢を崩したり、はたまたメラ系で相手の虚を突き、行動をキャンセルしたりなどなど、要所要所で必要な呪文を瞬時に発動してくるその姿は、ともすれば『賢者』とか言われてもおかしくない的確さを誇っていた。

 

 ……まぁ、直接攻撃系はマシュの高い対魔力に引っ掛かるため、どちらかと言えば補助しかできない……みたいな面もあるみたいだが。

 さっき試しとばかりにザキ系使って『こうかがないみたいだ……』ってなってたみたいだし。

 

 

「まぁ、そもそもこっち(現実)じゃあ、そういうオーバーキル系の技能は軒並み使えなくなってるみたいだけどさ」

「そうですね。原型保護の一種なのか、即死系の技能は軒並みほとんど劣化している、というのは確かな話です」*5

 

 

 仮に真っ当に発動できても、相手がマシュだと意味がないような気もするが。

 ……その辺り、効くにしろ効かないにしろどうにかなる、と確信しての行動だったようだ。

 なのでまぁ、マシュのやる気がちょっと上がったのは、些細な副産物である、多分。

 

 

「いえ、私の動きにどこか甘えがあったことは確かな話。訓練と言えど、油断をするべきでない……という、せんぱいからの啓示と受け取りました!」

(どうにかしてください、の眼差し)

(これは予想外なので頑張ってください、の眼差し)

「……わかった、クソゲーッスねこれ!!」

 

 

 ……まぁ、私もマシュ相手にザキなんぞ効かんやろ、と高を括っていた部分があるので、同罪と言えば同罪なのだが。

 

 ともあれ、その『試しに使ってみたザキ』がマシュのやる気に火を付けた、というのは確かな話。

 ……自分には効かずとも、弾いた呪文が後ろに飛ぶ可能性もある……みたいなことを考えているらしい彼女は、オルテナウス装備なのにも関わらず、まさしく獅子奮迅の動きを見せ初めていたのだった。

 

 なのでまぁ、クモコさんの叫びも宜なるかな、である。

 だって今のマシュ、ほとんどこれが訓練である、ってことを忘れ掛かっているからね!

 

 ぶつかったらわりと真面目に死にそうな、そんなメカメカしい大盾を必死に避けたりいなしたりし続ける、クモコさんの涙ぐましい健闘っぷりに、思わず感涙までしてしまう私なのであった。

 

 まぁ、あくまで感心するだけで、特に助けたりはしないのだが。こういう突発的な事態にも対応できてこそ、君達の能力の有用性を示す結果となるのだからネ!

 

 

「鬼ー!悪魔ー!スパルター!」

「なるほど、もっと激しくということですね!──レオニダスさん、私に力を御貸しください!」

「違うッスからねー!!?全然違うッスからねー!!!?……ってぬわーーーーっ!?」

「く、クモコダイーン!!?」

「……なんだか語呂の良い呼び方になっていますね?」

 

 

 なお、流石にクモコさんも付いていけなくなって、盾にぶん殴られて吹っ飛んだため、一時模擬戦が停止することになりましたが、スターは獲得できたので問題はありません。*6

 

 

*1
ポストアポカリプスである(大嘘)

*2
これまた同じ声の『ユウキ』こと『紺野木綿季(こんのゆうき)』のこと。中の人の名字が名前になっていて、かつアスナの名字と名前が同じ。キリトよりも強いということで有名だが、難病を患っていた為作中では既に故人。……なのだが、キャラとして惜しいということなのか、ゲーム世界線だと色々あって生存している場合も

*3
『間が悪かったのだ』から。ジナコを救った言葉だが、同時に救いすぎた言葉でもあり、彼女を規範とする彼女にとっても重めのワード

*4
フジテレビ製作の音楽クイズバラエティ『クイズ・ドレミファドン!』のタイトルから

*5
なのでモモンガさんの()()は驚異的、ということになる(正確には劣化ではなく、耐性が軒並み上がっているだけなので)

*6
ニンテンドーDS用ソフト『ヒラメキパズル マックスウェルの不思議なノート』『スーパースクリブルノーツ』のTAS動画で頻出するフレーズ。クリアアイテムの一種であるスターさえ入手できれば、そのあと起こることは全て些事……という意味の言葉。スターは命よりも重い……!(セカイを核の炎に包みながら)

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