なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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酒もないのに二日酔い

「そもそもの話、レベルシステムと獣系価値観が噛み合い良すぎなのよねー」

「弱肉強食は自然の理、それに親和性が強いのは寧ろ納得ですからね……」

 

 

 ぐだぐだと管を巻きながら、マシュと話し続ける私。

 酒も入っていないのに随分愚痴っぽいことになっているが、宜なるかな。

 どうにも問題ばかりが転がっている……と嘆きたくなる程度には、この世界にはトラブルが多いのだから。

 

 まぁ、愚痴っていても仕方ない、というのも確かな話なのだけれども。

 

 

「……難しそうな話してるな、アンタら」

「おっとハジメ君、やっほー」

「やっほー、って……軽すぎるだろ、幾らなんでも」

 

 

 そんな中、近付いてくる一人の影。

 ……まぁなんの捻りもなくハジメ君なのだが、彼はトレーの上にカレーうどんを乗せ、「隣、空いてるか?」とこちらに聞いてくるのだった。

 

 周囲は夕食時ということもあり、人でごった返している。

 いつの間にか周囲の席はいっぱいになっており、少なくとも私たちのテーブル以外で、すぐにすぐ座れそうな場所は残っていないのだった。

 

 ……なので、ちょっとむすーっとしているマシュに小さく謝罪しつつ、席の配置を変えさせて貰う。

 具体的には、マシュは私の隣、ハジメ君はさっきマシュが居た位置に、だ。

 なんでかって?そりゃもう、ハジメ君が私の横に来るとなると色々ヤバイからですよ()、具体的にはクソナード化する。デク君みたいに。*1

 

 

「……そういえば、こちらでは『マジカル聖裁キリアちゃん』は大人気コンテンツ、なのでしたっけ」

「一部に、と言うべきかしらねぇ。ハジメ君が積極的に見てる方だ、ってことに変わりはないし」

「……俺は正当な視聴者」

「ノってきた!?」*2

 

 

 ここのハジメ君は、原作最初の彼に変貌後の彼が【継ぎ接ぎ】されたような状態。

 要素の二重持ちという時点で、五条さんみたいにかなりの成長を見せる可能性を持つ人物なのだが……普通のハジメ君の要素の方が強いのと、変貌後の自身への嫌悪感もそれなりにあることからか、どうにもちぐはぐな状態で止まってしまっている感じになってしまっている。*3

 

 なので、というわけでもないのだろうが……今の彼は、わりとアニメオタクな部分を隠さなくなっているのだった。まぁ、既に周囲に事情はバレてるしね。

 

 

「……その台詞で思い出したけど、そういえばなりきり郷(ウチ)ってどっちも居るのよね、サンジ君とロー君」

「マジでか?!うわー、見てぇー!!」

「……私としては、今の君の喜びようを見せてあげたいよ」

 

 

 主に、君んとこの原作ヒロイン達に。

 目玉が飛び出して舌も飛び出す、まさしくワンピース的な感情表現をするハジメ君の姿に、思わず苦笑いをしてしまう私なのであった。

 ……例え見せたとしても、確実に一人は反応が変わらないだろうなー、と思いつつ。*4

 

 

 

 

 

 

「はいお帰りじゃあこれ持って!いってらっしゃい!!」

「これでは道化だよ」

 

 

 遅い時間になってしまったので、モモンガさんに許可を取って一日互助会に泊まり込んだ私とマシュ。

 

 そして翌日、見送りしてくれた彼に手を振りながら、サクッとなりきり郷に戻った私たちを待ち受けていたのは。

 徹夜でもしたのか、目の下にクマを作ったゆかりんその人なのであった。

 

 そんな彼女はというと、こちらに謎の小包を持たせたのち、再び互助会に向かえと告げてくる。

 ……いや、わざわざ私を使わずとも、スキマ便でパパッと贈ればいいやん?ゆかりんに無理だって言うなら、私が補助してもいいわけだし。

 そう返せば、彼女は「生憎と、物理的な移動以外はNGです」と、スキマの使用を暗に禁じてくるのだった。……はっはっはっ、これは面倒ごとですねわかります()

 

 いや、それならそれで、私たちが向こうに行く前に渡してくれれば……と思ったものの、小包の中身が完成したのはついさっき、すなわち昨日の時点では持っていくもなにもなかったのだ……なんて言われてしまえば、こちらとしても渋々頷くほかなかったのだった。

 

 で、話を聞く限りはどうも危険物っぽいので、できればマシュを再同行させたかったのだけれど……。

 

 

「え、無理?」

「すみません……これから別の仕事が」

 

 

 どうやらマシュ、これから別の用事があるとのことで。

 仕方なく、私は一人で向こうに行く、なんてことになりそうだったのだが……。

 

 

「んー?どうしたのキーアさん?俺の顔になにか付いてる?」

「ええと……暇だったので?」

「まぁ、俺の仕事は終わってたしねー。暫く暇だから、ちょっと付き合ってあげてもいいよー?……みたいな?」

「わぁてきとー」

 

 

 思わず冷や汗を流す私の横で、和やかに話し掛けてくるのは皆様ご存じ、五条悟。

 ……先程まではゆかりんと仕事をしていたみたいだが、その流れでこっちに同行する気になった、最上位の呪術師である(白目)

 

 ……あははは、どうやら昨日見捨てて逃げたことをわりと根に持っているみたいなのと、互助会に居る人の幾人かに興味ありありなので付いていく、みたいな感じになったようで。

 できれば全部無かったことにして帰りたいのだけど、この小包結構重要なものらしく、それは認められないわとゆかりんにノーを叩き付けられたのである。……わぁい、ゆかりんも怒ってるー(白目)

 

 ……怒ってると言っても直接攻撃してこない辺り、それほど重い怒りというわけではないのかもしれないけれど。

 それでもこう、胃の痛くなる案件を乗っけてくる辺りに地味めな報復感を感じざるを得ないわけで。

 

 わーいどうしよ、流石に自重してくれると思うけどトラブル待った無しだよなぁ、主に相方(夏油君)好敵手(モモンガさん)的な意味で。

 思わず涙目になりながら、私は二人分の電車のチケットを購入するのでありました。

 

 

 

 

 

 

「へー、ここが互助会。秘密基地みたいで、中々面白そうだねぇ」

「……お願いだから、変な気を起こさないでよ?」

「んー?変な気って、どういう気?」

「罷り間違っても戦闘しないで、ってことよ!わかってんでしょわざわざ言わせんな!」

「あっはははー。やだなーキーアさん。()()()()()起こらないよ?」

「なんで一々言い方が不穏なのよ……」

 

 

 道中、好き勝手駅弁買ったり風景を楽しんだりしていた五条さんに、なんとも言えない視線を向けつつ電車に揺られること暫し。

 最寄り駅で降りて、更に暫く歩いたところにある空き地。……どことなくドラえもんのそれを思い浮かべるような立地のその場所、そこにある土管の後ろ。

 互助会への入り口であるそこにたどり着いた私たちは、改めて五条さんに問題を起こさないように、と釘を刺していたのだった。

 

 ……まぁうん、本当に釘が刺せているのか、と言われると微妙なところがあるのだけれど。

 でもまぁ、帰ったりしていなければ、モモンガさんのとこにはシャナちゃんが居るはずだし。

 夏油君に関しても、現在は仕事かなにかで出張中のはず。……二人が顔を合わせる可能性というのは、限りなく少ないはず。なので大丈夫!……多分。

 

 こういう時に低確率の方を引く、という嫌な自信がなくもないので、一応は起こる可能性を考慮して動くつもりだが……なんにせよ、しっかり五条さんの首根っこを捕まえておかなければ。

 なんて風に、改めて気合いを入れた私は。

 

 

「……あれ?五条さん?五条さーん!?……あの野郎どっか行きやがった!!?」

 

 

 忽然と姿を消した彼に対して、思わず絶叫してしまう羽目になるのだった。

 

 

「へー、なるほどなるほど。血気盛ん、ってわりには戦力が足りてない、ってのは本当の話だったんだねー」

「……っく、」

「ぎゃー!!?早速喧嘩売ってるこの人ー!!?」

 

 

 そうして数分後、施設内を探し回った私はと言うと、トレーニングルームで膝を付く誰かと、その前でニヤニヤ笑いを浮かべる五条さんの姿を発見するのだった。

 ……やっぱり!トラブル!!起こしてる!!!

 

 慌てて近付いて確認したところ、膝を付いていたのは昨日ぶりのハジメ君。

 リングの外ではアスナさんが心配そうに彼に声を掛けているが……対するハジメ君は「問題ねぇ」と返し、フラフラとしながらも立ち上がるのだった。

 

 ……ええと、この状況から読み取るに……訓練中のハジメ君の対戦相手として、五条さんが飛び入り参加した……とかだろうか?

 なにも向こう(なりきり郷)と同じ事をしなくてもいいだろう、と五条さんに批難の視線を向けるも、返ってくるのは飄々とした態度と、肩を竦める動作。

 ……言外に「俺、悪くないし」的な気持ちが見え隠れしているので、思わず声を上げようとした私は。

 

 

「止めてくれるな、キーア……!」

「ハジメ君!?」

「これからなんだ、折角の楽しみを、邪魔しないでくれ……!」

 

 

 ハジメ君の声を聞いて、その注意を引っ込めることになるのだった。

 ……昨日夕食の席で、ちょっと話題に出したこと──ハジメ君の今の状態は五条さんのそれに似ているという話が、彼を無謀に向かわせているのかもしれない。

 そんなことを思ってしまうような、彼の態度に私たちは。

 

 

「……ふーん。根性のあるやつは嫌いじゃない、かな」

「ああ、止めてくれるな。……こんな楽しいこと、奪わせてたまるかよぉ!!!」

(……あ、ちげーわ。これ単にまたもやクソナード化してるだけだわ)

「ハジメ君……(呆れ)」

 

 

 五条さんは、単純に楽しげに相対し。

 それを受けて、ハジメ君は楽しげに彼に飛び掛かって行って。

 ……その様相が、滅茶苦茶楽しそうだったことに気付いた私は、ある意味この状況に酔っているだけだ、と気付いて唖然とし。

 全部知っていたアスナさんが、最後に呆れたように顔を押さえる、という形で締め括られるのだった。

 

 ……なお、そのあとぼこぼこにされたハジメ君はと言うと。

 見た目は変貌後なのにも関わらず、なんとも満たされたような笑みを浮かべたまま気絶しており、思わずため息を吐く私たちによって、医務室に叩き込まれることになった、とここに記しておく。

 

 

*1
『僕のヒーローアカデミア』の主人公、緑谷出久のこと。また、『ナード』とは『Nerd』と記述し、英語圏でのスラングのこと。意味としては『内向的』『特定分野への知識が豊富』『文化系の部活動やサークルに所属する』『スポーツに興味を持たない』『恋愛に奥手』などの特徴を持つ人を言い表す為の言葉。日本語的に言うのなら『陰キャ』もしくは『オタク』となるか。海外ではスクールカースト的に、オタク系キャラに対してのイメージがよくないので、どちらかと言えば否定的な呼び方

*2
『ワンピース』において、サンジがレイドスーツを着用した時に、その姿を見たトラファルガー・ローが述べた台詞『俺は正当な読者』から

*3
「なろう系ってのは、読者からの要望が大きくなりやすいのが玉に傷だな」「最後の方は、勇者君の方が人としては普通になってたりするもんねー」

*4
ただのオタクだった時から好きだった、というヒロインが一人居る

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