なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
危険物の再造に意味がある──。
そんな感じのことをモモンガさんから聞かされた私は、どうにも疑り半分で彼の話を聞いているわけなのだけれど……。
「じゃあ聞かせて貰いましょうか、それを作り直した理由、とやらを」
「うむ。実はだな、これをこうして、こうすると……」
彼が取り出したのは、また別の指輪。
それを最初の指輪と組み合わせて……?
「……なんと」
「ちょっといいこと、というのをバフ効果だと解釈することでな、他の装飾品の効果を高められるのではないのかと思ったのだ。……実験は成功、だな」
出来上がったのは、二つの指輪が組合わさった新たな指輪。
……どうやら、『流れ星の指輪』を一種の補助装置として扱えるようにした、ということらしい。
完成した指輪は、明らかに先ほどよりも輝きを増していたのだった。
「……ところで、そっちの元の指輪の効果は……?」
「うむ、『よく光る』だな」
「えー……」
なお、効果が目に見えてわかるように、という意味も込めて、使われた指輪の効果は『光る』だったわけだが。
……その指輪の使い処どこよ?
「……不思議ね、一応別の技術体系の指輪のはずなんだけど」
「うへー、単体対象どころか空間対象になっとる……」
「確かめるためとはいえ、いきなり爆発させようとするのはどうなんだ……」
その後、装飾品にならなんにでも組み合わせられるようになっている……という話を聞いたシャナちゃんが、自身の持っていた
「まぁうん、凄いのはわかったんだけど……これを具体的にはどう使うつもりなので?」
「一先ずは、この互助会の隠蔽機能の拡充に使う、ということになるだろうな」
「へぇ?」
確かに凄い指輪だが、以前と違って組み合わせることを主軸にしている……ということは、既に予定があるのではないか?……ということにも繋がるので、こちらとしてはそっちの方が気になるところ。
……そういうわけで、実際の運用方針について尋ねてみたわけだが、返ってきたのはこの互助会の隠蔽機能を強化する、という一見よくわからない答えなのであった。
いやこれ、装飾品と組み合わせるものなんだよね???
「うむ。まず前提として、なのだが。こちらで実用化されているジャミングブローチについては知っているだろうか?」
「あー、全体数はそんなにないけど、効果自体は折り紙付き……ってやつだよね?私も使ったことがあるけど」
そんな私の疑問に、モモンガさんは以前こちらに潜入していた時、さらにそこから出張する羽目になった際に貸し出して貰った、周囲の認識を変化させるブローチのことを話題に挙げてくる。
……そういえばそんなものあったな、という感じなわけだが……んん?
「……あれはな、とある特殊な鉱石を使用したものなのだが……」
「あ、いやちょっと待った。嫌な予感がしてきたから気持ちの整理を……」
「自然と砕けたモノしか、ブローチには加工できん。ゆえに、総数が全然足りないのだ」
「やーだー!準備できてないって言ってるのにー!!」
あのブローチは、特殊な製法でできたものである──。
そんなことを話し始めるモモンガさんに、思わず嫌な予感が足元から上ってきた私は、せめて心の準備をさせて欲しいと頼み込むものの、相手はまるでこちらの話を聞いていないかのように話を進め。
結果、でてきたのは
──すなわち、この互助会の認識阻害の大本となっているもの──護り石とでも言うべきモノの存在を、こちらに匂わせてくるのだった。
「ええとつまり?件の巨大原石は扱いとしては、この互助会の
「そういうことになるな。また、何ヶ月かに一度くらいの頻度で、欠けが起きるというのも特記すべき点か」
「なにその不思議石……」
この互助会の、根幹を支える護り石──その判定が、この施設に対しての付属物、すなわち装備品として扱われている……。
そんな、わりと意味不明な話を聞かされた私は、なんとも言えない気分で頭を抱えているのだった。
……いやまぁ、理屈はわかるのである。
特定の施設に付随するという形式は、見方を変えれば装備しているようなものだ、ということは。
問題があるとすれば、その護り石が次第に欠けているということと、その欠けた石が別の用途に転用できるくらいには力が残っている、ということか。
「欠けているってのが問題なのはわかるけど、再利用できる方も問題なの?」
「そりゃそうでしょ。……要するに、今の原石がおかしなものだって言ってるようなモノだし」
首を傾げるシャナちゃんに、これのなにが問題なのかを説明する私。
普通、なにかしらの機能を持ったモノというのは、それ全体で効果を為すものである、ということが多い。
いわゆる精密機械のようなもので、どこかに欠損ができればまともに動かなくなる、というのはわりとあることだ。
魔方陣などがわかりやすいか。
魔方陣は全体で一つであり、どこか一つを切り取っても機能はしないし、切り取られた方の大本の魔方陣も機能を喪失する。
ゆえに、欠けても動くというのは、それが全体で一つのモノではなく、細かいものがより集まって大きなモノに擬態しているだけ、という判断となる。
人間の体のようなもの、というべきか。
人は小さな細胞の集合体であるが、どこかが欠けたからといって即全体が動かなくなるわけではなく、欠けた方も適切な処置をすれば、そこから培養して増やすということも可能である。
そこまでを前提として、改めて件の原石に話を戻すと。
この原石は、全体が揃って初めて効果を為すものではなく、石の構成物質なりなんなりが、そもそも周囲の認識を拡散するという性質を持った物質である、ということになる。
ゆえに、砕けた欠片の方を加工しても、大本の原石と同じ効果を発揮している、ということになるわけだが……。
本来、周囲になにかしらの影響を発生させている場合、その物質は
この場合の消費とは、単になにかを
それを前提に置くに──欠片が剥がれ落ちる、というのは『周囲へのジャミング』という結果のために、原石がなにかを消費した・ないし磨耗した結果、効力を失った部分が欠けた……という風に考えるのが普通である。
ゆえに、速度的にはそこまで速いものではないだろうが──歴として、件の原石が段々小さくなっている、ということに違いはなく。
そして、本来老廃物にあたる欠片が、元の原石と同じ効果を(範囲が狭まったとはいえ)持っているということは。
すなわち、それははたして本当に老廃物なのか?……ということに繋がってくるわけなのである。*1
「……相変わらずややこしい言い方するけど、結局なにが言いたいの?」
「多分だけど。……その石自体も、一種の聖杯みたいなモノなのかもしれない、ってこと」
「は?」
なお、シャナちゃんにはわからん、とバッサリ斬られてしまったわけだが……端的に言うのであれば、その『欠ける』という現象自体が、周囲の人々によって
鉱脈を掘るように、こちらが削っているのであれば、まだわかる。
だが、自然物とおぼしきその原石が欠けていくというのは──言うなればそこが脆くなった、要らなくなったから欠ける、というのが普通のはず。
すなわち、欠けた方がキチンと効果を持っている、という時点で異常なのである。……
「……いや、岩盤の崩落みたいなパターンもあるわけじゃない?」
「まぁうん、そういうのもあるよね。岩は欠けても岩、確かにそうだ。……けど、さっきも言ったけど。周囲になにか影響を与えている以上、なにかしらの作用が発生している、というのは間違いない。
これは、この原石とやらが『周囲へのジャミング』という仕事をしている時点で、その異常さを際立てる結果となっている。
永久磁石は永久ではないように、世の中のあらゆるものというのは、常に経年劣化の可能性に晒されている。*2
劣化する理由、というものにはそれぞれ違うものがあるが──エネルギー保存則で言うのであれば、エネルギーの総量は必ず一致する、というのが答えになるだろうか。
なにかしらの仕事を行えば、そこには必ず熱が発生する。
熱は仕事とは直接関係しないモノであるため、いわゆる無駄である。そしてその無駄は、保存則を破れない限りは必ず付き纏うモノでもある。
すなわち、仕事の因と果が可逆であったとしても、単純にそれらを逆転させて繰り返していけば、そのうち因も果も成立しなくなる、ということ。
総量という点では変わらずとも、そのうちを締める
ここでは『欠ける』という物理的現象が起きているため、なにかしらの仕事をしているのだと判断したが……例えば磁力のような、仕事ではない力であっても話はさほど変わらない。
永久磁石が永久でないということは、単に力を発しているモノの中にも反発力というものは存在している、ということ。*3
すなわち、現実において存在するものは全て、必ずいつか失われるモノであるということである。
そこら辺を踏まえて見ると──欠片・すなわち失われた側のモノが、それでも力を発しているというのは奇怪。
ゆえに、そこに常道ではない力が関わっている、と見るのはそうおかしな話でもない、ということになるわけなのだ。
「だから聖杯みたいなもの、ってこと?」
「そ。原石の効果範囲からしてみても、どうにも広すぎるし──それが誰かの願いを聞き入れ、『自身の住み処を周囲から隠したい』みたいなモノを叶えたのだとすれば、それがジャミングという形で出力されてもおかしくはない、ってことになるわけ」
そしてそれが本当であれば──今のモモンガさんがしようとしていることは。
「うむ、その通りだ。この指輪は、件の原石のコントローラーになる、ということだな」
その聖杯を、少しばかり改良しようとしている、ということになるのだった。