なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
前回私はこの場所の原石とやらが、もしかしたら聖杯の類いなのかもしれない、ということを告げたわけだが……、対するモモンガさんは特に悪びれもせず、「そうだよ?」と軽い感じに言葉を返してくるのだった。
……思わず「懲りてね~!!」的な感情を私が抱いた、ということはわかって貰えるのではないだろうか?どう考えても火傷するやつ、みたいな。
「……モモンガ?」
「ああいや、別に聖杯を悪用しようだとか、そういうことではなくてだな?……今は欠片を溢す、という形で新たな祈りを叶えている状態だとも言えるわけだが……それだといつか、あの原石は完全に砕けてしまう。そうなってしまえば、待ち受けているのは我々の離散だ」
「……まぁうん、ここの防護の要だって言うんだから、砕けてなくなってしまうのは困るよね」
自然と欠けるということは、すなわちそれを止める手段がないということであり、いつかは全て砕けて原石ではなくなってしまう、ということでもある。
もしそうなってしまえば、この互助会は周囲への隠蔽手段を失ってしまう。……その結果起こるのは、大きな混乱だろう。
物語の中から飛び出した存在が、突然に目の前に現れたとすれば、そこで起こる反応は拒絶か許容の二つ。
許容ならばマシだが、拒絶の場合は酷いことになる、というのは言うまでもない。……いやまぁ、なにを当たり前のことを言っているんだ、という話でもあるわけだが。
まぁ、最悪こっちが潰れたとしても、郷の方に移動するという手段もなくはないが……その場合は色々と手続きやら事後処理やらで面倒なことになる、というのは目に見えている。
向こうとは趣を異にする者も数多くいる以上、その擦り合わせに多大な労力を必要とすることになるだろうというのは、容易く想像できる話だ。
その辺りを鑑みた結果、現状互助会が滅ぶようなことが起こる、というのはとても宜しくないと言える。
ここを取り巻く状況を見るに、いつまでも現状維持のままでいられるとは思えないが──だからといって、変化を強制するにはお互いの組織がまだ若すぎる。
「だからこそ、
「……あー、地下の開発計画……だったっけ?」
「そうだ。一時的に原石によるジャミング範囲を広げ、その効果が消えないうちに、周囲に影響を与えないような別の施設を作り上げる……というのが、今の我々の大目標だ」
それゆえに、モモンガさんが現在目標としていること。
それが、『新・新秩序互助会社屋建築計画』、ということになるのだった。*1
以前、サウザーさんが指揮を取っていた、地下の開発計画。
周囲の住民達には、別のペーパプランに偽装されており、かつ彼らの反対を受けているため計画は半ば凍結されている……みたいな、これがTRPGならば地下で邪教の集団が、変な儀式の準備をしていてもおかしくない……そんな計画。*2
実態としては、邪教の集団が互助会の人々に入れ換わっている、みたいな感じになるわけだが……ともかく、あまり大っぴらに工事をしていてはバレてしまうので、手作業でちまちまと進められていたアレ。
それをどうやらモモンガさんは、件のブースター指輪を利用して周辺住民の目を完全に騙し、完成させてしまったうえでそちらに移住しようとしている、ということになるらしい。
それが叶った場合は、ここの原石は役目を終えてブローチとしての加工を待つばかりにできる、とも。
「……えーと、具体的には?」
「うむ。件の話が公共事業として承認されている、という話は知っているな?それを前提として話すと──」
モモンガさんの話はこうである。
実はこの周辺の開発は、主に『地下街の建築』として設定されている。
そしてそれは、ある程度は出来上がっているのだ。
……まぁ、流石に梅田とか新宿みたいな、ダンジョンレベルの複雑さではないらしいが。
ともあれ、ある程度巨大な地下街と化していることは確かであり、同時に行き止まりのような場所が多い、ということも確かである。
そういった人目のない場所から繋がる通路を作り、さらにその先に新しい互助会の施設を作る。
そうすれば、認識阻害をする必要があるのは出入口付近のみになるし、見張るべき場所もそこだけに限定されるようになる。
現状は地上に出入り口を設定しているせいで、見張るべき場所が全天周・三百六十度全てになってしまっているため、余計な労力を必要としているが……。
「駅に繋がる通路には待合室のようなものを作り、そこを監視の前線基地とすれば負担も減るだろう」
「……秘密基地感が凄いけど、まぁ出来なくはなさそう、かな?」
二重扉のように、地下駅との接続部分にワンクッションを置き、そこからさらに認められた人間だけが通れる……という形式にすることで、隠蔽に特殊な力を必要とする回数を減らそう、ということになるようだ。
こうすることにより、必要になるのはワンクッション部分の部屋と駅との扉、およびその部屋から本丸である新・互助会の施設に繋がる扉の二つに対しての隠蔽、ということになる。
今までが施設を丸ごと隠蔽していたことを思えば、必要な労力は遥かに減ったと言えるだろう。ブースター付きのブローチで、事足りる程度になるのだから。
「……いやちょっと待ちなさい。今の話だと、新しい施設に隠蔽が必要ない理由がわからないんだけど?」
「それに関しては簡単だ。──我々は、さらに地下に潜る」
「はぁ?」
だが、その話に待ったを掛けるのがシャナちゃんだ。
確かに、今の話だと新しい施設の側に隠蔽が必要ない理由、というものがわからない。今の施設には必要としているのだから、なおのこと。
それに対してモモンガさんが返したのは次の通り。
現在の互助会の位置は、件の地下駅のまさに隣、とでも言うべき場所である。
通路が繋がったりはしていないものの、ちょっと厚めの壁を隔てて隣り合っている……というのが近い状態であるため、大きな音や振動を発生させる工事を行うと、それらが駅の方にも伝わってしまうのである。
隠蔽効果が及ぶのは、あくまでも施設そのものについて。
そこで発生した音や振動・それから今は漏れてはいないが、仮に匂いや気体などが駅側に出てきた場合、それについてもごまかせない。
存在は認識できないのに、そこにあるという証拠だけが見付かる状態、とでも言うべきか。
なんにせよ、隠蔽が機能するのはあくまでも施設そのものの所在について。
そこから飛び出した影響に関しては機能外となるため、要するに『無いからこそ気付く』という条件に合致してしまうのである。
それを避けるため、サウザーさん達は手作業で開発を頑張っていたわけだが……そもそもの話、隠蔽の効果範囲外に駅がある、というのも問題の一つなのだ。
すなわち、駅が効果範囲外なので、互助会から発生した音などが『発生源はわからないけど、駅以外のどこかから出てきたものだ』という風に認識されてしまうわけで。
これを効果範囲を広げることでカバーすれば、『駅のどこかから発生したものだな!ヨシ!』という風にごまかせる、ということになる。*3
今の状態では、互助会の施設を認識できないようにすることしかできないが、あのブースター指輪によって原石の効果を高めれば、駅部分までを覆うことができるようになるだろう。
そうなればこちらのもの。
今まで使えなかった作業用の機械などをふんだんに用いて、
すなわち、地下四十メートルよりも、さらに深奥。
他の施設などがなにもない場所に新しい施設を作れば、その中で起きた音が外に漏れる心配などをする必要性はなくなる、ということだ。
「……マジで言ってる?っていうか、崩落の危険性とかは……?」
「実は紫殿から、空間固定技術についての技術供与を受けていてな。……流石に空間拡張に関しては機密も多いので、現状では提供できないと言われてしまったが……少なくとも、空間固定技術による耐震などについては問題ない、とお墨付きを貰っているのだ」
「あー。そりゃそうよね、こうして指輪を試作してる辺り、お互いに話が付いてるってのは当たり前か……」
シャナちゃんはわりと常識的であるため、色々と粗の見える計画にツッコミを入れていたが……人員の少なさ、それに伴う娯楽の少なさなどなど。
現状の互助会が、今の施設のままでは回らなくなり始めている、という事実を聞かされれば、流石に黙らざるを得なくなっていたのだった。
……あとはまぁ、地下に施設を作る際の問題点、崩落の危険性とかについても、ある程度解消の手段を得ている……ということを知れたのもポイントというか。
なりきり郷が埒外のアーコロジーであるのならば、こちらは比較的現実的なアーコロジーを目指している、とも言えるかもしれない。
地下生活のモデルケースとしても注目を集めているとかで、この『新・新互助会社屋建築計画』は最早止められる段階ではなく、それを完遂するために各所が全力を上げて動いている……ということを知り、諦めたように彼女はため息を吐くのだった。
……え、私?スケール大きすぎてついていけないです(小並感)
「食糧プラント、大規模演習場、あとは……緊急時の郷への移動手段としての地下列車なども予定しているな。……いやまぁ、列車の方は時の列車を特別に貸し出して貰う、ということになりそうだが」
「なにやってんのモモちゃん!?」
なお、どうやら最近鬱憤が貯まっている(主に列車を動かすスペースがない的な意味で)らしいモモちゃんが、いつの間にやら新互助会と郷の間を結ぶ直通列車の車掌になりそう、みたいな話になっていることが、モモンガさんの口から飛び出したため、思わずビックリすることになったりもしたけど私は元気です()
……モモモモコンビ、とか言ってたらしいけど、不敬すぎやしないそれ?*4