なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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なんでもできるとなんにもしなくなる

「……え?もしかして気付いてなかったのキーアさん?」

「し、仕方ないじゃないですか。そもそも『人間はわりと好きだが、基本的に手助けはしない。彼らが自立するよう、試練を乗り越えるように最小限の力を貸す』というのが、本来の魔王・キリアの性質。そこから派生した私たちも、本来の方針はそういうものなのですから」

「それはわりと初耳かなぁ」

 

 

 キーアの方との情報共有により、明かされた衝撃()の事実。

 それを確認するため、五条さんに声を掛けたところ──返ってきたのは、今気付くんだ?みたいな、なんとも言えない視線なのであった。……さっきまでの楽しそうな雰囲気が完全に消えている辺り、本気で呆れられているようである。

 

 いやでもほら、私の基本構造ってキリア(母の方)に準じるし*1……中身は確かに俺だけど、大分原型としてのキリアに寄ってるし……みたいな弁明をすれば、彼から返ってくるのは「へー」みたいな反応。はたして信じてるのやら、信じてないのやら。

 

 ま、まぁともかく。

 人とは失敗をする生き物であり、その失敗を乗り越えられる生き物である。

 生き物と失敗は切っても切り離せないものであり、ゆえにこそ失敗に対してどう対処するのか、対処できるのか?……というのが、霊長としての格になるとかうんぬんかんぬん。*2

 

 ……よ、要するに。

 失敗なんて当たり前なんだから、そんなこと恐れずにチャレンジしていく精神こそが大事、というわけでですね?

 

 

「……いいこと教えようか。そういうのって詭弁・もしくは破滅するギャンブラーの思考、って言うんだよ?」

「……ぎゃふん」

 

 

 ……まぁ、自己弁護が過ぎて、五条さんにバッサリ切られちゃったんですけどね!クソァッ!!

 

 

 

 

 

 

「まぁ、キーアさんが気付いたんなら、俺も遊ぶの止めるけどねー」

「鬼ですか貴方」

 

 

 見事に私が撃沈してからしばらく。

 どうやら五条さん、それだけが理由ってわけではないのだろうけど……私が彼の仕事を代替できる、って気付くまで遊んでいよう……みたいな方針だったらしく。

 見事条件が満たされたため、あっさりと遊び──向かってくる挑戦者を千切っては投げ千切っては投げ──をするのを止めて、私と一緒にモモンガさんの私室へと向かっている最中だったりする。

 ……いや性格悪ぅ!?

 

 

「はっはっはっ。だって遊んでくれないじゃん?だったら、俺がキーアさん()遊んでも問題ないよね?」

「──大事なことなので二度言いますよ、鬼ですか貴方」

 

 

 彼が一言声を掛けてくれれば、その時点であっさりと終わる話だったものを。

 彼が私をおちょくって遊びたいから、というある種のわがままにより、この状況が生まれた……ということを思えば、性格悪ぅって感想が出てくるのも仕方ない、と思うのです私。

 

 ……いや、っていうか貴方の言う遊びって戦闘訓練でしょ?そもそも私戦いたくねぇって言ってるじゃん毎回。

 

 

「?」

「やめてくださいその、『毎回あれこれとぼこぼこにしてるじゃん』みたいな顔。必要に迫られてやってるだけであって、私が望んでやってるわけじゃないんですよ?」

 

 

 この間なんか、ついに手に入れてしまったらしい(入手経路は不明)ネオ・グランゾン(もどき)の試運転がしたいのですが、如何でしょう?

 ……なんて風に、シュウさんに絡まれて酷い目に遭ったというのに。

 なお、この話のオチとしては、もどきと言えどネオ・グランゾンの全力を出せるようなフィールドを用意できるのが私しかいないので、半ば強制連行・拒否権なんてなかった──というところになると思う。

 

 ……え?ゆかりん?スキマ?縮退砲の発射準備してたら『ミヂィッ!』っていう今まで聞いたこともないような軋みが発生したから、慌てて取り止めたとかなんとか言ってましたがなにか?

 

 機械類は再現度ルールでは持ってこれない、という話があるように──それでもなおそこにあるモノ、というのは色々とおかしいので仕方ないね。アスナさんのナーヴギアしかり、シュウさんのグランゾンしかり。

 どこぞの金星の女神*3でもないのだから、並行世界の皆々様は軽々(けいけい)に自身の持ち物を、落としたり貸し出したりしないで貰いたいものである。

 

 そんな愚痴は置いといて。

 まぁともかく、確かに色々絡まれたりする私ではあるが、前々から言ってる通りできれば戦いたくはないのである。

 これは、別に私が非戦主義者である、ということではない。

 

 

「……違ったの?」

「理由はあるんですよ、一応。……まぁ、言いたくないので説明はしませんが」

「ふーん。……結構厄介な話だったり?」

「当然を当然に享受することが、己の命を脅かさないとは言えないでしょう?」

「……あー、オーケーオーケー。あんまり触れない方がいいのね、了解了解」

 

 

 本当にわかっているのだろうか、この人。

 そんな感じの眼差しを向けつつ、はぁ、と小さくため息を吐く私。

 それから気持ちを取り直し、これからの行動について考え始める。

 

 向こう(キーア)からの思考共有により、今回の目的というものについては既に把握している。

 まさかの大引っ越し作業アンド移住先建設、という大仕事なわけだが……作業そのものは恐らく一週間も掛からないだろう。

 

 いやまぁ、モモンガさんの予定では、もしかしたら一月くらいを予定しているかもしれないが……作業員の()を用意できるミラちゃんと、最近真面目に国と対等レベルの存在だ、みたいなことが明かされて始めている五条さん。

 それから補助の私がいれば、工期は大幅に短縮できるだろうことは間違いない。

 

 

「あ、もしかして噂のやつ?」

「耳が早いですね……そうです、『誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)』を使います」

 

 

 そんな私の様子にピンと来たのか、五条さんが声を上げるが……その通り。

 所詮はなりきり、『逆憑依』。マシュレベルでも本人にはまだ遠い、とされる彼らの戦力を、一時的に原作越えにまで押し上げる荒業──『誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)』。

 これを適切に使えば、原作において『軍勢』の二つ名を持つミラちゃんの全力を出させることも、はたまた五条さんが本当に一国の電力を賄えるほどの性能を持つことも、双方ともに可能となるのである。

 

 

「……聞けば聞くだけ、意味わかんない魔法だねぇ。サポート相手を選ばないんでしょ?覚えたがる人も多いんじゃないの、特にこっちだと」

「まぁ、そうですね。実際ミラちゃんには『わしにも覚えられぬかのぅ?』なんて風に聞かれたりもしていますし」

「……その言いぶりだと、無理だったってこと?」

「はい。……私にしか使えない、というのも一つですが──わりとデメリットが重いのですよ、これ」

「へぇ?」

 

 

 そんなもの使えるのなら、みんなに使ってあげればいいんじゃない?……的なことを匂わせながら、五条さんがこちらにニヤニヤと笑い掛けてくるが……。

 以前ミラちゃんにも言った通り、この魔法にはデメリットがある。筋肉痛云々よりもよっぽど大きいデメリットが。

 

 

「──理想の自分?」

「今はそうでもないみたいですが……ここの方々は、原作の自分を指して『全盛期の自分』、今の自分を『なにかしらの理由で弱体化した自分』と捉える向きが強かったわけです」

 

 

 そのうちの一つが、例え一時とはいえ全盛期の自分を取り戻すこと──ひいては、その先に到達し得てしまうこと。

 

 なりきり(逆憑依)という存在は、確かに本人を現実に持ってきたモノではあるが……複製品、すなわちコピーに近いモノでもあるため、どうしても再現しきれない部分というものが存在する。

 座の話を例に出すのなら──原作を座の自分とし、今ここにいる自分はサーヴァントとして再現された自分、ということになるか。

 サーヴァントという括りである以上、クラス制限が課せられ、自身の全盛期の力は引き出せない……ということは良くあること。

 

 ケルトの英霊、ディルムッドが分りやすいか。*4

 彼は本来、特定の剣と槍の二刀流……という状態が一番強いということになるのだが、クラスという縛りによって剣二つ(セイバー)槍二つ(ランサー)という状態でしか召喚できない。

 もしかしたら、公式で『宝具をいっぱい持てる』のが特徴とされるライダー*5で呼ばれれば、件の最強状態(剣と槍)で呼べる可能性もあるかもしれないが……その場合はそもそものスペックが下がる、なんてことにもなりかねないため、全盛期とは程遠い状態しか再現できない、ということになる。

 

 定められたルールの中で再現されるため、このような悲しいことになってしまうわけだが……件の魔法を使うと、そのルールを逸脱できてしまう、ということになる。

 流石にモノを持ってくるとかはできないので、仮にやるのなら『ライダーのディルムッド』を強化する、ということになるだろうが……それはまさに、全盛期の輝きを取り戻した彼の姿、と言っても過言ではないものとなるだろう。

 

 但し、効果時間があるために、それは一時の夢。

 いつかは消え去る幻の全盛期である。

 

 ……だが、一度全盛期を取り戻せたとして、それを再び捨てることなどできるだろうか?特に、今の自分に歯痒い思いをしている者達が。

 

 

「あー……麻薬みたいなもの、ってことか」

「そういうものだ、と気付いてしまえば抗える程度の、とても弱いモノですがね。……でもまぁ、あまり濫用したいモノではない、というのはわかって貰えると思います」

 

 

 恐らく、また使いたい・一度と言わずずっと使っていたい……なんてことを思ってしまう人も出てくるはず。

 それゆえ、仮に他人が使えたとしても教えることはなかっただろう、ということになるわけである。

 

 ……で、実はここまでは建前。

 もっともらしいことを言って、本当のところを隠したモノということになるわけなのだが……。

 

 

「あれ、建前だったの?」

「建前ではありますが、本音でもあります。実際、ハジメさんなんかはちょっと名残惜しそうにしていましたからね」

「ふーん。……じゃあ、本当のデメリットってのは、いったい?」

「──これ、実は攻撃魔法なんですよ」

「……は?」

 

 

 隠された本当のデメリット──実は攻撃用の魔法を補助用に転用している、という話を聞いた五条さんは、なに言ってるのこの人、とばかりにこちらを凝視してくるのだった。

 ……よせやい、照れちゃうだろう?

 

 

*1
いつの間にかすっかり『母』扱いである

*2
生き物である以上、常に失敗の可能性は付き纏うというということ。それを成功させ続けるだけの技量を磨き上げた者が、プロと呼ばれるわけだが。だからと言って、彼らが絶対に失敗しないというわけでもない。『弘法も筆の誤り』

*3
無論イシュタルさんのこと

*4
ディルムッド・オディナ。フィニアンサイクルと呼ばれる物語の登場人物の一人。剣と槍という変則二刀流を得意とする騎士。……なのだが、そのせいでfateシリーズでは不遇の称号を得てしまっていたり(クラスシステム的に、剣か槍のどちらかしか持ってこれない、ということがほとんどの為)。特殊な剣を二本、特殊な槍を二本持っている

*5
『強力で多彩な宝具を持つ』とされる。その性質上、強い宝具を多く持っている英霊などは、三騎士で呼ばれるよりもこちらで呼ばれた方が強い、なんてこともあるようだ

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