なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「おほん。……まぁともかく、行き着くとこまで行き着いてしまうもの、というのがこの魔法の本質ですので、例え覚えられたとしても教える気はないということになるわけです」
「……やっぱりそこまでできて弱い、ってのは嘘じゃない?」
「何度も言いますが逆です。なによりも弱いと言うことは、すなわち全てのモノの土台となる、ということ。弱くて群れるからこそ、無茶苦茶ができるのですよ」*1
「詭弁が過ぎるような気がするなぁ……」
とまぁ、予想よりも長い語りになってしまったが、件の魔法の講釈についてはこれでおしまい。
目先のメリットに引っ張られると酷い目にあうものだ、ということを五条さん以下色んな人達が理解してくれると、とても嬉しいところである。
……え?なんで五条さんにしか聞かせていないはずなのに、みんなが云々の話になるのかって?それはねー。
「こっちで私も同じ話をしていたからなのだー!」
「おおっとキーアさん?……と、お久しぶり骨の人」
「……まぁ、好きに呼ぶといい。お前に畏まられるのは、そっちの方が傷付きそうだ」
「わぁひっどい。久しぶりにあったってのに、連れないねぇ」
「なんでこやつら、顔を合わせた途端に喧嘩腰なのかのぅ……?」
「挨拶みたいなもの、だと思いますよ?」
「物騒な挨拶じゃのぅ……」
こっちに向かってたキーアの方も、同じ話を同行者達にしてたからだよ!
モモンガさんの私室に繋がる廊下のうち、右の方から歩いてきた一行さまたちに挨拶を返しつつ、そのままモモンガさんが鍵を開ける間に融合しておく
「……む?戻るのか?」
「ちょっと準備がありますゆえー。ちゃんとお仕事はしますのでお気になさらずー」
「……なんかゆるいの、今日のお主」
なお、向こうには『誂えよ、凱旋の外套を』はキリアの時にしか使えない、みたいなことを聞かせていたため、そっちのメンバーだったモモンガさんとミラちゃんから怪訝そうな眼差しを向けられたが……心配なさらず、必要な処理ですのでと返して、そのまま開いた扉の中へと体を滑り込ませる私なのでありました。
「おおっと、これが噂の?」
「うむ、この施設の隠蔽を一手に担う、巨大原石だ」
モモンガさんの私室の奥、本棚に隠された階段を降りた先。
元々は以前のリーダーであったキョウスケさんが使っていたというこの部屋は、彼の代からこの原石が奉られていたのだという。
そんな話を思い出しながら見上げるのは、全長三メートルは有ろうかという、巨大な水晶のような岩塊。
うっすらと赤く輝くそれは、見ていると意識が逸らされるような感覚がしてくる。
「……へー、こりゃ強力……ってのは確かなんだけど、それより気になることが……」
「あ、五条さんも気付いた?」
「そりゃまぁ、この形式を見ればねぇ」
なお、その効果によって違和感を抱き辛いが……実は一つ、明明白白な奇異な箇所、というものがあったり。
それは、この石が明らかに
注連縄やら五芒星やら、明らかに特定の技術体系が関わっている感がある、というべきか。
「……ねー骨の人ー?これって
「む?アイツ?……ああ、夏油のことか。いや、そもそもこの場所は最初からこうだったぞ。……ああいや、正確には
「わぁ不穏度が跳ね上がったぞー()」
「む?不穏?」
……さっきから、モモンガさんが首を傾げるだけの機械みたいになってる件について。
いやまぁ、なんかこう可愛らしいんだけども。……ここで欲しいのは、彼の可愛らしさではなくてですね?
「気付かないの……って聞くのは酷か。確かにここ、ちょっと気張ってないとぼーっとしちゃう感じだし」
「本来の
「……さっきから二人とも、なんの話を……いや待った、
そもそもの原石の効果が、隠蔽──意識を逸らすということに特化している、否や
それを考慮すれば、こうして
そもそもの話、特化しているのが隠蔽であるがゆえに、この原石の近くでは意識が散らされてしまう、ということになってしまい、結果としておかしなことに気付けない、という状態になってしまっているのだろう。
本来の彼ならば意識の操作には耐性があるため、そういった小細工には騙されないはずなのだが……ここにいる彼の耐性が下がっている、ということは以前の騒動から把握済み。
ゆえに、ここに施されている術式があからさまに怪しい、ということに気付けないでいるのだった。
「ああ。……これ、どう考えても陰陽術だよ。こっちの人員で
「……う、む。彼はここに立ち入ったことはない」
「と、なると。これをやったのは前リーダーさん、ってことになるね」
と、いうか、その辺りはそもそもモモンガさんが外で肯定していた。この原石は聖杯の一種であり、今は願いを受けて周囲の隠蔽に力を裂いている、みたいなことを。
つまり、これらの奉じる儀式のようなものは、全て以前のリーダー、キョウスケさんの代からあるもの、ということになるわけで。……キナ臭さが跳ね上がってきた、というのもわかるのではないだろうか?
「……というか、そもそもキョウスケさんって本当にキョウスケさんなんです?自身のことを隠蔽して見せたり、なにかおかしい感じが凄くしてくるんですけど」
「……いや、彼は確かにキョウスケ・ナンブだったはずだ。変貌したあとの笑い方が変だったような気はするが、姿形は彼のものだった……はずだ」
「全部仮定形……」
「いやまぁ、この場所にいると自分の記憶を疑ってしまう、ってのはわかるよ。だって今さっきまで、見えてるものを見落としてたわけだしね」
今さらになって、前リーダーであるキョウスケさんに、別種の疑惑が持ち上がることになるとは。
……そんなことを思いつつ、改めて問いかけてみるも、返ってくるのはどこか歯切れの悪い言葉ばかり。
まぁ五条さんの言う通り、さっきまで思考が逸らされていた、という明確な物証が出て来てしまったため、ちょっと自身がなくなってしまうのも仕方のない話ではあるのだが。
ともあれ、今ここにある原石に施されているのは、明らかに陰陽術。
術式を読み解く限り、特に怪しいことはされていないようだが……奉じ方の中に聖杯の方向性を左右する文言が含まれている辺り、これがこの原石の効果を弄っている、ということに間違いはないように思われる。
……同時に、こちらに陰陽術を扱える人間がいないこともあって、小細工を見抜くには時間が掛かるだろうな、ということも。
「だから、これを仕掛けた相手が実はこっそりこっちに帰って来てたとしても、それを認識できないって可能性は結構高いんだよね」
「あー……」
こちらの言葉に、モモンガさんが呻き声をあげる。
相手の隠蔽がこちらより一枚上手である以上、こっそり戻ってきていたとしてもそれを認知するのは難しい。
ゆえに、今はなにも仕掛けられていなくとも、これからなにかが仕掛けられるという可能性も、決してゼロではない。
と、なれば。
先の話の通り、さっさと移住作業を終わらせてしまい、この原石に関してはお役目御免となっていただく、というのが一番通りがよい、ということになる。
……まぁ、向こうが更に上手なら、こっちがそう思って行動する、ってことを念頭に置いている可能性もなくはないんだけども。
「その辺りは疑いすぎても仕方ない、ってことで。じゃあとりあえず、早速例の指輪を……って、モモンガさん?」
「どうしたの骨の人ー。なんか震えてるぞー?」
でもまぁ、その辺を考え始めると、わりと堂々巡りになりそうだというのも事実。
なのでこの場では一先ず置いておいて、先に指輪の設置作業を済ませてしまおう、ということをモモンガさんに伝える。
一応、さっきざっと見た限りは変な罠も仕掛けられていなさそうだし……?
そう思いながらの言葉だったのだが、聞いているはずのモモンガさんはというと、何故かカタカタと震えている。
なにごと?と思いながらその骨の顔を見れば、なんとまぁわかりやすいくらいに動揺しています、という表情になっていたのだった。
……いや、どうなってるのその顔?
そんなことをこっちが思っているとは露知らず、モモンガさんは盛大に動揺した声音で、突然の衝撃的事実を話し始めるのだった。
「いや、よく考えたら……あの人、裏切りの権化みたいなもんじゃん!?」
「「「は?」」」
……みんなが困惑したことは、言うまでもない。