なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なるほど、源石が……ねぇ?……私は単に噂話として聞いてるだけだけど──貴女、結構な疫病神よね?」
「あっはっはっはっ。……否定できないようなとこを突くのは止めてくれないかなー?」
「……ふふっ、貴女でもそんな顔をするのね」
「……いや、私をなんだと思ってるのさ」
「んー……海の怪物……
「……そういうのは、うちの母さんに言ってあげてください。私は(比較的)一般人です」
「ふふ、面白い冗談」
「いや冗談じゃないんだけど……」
「……む、もういいのか?」
「ええまぁ。面会できるようになったって聞いたから、一応顔合わせくらいはしておこうかなー、って思いたっただけなので」
地下千階、隔離塔。
面会ができるくらいには安全性が確認された、ということをブラックジャック先生から聞いた私は、先ほどまでとある人物とガラス越しに会話をしていた、というわけなのだけれど……。
……うんまぁ、楽しかったけど重かったかな!色んな意味で!
「……原典で病を抱えていれば、それが治る見込みはない。ゆえに、それをどうにかするために──」
「──【継ぎ接ぎ】をする、ってのは画期的だけど。同時に『うわぁ』って気分にもなる、ってやつでねぇ……」
彼女には(病関係では)そういうの必要ないはずだから、まだマシな方なのかも知れないけれど……その代わりに、その後ろで蠢いていた魑魅魍魎達が目に入って仕方がなかった、というか。
「……まぁうん、本人達がそれでいいんなら、私としては言うことはないけどもさ?」
「そもそもがポストアポカリプス出身者がほとんど、だからな。今さらなにが起ころうとも、そこまで悲観しないということなのだろうさ」
「うーんポジティブ……」
先生と話しながら、背後の隔離塔を眺める私。
他者との接触において、なにかしらの問題を発生させ兼ねない彼等。そんな彼等が、唯一自由にいられる場所。
そこは、私たちからしてみれば、最早混沌と変わらないものになっている……ということを、改めて私は思い知るのだった。
「……なにそれこわい」
「開口一番怖いってあーた」*1
日付は変わって、別の日。
再びやってきたゆかりんルームにて、源石騒動が起きたこともあって、関係者に会いに行ったこと。および、そこで蠢く者達がいたということを話したところ、彼女から返ってきたのはさっきみたいな感じの、わりとドン引いた台詞なのであった。
……いやまぁね?確かに私も『うわぁ』ってなったし、あんまり強く言えるような立場じゃないけども。
それでもこう、仮にもゆかりんはここの指導者なんだから、もうちょっと泰然とした態度をだね?
「いやだって、病気を改善させようとした結果ってのはわかるけど……静謐ちゃんが百貌さんになっちゃうレベルで【継ぎ接ぎ】してた、なんて聞かされたらこうもなるわよ……」*2
「あーうん、ソダネー……」
なんて風に思っていたのだけれど。
あの隔離塔の中で、一番ヤバいことになっていた人物を例に挙げられてしまっては、私としてもごまかすように視線を泳がせる、くらいのことしかできないわけで。
……あの隔離塔は、いわゆる問題児度数が『三』となる人達が集められた場所である。
アークナイツ組は、基本的にその全員がレベル三扱いとなるため、発見され次第あそこへ送られることになるわけなのだが……それはレベル三の住人が、全てアークナイツ組で占められている……ということを示すものではない。
無論、アークナイツ組の人々も、一部を除いて【継ぎ接ぎ】による症状緩和は行っているし。
その『一部』に入るであろう
……まぁ、濁心と化した彼女の未来を見れば、異界の神の進行をその身で以て押し留めている……なんて考察もされる
問題があるとすれば、あのアイス好きな女神なんて取り込んだら、見た目は確実に濁心のそれと似たようなものになり、とても紛らわしいことになるだろう……ってことだが。*5
……とまぁ、彼女達の話も気になるが、そちらは一先ず脇に置いて。
あそこの人々は、他のレベルの人達とは明確に違う点が一つある。
それは、『ただそこにあるだけで、危険かもしれない』という懸念。
レベル四以上が中身と外身の極端な一致・不一致による暴走の危険性を問うものであり、レベル二以下は文字通り単に問題となる可能性がある……というものなのに対して、レベル三だけは明確にその存在自体を危険視する、という点で特殊である。
そこからわかる通り、レベル三に区分される人々が、ある程度自身の体質や性質について鬱屈とした思いを抱えている、ということは容易に考察することができるだろう。
それを思えば──原作においては『触れあいたい』という欲を持つにも関わらず、触れれば死ぬとされる毒の体ゆえに満たされぬ存在であった静謐のハサンが、この場所でどれほど思い詰めるのか?……というのも、同じように察せられて当然、という風に言えなくもない。
……その結果が、手当たり次第・なんでもいいから【継ぎ接ぎ】しまくって、自身の毒の体を中和する……という、ある意味狂気の行動なのであったのは、驚嘆すべきなのかもしれないが。
で、その、あくまでも加えるもの自体は些細であり、されど病的なまでに重ねられた【継ぎ接ぎ】の数が百を越えた時、それを原因として最後の【継ぎ接ぎ】──名前繋がりの【継ぎ接ぎ】が起きた結果、静謐だけど百貌であるという、大分意味のわからない『ハサン・サッバーハ』が生まれることとなったのであった。
これには山のじいじも困惑、である。*6
……いやまぁ、いつも通りに『首を出せ』するかもしれないけれど。*7
「そもそもの話、彼女の毒性は再現度の関係から本人のそれより落ちてた、って聞いたんだけど?」
「元々の性格的相性が良かった、ってことになるらしくてねぇ……レベル五になってないのが不思議なくらい、デフォルトで静謐ちゃんみたいな性格だったらしいよ?」
「ええ……?」
なお、本来であれば『触れるどころか、汗が蒸発してできた気体すらも致死の毒』、などという静謐ちゃんの体質は再現しきれないはず、なのだが。
元々の『逆憑依』前の彼女が、大層静謐ちゃんに共感できる性格をしていたとかなんとかで、例外的に結構再現度が高かったのだとかなんだとか、そんな話があったりする。
あくまでも静謐ちゃん本人の口から知らされたこと、らしいので信憑性については疑問符が付くが……ともあれ、『そうである』と本人が思い込む程度には、毒性が強かったことは確かなのだそうで。
そうなればまぁ、静謐本人としての欲が強くなるのも時間の問題、結果として今の状況に繋がる、ということになるようだ。
なお、百人分【継ぎ接ぎ】して薄めたものの、毒性は完全には消えていないとのことで、迂闊に握手とかすると(それが百貌さん状態でも)体が痺れたりする、らしい。
本来なら即死なので、それでもまだマシ、というのは笑いどころだろうか……?
「結果として、普通に触れたら相手が痺れる……なんてことになったのを目の当たりにさせられる百貌さんが苦労人、なんて結論になるわけだけど」
「もうそうなってくると、【継ぎ接ぎ】ってより【複合憑依】よね……?」
まぁ、三位一体ではないから、厳密には【複合憑依】の条件には当てはまらないのだけれど。
ともあれ、あの隔離塔の内部が、隔離されているからこそ変なことになっている……というのは間違いなく。
「……よーしわかったわ!慰問ね、慰問しましょう!」
「いきなりなにを言ってるのこの幼女?」
そんな現状を聞いたゆかりんが、なんだか変な方向に張り切るのも、ある意味既定路線ということに……なるのかな、これ?
寧ろいつもより変な方向に転がってたりしない?
「……実は三徹めなのです、紫様は」
「なんだそれ?!寝ろ寝ろベッドに放り込め!!」
なお、お労しや……みたいな感じでひょこっ、と現れたジェレミアさんにより、ゆかりんが寝不足でハイテンションになっていると聞かされたため、嫌がる彼女を無理やりベッドに放り込む任務が追加された、ということをここに記しておきます。