なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「え?いきなりなに……誰?!」
「さぁ?ただまぁ、こんなところで一目を避けるように倒れてた辺り、なにかわけ有りなのかも知れないけれど」
突然薄暗い路地裏に駆け出した私に、傍らのクリスが不思議そうな顔をしていたが……そこに誰かが倒れていることを知り、彼女も慌ててこちらに近付いてくるのだった。
……そうなれば無論、他の子供達も付いてくるのは必然……ということになるわけで。
「わぁ、きみ、大丈夫かい?」
「大変なん。病院に行かなきゃいけないん」
倒れている相手の周りで、慌てたように騒ぎ始める子供達。
流石にこういう場面には慣れていないのか、普段の冷静さは欠片もない様子だ。
「……た」
「ん?なんだってばよ?どっか痛いのか?」
「ああもう、みんな静かにしてって!聞こえないでしょー!」
「静かにした方がいいのは、かようの方」
「む」
「ああはいはい。いいからみんなちょっと離れて……」
フードを目深に被った相手が、何事かを呟いているが……周囲がうるさいので聞こえない。
良い子達なのはわかるが、こういう時はちょっと静かにしておいて欲しい……なんて思っているうちに、私が抱え起こした相手は、
「おなか……すいた……」
「は?」
なんとも気の抜けたことを、私たちに聞かせてくるのだった。
相も変わらずフードを目深に被ったまま(ずらそうとしたら滅茶苦茶嫌がられた)の相手を連れ、近くの飲食店に入った私たち。
……子供が多い状態でそんなところに入ればどうなるか、というのは火を見るより明らか、ということはわかって貰えると思う。
「……ここはドラゴンボールか?」
「つくづく、食事とかにお金が掛からなくてよかった、って思うわね……」
……うん、エー君がいる時点で大概だけど。
そもそもフードの子がよっぽどお腹を空かせていたらしく、ガツガツとご飯を食べている姿を見れば、他の子達だってなにか食べたい、みたいなことを言い出すのは半ば必然的なわけで。
「やりぃ、ラーメンいっぱいだってばよ~♪」
「それ、もうクリスマスのプレゼントは要らないってこと?」
「……あ」
「ナルトは迂闊なん。こういうのはほどほどにしておくのがいいん」
「そういうれんげは、ここぞとばかりにカレーと梅昆布茶ばっかり頼まないの」
「あ!や、やめてほしいんかよう!ピーマンはいらないん!」
「いいから、ちゃんと好き嫌いせずにた・べ・な・さ・い!」
「だ、誰かた~す~け~て~な~ん~!」
「全部たべないとー、大きくなれないよー?」*1
「でも、れんちゃんが嫌がるのもわかるんだゾ。オラもピーマンはダメだから……」
「しんのすけの場合は、そもそもピーマン以外にもダメなものいっぱいあんだろ……」
「おおっ、そういうコナン君はー、苦手なものが無さそうでうらやましいですな~」
「まぁ、こう見えても中身は高校生、だからな」*2
「……いつの間にか人が増えまくってる件について」
「ごめんねキーアさん。コナン君と一緒に買い出ししてたんだけど、途中でしんちゃんと合流することになっちゃって……」
「で、カスカベならぬなりきり郷防衛隊のメンバーである私も、ここにご相伴を預かることとなったわけさ」
「……多いわっ!」
結果として、みんながみんな好きなものを頼み始め、ちょっとしたパーティみたいなものに発展してしまったのであった。
……私たちよりも先に店の中に居たライネス達も追加で加わったため、子供の人数限界突破状態である。
この惨状でありながら、一応防衛隊メンバーであるはずの鬼太郎君とバソがいないので、実はまだ騒動としては軽い方になっているというのだから、世の中色々とあれだなぁ、なんて遠い目をしてしまうのも宜なるかな。
ともあれ、ドラゴンボールみたいな食欲をしているエー君と、それに負けじとばかりにガツガツとご飯を食べるフードの子とを眺め、どうしたものかとため息を吐くことになる私なのでありました。
そうして、みんなの食事する姿を眺めることしばし。
ようやく落ち着いた、ということなのかフードの子はスプーンとフォークを置き、ふぅと一つ大きな息を吐く。
「ありがとうなのだ。お陰さまでおなかいっぱいなのだ」
「元気になったのなら良かった。……ところで、落ち着いたところで一つ聞きたいんだけど。貴方はどうして、あんな路地みたいな人目の付かないところで倒れてたの?」
「……逃げてきたのだ」
「穏やかじゃないね」*3
聞こえてきたのは少女の声。……よっぽど捻った状態でもない限り、これで相手は女性ということになるわけだが……そんな彼女が言葉にしたのは、アスナちゃんの言う通りどうにも穏やかではない話。
……逃げてきたとは言うが、一体なにから逃げてきたのだろう?事と次第によっては、このままゆかりんに連絡するのが最善、ということになるわけなのだが……。
「針がぷすっとして、とても痛い痛いなのだ。ああいうのはイヤなのだ」
「……あ、注射ね。なるほど」*4
すっごいイヤそうな声と共に聞かされたのは、注射がイヤだから逃げてきた、というこっちがずっこけそうな答え。
……うん、子供組がうんうん言って頷いてる辺り、ここでゆかりんに連絡する、というのは余計な問題を引き起こしそうな感じ。
具体的には「お前も敵か」的な視線をみんなから向けられそう、というか。……いや敵でもないし攻撃でもなく、予防注射とかは普通に君らのためを思ってやること、なんだけどね?
「まぁ、注射がイヤ……っていう気持ちは、それこそ痛いほどよくわかるけども」
「そうなの?」
「私が蜂がダメ、って言う理由が
「あー……」
より正確に言うのなら、「アレルギー体質なお前は、刺されたら死んでしまうかもな」みたいな脅し文句を、幼い頃に父親から聞いたことがある……というのが理由ということになるのだが。
多分、単なる冗談だったのだろうとは思うのだが、子供心にはとても恐ろしい話に聞こえたため、思ったよりもトラウマになってしまったみたいだ、というか。
まぁともかく、注射がイヤで逃げたという動機そのものには、ある程度理解を示すことができる……と相手に伝えたことで、フードの子は幾らか警戒心を薄めたらしく。
「それは良かったのだ。
「うん、まぁイヤなものはイヤ、ってのはわか……
「……バレてしまったものは仕方ないのだ!」
「いやバレたもなにも、今自分からバラしたような……」
「フードの美少女とは世を忍ぶ仮の姿!」
「いや聞けよ」
ついうっかり、とばかりに彼女の口から漏れた言葉に、思わず反応した私。
そんな私の姿を見た彼女は、ごまかすように大声をあげる。
「その正体は、アライグマのアライさんなのだ!」
「知ってた」
「その口調の上に『アライさん』って自称だし、ねぇ?」
「そこは素直に驚いて欲しいのだ!?」
発言と共に、取り払われたフード。
その下にあったのは、大方の予想通り、『けものフレンズ』のキャラクターの一人・アライグマのそれだったのでした。*5
……うん、知ってた。
「うぅ……くーるでみすてりあすでびゅーてぃなアライさんを演出する予定が……っ!」
「……少なくとも、自分から言い出すような人に『ミステリアス』なんて冠詞は付かないと思うなー」
「うわぁああ!!なのだ!!」
「情緒不安定だね」
フードを取っ払った彼女──アライさんは、まるで駄々を捏ねるように机の上に突っ伏してバタバタしている。
……まぁうん、自分の顔を隠して控えめに動く、みたいなのは確かにミステリアス系の動きだけど、その行動と君の言葉使いはちょっと相性が悪いというか、ね?
そんなくーる?な彼女は、背丈的にはアスナちゃんと同じくらい。
見事に少女って感じだが、フレンズの背丈ってどれくらいが標準なんだっけ……?
ううむ、と悩む私だったが、目の前の彼女が言葉を発したあと、突然びくっとしたかと思うと、机の下に隠れてしまったことで首を傾げることに。
……ええと、なんでいきなりそこに……?
「しー、なのだ!このままでは見付かってしまうのだ!アライさんはここに居ないことにして欲しいのだ!」
「はぁ?」
なんのこっちゃ、と私が思うのも束の間。
「……む、キーア嬢か」
「おっと、その声は……トキさん?」
店の扉を開いて、中を覗き込んでくる人影が一つ。
店内を見回していたその影が、こちらを見て声を挙げたため、私はそれがトキさんであるということに気付き、思わず首を傾げることとなるのだった。