なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「まぁ、こうやって怖がらせるだけってのもアレだし。安心させるために私たちも付いていっていいですか?」
……というこちらの提案に、トキさんが快く了承を返してくれたため、そのまま病院に付いていくことになった私たちである。
まぁ、もし仮にアライさんがなにかしらの病気を持っていた場合、長時間彼女と同じ空間に居た私たちにも検査が必要になるだろうから、と思ってのことでもあるわけなのだが。*1
無論、一部の子供達からは盛大なブーイングが上がったのだけれど、さっきの狂犬病うんぬんの話を散らつかせてあげれば、流石に肝が冷えたのか素直にこっちの誘導に従ってくれたのだった。
……え?エー君が居るんだから、その辺りの病気とかは大丈夫なんじゃないのか、って?
流石のエー君も、どこに潜伏してるのかすらわからない、そんな病原体を綺麗に駆除するのは骨が折れる……ってことです、はい。*2
「逆を言えば、何処にいるのかさえわかればちゃんと駆除できる、ってことよね?」
「伊達に鉱石病の治療に協力を頼まれただけのことはない、ってやつだね」
まぁ、クリスが口にするように、何処に病原体が集まっているのかさえわかれば、それが脳とかでもなければ普通に駆除できてしまう、というのも確かな話なのだが。
仮に脳に集まるタイプでも、慎重にやらせてあげれば時間は掛かるものの大丈夫、らしいし。
そんな彼の力を以てしても、無尽蔵に増えるという特性を持つ鉱石病の撲滅にはまだまだ時間が掛かる、というのだから件の病気の恐ろしさを思い知る私である。
ともあれ、ムッとした顔のアライさんを連れて、トキさんの後ろを歩いていくこと暫し。
そうしてたどり着いたのは、彼が先生をやっているという一つの診療所なのであった。
「……そういえば、医者達で集まって病院を作る、とかはしないんです?」
「実は大きな病院を作ってしまうと、それを起因として別の【継ぎ接ぎ】が起きるのではないか、と危惧されているのだ」
「あー、医療ドラマ……」*3
鍵の掛けられた扉をガチャガチャと弄る彼を見ながら、ふと思い付いたことを問い掛ける私。
このなりきり郷には、存在を確認されている医者などの医療に関わる存在というのが、それなりの数存在している。
そんな彼らは、それぞれがトップクラスの医療従事者。
ゆえに、集まってチームを組めば、それこそ色んな病気を治療する糸口を掴めるのでは?……という思いからの疑問だったわけなのだが、それはあっさりと否定されてしまう。
……病院というのは、物語の舞台としても有名なモノの一つ。
それゆえ、迂闊に規模を大きくしてしまうと余計な【継ぎ接ぎ】を引き起こす懸念があると言われてしまうと、なるほどと納得せざるを得ない私なのであった。
まぁうん、医療ドラマってその性質上、単なる病気の治療だけに話が終わらない、なんてことは普通にあるからね……。
「……あ、もしかして。琥珀さんがあんまり助手とか募集してないのって……」
「ご名答。人が増えすぎると、こっちは『悪の秘密結社』みたいな属性が付与される可能性がある、ってため息吐いてたわ」
「あー……」
それに気付くと同時、なんで琥珀さんが少数精鋭で仕事をしているのか、という理由にも思い至る。
……科学者が集まると、それはそれで別の物に見なすことが出来てしまう……という、とても単純かつ面倒な理由だった、ということになるようだ。*4
まぁ、琥珀さんに関しては原作でも少数精鋭だったので、そこら辺はあんまり変わってないとも言えるのだが。*5
「……あ、いや逆か。だからあの人凄い発明家になってるんだな?」
「『そういうところもなくもないかも知れません』、って言ってたわよ」
だがだからこそ、本来後天的な『逆憑依』である彼女が、アレほどの発明力を誇る遠因になっているのかもしれない。
……世の中ってわりと上手く回ってるんだなぁ、なんてしみじみと思ってしまう私である。
「オラ達もー!オラ達もちゃんと五人揃うと、防衛隊としてぱわーあっぷするんだゾ!」
「……あー、確かに。戦隊もの的な補正とかも入りそうだし、普通に一理あるねそれ」*6
なお、この人数をなにかに合わせる、という方式。
改めて思い返せばゆかりんのところの三人組だとか、しんちちゃんのとこのなりきり防衛隊とか。
そんな風に、然り気無く色んな場所で見立てとして使われている、ということに気が付いてしまい、この辺りの話はよっぽど根深いんだなぁ、なんて感想を溢すことになるのだった。
「なにもないところだが、とりあえずは寛いでおいてくれ」
その間に、私は検査のための準備をしよう──。
そんな言葉を残し、部屋の奥へと消えていくトキさんを見送った私たち。
改めてアライさんの様子を眺めると、彼女は頻りに辺りを気にしていたが、その度に頭を振って自身を宥めていたのだった。
……ああうん、必要だってことには納得したけど、だからって恐怖心というか嫌悪感というかが消えるわけではない、ってことやね。
まぁ、今から注射をされるって予めわかってて、嫌な気分が消えるはずなんてない、と言われればそうだね、としか言えないわけなのだけれど。
ともあれ、今からそんな風に気にしていると、実際に注射を受ける時に必要以上に痛く感じてしまう、なんてこともあるかもしれない。
人がその時の気分によって、あれこれと体調を崩しやすくなるというのは科学的に証明されているわけだし。*7
なので、まずは彼女の緊張を解すところから始めよう、ということになるのだけれど……。
「……うぅむ」
フレンズの子達を宥めるのって、どうやればいいんだろう?……と首を傾げる私。
一番簡単なのは恐らく、彼ら共通の好物である『ジャパリまん』を与えること、だと思うのだけれど。……なんだかどこかで見たことある気はするものの、今私の手元にないのも確かで。
じゃあ、動物にするように頭を撫でてやる、とか?
……という風に思い付いたものの、こうして付いてきたけれど私たちとアライさんはほぼ初対面。
そんな相手に撫でられたとて、リラックスできるかと言われれば首を傾げざるを得まい。……っていうか、アライグマは飼育に向かないというように、撫でられるのが嫌いって可能性もあるわけだし。
そうなると……ふむ。
現状私ができそうなことと言うと、実際一つしかあるまい。
「……なにやってるのよ貴女」
「ん?いやいや、ちょっとお手伝いをね?」*8
呆れたような声をあげるクリスにしーっ、とジェスチャーしつつ、準備を進める私。
数十秒後、全ての準備を終えた私は、未だにうんうん言ってるアライさんの背後に近寄って。
「──アライさん、またやってしまったねぇ」*9
「うわぁ!?ごめんなのだフェネック!アライさんは悪気はなかったのだ!……って、あ、あれ?」
「どうしたのかなアライさん。不思議そうな顔をして」
「あ、あれ?フェ、フェネックなのだ???」
「そうだよ、君の友達のフェネックだよ」
「あ、あれー?」
とんとん、とその肩を叩きながら、
途端、アライさんは心底驚いたように椅子から飛び上がって、後ろにいた私を見て、大きく首を傾げることとなるのだった。
それもそのはず、そこにいたのは彼女の親友であるフェネック……の姿をした私、だったのだから。
今回は地毛を晒していないため、どっからどう見てもほぼほぼフェネック本人である。
突如として彼女の前に現れた、親友の姿をした人物。
その奇怪さに、アライさんは思考回路がフリーズしてしまったのだった!……あれ、これ収拾付く?