なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……これは、一体どういう状況なのだ?」
「ええと、
「…………???」
「どうしたんだいアライさん、不思議そうな顔をして。膝枕されてるんだからもう少し喜んだりしたらどうかな?人っていうのは、こういうことをされると喜ぶものらしいよ?」
「あ、アライさんは、アライさんはもうよくわからないのだ……」<プシュー……
「完全に思考回路がショートしてやがる……」
最初のトキさんの台詞からわかる通り、現在の状況はとても混沌としたものとなっている。
フレンズは元の獣としての能力と、人型になったことで得た能力、その二つを完全に両立させている……みたいな話を聞いたことがないだろうか?*1
人になった獣、みたいな話でよく取り沙汰される『耳が四つある』とか、そういうアレに端を発するやつである。*2
生き物の自然な姿として、耳は二つで一組というのが普通。
それが三つより多くなるというのは、少なくともなにかしらの遺伝的な異常によるものと見るのが正しい……みたいな感じ。
それが何故かと言われれば──理由として幾つか語られているモノもあるが、その中で一番もっともらしく聞こえるのは『それ以上あっても無駄だから』という説だろう。*3
そもそもの話、単に音を音として受け取るだけであるのならば、耳は一つでも十分である。
特に、話すためのツールとして使うのなら、片方の耳から聞こえたものだけでも十分に利用はできる。*4
それなのに耳が二つある理由とは、すなわち音の発生源を聞き分けられるようにするため、と考えるのが一番腑に落ちるだろう。
左右に耳があることで、それぞれの耳に音が伝わるまでの時間にラグが生じ、その差によって音が何処で発生したのかがわかる……というものだ。
これは、同じように二つ付いている目についても、似たような説明をすることができる。
角度の差などにより、見ているものがどれだけ離れているのか、などを認知するのに使われているわけだ。*5
無論、複眼という形で複数の目を持つものもいるが……単に『見る』という行為を行う場合、個数が二つであるのが一番都合が良いのだろう。
それは、これらの感覚器官が、ある意味では弱点でもあるから。*6
もしそれらの感覚器官が同じものが複数あって、その全てが平等に使われている場合、一つにダメージを受ければ他の部分にも不都合が出る……というのも理由にあるのだろう。
ともあれ、耳が四つもあるというのは、生き物として見た時に些か不自然である、というのは間違いない話。
なので、獣人というものを想像する時に、耳の個数は大きな論議に繋がるわけなのである。*7
……話を戻して。
普通に生き物として成立している場合、獣人の耳は二つであるということが多い。
身近な例で言えば……ウマ娘のように頭の上部に獣耳だけがある、というやつである。……アニメでは耳が四つあることがあった?単なる作画ミスじゃねそれ?*8
まぁともかく。生き物としては耳は二つ、みたいなイメージからか、獣人キャラの場合耳の数についてはよく問題になりやすいわけで。
そういう意味で、耳が四つあることに意味がある……と明確に説明されているフレンズ達というのは、実はわりと珍しい存在なのである。
動物の可聴域は人と違う、みたいな話を聞いたことがないだろうか?
いわゆる超音波というものを人は認識することができないが、コウモリなどの一部の生き物は聞き分けられる、というやつである。*9
あとはまぁ、動物の耳が大きいのは体温調節のためでもある、とか。人間の耳が使えたとして、そこになにか利点があるのか?と言われるとちょっと困ってしまうわけだが……生き物によっては低音域が聞き取れない、なんてこともあるようで。*10
まぁともかく、単なる獣や単なる人よりも、遥かに感覚器官が優れているのがフレンズ達、ということを理解して貰えればそれで良いと思う。
で、それを前提とすると。彼らに対して姿を偽る、というのはとても難しいこと、というのがわかるだろう。
獣の嗅覚やら人の視覚やら、とかくフレンズの察知能力が高いのは前述通り。*11
そのため、些細な違和感から相手が偽物である、と気付く力が強いのである。
ゆえに、例えば彼女達の前にフレンズのコスプレをして出てみたところで、それを『同じフレンズ』と誤認することはほぼあり得ない。
「……つまり?」
「アライさんからしてみれば、
だから、彼女は困惑しているのである。
目の前のフェネックは、決して彼女の知っているフェネックではない。どころか、それは他人が変装しているだけでフレンズですらない。
にも関わらず、触れた時の感触や鼻腔を擽る匂い、話し掛ける声や細かな仕草など、それらの全てが目の前の相手を『自身のよく知るフェネック』と認識しているため、『そんなわけないのだ』という気持ちと『いいやそうなのだ』という気持ちがぶつかり合って、彼女の思考回路をショートさせてしまっているのである。
いやまぁ、わざとなんですけどね?
そうやって混乱しているうちに必要な処置を全部終わらせてしまえば、あとから笑い話にしてしまえるというか。
普通に目の前で変装したから、騙すつもりでやってるわけじゃないってのも知ってるわけだしね。
「……目の前でやられてなお、それが偽物だと認識できないって……」
「なにそのある意味可哀想なやり口」
「……私を責めてなくていいから、早くアライさんの検査を終わらせたらどうかな?」
なお、何故か周囲からは責めるような視線が飛んでくるのだった。
……素直で良い子なアライさんを困らせるな、ってことだと思うのだが、それだったらさっさと私にこの格好を止めさせるように動いてくれない?
って感じで、思わず仏頂面になってしまう私なのであった。
だって、元を正せば『痛いのはイヤなのだ』っていう、アライさんの願いを叶えた結果なのだからね!
……え?そのために相手を弄んでいるように見えるから、周囲の批難の視線が止まないんだぞって?
そもそもの話、魔王を自称してるやつが無償で施してくれる、って思う方が間違いなんじゃない?
私、多分けもフレに登場するならセルリアン*12側だよ?
「都合の良い……悪い?時だけ悪ぶるなっての!」
「なにを言う。私は札付きの悪だよーわるわるだよー」
そこまで言ってもなお、クリスからの扱いはこんな感じだというのだから、なんとも言えない私なのであったとさ。