なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
コンクリートジャングル*1を巡り、仲間を助け出せ!
……端的に言えばそんな話なのだが、思いの外アライさんの琴線に触れたようで。
「む、むー。アライさんが頑張らなきゃ、ってのはわかるのだ。わかるんだけど……」
「なるほど。覚えてない記憶が、二の足を踏ませるんだね」
頑張りたい、という気持ちを彼女の中に生んだのは間違いないが、同時にトキさん達に攻撃してしまうほどに暴走していた、という事実が、彼女が動き出すことを躊躇わせているらしい。
まぁ確かに、覚えがないけど実際に起こっている以上、それがまた起こらないとも限らない。
だがしかし、他のフレンズ達が当初の彼女と同じような状態に陥っているのであれば、それを救えるのは彼女しかいない、というのも事実である。
……まさか、毎回トキさんに朱鷺の格好をして貰うわけにもいかないだろうし。
「ああうん、一度や二度ならまだしも、何度も同じ格好をしてたら【継ぎ接ぎ】になっちゃいそうだもんね……」
「心配するところがおかしくないかい、キミ。……いやまぁ、私としても筋骨隆々の朱鷺、なんてものはそうそう御目にかかりたいモノではないわけだが」
「むぅ、やはり見苦しかったか。すまないな、子供達よ」
「いやいや、みんなして話がずれてるずれてる」
確かにトキさんのあの格好は、認識災害級のインパクトだったが、ここでの問題はどちらかといえば『暴走したフレンズはフレンズによってしか止められない』ということの方。
言うなれば、ある種の仲間からの呼び掛けでなければ、相手を傷付ける方法でしか普通は止められない……ということにある。
「あれ~?さっきのキーアお姉さんみたいに、真似っこしたらイケるんじゃないの~?」
「生憎だけどしんちゃん、野生動物相手に必要なのは、どこまでも真摯的な慈愛の心なんだよ」
「お?」
なお、しんちゃんからは遠回しにお前もなんとかできるんじゃないか?……みたいなことを、さっきのフェネックの真似から疑われたわけなのだが。
生憎と、さっきのあれは飽くまでも、アライさんが正気だったから行えたこと。
……違和感はあった、と言うように、姿形をキチンと認識している相手には通用するが、そうでない相手には逆効果なのである。
「……あー、違和感によって自身を押し止める理性が働かない、ってこと?」
「そういうこと。落ち着いてるならまだしも、興奮している相手にそんなことしても、あっさり殴り倒されるのがオチってこと」
策謀や策略は、あくまでも相手が知性ある生き物相手だからこそ。
そうでない相手にそこら辺を説いたとて、『全部殴れば一緒じゃないか』されたら意味がない、ということである。*2
バーサーカーを精神操作しようとするようなもの、とでも言うか。
本能で動いている相手をこちらの思惑通りに動かそうとする場合、できるのは原始的な誘導だけである。……姿形を仲間に寄せたとて、細かな違和感が残るのであれば敵だと判断されるだけ、とでも言うか。
ともあれ、普段のからかいの道具として使うのならまだしも、相手を宥めるのに変装を使うのは逆効果、ってこと。
それでもなお、トキさんの朱鷺コスが効果を発揮したのは──まぁ、簡単に言うと相手に寄り添おうとした結果だから、ということで。*3
「なんでまぁ、そこを考えると……現実的にはアライさんに説得部分を任せるしかない、ってことになるわけでね?」
「なるほどなのだ。やっぱりアライさんが頑張るしかないみたいなのだ!アライさんにお任せなのだー!!」
「あっちょっ!……行っちゃった」
ゆえに、これからのフレンズ保護が、件の迷宮の中を起点に行われると仮定すると……そこを切り開けるのはアライさんただ一人、ということになる。
……まぁ、アライさん以外のフレンズが増えたら、必然的に負担も減っていくわけなのだが……そこら辺の説明をする前に、アライさんは張り切って病院を飛び出してしまうのだった。
ああ、まだ言わなきゃいけないこと結構あるのに……。
「その割には、あの子を追いかけないんだね?」
「
「……んん?そりゃどういうこと……って、お?」
なお、別にアライさんを追い掛ける素振りを見せない私に、コナン君とライネスが首を傾げていたが……そうこう言っているうちに、外が俄に騒がしくなってくる。
どうやら戻ってきたみたいだ、と扉の方に視線を向けた私たちは。
「見るのだ見るのだ!珍しいフレンズなのだ!」
「私はフレンズ?とやらではないのだが……って、キーア達じゃないか」
「あー、そっちに行くー……」
アライさんに手を引かれて困惑する、オグリの姿を見てあちゃー、と声を漏らすことになるのだった。……ああうん、ケモノッ子系だしね、仕方ないね。
「む?フレンズではないのだ?」
「発生の原理がまるで違うからねー。少なくとも、ウマ娘はサンドスターとかの外的要因で
「そうだったのだ?アライさんはしょんぼりなのだ……」
巻き込まれたオグリを座らせ、メンバーの内一部を先に帰らせ。
改めてアライさんに説明をする体勢となった私は、まず最初にオグリは
……数は少ないが、ケモノ系の要素を持ったキャラクター、というのはなりきり郷にもそれなりの数がいる。
隔離塔に集められているので、滅多に外に出てこないアークナイツ組も、そのほとんどにケモノ系のキャラがいるし、オグリを筆頭とするウマ娘組みたいなモノもいる。
……まぁ、固まっているのと数が少ないので、滅多に出会うことは無いだろうと高を括っていた*4わけだが……こうして真っ先にオグリに出会っている辺り、彼女の運?的なモノを甘く見ていたことは否めないだろう。
ともかく、フレンズに誤認してしまうようなキャラも居る、ということを改めて伝え直し、早速ダンジョン攻略に向かおう、ということになったのだが……。
「まず大前提として、ダンジョンには一人では挑めません」
「なんでなのだ?」
「店所有のダンジョン、って形にはなっているけれど……それがイコールちゃんと管理が行き届いている、ってことではないからだね」
「???」
「要するに、負けたりして力尽きた時に、回収するまで時間が掛かるってこと」*5
不思議のダンジョンのようなもの、と述べたが……ここの場合は理由が微妙に違う。負けると身ぐるみ剥がされる、というのが正解なのだ。
命からがら逃げ出した、とかではなく。
救助が来るまで放置されているので、その間に所持品を奪われてしまう、というか。
風の噂では成人向けな仕様のダンジョンもあるとかないとか、って話だが……それも少年漫画的お色気表現に留まるようになっているらしいので、どこまで行っても負ける方が悪い、程度の認識で収まってしまっているらしい、というか。
尊厳も命も脅かされないのだから、負けるような構成で来る時点で気持ちが負けてる……みたいな?
まぁ、そうは言っても適正レベル帯のダンジョンばかり、というわけでもない。
そこら辺を解消するために、オーナー達が考えたのがパーティ制の導入、ということになるのであった。
不思議のダンジョンシリーズにおいて、仲間というのは最大一人くらい、というのが恒例だった。
これは、複数人で囲んで殴るとか、蘇生を使えるヒーラーを安全圏に置いておけば、半ばゾンビアタックができてしまうから緊張感がない……みたいな理由からそうなっているとおぼしきものだが。
ここにあるダンジョンでは、その辺りの制限が全部取っ払われているのである。
そのため、一人では無理でも二人なら、みたいな感じで徒党を組むことが可能となり、わざわざダンジョンの管理をしなくても、ドロップ品目当てに挑戦者がひっきりなしになった……のだとか。
まぁ、その辺りは又聞きなので、詳しいことはよくわからないが……ともあれ、その流れの結果として、風来人スタイルは非推奨となっていった、ということになるようだ。
なお、ダンジョン入場前には簡易検査があるのと、基本的に一見さんお断りなダンジョンが大半であるため、誰かの紹介──すなわちパーティへの仮加入が必要となり、結果として一人プレイができなくなっている、ということも合わせて記しておく。
ともかく。
このままアライさんがダンジョンに向かったとしても、門前払いを受ける可能性が高いというのは確かな話。
なので、ここに残った面々と、あともう一人を連れてダンジョンに挑もう、という話になるのであった。
「ふむ?ということは、今回は私もメンバーに含まれている、ということかい?」
「主になりきり郷防衛隊メンバー、って感じだね。……蘭さんとコナン君はそもそも別件で忙しいから除外。クリスに戦闘は無理だから彼女も除外、そんでもってエー君は過剰戦力だから弾かれるし、一人だけ残すのも……って感じでかようちゃんとれんげちゃんも残った、と」
「つまりぃ~、オグリちゃんにキーアお姉さん、ライネスちゃんにアライちゃん。それからナルト君にアスナちゃん。それから~、満を持してのオラ、というメンバーなんだぞ!」
「説明ありがとしんちゃん。つまりは七人の冒険者、ってことだね」
「既に一人増えること確定だから、正確には八人の冒険者だがね」
その結果が、この七人プラスもう一人、というわけである。
無論、トキさんは今回同行しないので、プラス一人の内訳ではない。
その一人については、ダンジョンに着いてからのお楽しみ……ということで。
どうにもよくわかっていないらしいアライさんの背を押して、私たちは一先ず最初に挑むダンジョンへと足を運ぶのだった。