なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「──ゴブリンか?」
「ゴブリンではないです。でもお仕事ですよ」
「そうか……」
明らかに意気消沈するさまようよろい*1みたいな相手に、周囲の面々が引いてる気がするが……安心してほしい。ここにはダイスの女神なんていないのだから。
ついでに言うなら、ゴブリンにも『良いゴブリン』とかがいるのが現状なので、原作の彼のような行動は非推奨、というか。*3
……ここまで言えばわかると思うけど、プラス一人とはこの人。通称『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれる薄汚れた鎧の人物。
彼……彼?こそが、今回のダンジョン攻略の鍵を握る人物なのであった。*4
「……いやまぁ、彼の原作の世界ってわけではないのはわかってるけど。……なんというかこう、ちょっとばかり不安になる気分についてはわかって貰えないかな?」
「大丈夫だよライネス。仮にそんな
「それはそれで、成人向けの規程が変わってると思うんだが?」
主に
ともあれ、パーティメンバーにしんちゃんがいる以上、仮にダイスを振らせても最終的にはプラスになるってのは目に見えてるので、そこら辺の心配はないです、はい。
……いや、別にしんちゃんが居ないからといって成人向けダンジョンになる、ってわけでもないけどね?精々ラッキースケベが発生するくらいというか。
そもそも企業運営みたいなもんなのだから、中のモンスターも変なのは居ないよ(多分)とライネスを宥め、ようやく例の百貨店・ダンジョン入り口にやって来た私たちである。
この企業ダンジョンというシステム、実は結構最近になってから生まれたもの、なのだという。具体的には今年の八月辺り、みたいな?
いつの間にそんなものが、って気分が湧いてくるが……まぁ、私もこのなりきり郷の全てを知っているというわけでもないし、そもそも広すぎるし……ってなもんで、わからんことがあっても仕方ない、と流していたり。
ともあれ、専用空間拡張アイテム・ダンジョンコアによって形成される企業ダンジョンは、その企業の特色を色濃く反映したモノとして顕現する。
作っているのが料理系の企業であれば、ダンジョン内部も何処と無く美味しそうな感じになるし、出てくるモンスターも倒せば料理になるようなモノになる、とか。
で、このダンジョン・コア。
元を正せば『クリスマスには周囲から様々な願いが転がってくる』という、ハクさんが生まれる遠因となった例のアレをどうにかするためのモノ、ということになるようで。
「?どういうことなのだ?」
「クリスマスにバレンタイン、お正月に夏休みとかとか……。イベント時って言うのは、どうしても色んな感情や願いが集まってくる関係上、【顕象】が発生しやすくてねー……」
今でなら、郷の中でも一部の階層にのみ発生していた、敵対型の【顕象】達。
それがいつの間にやら他の階層にも波及し始め、いつぞやかのサンマみたいな形で、色々と迷惑を引き起こし始めたわけである。
ビッグビワが成立していたタイミングなら、まだ良かったのだけれど。
……あれは大本がケルヌンノス、呪いの厄災が形を変えたものであるため、いつまでも顕現させっぱなしなのは支障がある、ということで解体されることとなった。
なったのだが。……ハクさんが言っていた通り、元となる人々の想念が耐えない限り、これらの発生は抑えられないわけで。
それをどうにかしよう、ということで生み出されたのが、件のダンジョン・コアということになるのである。
「……それなら、別に大きなビワに関しては解体しなくても良かったんじゃないのかい?」
「私たちがなにかしたってわけじゃなく、ビワの方が『自分の仕事は終わった』って感じに消えてった、って形だからなぁ……」
なお、今の説明には幾つか間違った点がある。
一つは、ビッグビワは解体された、という文。……その言い方だとこちらがなにかをした、みたいな形に聞こえるが、実際にはビッグビワ側が自身の役目は終わった、とばかりにビワに任せて霞のように消えていった、というのが正しいらしい。
らしい、というのはその現場に居たものが、当事者であるビワしかいないのと、未だに郷の中では時々ウマ娘(たぬき)を見掛けるから、なのだが。……いつの間にか
二つは、ダンジョン・コアの説明について。
生み出された、とは言うが誰が作ったのかは不明なのである。いつの間にか発生して、いつの間にか使われるようになっていた、というか。
「あれ?てっきり琥珀がいつものように作ったのかと……」
「私は関係ないってさ。……いやまぁ、最初の一つを持ってきたのがビワだっていうから、大本を作ったのはビッグビワの方なのかもしれないけれど」
もしくは、分かたれたビッグビワの欠片がダンジョン・コアなのかも、というか。
ともかく、かのダンジョン・コアは、いわゆる【兆し】に近い効力を持ち、周囲に集まってきた想念を溜め込んでエネルギー源とし、内部のモンスターを作り出しているのだとか。
また、外からのリソース投入により、階層の増改築もできるらしく、結果として企業達が破壊神様みたくなってるとかなんとか。
「……みんなツルハシ?」
「わかる人いるのかなー、それ」*8
さながら、挑む私たちは勇者とでもいうか。
……いや、明確に魔王なのが一人紛れてるんですけどね?
まぁともかく。
ゲームとは違って破壊神様側が魔王に運営丸投げ、みたいになっているのがこのダンジョン達。
ゆえに、中に誰か迷い込んでいたとしても……それが外から入ってきたモノでなければ、だーれも知らないなんてことは普通にあり得るわけで。
「……それはそれでおかしいんじゃないのか?ここでは【兆し】としてはダンジョン・コアの方が優先されるんだろう?」
「何分、このダンジョン・コア自体がブラックボックスでねぇ。……解析とかできてないから、今までの説明はほとんど想像なんだ」
「ええ……」
オグリから飛び出した鋭いツッコミに関しては、今までの説明があくまでも実体験からの予想でしかない、ということを明かすことで答えとする。
……うん、要するに
まぁ、血の気の多いのがひたすらダンジョンアタックして手に入れた情報なので、大体間違いではないとは思うのだが。
あと、一応の理由的なものは、説明できないこともなくはないし。
「と、言うと?」
「今までのデータに関しては、イベントらしきイベントをやってない時期でのダンジョンアタックのデータだ、ってこと」
「……ええと、先行運用試験が始まったのが八月を過ぎてから、だから……ああ確かに、うちの祭はあくまでもうちだけのまつりだから、ここまでイベントらしいイベントは外では起こっていないのか」
「そういうこと。外からの嫉妬パワーが高まってくるのはこれから、ってことだね」
そう、十月の記念祭は、あくまでもなりきり郷内部のお祭り。
外の人々が行う祭ではない以上、外から想念が転がってくる、なんてことはないのである。
無論、その時期にはハロウィンがあるだろ、という反論もなくはないだろうが……まだまだ定着したイベントとは言えず、集まってくる嫉妬パワーもほどほど、ということになるわけで。
要するに、ダンジョンシステムができてから、初めてやって来る本格的なイベントというのが、今度のクリスマスということになるわけで。
……今まで問題なかったものが、ここに来て不具合などが見えてきた、という風に解釈することもできてしまう、というわけなのである。
「要するに、ダンジョン内部のモンスター生成に使うくらいで均衡が取れてたものが、それだけだと間に合わなくなって普通の【兆し】としての要項を満たしてしまった結果、突然ダンジョン内にアライさんが現れたのかも……ってことになるわけだね」
「んー……よくわからないけど、とりあえず頑張ればいいのだ?」
「そだねー」
なお、アライさんには難しかったのか、彼女はよくわかっていない顔のまま、元気に片手を挙げていたのだった。
……まぁうん、頑張ればいいしね、頑張れば。