なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
見るからにおどろおどろしい、ボス部屋手前の扉。
このメンバーで到達できるとは思ってなかったというか、はたまた案内役のゴブスレさんが、時々の変な行動以外はわりと真面目に働いていたお陰というか。
ともかく、最深部へと到達した私たちは、これから始まるボス戦に、緊張感を新たにしていたのだった。
「……そういえば、こういうシチュエーション二回目だな……」
「二回目?一回目があったのかい?」
「ああうん、かようちゃんの時に一度」
「あー……ビーストⅡi……だっけ?」
そうして思い出すのは、時の止まった世界における、かようちゃんの家の中にあった不思議空間。
条件満たさずに到達してしまうと、もれなく罰としてスカルリーパー擬きが降ってくる、という嫌がらせにもほどがある場所だったが……流石に、あのレベルの理不尽さはないと思いたい。
今回はパイセンもいないので、自動的に私がカバーするしかないわけだし。
あとは……うん、ビーストの話をしたので、ビーストが寄ってくる……なんてことがなければいいかなー、みたいな。
いや、フレンズたちは
「ビースト?それって友達なのだ?」
「うーん……倒せば味方になってくれるってやつが多いし、ある意味フレンズみたいなもの……?」
「おいこらばかやめろ、変なフラグを立てるんじゃあない」
よくよく考えると、今まで出てきたビースト系で味方になってないの、本家では
……いやまぁ、そのためには戦って倒す必要があるので、言うは易く行うは難し、といういつものやつになるわけなのだが。
……あと、ライネスからお叱りの言葉が飛んできたため、この話はここで打ち止めにしておこう。
実際、ここのライネスは多少魔術は使えるものの、戦闘力的には下から数えた方がいいラインの人物。
ソシャゲの方みたいに司馬懿の力も持ち合わせていないので、補助として役に立つのはその頭脳のみ、みたいな感じなので、基本的に特攻無しだとムリゲーの類いのビーストは、出て来て欲しくないもの筆頭だということになるのだろうし。
そんな風にわちゃわちゃと会話をして。
そうして、私たちは扉を開くのだった。
「中に居るのは……ジャパイム?」
「たくさん居るってばよ!……でもあれ?大きなやつは居ないってばよ?」
大きな扉を開いて中に入った私たち。
そこは円形状の闘技場みたいな形……SAOのボス部屋みたいな感じ、と言えばわかるだろうか。
いやまぁ、.hackとかのでも大して形は変わらないとは思うのだけれど。
ともあれ、縦に長いその部屋の中には、道中よりも遥かに多くのジャパイム達が屯していたのだった。
……だったのだが。逆を言えば、それ以外のモンスターは影形もなく。言ってしまえば、ボス部屋とは名ばかりの
……ええと、最深部まで来てジャパイム戦に終始するんです……?
思わず拍子抜けする私だったが、そこでオグリがなにかに気付いたように声を上げた。
「いや待て。種類が微妙に違うぞ」
「はい?」
「あれは肉まんと見せかけて、高級肉まんタイプ。あっちはあんまんでこっちはピザまん、それから豚角煮入りに海鮮エビチリに……」
「いや待った待った!見ただけで把握できてるのも怖いけど、中身に統一性が無さすぎるのも怖い!」
どうやら、ここに居るジャパイム達は、その全てが別種の存在であるらしい。
一つ足りとて同じ中身がないというのは、ここに確認されている全てのジャパイムが揃っている、とでも言うかのよう。
……いや、全種揃ってるからなんだと言われればそうなのだが。同時に、
「ほうほう。この子達ぃ~、『ぷるぷる、僕達は悪いジャパイムじゃないよ』って言ってるみたいだゾ」*3
「わかるの!?ジャパイムの言葉が!?」
「なんとなーくだけどね~」
続いて衝撃発言をしてくるのはしんちゃん。
どうやら、うっすらとだが相手がなにを話しているのかが理解できるらしい。
今までのジャパイム相手だと、そんな素振りなかったじゃん!……みたいな感じだが、どうやらここに集まっているジャパイム達が特別な様子。
……んん?ってことは、ここのボスはこの子達じゃない、ってこと?
私はてっきり、この子達が『ジャパイム達が合体していく!……なんとキングジャパイムになってしまった!』みたいなことになるのかと思っていたのだけれど。*4
「それだと味が全部混ざっちゃって、酷いことになるってばよ……」
「肉まんとあんまんが一緒に居る時点で、余程上手く混ざらないと単なるゴミにしかならないだろうねぇ」
「……不味いのか?」
「美味しくはないだろうねぇ」
なお、後ろの方ではゴブスレさんが首を傾げていた。
……一般常識的なものには疎い彼(?)のことなので、最悪食べ物なんて食えればいい、くらいに思っているのかもしれない。
ともかく、こうして集まっているジャパイム達がボスでないのなら。……予想されるボス像はただ一つ。
「と、言うと?」
「彼らを餌にしているヤツ、すなわちフレンズがここのボスになってるってことじゃないかな?」
ジャパイム達は、ジャパリまんに命が宿った結果、モンスターとなった存在。
そしてジャパリまんとは、『けものフレンズ』におけるフレンズ達の主食。無論、他のキャラ達が食べることもできるし、実際にオグリがパクパク食べていたが……それでも、関係性が深いのはフレンズ達、ということになるだろう。
ゆえに、ぷるぷる震えるジャパイム達は、ここのボスに献上されたもの。
そして恐らくは、これから彼らを捕食するためにボスが現れるはずだ。
すなわち、私たちの戦いはそこから始まる、ということになるのだけれど……。
「……気のせいかな、変なフラグ踏んだ気がするんだけど?」
「奇遇だね、私もそう思うよ」
……何故だかはわからないけど、どうにも変なフラグを踏んだような気がするというか。具体的には
いやまぁ、捕食者が現れるという予想は外れないと思う。思うのだが、そこから二手三手捻られそうな予感がする、というか?
そもそもの話、ここで出てくるボスがフレンズだったとして、それは【顕象】の方じゃないのか?……みたいな?
この場合は敵対的な【顕象】となるので、ボコったところで仲間になるとは限らない、みたいな?
「え、そうなのだ?」
「ビーストとかならアレだけど、単なる敵対的【顕象】が仲間になった例ってないからなぁ……」
首を傾げるアライさんに、過去の事例を思い出しながら声を返す私。
もろに敵対していたように見えるハクさんも、その実敵対心はほとんど無かったし。
元がビーストだった数例達も、ビーストの本質が『人類愛』である以上は、完全な敵だったかと問われれば首を傾げなければならない。
いやまぁ、ビースト組は負けたあと生まれ変わっているようなものなので、明確にイコールで結び付けてしまっていいのか微妙なところもあるわけなのだが。
ともあれ、敵対的な【顕象】として顕現した彼らが、戦いの後に仲間になったという例は今のところ皆無。
……そうなると、ここで出てくるボスには最低でも精神操作を受けている、とかが必要になってくるのだけれど……。
「……企業ダンジョンでそんなことやってたら、それこそ問題だよねぇ」
「だねぇ」
フレンズ達を望まぬ敵役にしていた、とか店のイメージダウン間違いなしである。
そんな危なっかしいことできるわけもないし、やるはずもない。……と考えると、ここで出てくるボスはやっぱりフレンズじゃない、というのが正解になりそうなわけで……。
「……帰ってよくない?まだまだダンジョンはいっぱいあるわけだし」
「いやいや。ここまで来たんだからちゃんと制覇していこう」
「……その心は?」
「勝ったらお土産げふんげふん」
「あー……」
じゃあ、当初の目的を考えると、無理にここをクリアする必要なくない?……みたいな気持ちも沸いてくるわけで。
帰還アイテム使って、さっさと別のダンジョンに挑むべきなのでは?……という私の言葉も、ある程度の正統性を持ってしまうわけなのである。
まぁ、実際にはクリスマス当日の面倒を減らすため、クリアできるのならした方が良いって話になるのだが。……オグリの言う理由についてはスルーである。
……そうこうしている内に、ボスが現れるんじゃないかなー、と思っていたのだが。
今のところはジャパイム達が震えているだけで、なにかが現れる気配はない。
なので、もしかしてこの震えるジャパイム達を狩れ、みたいな人の心案件なのでは?……みたいな懸念も湧き始めてしまい……。
「……この音」
「よかった!人の心案件じゃなかった!」
微かに聞こえてきた音に、ようやくボスが現れたことを知る。
良かった、これでただ震えているジャパイム達を虐殺する、なんて後味の悪いことにならずに済……なんですこの音?
改めて聞こえてきた音に耳を澄ませば、どうやらこれは風の音のよう。
周囲に風が吹いている様子はないため、これが響いて来ているのは見えない場所──すなわち上から、ということになり。
「っ!下がれっ!」
「ぬぉわぁっ!!?」
それに気付くと同時、頭上に現れる影。
なにかが落ちてきている、ということに気付いた私たちは、ゴブスレさんの言葉によって慌ててその場から飛び退き。
逃げ損ねたジャパイム達が吹っ飛んで行くのを横目に、空から落ちてきたその
「……ベリオロスじゃん!!?」
そう、空から飛来してきた、巨大な影の正体。
それは、翼を持つサーベルタイガー、とでも言うべき巨大な生き物。
モンスターハンターのモンスターの一種、ベリオロスなのであった。……なんか牙が原種と違う気がするんですけどー?!