なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
現れたベリオロス……っぽい謎の巨大な生き物。
その姿に戦々恐々としつつ、体勢を取り直す私たち。
相手がモンスターハンターに登場するモンスターである以上、一般人程度の身体能力しかないメンバーのほとんどが戦力外、ということになる。
なにせ、高所から落ちても平気・寒さも暑さも飲み物一つで踏破などなど……規格外な身体能力を誇る*1あの超人的なハンター達が、それでもなお苦労しながら倒すのがあのモンスター達なのである。……普通の人間では、役者不足どころの話ではあるまい。
一応、このダンジョンの中もなりきり郷の中判定なので、敵の攻撃で死んだりすることはないと思うが……それが怪我をしないことと同義かと言われると、否と声をあげなければいけないだろう。
つまり、自動的にしんちゃんとライネスが戦力外通告、ってことになるわけである。……いやまぁ、しんちゃんは頑張ればどうにかなるかもしれないけども。
でもこう、幼稚園児に相対させるべき相手ではない、ってのは確かな話でしてね?*2
「わかったゾ!オラ、ライネスちゃんをお守りするゾ!」
「そうかい?じゃあまぁ、私たちは下がるとするよ」
「そうしてー!……さて、と」
そこまで語れば、皆まで言うなとばかりにしんちゃんがライネスを連れて後ろに下がってくれる。……流石はしんちゃん、こういう時は切り換えが早い。
いやまぁ、普段は戦えるの彼一人みたいなことも多いので、早々下がることはないとは思うのだが。
ともあれ、二人が安全圏に下がったのを見て、改めて相対している巨獣──ベリオロスらしき相手に向き直る。
戦えない相手を攻撃するつもりはない、ということなのか、かの獣は静かな唸り声をあげつつも、現状は静観を貫いているのであった。
──ベリオロス。
モンスターハンターシリーズに登場するモンスターの一種で、種族は牙獣種。……と見せ掛けて、実は飛竜種である。*3
猫っぽい見た目と異名である『氷牙竜』という名前から一瞬勘違いしてしまうかもしれないが、かの獣は歴とした竜の一つ。
ゆえに、甘く見れば容易くこちらを屠るだけの力を持つ、恐るべきモンスターなのである。
特徴は、なんと言ってもサーベルタイガーに見えてくるような、その立派な牙だろう。
この牙、実は攻撃にはさほど積極的に使ってこない。どちらかと言えば、メスへのアピールのためのものだとされているのだが……。*4
「……なんか、色々と違くない?」
「そうなのか?」
本来、ベリオロスの牙は琥珀色のもの。
だが、目の前のベリオロスらしきモンスターのそれは、青白く透き通った剣のような形をしている。
それも、折れた剣が牙として突き刺さっているかのような見た目なのだ。片方が柄の側、もう片方が剣先の側、みたいな感じというか。*5
雑に言うのならアイスソードの刺さったベリオロス、みたいな?
その奇異な姿ゆえ、ベリオロスだとはっきり断言できない……だというのはわかって貰いたい。
つまり、なにか【継ぎ接ぎ】されているのではないか?……と、私は疑っているのだ。
「なにかって、なんだってばよ?」
「それがわかれば苦労はしないんだよなぁ……」
ナルト君が怪訝そうに質問を投げてくるが……生憎と、私が答えられるのは
自身の知識の外にある答えは、意識して見ようとしていない限りは全て非公開情報である。
そのため、あのベリオロスに混ざっているモノが
「?まだこの世に生まれていないものは、【継ぎ接ぎ】の対象外なんじゃないのか?」
「エー君の性格構成に、その時発表されていなかった太歳星君が混ざってた辺り、確率としては低いけど決して起こらないことではない、ってことになってるからねー……」
いやまぁ、実はエー君の性格は誰かが干渉した結果、と言われれてしまえばわからなくなるけども。
どうにも、この『逆憑依』というものもまた、時間軸の軛からは逃れられている……と認識した方がいいみたいで。
そこを踏まえるのなら、今のベリオロスの牙がおかしいのは、未来にて発売する何物かが【継ぎ接ぎ】として混ざった結果、なんて可能性もゼロではなくなるわけで。
その可能性がある限り、私ははっきりと断言できないまま、現状の対処に向かうしかない……ということになる。
それでも、私は相手を見据えて、皆にこう告げるのだった。
「とりあえず──戦闘開始だ!」
先手はベリオロス。
バックステップしながら飛び上がった彼はというと、前足から伸びた翼によって宙に滞空していたのだった。
「……あのなりで飛んだってばよ!?」
「ああうん、所見だとビックリするよねアレ……」
いわゆるティガ骨格*6に分類されるベリオロスだが、その系列の竜にしては珍しいことに、明確に空を飛ぶことができる種族である。
他のティガ骨格系のモンスターが、名前の由来であるティガレックスやナルガクルガ・ギギネブラなどなど、そのほとんどが地上を走り回ることを主体とするのに対し、このベリオロスだけはそれらに加え、他の飛竜種のように空を飛ぶ……ということをしてくるのだ。
しかも、高所からの滑空ではなく、こうして目の前で翼をはためかせ、明確に……だ。
それだけではない。
ベリオロスは体の各所に鋭い棘を持ち、これを天井や壁に突き刺すことで、それらの場所を自在に駆けることもできるのである。
いわば、ほぼ全ての場所が庭のような状態の猫科の動物。……これでこちらに飛び掛かってきたりもするというのだから、末恐ろしいことこの上ないだろう。
「……閃光で落とすか?」*7
「ああいや、とりあえずは温存しといて。……効くかどうか怪しいし」
「……む?確かなベリオロスに閃光は有効だったはずだが……?」
あのまま飛び回られては厄介、とゴブスレさんが閃光玉の使用を進言してくるが……今のところは止めておこう、と返す私である。
理由は、これが現実であること。
ベリオロスには、設定として閃光に強くてもおかしくない性質があるのである。それが、雪の照り返しに対する耐性だ。*8
「てりかえし、なのだ?」
「そ。雪の中を主な生活域とするベリオロスは、白い地面から反射する光に目を焼かれないように、ちょっと特殊な進化をしているんだ、って話があるんだよ」
今のところ、それがゲームに反映されたことはないが、とも一応付け加えて置くが……ともあれ、ベリオロスが設定的には光に強くてもおかしくはない、というのは確かな話。
ゲーム的には飛行状態の彼を叩き落とすのに有効にされているが、実際には効かない可能性、というのは少なくとも存在しているとも言える。
そして、相手が【顕象】である以上、『ベリオロスに閃光玉が効く』という情報と、相手がそれを活用してくる可能性というものを、相手のベリオロスも理解している可能性……というのも少なくないのである。
その場合起きることは、わざと閃光玉を受けて怯んだようなポーズをする、ということだろう。
ゲームと同じ感覚で閃光玉を使い、相手が落ちてもがいている姿を見て、これ幸いと近付いたら頭からガブリ……なんてことになる可能性は、普通に存在しているのだ。
「……やつがそこまで狡猾かは知らんが。忠告は忠告だ、受け取っておこう」
「あんがと」
ぶっきらぼうに声を返してくるゴブスレさんに小さく陳謝し、改めて滞空するベリオロスに相対する私たち。
……この可能性に思い至ったのは、こうして隙のようなモノを晒したにも関わらず、こちらに攻撃してくる姿勢を見せない相手のせい、と言えなくもないだろう。
「…………」
油断なく、間断なくこちらを見つめる視線に隙はなく、逆にこちらの隙を虎視眈々と狙っている、ということが伺える。
これに迂闊に突撃していたら、恐らくはかるーく一乙*9していただろうことは想像に難くない。
戦いというのは、逸った方が負けるもの。
ゆえに、この相手に対しては慎重にならざるを得ないのであった。
……まぁ、慎重になりすぎて、暫くお見合いみたいになってたんですけどね!!
「えー……流石にこの膠着状態はどうかと思うなー……」
「うるさいよライネス!隙を見せた方が負けるんだからね!」
「いやもう、これは不戦勝でどっちも負けなやつだよ絶対……」
気のせいでなければ、相手のベリオロスも固唾を呑んでいるような。
そんな奇妙な緊張感は、相手の羽ばたく音が響くまま続いていき。
「……あーもうじれったいってばよ!こうなったらー!」
「あっちょっ、ナルト君ダメだってば!螺旋手裏剣は火力ありすぎるから禁止って言ったでしょ!?」
「でもこれが今の俺の最強火力なんだってばさ!!これで全部吹っ飛ばすのが多分一番頭のいい作戦だってばよ!!」
「猪突猛進すぎるわ!!」
「なるほど、やはりここは
「だから止めろって言ってんだろうがこの問題児共ーっ!!」
「なぁキーア、これ食ってもいいかな?」
「ダメだって言ってるでしょー!!?」
「………(汗)」
最終的に、焦れに焦れまくった一部の問題児達が、敵前にも関わらず好き勝手し始めたため、色々と台無しになって終わるのだった。
……気のせいかな、目の前のベリオロスからの視線が「お前も大変なんだな……」みたいな憐れみの混じったものに変わった気がするんだけど。
モンスターの方が常識的だとか、正直もうキャパオーバー過ぎて笑うしかないんですけどー!!?