なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
凄まじくぐだぐだな空気となってしまった、ボス部屋空間の中。
私たちは、もう完全に戦意を失ったらしいベリオロス(?)が呑気にあくびをしているのを尻目に*1、みんな纏めて正座させられ、ライネスからのお叱りの言葉を受けている最中なのであった。
「いいかな君達?相手がそこまで好戦的でなかったからこそ良かったものの、こんな状況で内輪揉めなんてしてたら、全滅も普通に視野に入ってくるんだ……ってことをきちんと理解しているかい?」
「いやその……」
「声が小さい!意見があるなら大きな声で!!」
「ひぃっ!ごめんなさいだってばよ!!」
「……敵なら倒すべきだ」
「敵ならね!膠着状態をこちらから崩すのは得策じゃない、ってのは君にもわかるだろうに!」*2
「むぅ……」
なお、この中で一番怒られているのは、なにを隠そうナルト君とゴブスレさんである。……この二人の行動が一番脳筋*3だったからね、仕方ないね。
いやまぁ、次点で私が怒られてるって事実を無視すれば、の話だけども。
「そりゃそうだろう、この中で本来纏め役として頑張らなきゃいけないのは、なにを隠そう君なんだから」
「私はちゃんと頑張ってたんですけどー?!これ以上なにを頑張れって言うんですかー!?やったんですよ必死にー!!」
「黙らっしゃい、台詞的にまだまだ余裕があるだろうそれ!」
……ちっ、バレたか!
いやまぁ、ほんのりバナージ君風味、って時点で気付く人は気付くだろうけども。
ともあれ、戦闘らしい戦闘も起きないまま、こうして反省会に移行することになったわけなのだけれど。
……そういえば、未だに扉が開かないってことは戦闘……戦闘?は終わってない、ってことでいいのかなこれ?
いやほら、今のところ閉じ込められたまま、ってことになるわけだし。
「でも、ベリちゃんは最初からやる気ないって言ってるゾ~?」
「いや、こっちの言葉もわかるんかいしんちゃん……でも、んー?さっき上から降ってきた時は、わりとやる気だったような気がしたんだけど……」
だがしかし、しんちゃんの言うところによれば、目の前のベリオロスには最初から戦闘の意思などないとのこと。
……扉が閉まっている以上、なにかしらの条件を満たさなければここから出られない、ということになるのだろうが。
それが戦闘ではないのだとすると、私たちは一体なにを要求され、なんのために閉じ込められているのだろうか……?
「その辺り、向こうはなにか言ってない?」
「ん~……あんまり詳しいことはわかんないんだゾ。なんとなーく、今はお腹空いたって言ってる気がする……みたいなー?」
「ふぅむ、お腹が空いた、ねぇ。……ん?
試しにしんちゃんに確認を取って貰おうと思ったものの、どうやら彼は明確に相手の言葉がわかる、というわけではないらしく。
今現在、相手がどんな感じのことを思っているのか、ということをほんのり認識しているというのが正しいらしい。
……そういえば原作のしんちゃんも、そこらの野生動物達と仲良くなるのが異様に早かったような気がするし、その延長線上の能力……ということになるのかも。
仮にそうだとすると、彼が本当にここのボスなのかも、彼が本当に求めているモノがなんなのかも、しんちゃんが実際に尋ねて確認することはできないということになるわけか……と、小さく唸った私はというと、続いてしんちゃんが告げた『今のベリオロスの考えているらしきこと』に、思わず引っ掛かりを覚えていたのだった。
……ベリオロスは竜・すなわちモンスターに分類される生き物だが、大別してしまえば彼(?)も
少なくとも、ベリオロスは人ではないのだから。
そして今、彼はしんちゃんの言うところによれば、大層お腹を空かせてここにやって来た、らしい。
「
「……ボ,ボクタチワルイジャパイムジャナイヨー」
さて、ここに入った時、私たちの周りに居たものとはなんだったろうか?
……そう、ここに居たのは無数のジャパイム達。
そこらにあった
──では問題です。
この周りのジャパイム達、本当に悪くないと思う?
「……捕まえて放り込めー!!!」
「「「キャーッ!!?」」」
正解は『別に悪くはない。但し生存競争に善悪はなく、そこで行われる全てはただあるがままにある』。*5
……要するに、オグリに食べられないようにガードしてたことだけは正解だった、ということだ!!
「すまんなジャパイム達。君達に罪はないかもしれないが、観念してベリオ君のご飯になってくれたまえ……」
「まるでピクミンかなにかみたいに、綺麗に大量に平らげられて行くなぁ……」
「ちょっと良心が咎めるってばよ……」
「よーく見たら、こいつらみんなNPCみたいなモノだったから気にせず投げていいよ投げて。……っていうか、下手すると人畜無害だと思わせて食べさせることに罪悪感を抱かせ、出られなくなった私たちを養分にしてやろう、みたいなこと考えてたし」*6
「どこぞの妖精と大差ない奴らだった!?じゃあ遠慮はいらないな、じゃんじゃん食べさせるってばよ!」
「……ゴブリンか?」
「性格的にはゴブリンと大差ないね!」
「……ならよし」
はてさて、まるで地面からピクミンを引っこ抜くかのように、逃げ惑うジャパイム達を捕まえては投げ捕まえては投げ。
気分は玉入れ、宙を飛び交うジャパイム達をベリオ君がパクパク食べるのを見ながら、多分これが正解だなと確信した私である。*7
だってほら、さっきから数百単位で投げてるにも関わらず、ジャパイムの総数変わらないんだもん。
やっぱりここいらにいるジャパイムは、単なるベリオさんの餌って以外の意味はないんだな、と悟りもするというか。
……まぁそんなわけで、みんなで手分けして、ひたすらジャパイムを食べさせて行く私たち。
その数が都合四桁の大台に乗ろうとした時、その変化は突然舞い込んできたのであった。
「ん、お、おお??ベリオ君が突然目映い光に包み込まれたぞ?」
「これは……まさか進化か?」
「進化ぁ!?」*8
大量のジャパイム達を摂取したベリオ君は、今や眩しいばかりの輝きに包み込まれている。
その中で変化するシルエットと合わせ、それはまるでポケモンの進化のようで……?
なんでそんなことに?と困惑しつつ、眩しさから思わず目を細める私たちと、その中で蠢く何者か。
やがてその輝きはその勢いを失っていき……、
「……うむ、改めて初めましてだな。吾はパオジアンのフレンズ!気軽にパオとでも呼ぶがよい!」
「……ん?」
「ん?」
「「……んん?」」
そうして現れたのは、予想通りフレンズの姿となった、予想外の見知らぬ誰かなのであった。……パオジアンって誰!?*9
「ふぅむ、不思議なこともあるものだなぁ」
フレンズと化した彼女が姿を見せた途端、これでクリアだと言うことなのか、大きな軋みをあげながら扉が開いていく。
……ボス戦はボス戦でも、料理系のアレだったかー。
なんて現実逃避をしてみるものの、目の前の現実は無情にも私たちを混乱の渦に巻き込んで行く。
「新しいお友達だったのだ!こんにちわなのだ!アライさんはアライさんなのだ!」
「うむ、吾はさいやくポケモンのパオジアンのフレンズ!大船に乗ったつもりでよろしく頼むぞ、るきるきるき」*10
「……ええと、なんなのだ?それ」
「む?ああ、キャラ付けだから気にせぬように」
「自分でキャラ付けって言ったのだ!?」
背丈こそアライさんと同じくらいの彼女は、しかしてどうにも異様さを隠しきれていない。
なにがあれって、左右の手に剣が刺さってんのよ、さっきのベリオロスの時に牙の位置にいたあのアイスソードが。
痛々しいこと間違いないのだけれど、彼女に言わせれば「痛そうだろう?
思わず「えー?」ってなったものの、確かに血とかも出ていないので、あくまで痛々しいだけ、らしい。
……まぁ、さっきのベリオロスの時も血とかは出てなかったし、恐らくはそういう生き物なのだろう、多分。
それから、彼女が名乗った『パオジアン』という名前。
どうやらこれは、
らしい、というのは、それが本当かどうか今の私たちに確かめる術がないからなのだが……ともあれ、そのポケモンは彼女が今名乗ったように『災厄』をもたらすもの、なのだとか。
……四神が揃ったので次は四凶*11、ということなのかもしれない。ただまぁ、彼女の言うところによれば素直に四凶や四罪に準えたものではない、らしいが。
ともかく。
謎を抱えた彼女と共に、私たちは数時間ぶりの地上へと飛び出すことに成功したのであった。