なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……で、一度報告のために戻ってきたってこと?」
「いやだって、どう考えても色々おかしいもん、この子」
はてさて、地上に帰還した私たちはというと、一度探索を切り上げて、ゆかりんの元へと足を運んでいたのだった。
理由はこの子、パオジアンのフレンズとか自称する少女。
……なんでかって?見てて痛々しいというか、へそとか色々出すぎてて歩く猥褻物みたいになってたから、いたたまれなくなった私が作って着させたんだよ!!
「気にしなくてもよかったのに。色々危ないから
「喧しい、大人しく着てなさい」
「はーい」
どうにもこの子、自身の状態に対していい加減というか無頓着というか、とにかく気にして無さすぎるのである。
後ろから見たらパンツ丸見え、くらいのボロボロ加減なのに一切気にしてない辺り、なんかもう色々とツッコミたくなるというか。
「人がいいのだな。吾は気にしてないぞ?
「んなわけあるかいっ」
あとは、言葉遣いに少し覚えがある、というか。
今このなりきり郷にいる誰かと似ているというわけでなく、どこかの作品で見たことがあるような?……みたいな感覚というべきか。
そもそもの話、そのボロボロのセーラー服も、なにかしら見覚えがある気がするわけで。
ただ、それらの既視感はあくまで既視感程度の軽いものに留まっており、具体的な像を結ばない。
喉元まで来ているのに、それが実際に形を成すまでに至っていない……とも言えるかもしれない。
そこら辺も踏まえて、色々気になるので一度探索を打ち切った、というわけなのであった。……いやほらさ?このまま探索続けてたら他の四災達も集まってきそうでイヤだった、みたいなところもなくはないのだけれど。
「ええと……話を聞くところによれば、他の四災は金魚みたいなのと鹿みたいなの、それから蝸牛みたいなのがいるんだっけ?」
「そうだなぁ、吾以外のモノがこちらに居るかはわからんが、仮に居るのであればそれらが顕現する、ということもなくはないかもしれんなぁ」
こちらの問い掛けに、パオちゃんはうんうんと頷きながら、彼女の同僚だというポケモン達の特徴を挙げていく。
勾玉を核とした焔の金魚、イーユイ。
青銅の器を核とした土石の鹿、ディンルー。
それから、木簡を核とした枯れ葉の蝸牛、チオンジェン。
それに加え、剣を核とした雪の虎・もしくは豹であるパオジアンの四体が、今度のポケモンの舞台において、フリーザー達三鳥やエンテイ達三犬などと同じ、準伝説として設定されているポケモンなのだとか。*1
災厄の名を冠する通り、どれも悪タイプを含むらしいが……少なくとも、今ここにいるパオちゃんはわりと素直な感じではある。
……いやまぁ、見た目とかからよくない雰囲気的なものは、びんびんに出ているわけだけども。
ともかく、この間『四』という数字には痛い目を見せられたこともあり、揃えなくていいのであれば揃えたくない、というのが現状での本音。
そのため、不安要素はできる限り摘んでおきたいわけなのであります、はい。
「んー、と言われても相手の危険度がわからないのよねぇ……災厄って、どれくらいのことができるの?」
「うむ?吾のできることで良いのなら……そうだな、百トンの積雪を操り雪崩を起こし、その中で遊ぶなどと言われているぞ?」
「……かるーくやばーい数値を出されたんだけど???」*2
なお、この話の重要性がよくわかっていなかったらしいゆかりんは、彼女がどう言うことをできるのか?……ということの一端を聞き、思わず宇宙猫になっていたのであった。
……実は他の三匹も、金魚は三千度の焔を操って地面を溶かして泳ぐし、鹿は頭を一振するだけで
「結局私に投げられた件」
「そりゃまぁ、ここで一番そういうのに対処できる人物、というと君以外に居ないからねぇ」
「ねーちゃんってば、いっつも面倒ごとばっか抱え込んでるってばよ」
「仕方ないでしょ魔王なんだから……」
あのあと、早々にキャパオーバーとなったゆかりんによって外に放り出された私たちは、渋々次のダンジョンに向かって歩を進めていたのだった。
いやだって、ねぇ?今回のあれこれは全て、クリスマスそのものの成否に関わることでもあるのだから、まさか見なかったことにして投げ出す、ってわけにもいかないし。
ついでに言うなら、ポケモンのフレンズ──ポケフレ以外のフレンズが居ないとも限らない以上、アライさんが止まる理由にもなってないわけで。
「そうなのだ!アライさんは少なくとも、フェネックに会うまでは止まらないのだ!」
「よしんばフェネックに出会えなくても?」
「止まらないのだ!」
「なんか静かですね?」
「フレンズのみんなはどこか別の場所に……って、死亡フラグを立たせようとしないで欲しいのだ!」
「止まるんじゃねぇぞ……」
「遠回しに止まることの必要性を説こうとしないで欲しいのだ!?」*3
一応、こんなこんな感じに「猪突猛進はよくないよー、時には立ち止まって周囲を確認する冷静さも必要だよー」とそれとなく口に出したりはしてみているものの、一度やると決めたことは曲げない、みたいな感じでまさに暖簾に腕押し感がすごかったり。
……現在彼女の隣にいるのが、まさしくその心情を貫き通した人物の一人、うずまきナルト(の、幼少期)であるというのもマイナス要素になっているのかもしれない。
「あれ?俺にまで説教が飛んできたってばよ?」
「私はしないよ、私は。……まぁ、どこかでうまく行ったやり方だったとしても、それがどこでも使える万能の答えになる、なんてことはほとんどない……ってわかって貰えれば、私としては十分かなーって」
「なぁんだ、姉ちゃんには怒られないのかってばよ。心配して損したぜ」
「……おおっと、これは吾がわざわざ口に出さずとも結果が見えているな?」
「んん?いきなりなにをぶつぶつ言って……ひぃっ!?ららららライネスぅっ!?」
「はっはっはっ。……帰ったら覚えておきたまえよ、君」
まぁ、さっきのボス部屋であったことをすっかり失念している辺り、彼の受難はまだまだ始まったばかりなのだろうが。
ともかく、震え上がるナルト君とニコニコ笑っている()ライネスを横目に、私たちは何事もなく次のダンジョンの入り口にたどり着いていたのでたった。
「はい、ダンジョン挑戦の受付は、あちらでお願いしまーす」
「今度のところは、さっきよりも大きいようだな……?」
「あっちはダンジョンについてはそこまで力を入れてないみたいだけど、こっちはもうちょっと本腰入れてやってるらしいから、その差だろうね」
「ふむ……?」
そうして私たちの目の前に現れたのは、一つ目のダンジョンよりも大掛かりな受付。
さっきまでのが地方だとすれば、こちらは地方都市くらいには大きくて確りとした造りになっている、というべきか。
それもそのはず、あちらは百貨店という店の規模ながら、ダンジョン運営に協賛していたのは一部のテナントのみ。
そのため、こちらよりも運営規模が小さくなっていたのである。
……まぁ、逆を言うとこっちのダンジョンは、中小企業がその総力を上げて取り組んでいる……ということになるので、罷り間違ってダンジョンを崩落させた日には、とんでもない()ことになるのが約束されている、ということにもなるのだが。
「具体的には色んな人が路頭に迷うね、本来なら」
「それだけの財力やら人材やらを投入している、ということだからね。……そういうわけだから、そこの二人!さっきのダンジョンみたいな甘いことは一切許さないから、そのつもりで居るように!」
「滅茶苦茶目を付けられてるってばよ……」
「やれやれだ」
まぁ、実際には
彼らはなりきり郷の正式な住人達で構成されているため、衣食住に金銭は掛からないわけなのだし。
だからといって、無一文になることに文句がないか、と言われればそれもまたノーなので、罷り間違う可能性のある攻撃手段を好んで使う二人──ナルト君とゴブスレさんに関しては、さっきにもまして強めのお言葉と監視が付くことになるわけなのだった。
……と言っても、ライネスの使い魔が彼らの傍らに常に付き従うようになる、くらいのものだが。
だって使えるリソース、そこまで多いわけでもないしね。
「オラが見張るー、なんて案もあったんだけどー」
「しんちゃんが一緒に居ると、逆にそういう手段を使う機会が増えそう、みたいな予感がしたから却下したんだってさ」
「んもー、オラが問題児みたいな扱い!失礼しちゃうわぁ~」
「……いやまぁ、問題児なのは間違いないからね、君」
「お?」
一応、現在ライネスの護衛をしているしんちゃんに、彼らのことも注意して貰う……みたいな案も無くはなかったが、よくよく考えたら(考えなくても)、しんちゃんも大概トラブルメイカーであることを思い出し、なんか最終的に『辺り一帯吹っ飛びましたが財宝を見付けられたので問題ありません』みたいな、とんでもない結末に落着しそうな気がしたので取り止められた、みたいな話があったり。
そんなことを告げられたしんちゃんは、惚けたように首を傾げていたのだった……。