なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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雨後の筍のように増えたりもする

「……そういえばそうか。俺達は版権キャラの憑依しか、ほとんど見てこなかった」

「キーアちゃんがここに来たから、一応説明の方に憑依者は()()版権キャラと付け加えたけれど。……『キーアちゃんツッコミブレード(ハリセン)*1が使えていた、というのなら色々考えるべきことができてしまうわね」

「……あの、すみません。せんぱいのハリセンが、一体どうしたと言うのでしょうか?」*2

「あー、なるほど。マシュちゃんはキーアちゃんのスレ、見たことないのね?」

「……すみません、あまり子細に閲覧したことは無いかと……」

「訳知り顔でちょっと口挟んで見たけど、俺も見たことはないねぇ」

「……まぁ、版権系とオリ系は、あんまりそりが合わないことが多いから仕方ないね」*3

 

 

 ゆかりんと二人で事態の深刻さを確認しながら、周りで困惑の表情を浮かべている二人に、何から説明したものか、と少し思案する。

 ……ん、まぁちゃんと話さないとわからないか。

 

 

「俺がファンタジースレのスレ主を何回か経験してる、って話は楯にしたことあるよな?」*4

「あ、はい。何度かお聞きしたことがある、と記憶に残っています」

 

 

 このキーアというキャラクターだが、元々は俺が最初になりきりに使っていたキャラではない。*5

 最初は別の、普通の男性冒険家をキャラハンとして使用していたし、そいつはチートとかとは程遠い、普通のキャラクターだった。*6

 

 ……それがまぁ、何の因果か。

 スレが進む内に戦闘描写*7が重視されるようになって、参加するキャラクターも好戦的なものが増えていって。*8

 最終的に、スレは大炎上一歩手前にまで悪化してしまった。

 それをどうにかしようとして生み出したのが、キーアだったのだ。……まぁ、この子が生まれた時は、俺が発言をミスったせいで、最後の着火材になりかけたりもしたのだけれど。

 それでも必死こいてスレの空気を入れ替えて、結果として俺はキーアとして次のスレを立てることになったのだ。

 

 そして、そのままスレを運営する内に、昔の炎上時代を見て飛び込んできた、新しいキャラハンを言いくるめて全うな道に戻したり(戻せてない)、はたまた祭りスレで他のキャラハン達と交流したりする内に──、キーアは、無敵のチートキャラ*9と化していた!*10

 

 それはもう、世が世ならなろう*11でやれと言わんばかりの超チートキャラになってしまっていたのだ!

 ……スレの円滑な運営の為に、少なくとも自分の運営するスレ内ではキーアが最強であるとし、不要な言い争いはしないように言い含め。

 そこまでしてやっと、ファンタジースレは静かな時を取り戻したのだった。……いやまぁ、単に衰退期に入っただけでもあるんだけどさ?*12

 

 

「そ、それはまた、なんというか……」

「波乱万丈だねぇ。……で、それが結局どうしたの?」

「……ちょっと前に、楯に『ワンパンマンモチーフキャラを受け入れるのは違う』って言われたことあるじゃん?」

 

 

 質問に質問で返された楯が、「た、確かにそのような事をお聞きした覚えがあります」と返して来たので、俺は、俺は──。

 

 

「……飛び込んでくる新しいキャラが、どいつもこいつもインフレ*13って言葉を知らないんじゃないか、ってチートキャラばっかりだったから。キーアもまた、超チートとして設定盛らないといけなかったんだけど。……正直、言っちゃ悪いけど段々ダルくなってきてねー……*14

「今思えば、結果論とはいえキーアちゃん、盛りに盛られたキャラになっていたから。……いわゆる最強厨*15みたいなのに粘着されるのは、半ば自業自得みたいなところがあったと私は思うけどね」

「うえー、言わんでくれ俺も反省はしてるんじゃい……ちょっと視野狭窄に陥ってたんだよー」

 

 

 めんどくさくなって力こそパワー!(上から潰す方が早い)*16してたのは確かだけど。……そんなん喧嘩売ってるようなもんやんけと、冷静に見返せる今なら言えてしまうけど。……初スレ主とか色々ある内にテンパってたというかなんというか。

 ……まぁ、当時の俺がバカなのは事実なので置いといて。

 次々やってくるチートキャラの相手に疲れ果てて(正確には彼等に返す言葉選びに疲れて)、俺は禁じ手を使ってしまったのだ。……質問を受けて答えを返す、というなりきりにおいて、ある種一番の禁じ手を。

 

 

「キーアは、()()()()()()()キャラなんだよね」

「……はい?」

「何もできない()()()、本当の意味で()()()()()()な存在。……それが、キーアが行き着いた結論」*17

「……えーと、認識の差があるような気がするから確認しときたいんだけど。……それって、どこまで?」

「…………どこまでも。机上の空論のようなモノも含め、ホントに全部」

「……うわぁ」

 

 

 こっちの答えに、五条さんがドン引いてる。楯の方は──理解をしようと唸っているので、今のところは大丈夫そう。

 ……まぁ、五条さんの反応もよく分かる。だってねぇ?

 

 

「──地雷系オリ主やんけこれぇ!?人格者としてやってたつっても、人によっては即ブラバ案件やぞ!?」*18

 

 

 はっず!小学生の書いた『ぼくのさいきょうのおりきゃら』系そのまんまな造形になってんの、結果的にだとしても自分の想像力の底が見えたような気がしてはっず!

 

 

「──せんぱいが、根源接続者*19みたいなモノだと言うことは理解できました。……ですが、結局のところそれの何が問題なのか、私には理解ができていない。*20教えてくださいせんぱい、さっきのハリセンは、何が恐ろしいのでしょうか?」

「あ、ああ、うん、そういやハリセンの話だったか。……傍目には単にハリセンを取り出したように見えるけど。実際には、宝具を即興で生み出してるようなものなんだよね、あれ」

「──はい?」

「『場面転換』という概念を、ハリセンという形に成形してたってわけ。──それがちゃんと効力を発揮してたというのが、今回やべぇってなったところ」

「いや、ちょっと、待ってくださいせんぱい!整理、整理します!」

 

 

 困惑した表情の楯が、ブツブツと呟きながら自身の世界に潜り。

 ──しばらくして、その顔を若干青に染めながら、静かに口を開いた。

 

 

「つまり、せんぱいは──本来のスペックを発揮できている()()()()()()、と?」 

「……たぶん。……これ、どういうことなんだ?」

「さあ、私にはなんとも。そもそもさっきから言ってるけど、オリキャラ勢でこの異変に巻き込まれているのが貴女以外見つかってないから、比べようもないしね」

「むぅ……」

 

 

 いやまぁ、取れる手が多いことはいいのだ。

 ……いいのだが、何が原因なのか、誰かの思惑があるのか……と言った裏の部分が一切見えてこない為、素直に喜んでいいのかがわからないのである。何せ、

 

 

「俺に憑依されてる自覚がないこと、その癖、スペック自体は楯に九割九分九厘*21憑依しきっているマシュと同じく再現度最高ってこと……疑問は付きないけど、何よりキーアっていう()()()()()()()()()()()相手がいるかも知れないってのがな……」

「な、なるほど。せんぱい以上の全能者が裏で糸を引いている可能性があるということですね」

「そういうこと。……まぁ、ここで悩んでても仕方ないのも確かなわけだが」

 

 

 正直こっちはわからないことだらけだ。

 ……ならまぁ、悩むよりかは現状把握に努めたほうが良いというのも確かだろう。

 悩んで問題が解決できるならいいが、現状では悪戯に時間を浪費するだけだ。

 

 

「……変に疲れちゃったわね。とりあえず、一旦休憩にする?」

「そうだね、俺もお腹空いてきちゃったし」

「そ、そういえば朝からずっと動き詰めでしたね……」

「じゃあ、ちょっと早いけどお昼にしましょうか。この建物の一角にはね、憑依者がやってるお店が集まってるのよ」

「憑依者がやってる店?」

 

 

 ゆかりんの提案に首を傾げる俺と楯。

 ──ふむ、憑依者がやってるお食事処、とな?

 食事系、食事系かぁ。……なんか最近料理系スピンオフ増えてた*22から、食事ってだけじゃあ誰だかわからんなぁ……?

 えみご*23、ひろし*24、ハンチョウ*25、盾の勇者*26、幼女戦記*27……。最近シンフォギアもやってたっけ。*28

 そうでなくても普通に料理やってるようなのもあった*29し、これは実際に見てみないとわからないな、うん。

 

 

「よし、腹が減ってはなんとやらだ、早速行こうゆかりん」

「はいはーい♪じゃ、す~き~ま~び~ん~」*30

「……なんでドラえもん……?」

「ふふふ、なんでだと思う?」

「うわまた意味深な笑みを……」

 

 

 ……まさか居るんじゃないだろうな、ドラえもん。居たら私よりよっぽどチートじゃねーか。*31

 何故かスキマの上の方に暖簾*32がついていることにちょっとびっくりしつつ、それをくぐって中に進む私達。

 

 果たして、私達を待っているものとは──!?

 

 

「……あれ!?ここで切るの?!」

「メタ発言は禁止よキーアちゃん」

「それゆかりんが言う!?」*33

 

 

 ……待て、次回!

 

*1
もうちょっといい名前つければよかったってなるやつ

*2
冷静にならなくても何いってんだコイツら案件である

*3
オリジナルはなりきりではない、と考える人も多い

*4
そもそもスレの立て方がわからない者や、時代によってはガラケーを使って書き込んでいるような者も居たので、特定の誰かが毎回スレ立てをする、というのもあんまり珍しくない話だったりする

*5
あまり褒められた話ではないが、一つのスレ内で複数のキャラを使う者も居たりする。褒められない理由は、なりきりという言葉の意味的に()()()()()()()()ものになっているから

*6
普通のキャラの普通の会話で衆目を引き寄せるのは難しいので、初心者はやらないほうがよかったり

*7
正直火種になるのでウケるけどやめた方がいいモノ

*8
中の人がどう思っているのかに関わらず、好戦的なキャラで参加したのなら、望まれるものも好戦的な話題に寄っていく事が多い

*9
cheat(チート)という単語は本来騙す・欺くことを指す言葉。そこから不正を使った人や、不正によってできたキャラを示す言葉になっていった。なお単に『チートキャラ』と呼ぶ場合は不正の利用については関係なく、その世界観に見合わない性能をしていることを示すものとしても使われる

*10
読み方は『名探偵コナン』風に

*11
『小説家になろう』というネット小説サイトのこと。この場合は、そこで多く投稿されている作品群が似たりよったりなので、お前もそれに似たようなものだと揶揄するためのもの。……雑になろう系などと呼ばれたりするが、無論サイト内の全ての小説が似たりよったりなわけではない。目立つ位置に出てくるのがそういうものだ、というだけである

*12
皮肉な話だが、争いというのは争う相手が居てこそ成り立つものであった、という話

*13
『インフレーション』の略。本来は経済用語で、モノの価値が際限なく上がっていく状態のこと。そこから、上下を競うような物事で上の基準が上がっていくことを示すようになった

*14
チートキャラは最初の方はいいのだが展開がマンネリ化して飽きやすいという欠点がある

*15
『最強(設定が好きな)厨房』の略……?『厨房』は『中坊(中学坊主の略)』から。雑に言うと中二病の一派生。最近ならキッズと呼ばれるらしいが、どっちにしろ蔑称なので多用は禁物

*16
テレビアニメ『新ビックリマン』のブラックゼウスというキャラの発した台詞。力とパワーで相乗効果?

*17
『全能の逆説(パラドックス)』というものの存在から、真の意味での全能はありえないとされている。それは『自分にできないことを作り出すこと(自身に対しての否定の否定)ができない』から

*18
人によって地雷要素が違うので、実際にブラウザバックされるかは人次第ではあると思うが

*19
TYPE-MOON作品群に登場する『根源』と直に繋がっている者達の事。基本的には全能者だと思っておけばいいが、様々な理由からその全能を実際に奮う事は殆どない

*20
上記注釈の通り、現実世界において全能は存在し得ない為、今それが問題になるとは思えない、の意

*21
99.9%のこと

*22
多分原作が殺伐としているほど、単に飯を食べてる姿が貴重なものに見えるとかそういうあれだろうと思われる

*23
『衛宮さんちの今日のごはん』のこと。『fate/stay_night』のスピンオフ。そもそも主人公の衛宮 士郎が料理好きなことからの派生だと思われる

*24
『野原ひろし 昼メシの流儀』のこと。『クレヨンしんちゃん』のスピンオフだが、主役扱いの野原ひろしが絶妙に似てないことで有名

*25
『1日外出録ハンチョウ』のこと。『カイジシリーズ』のスピンオフ。帝愛グループの債務者の一人、大槻 太郎を主役に据えた物語

*26
『盾の勇者のおしながき』のこと。『盾の勇者の成り上がり』のスピンオフ。料理系スピンオフには珍しく、いわゆる『優しい世界』ではないのが特徴

*27
『幼女戦記食堂』のこと。『幼女戦記』のスピンオフ。ここに上げた食事系スピンオフでは唯一連載が終了しているのが残念

*28
『戦姫完食シンフォギア~調(しらべ)めし~』のこと。『戦姫絶唱シンフォギア』のスピンオフ。今回紹介した中では一番新しい

*29
例としては『中華一番!』『異世界食堂』『甘々と稲妻』などなど。料理系はそもそもジャンルとして確立しているため、上げ出すとキリがない

*30
今の子と昔の人でイメージする声は違うが、再度声が変わることがあれば、またジェネレーションギャップの元になるのだろうか……?

*31
未来デパートに置いてあるもので一番謎なのは『銀河はかいばくだん』だろう。漫画版には存在しない為か、若干スタッフの悪ノリが見える(見た目が『トップをねらえ!』に出てくる『バスターマシン3号』によく似ている為)が、少なくとも子守用ロボットに持たせるものではない。どこの誰と戦うつもりだ

*32
店先などに日よけや目隠しの為に吊り下げる布のこと

*33
『境界を操る程度の能力』の内容的に、八雲紫は第四の壁について認識している可能性がある


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