なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うーん、図らずしも運営に大打撃を与えてしまった……」
「一応笑って許して貰えたけど……なんかこう、埋め合わせとかはしておきたまえよ?」
「うん、あとでなんか持っていっとく……」
こうなってくると、なにかリソースにでもなりそうなものを渡すべきかなー。
……なんてことを思いながら、ダンジョンの外へと出てきた私たち。
結局ハサミに関しては返されても困る、ということで貰い受ける運びになったが……正直こちらとしても使い道に困る部分が大きく、今のところ虚無空間から引っ張り出す予定はなかったり。
いやまぁ、琥珀さん辺りにでも渡せば、上手いこと活用する方法を思い付いたりしてくれそうな気もするのだけれど……。
その結果『今年のトレンドはハサミです☆』*1みたいなトンチキ*2なことになられても困るので、提供するにはちょっとばかり躊躇する面があるのだった。
……いやね?いつものあの人なら、そんなことにはならないと思うのだけれど。
なんというかこう、クリスから聞く限り最近結構行き詰まってるらしいから、新しい思考の方向性を開拓しましょー、とかなんとか言いながら暴挙に及びそうな予感がある、というか。
「……ハサミをホビー扱いする、とな?」
「伝説のハサミとかがでてきて、それを使うプロハサミストが現れたりするんだ……!!」
「いや、それは流石にホビー漫画の読みすぎじゃないかい?」*3
そもそもホビー扱いのハサミってなんだよ(困惑)
え?おもちゃで怪我することなんてよくあるし、それがホビー漫画なら日常茶飯事だから似たようなもん?*4
……話が大分ずれてきた気がするので、ここらで軌道修正。
ともあれ、これでダンジョンクリアに成功したことは間違いなく、そうなればさっさと新しいダンジョンに挑みに行くのは必然、ということになるわけなのだが……。
「……む、すまない。少しいいだろうか?」
「おや、ゴブスレさん。一体どうしました?」
ふと、出入り口に備え付けてあった時計を見たゴブスレさんから、みんなを呼び止めるような声があがる。
それに反応して立ち止まって尋ね返してみたところ、どうやらゴブスレさんはこれからちょっとした用事がある様子。……ということは、ここで解散ってことに?
「む?もしかして今日は終わりなのだ?」
「ああいや、知り合いを呼んでいたので合流したい、というだけだ。そのついでに食事を、と誘われているので、どうせならお前達も……いや、なんだその顔は?」
「ご、ゴブスレさんが……!?」
「誰かとご飯……!?」
「……社交性が薄いことは認める」*5
……と思っていたら、どうやらここから午後に向けて英気を養おう、という提案だったらしい。
時刻は大体三時、つまりはおやつ時。
子供達も多い今回、その申し出はありがたいといえばありがたいものだったのだが……それがそういうのにまったく縁の無さそうな、ゴブスレさんからもたらされたものだった……というところに色々と驚愕したというか。
だって、聞けば更に誰かと待ち合わせまでしてるんだぜ?……そりゃもう、驚いて思わず声もあげるってものですよ。
その辺りは彼自身にも自覚があったらしく、微妙に視線を逸らして気不味げにしていたわけなのだけれど。
にしても……この時間帯に待ち合わせ、ねぇ?
「もしかして、こっちでの女神官ポジションの人と待ち合わせ、とか?」
「……知り合いだ。一応、友人という風にも呼べるかもしれない」
「友人!!?」
「ゴブスレさんってー、そういうのと無縁だと思ってたゾ」
「俺にも友人くらいは居る……」
「はぁ、なるほど?」
個人的には、この時間帯に待ち合わせという辺り、相手はヒロイン勢かそのポジションにいる誰かか、と思ったのだが。
彼の反応からすると、そういう類いの相手ではなさそうだ。……いやまぁ、元の彼の境遇を思えば、男女の付き合いになるような相手も早々湧いてくることはないだろうな、とも思うのだが。*6
とはいえ、言葉を濁す彼の様子から、読み取れることはそう多くはない。
なので、その辺りの詮索はほどほどに切り上げて、彼のお誘いに乗っておやつを食べに行こう、ということになるのだった。
なったのだけれど……。
「……パンケーキ屋?なんで???」
「あ、俺甘くないやつ食べてみたいってばよ!」
「カリカリに焼いたベーコンに、溶けた熱々のバターとグルービーソース。一度食べてみたかった」*7
「んー、オラ甘いのでいいやー」
「なるほど、おかずもあるタイプのところなんだね」
「アライさん、こういうお店は初めてなのだ……」
「ニンジンソテーも頼めるんだな……」
彼に連れてこられたのは、彼の様相からは全く想像もつかない、パンケーキ専門のショップ。……いや、これ場違いにもほどがなくない……?
なにやら準備がある、というゴブスレさんを残し、先に店内に入った私たちだが……この可愛らしい内装は、あの無骨かつボロボロな鎧姿の彼には全く似合わないもの、という風にしか見えないわけで。
いや、誰だよここ選んだ相手、どう考えても見た目が噛み合わんだろこれ……。
などということを、自身もパンケーキをメニューから選びながら思っていた私は。
「あれ、キーアちゃんじゃん。おっひさー」
「……え、あれ?さやかちゃん???」
「そうでーす、可愛い可愛いさやかちゃんでーす」*8
そこに現れた人物が、まさかのさやかちゃんだったことに驚愕し。
「待たせたわね……ってなに、みんなして私の顔を見て」
「……ほむらちゃん!?なんで??!」
「なんでって……さっきまで一緒にダンジョン攻略してたじゃない」
「あっ、原作者公認女性版ゴブリンスレイヤー!?」
「ああ……気付いてなかったのね、貴方達」*9
更に、あとから気安げに声を掛けてきた相手が、どっからどう見ても暁美ほむらだったことに驚き、更に彼女が先程までのゴブスレさんの中身だった、ということに気が付いて先程よりも更に大きな衝撃を受けることになったのだった。
「改めて……ゴブリンスレイヤーこと暁美ほむらよ。……でも、魔法少女ではないからそこは期待しないで」
「私は見た目的な繋がりってやつだね。……いやまぁ、正確には魔女なんだけどさ」
ははは、と笑うさやかちゃんとその横で「それって笑うところなの?」と首を傾げるほむらちゃん。
……見た目こそまどマギなのだが、どうにも性格というか関係性というかが狂っているため、なにか違うものを見せられている感じがして混乱してくるというか……。
聞けば、二人が出会ったのはつい先日の祭の時。
ゴブスレモードのほむらちゃんが、オクタヴィアモードのさやかちゃんに遭遇したことを起因とするらしい。
見た目だけなら完全にまどマギなので、どうせなら交流しちゃうー?というさやかちゃんに、特になにを含むこともなくほむらちゃんが承諾を返した、みたいな。
まぁ、普通のほむらちゃんの反応を期待していたさやかちゃんは、色々と拍子抜けさせられたみたいだけど。
「ほむらも大概あれだったけど、この子も大概危なっかしいし。それにほら、ほっとくと自分が女の子だってこと忘れてるかのように汚くなっていくでしょ?」
「ああうん……ゴブスレさんだもんね、見た目なんて気にしないよね……」
「この子に色々言われて、一応整えるようにしたの。……貴女も言っていたけど、ここではゴブリン殺しにそこまで躍起になる必要性もないし」
とはいえ、なにも悪いことばかり、というわけでもないらしい。
ゴブリンスレイヤー単体ならば、ゴブリンを見逃すなんてことは絶対にあり得ないだろうが、別の人物が混ざることである程度その思考が薄められている……というか。
……要するに、最初にゴブリンじゃないですよ、で素直に引き下がった時点で気付けた、ということになるようで。
その事実に、思わず机に突っ伏すことになる私なのでありました。……いや、わかるか!