なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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鎧の下が気になりますか?

「ええと、とりあえずこれとこれをお願い」

「かしこまりました。ご注文は以上でしょうか?」

「そうね……他の人は、もういい?」

「……個人的には、ゴブスレの姉ちゃんの変わりようがびっくりだってばよ」

「ああ……アレに関しては、鎧を着てる間は文字通り()()()()のだとでも思っておいて」

「はい?」

 

 

 突然の見た目の変わりように、周囲の面々が困惑の表情を見せるなか、彼女が口にしたのはそんな説明。

 ……どうにも、ゴブリンスレイヤーとしてあの鎧を身に纏って居る間、彼女という存在は不確定なものとして定義されている、ということになるらしい。

 

 今の()()とさっきまでの()を見ていればわかる話だが、どう考えても身長とか体重とかが変化しすぎている。

 最近のキャラで言うのなら、初期状態とそれ以外で色々と違い過ぎる妖精騎士ブリトマートのよう、とでもいうか。*1

 

 流石に彼女ほどの変化幅ではないものの、あの無骨な鎧の中からここまで可憐な少女が出てくる、というのは想像もつかないというのは確かな話。

 そしてそれは、どうやら世界からの認識的な部分でも同じ、ということになるようで。

 

 

「彼の原作において、その鎧の中身を見たことがある人、というのは限られていたでしょう?……そして、その限られた人というのはここには居ない。……いえ、正確には同じ似姿の人物が居たとしても、こっちの世界で直接的に鎧を剥いで中身を確かめた者は()()いない」

「……あー、もしかしてさっきのって?」

「その通りよ。……誰にも見られていない環境で着替える、ということを徹底している私は、ある意味()()()()()()()両者が同一である、という証明をしていないのだとも言えるわ」*2

 

 

 彼の鎧は、中の顔が判別できないようなもの。

 言ってしまえば、鎧をその場で剥いだりでもしない限り、中身が本当にこのほむらちゃんなのか、ということを証明できない状態となっている。

 そしてそれゆえに、鎧のゴブリンスレイヤーとは()()()なのである。──丁度、彼の元ネタがドラゴンクエストの『さまようよろい』……鎧そのものに命が宿っているがために、がらんどうな中身を持つそのモンスターのように。

 

 

「……???どういうことだってばよ???」

「わかりやすく説明すると……鎧姿のゴブスレさんには()()()()()のよ、物理的な意味でも、概念的な意味でも」

「……余計にわけわかんなくなったってばよ」

「あー、つまりあれだろう?彼女があの鎧の時、その種族は『さまようよろい』になっている、みたいな」

 

 

 困惑するナルト君に対し、ライネスはすぐにその実態を理解したらしい。

 雑に言えば(そして、それは正解ではないが)、このほむらちゃんはさまようよろいに()()()()()()のである。

 鎧を着たほむらちゃんなのではなく、()()()()()ほむらちゃん、というべきか。*3

 

 

「……ええと、アルみたいな……ってことだってばよ?」

「ここにはアルフォンスも居るの?なら話は早いわね。つまり、私は鎧を纏うと彼みたいになり、鎧を脱ぐと今の姿になるの。……無論、それだとおかしなことになるから、()()()()()()()()()()()()()()()って手順を必要とするけど」

 

 

 考え方としては、【複合憑依】が一番近いだろうか。

 存在の重ね合わせ、それらを利用した姿の瞬時切り替え。

 一つの人の器に二つの影が重なった存在、とでもいうか。【複合憑依】と違うのは、誰かの見ている前で堂々と変身することはできない、ということだろうか。

 

 

「あくまでも未明領域があるからこその両立、ということみたいだから。……感覚的には、この姿の時にはゴブリンスレイヤーである彼はこの世界に存在しなくて、逆に彼の姿の時には暁美ほむらは影も形もない……みたいな?」*4

「ややこしいってばよ……っていうか、それってなにかメリットとかあるのかってばよ?」

 

 

 なお、ナルト君が唸るように、単に話を聞いているだけだとメリット皆無にも思えてしまうが、どうやらそんな簡単な話というわけでもないようで。

 

 

「メリットはあるわ。【複合憑依】の場合は切り替えた先にある他の人格の特徴が、他の人格の時も有効化されたままだけど。私のこれは、それぞれの関係性は結果として断絶してしまっているから、お互いに影響は受けないの」

「……つまり、どういうことだってばよ?」

 

 

 先ほどから言っている通り、本来【複合憑依】や【継ぎ接ぎ】の場合、例え現在の姿では持ち合わせていないはずの特性であっても、他の姿が持っているモノなら判定対象として引っ掛かってしまう、という性質がある。*5

 

 例として挙げると──この世界のドクターウェストは茅場晶彦としての性質を持つため、『声が項羽と同じ』という属性を持つ、みたいな感じか。

 パイセンは『一緒なわけあるか』と否定するだろうが、恐らく感覚的には『こいつは項羽様と同じ声を持つ』と思っているはずである。

 要するに、特攻宝具みたいなものに、殊更に引っ掛かりやすくなってしまっているのである。*6どころか、場合によっては弱点が更に弱点になっている、なんてこともあるらしい。

 

 これはCP君がわかりやすいが……彼女の構成要素にはキャタピーと浸父、虫系の存在が二つ組み込まれている。

 それゆえ、ポケモン的には『むし/むし』タイプになってしまっているのだそうだ。なので、ひこう(飛行)ほのお()タイプの技が四倍弱点になってしまっている、とのこと。

 これは、本来のポケモンのシステムならばあり得ないことである。同じタイプが重なるようなことはありえないので、仮にこんな風にむしタイプが重なるとすれば、むし単タイプになるのが普通なのだ。*7

 

 つまり、これが【複合憑依】などが持つデメリット。

 弱点などが重なっている場合はより苦手になるし、弱点が多い場合は全て適用されてしまう、ということ。

 無論、得意なモノなども重ねられるので、CP君みたいに特化した能力を獲得できる、という利点もあるのだが……冷静に考えると弱点が被った時の被害が大きすぎて、最早笑えてくるレベルだというか。

 

 で、話をほむらちゃんに戻すと。

 さっきも言ったように、彼女の変化はその間の部分を他者に見せないため、それが本当なのか?という疑問を生む形になってしまっている。

 ……が、それゆえに変身前と変身後が切り離されているとも見なされるため、例えば他の【複合憑依】などならば性別特攻どちらの判定にも引っ掛かる、みたいなことになるのが(ヒータちゃんなどが該当)、彼女の場合はゴブスレさん時には男性に対しての、ほむらちゃん時には女性に対しての効果しか受けない、ということになってくるのだ。

 

 

「はー、そう言われると……なんかすごいような気がしてくるってばよ!」

「あとはまぁ、本来想定される『ゴブリンスレイヤーの中身が暁美ほむらだった時にと起きること』について、然程気にしなくても良くなった……というところはあるかもしれないわね」

「?それってなんだってば」

「おおっとー!!頼んだもの来たみたいだから、さっさと食べようかいただきまーす!」

「お、おお?いただきますだってばよ???」

(……子供の教育に悪いから飛ばしたな)

 

 

 なお、ほむらちゃんが余計なことを口走ろうとしたため、慌てた私が食べ物を喉に詰める、なんてハプニングがあったが、概ね平和におやつタイムが過ぎて行った、ということをここに記しておきます。

 ……少なくとも、子供の居る前でする話じゃないよ!ナルト君の中身は本当に子供だし!*8

 

 

*1
『fate/grand_order』における星5(SSR)ランサーの一騎。初期状態ではまるでロボットのような見た目なのだが、一度でも再臨すると中から可憐な女性がその姿を現す。その鎧の頭身と中身の頭身があってない、ということで有名になったりもした。なお、鎧モードはわりと正統派なロボのカッコよさを見せる(ビームライフルを撃つポーズなどが顕著。アルトアイゼンばりに角での攻撃もする)

*2
極端な話、ゴブスレさんとほむらちゃんが口裏を合わせて出てきただけ、という可能性も(その着替えを見ていない以上は)存在している、ということ

*3
確認した時点で変なことになるだろうが、少なくとも概念的にはゴブスレ状態の彼の鎧を覗き見したとて、その中に人の顔を──もっと言えばほむらちゃんの顔を見付けることはできない、ということ。確認しない・できない間は鎧の中身はシュレディンガーのほむらちゃん状態であり、そこにあることもないことも証明できない。……が、その実態は『その鎧こそがほむらちゃん(と、根幹を一にする存在)』である、ということになる

*4
カードの表裏のようなもの。表にしている間は裏の柄を確認できず、裏にしている間は表のスートや数を確認することはできない。また、表も裏も見えるような中途半端な状態にもできない

*5
単なる『逆憑依』なら『憑依された人』と『憑依してきた人』の二要素(+名無し)、【複合憑依】なら『憑依してきた人』が三つに増え、【継ぎ接ぎ】なら要素を細かく追加する、みたいな。スパロボで例えるのなら、普通の『逆憑依』は1人乗りのロボットで、精神コマンドやステータスは一人分・それにロボットのステータスを加算する、という形になるが、【複合憑依】は複数人で乗り込むロボットで、精神コマンドや個人のスキルも増える(感覚的にはゲッターロボやアクエリオン系)、【継ぎ接ぎ】はスキルパーツなどでスキルを増やした状態、みたいな感じ

*6
例……この世界の桃香は本来の彼女の『劉備』特性などの他に、『千里眼』『ビースト適性』『守護者適性』なども持ち合わせている。その分特攻などに引っ掛かりやすくなってしまっている、とも言える

*7
例えばパズドラなら、『攻撃/攻撃』タイプになっているようなもの。『バランス/攻撃/バランス』とかでも良い。本来システム的には無意味であり、前者は『攻撃』タイプに、後者は『バランス/攻撃』タイプに纏められるはずだが、【複合憑依】/【継ぎ接ぎ】の場合はそれがキチンと意味のあるものになってしまう。これは、一つの枠内に無理矢理二つ以上のキャラクターや要素を詰め込んでいる為。内部的には『一つの枠にキャラクターが二人居る』という状態に近い。その為、計算としては『一人目を計算したあと、そのまま二人目も計算している』という形になってしまっている。自身の攻撃時などにも適用されている為、攻めると強いが守ると弱い……という、高火力紙アタッカーみたいなことになってしまっている

*8
ゴブスレ世界観でゴブリンがやること。このほむらちゃんは原作者が例示した『もしゴブスレさんの中身が女性だったら』とは微妙に違う為、想定される問題に出くわすことはまずない、ということ。そもそもゴブスレモードだと女の匂いすらしないので、向こうも単に殺しに来るだけである(なにかの間違いで兜が脱げた、とかの場合は不明)。なお、もし仮に彼の兜が他人の見ている前で脱げる、という状況に陥った場合、そこで改めて【継ぎ接ぎ】の判定が起こる。……逆を言えば、今の彼らは【継ぎ接ぎ】でも【複合憑依】でもない 

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