なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ふむ、ここはジャングルかな?」*1
「じゃあ、ここは草とか花とか、そういうところのダンジョンだってことかってばよ?」
「捻りがなければね。一応、【継ぎ接ぎ】くらいのゆるーい繋がりでもダンジョン色変えられるらしいし」
「一気に不穏になってきたねぇ……」
ダンジョン内に突入した私たちを待ち受けていたのは、巨大な熱帯雨林。
……建物の中でこれほどの森林を?*2的な思考が脳裏を過ったが、一応ここの管理元が八百屋であることを思えば、植物繋がりでこれがお出しされる可能性、というのはわからないでもない。
わからないでもないのだが……気のせいかな、木々の合間からこっちを見てくる女の子、居ない?
「あっ、ほんとだ。もしかして仲間なのだ?」
「いやー、多分アレ敵だよ」
「えっ」
「もしかして……蟲惑魔かい?」
「もしくは、擬態型の植物であって特定の種類を模したものではない、か」
女の子、という部分にアライさんが反応を示すが……こちらの解析を待つまでもなく、こんなところで特に焦った様子もなくこちらを眺めている、という時点でまともな存在ではないことは確定的。*3
相手の雰囲気や格好から見るに、恐らくは遊戯王で言うところの『蟲惑魔』のような系統の敵、というのが妥当だろう。
「……こわくま?って、なんなのだ?」
「『
で、そんなもの知らないよ、とばかりにアライさんが声をあげたため、相手の動きに注意しつつ解説タイムに移行する私たちである。
蟲惑魔とは、先程から言っているように遊戯王OCGのカードカテゴリの一つであり、基本的には『落とし穴』系統の罠カードを使って戦うデッキである。*4
本来『蟲』という漢字は『コ』とは読まないのだが、いわゆる当て字として、形のよく似ている『蠱』と同じ読みをすることで、『蟲を
……で、蟲を誘惑するモノと言えばなんなのか、となると……。
「モウセンゴケとかウツボカズラとかハエトリグサとか……まぁ、要するに食虫植物の擬人化、みたいなものだね」
「食虫植物……?」*6
「あ、普通に虫を食べる虫、みたいなのも混じってるね。クモとかカマキリとかアリとか」
「ひぃっ!?怖さが直接的になったのだ!!」
蟲を捕食するもの。
即ち、クモやアリのような虫に、ウツボカズラのような植物達。
それらがチョウチンアンコウの疑似餌のように、少女の姿を持つ活動体を構成したもの。
それが、蟲惑魔と呼ばれるモンスター達の真実である。
で、この場合の蟲とは、単なる虫だけではなく、人や人型のモンスターなど、要するに『少女という疑似餌に引き寄せられる可能性のある全て』の生き物のことを指す。*7
単にその姿に惹かれてやって来たとかでもいいし、罠に捕らえられているように擬態している
とにかく、引っ掛かる相手全てを捕食しようとする危険な存在。それが、蟲惑魔と呼ばれるモンスターなのだ。
……とはいえ、別にこの疑似餌の少女という形態を持つモンスター、というものの初出が蟲惑魔か?と問われれば間違いであり。
ゆえに、目の前の少女が蟲惑魔であるとするには、少しばかり根拠が薄い……というのもまた、事実なのであった。
「……まぁ、敵だろうなぁってのは間違いないんだけど。このタイプって、一つ別ベクトルでめんどくさいところがあるんだよね」
「ふむ、その心は?」
私のため息に、いつの間にやら鎧を着直していたゴブスレさんからの疑問の声が飛んでくる。
……まぁ、ゴブスレさんモードなら気にすることはないだろうなぁ、なんて思いながら、私は言葉を返すのであった。
「絵面が凄く悪い」*8
「ああ……」
対外的には、か弱げな少女達を殴り飛ばす……という風にしか見えないため、一部の過激な人達からはすごく顰蹙を買いそうだな、なんてことを思ってしまう私なのでありました。
いやまぁ、そういう手合いは実際に彼女達に対峙させれば、それだけでそんななまっちょろいこと言ってられなくなるとは思うんだけどね?*9
「うーん、流石に火炎放射器はやりすぎ、だよねぇ」
「絵面がこの上なく酷いことになるのだ……」
「でもほら、ラスアスとかだと平気でやるし」*10
「そういうことやってるから、滅茶苦茶恨みを買う羽目になったんだと思うのだ」*11
「……うん、確かに」
人型の存在相手に、火炎放射器を向けることの是非……というのは語ってもけりが付かなさそうなので放置することとして。
改めて、ジャングルの中を進もうとする私たちなのだが、さっきの話を聞かれていたのか、森の中の少女達は私たちの姿を見るなり、蜘蛛の子を散らしたかのように逃げていく。
……植物にしろ昆虫にしろ、大抵のモノは火には弱いのでさもありなん。
いやまぁ、どこぞの菌糸に征服された世界の人達みたく、ほぼ擦っただけで燃えていくほどやわではないとは思うんだけども。特に樹木とか、水を含んでるタイプは意外と燃えにくいし。
無論、乾燥してるとか山火事規模の熱とか、そういうものに耐えられるほどの耐火性ではない、ってのも確かな話なんだけども。*12
「というか、燃える前に火傷とか窒息とかで死ぬ、って方が強いからね、火災って」*13
「……道中の会話が凄く重くなってしまっているのだが。なにか他の話をして欲しいんだが?」
「おおっと、こりゃ失敬」
子供がいるところでする話ではなかったか、失敬失敬。
オグリからのツッコミにより、火災トークは一旦ストップ。……木々の合間の少女達も、露骨にホッとしたような顔をしている辺り、どうにも重苦しい話になってしまったらしい。
と言っても、こういうジャングルは早々燃えるモノではないし、そこまで気にする必要はないんじゃないかなー、なんてことも思うのだが……口に出すとまたお通夜になるので黙っているキーアさんである。
さて、ジャングル内の探索を続ける私たちだが、結局女の子達はこちらを遠巻きに見つめるだけで、特に戦闘行為が発生する、ということもない。
そのため、今までのダンジョンみたいに、ドロップ品もろくに落ちていない。
これがなにを意味するのかと言うと。
……ちょっと前に言っていた、念の浄化機構が全然動いていない、ということになるわけで。
いやまぁ、一つのダンジョンで浄化できる量なんてたかが知れている、というのも確かなんだけども。
「……やっぱりこう、火炎瓶とか使って蒸し焼きにする方がいいんじゃ」
「「「っ!!?」」」
「やめるのだ!それは明らかに狂人の思考なのだ!」
「えー」
最低でも一人くらいはやっちゃわないとダメなのでは?……などという思考が脳裏を過った私の言葉に、アライさんから考え直せというツッコミが飛んでくることとなるのだった。