なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「うーん、意外と速い……」
「言ってる場合か、このままだといつまで経っても捕まえられないぞ」
ロケーションの問題、というのも少なからずあるのだろうが、女の子達の逃げるスピードはこちらの想像以上に速く、そもそも影を踏むことすらままならない状況である。
こっちの面々では一番速い方であるオグリも、場所がジャングルという走るのに向かない場所ということもあり、中々速度を出せずにいた。
……そうなってくると、どうにかしてこの状況を打開する必要がある、ということになってくるのだけれど……。
「……周りの「ダメです」まだなにも言っ「ダメです」……ちぇー」
対策を打ち出そうとした瞬間、真顔のライネスからの妨害により頓挫させられる羽目に。
……いやでもさ、自由に走り回れないのが一番の問題なわけだし、私がやらずとももう既に限界感があるというかね?
「訳のわからんことを言ってごまかそうとしても、そうは行かんぞ?」
「いや冗談でもなんでもなく。ほら」
「ん?」
まぁ確かに、今私がやろうとしたことは、ジャングルの木々全てを念動力とかで浮かせて、ごく短期間ながら周囲を更地にしよう……みたいな話だったわけだけど。
でもほら、例え私がそういうことしなくても。
「……はっ!オグリ待て!『
「了解!『
「あーっ!!?」
「ぬわーっ!なのだーっ!!?」
──いい加減焦れて来たオグリが、奥の手を軽率に発動するフラグは立っているわけでね?
迂闊なライネスの制止をトリガーにしたオグリは、瞬時に真っ赤に染まって加速。
ライネスの引き留めるような右手は空しく空を切り、赤い流星と化した彼女は周囲の木々を粉砕しながら突撃して行くことになるのだった。……どっちかというとV-MAXやね、これ。
なお、背後から殺人的な速度で迫り来るオグリを見た少女達は、先程までの余裕綽々な笑みをぐちゃぐちゃに崩して、必死になって逃げ回ることとなるのでした。……やだ、どこぞの駄女神様みたいになってる……。*1
「──うん!森の中を走り抜けるのも、また乙だな!これがいわゆる森林浴ウォーク、というやつになるのだろうか?」*2
「絶対に違うと思うよ……」
数分後。
逃げ回っていた少女達を、あっという間に捕獲して見せたオグリ。
その速度は凄まじく、障害物すら粉砕しながら迫るその姿は、彼女達に恐らく
……オグリなのにターボとはこれいかに。*4
「そういえば、ターボはいつ実装されるんだろうな?」
「第二のタマモクロスみたいになってるもんね……」
「いや、ウマ娘運営の行く末を真に憂う者、みたいなムーヴしてなくていいから」*5
「「はーい」」
まぁ、ターボ師匠の話はそれくらいにしておいて。
取っ捕まえられた少女達は、なるほど近付いて見てみればはっきりと疑似餌、ないし植物系の種族だな……ということをこちらに知らせるような姿をしていた。
具体的にはドリアード系の姿、というやつである。
「ふむ、四肢が枝のようになっている……これであそこまで軽快に走り回っていたのか?」
「いや、これは捕まえたら変化しただけで、走っている間は少なくとも見た目は普通の足だったぞ」
「ふむ?……ということは、マンドラゴラ系の植物、ということか?」
「あー、喋らないのもそのせい……みたいな?」
なお、わりと軽快に走り回っていた辺り、どちらかと言えばマンドラゴラ系の植物なのではないか、という説が上がってきたりもしたわけだが。*6
それなら、一切喋らずに居たのも納得できなくもない。……いやまぁ、単なる八百屋の地下のダンジョンに自生しているにしては、やけに危険な植物だなという感想も出てくるわけだが。
「……仕方のない話だが、違和感が大きいな、八百屋地下ダンジョン」
「八百屋が一体なにをしたっていうんだ……」
ともあれ、ここに集められた少女は五人、そのどれもが目を回している以上、話をするには彼女達を起こさなければならない、ということになるわけなのだが……。
「……マンドラゴラの可能性があるって状況で、不意に声を漏らしかねない寝起きって怖くない……?」
「確かに。じゃあ私が起こそうか?」
「君はそろそろマシュからのお叱りカウンターがカンストしそうだ、ってことを気にした方がいいと思う」
「えー」
植物系のモンスターで、走り回ることができるものとなると、どうしてもマンドラゴラが一番の候補に上がってくる。
……つまり、彼女達の声を聞いたが最後、死にはせずとも死亡判定を受けてダンジョンの外に放り出される、ないしここで他の挑戦者が来るまで、地面を舐め続けなければいけなくなる*7……という可能性が出てくるわけで。
そんなのは御免だ、という思いをみんなが抱くのは当然のこと。
なので、みんなには防音効果を付与しつつ、できる限り離れて貰ってその内に私が彼女達を目覚めさせる、というのが一番安全なのではないか?……という疑問が浮かんでくるのも仕方のないこと。
防音結界でも使えば良いのでは?……と思われる方もいるかもしれないが、マンドラゴラの『死の絶叫』は、その原作によっては防御無効効果がくっついていることもあるわけで。
その場合、防音効果を貫通してこっちが即死する、という可能性が否定しきれず、結果として声の聞こえない位置に下がり、遠隔操作とかで目覚めさせるのが安全……ということになってしまうのだが。
……まぁうん、仮にうちのメンバーでそれをしようとすると、音より早く逃げられそうなオグリにやらせるか、もしくは私が死亡判定覚悟で目覚めさせるか、くらいしか対処法がないのである。
「私じゃダメなの?ほら、私ってば人じゃないし」
「ここダンジョン……つまりシステムの中だからねぇ。『俺のダンジョンではそうなるんだよ』ってされたら、ちょっと抗いようがないというか……」
「なるほど。ルールで決められている以上、それを回避できると楽観視するべきではないということだな」
なお、さやかちゃんから『マンドラゴラの声は
……ダンジョン内では『即死』はポケモンで言う『ひんし』、いわゆる一時的な戦闘不能状態のことでしかないので、遠慮なく効果が強化されている可能性が高い……ということを告げれば、横でゴブスレさんが納得したように頷いていたのだった。
基本的に彼(彼女?)はルールの裏を掻くというか、本来ダイスを振る必要のある場面をのらりくらりと躱して実数値で勝負する、みたいな感じの存在だが。
別に慮外の力を持つというわけでもないため、ルールで雁字搦めにされてしまうとほとんどなにもできない、ということになりかねない。
ゆえに、こういう即死トラップのようなモノには、人一倍鼻が利く……ということなのかもしれない。
つまり、さやかちゃんの提案には有力な反対意見が二つ出た、ということになるわけで。
他の面々は顔を見合わせたあと、「さやかちゃん止めた方がいいよ」みたいな言葉を、口々に彼女に向けて投げていく形になったのだった。
で、話を戻して。
私の場合、ちょっと前の文房具ダンジョンを見て貰えれば解る話だが、『死亡判定』というものがとても曖昧な存在である。
普通の人なら首ちょんぱされれば間違いなく即死だが、私の場合はそれをファンネル扱いして飛ばすことも、『これでは道化だよ』とか宣いながら下半身を放置して頭部だけで逃げる、みたいなこともできてしまう。
そしてこれは、マンドラゴラの『死の絶叫』についても同じことが言える。
要するに、『死の絶叫』は相手を狂死させるものなわけだが……私の場合は単に混乱した、くらいの扱いにダウングレードできてしまうのである。
言うなれば『死亡判定』が出てようが平気で動ける、ということなわけで。……ある意味、ゴブスレさん以上に『ルール?なにそれ美味しいの?』みたいな動きができるのが、私ことキルフィッシュ・アーティレイヤーということになるのだ。
表面上ルールには則っているため、罰したり除外したりできない……。
それが私の利点であり、その大前提が崩れない以上、即死トラップなんて私にとっては精々生足でレゴブロックを踏んだ、くらいの意味にしかならないのだ。*8
「……いやそれ、結構痛くないか?」
「痛いけども、それで死ぬわけじゃないし……」
「いや、この場合は死ぬだろ君……」
「あーもーうるさいなー、じゃあどうするのさー!!」
「逆ギレしたぞこいつ……」
なお、どうにかなると言われてもそれが許可されるかどうかは別問題……みたいな感じでツッコミを入れられたため、逆にキレ散らかすことになる私なのでありました。
いやだって、ねぇ?
死ぬって言っても本当に死ぬわけじゃない、みたいなノリで即死トラップが気軽に飛んでくるダンジョン達。
……仮に死なないとしても、死ぬほど酷い目に合うということは間違いないわけで。
特に、さっきのダンジョンみたいにチョキチョキ切られるのとか、普通の人なら発狂ものだと思う。
なので、そういうの受けても大丈夫な私が『あなたは死なないわ、私が守るもの』*9するのが一番じゃん、ってなるのも仕方ないと思うんだけどなー。
「わかった、目の前で主の居なくなった大盾置かれてもいいんなら、それで手を打とうじゃないか」*10
「正直すまんかった」
……まぁ、こんな風にライネスから禁止カードが飛んできたため、泣く泣く別の方法を探す羽目になったわけなのですが。……そのシーンを出すのは反則だよアンタ……。