なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

506 / 1297
わかたれたもの、ひとつ

「……こんだけ騒いでるのに、目を覚ます様子がないね?」

「そんだけ怖かったんだってばよ。だってあん時のオグリ姉ちゃん、プリティ成分どっか行ってたってばよ……」

「む、私はいつでもプリティなんだが?」

 

 

 うーんうーん、と魘されている少女達を眺めながら、起きないなぁとため息を吐く私たち。

 結局、無理に起こすのは止めて自然に目覚めるのを待つこととなったのだが……その理由がどこにあるのか?という疑問にナルト君がオグリのせいと答えたため、ちょっとした騒動が起きることにもなってしまったのだった。

 題して、オグリはプリティか否か談義!

 

 

「アプリなら文句無しにプリティなんじゃない?」

「アニメだとちょっと怪しくなるね」

「漫画に関しては擁護のしようがないな」

「題字からプリティ外れてるしね」

「……なんで私は、今回こんなに詰められているんだ……?」*1

 

 

 そりゃまぁ、君がもたらした周囲の惨状を見ればいいんじゃないかな?

 

 こちらの言葉に、不満げな様子を漏らすオグリだが……周囲のまるで台風でも来たかのような惨状は、まさしくオグリが走り回った結果起きたもの。

 我を妨げるもの無し*2、とでも言わんばかりのその爆走は、恐らく相手にオリジナル笑顔めいた恐怖を与えただろうことは言うに及ばず。

 ゆえに、今回に限ってはオグリが悪い、という風に言い募るしかないということになっていたわけである。

 

 ……まぁ、勝負事とかは真面目にやればやるだけ、殺伐とした空気が滲むのが普通なので仕方のない話でもあるのだが。

 

 

「みんな仲良く手を繋いでー、なんてのとは無縁だからね、競争って」

「難しいところだね、そのつもりがなくても争いの火種になる、ってことでもあるし」*3

「……なぁ、私はここまでの話を聞いて、どういう顔をすればいいのだろうか?」

「笑えばいいんじゃない?」

 

 

 無論、戦場に高揚したようなやつじゃなく、普通にプリティな感じで。

 そう返せば、オグリは小さく首を傾げながら、不器用に笑みを見せたのだった。……いや真面目か?

 

 

 

 

 

 

「……おっ、そろそろ起きるかな?」

「結局十分以上待たされたな……」

 

 

 自発的な起床を待つと決めたため、あまりうるさくもできず、仕方無しにババ抜きとかして暇潰しをしていた私たち。

 危うくヘンダーランド再来、みたいになりそうになったのを回避しつつ、しんちゃんにババを渡さないようにする……という、地味に難しいミッションが追加されてしまっていたが、それはそれとして。

 

 ともあれ、待ち人起きれば暇潰しの必要もなく、早々にトランプを片付けて少女達から少し距離を取った私たちは。

 

 

「……!……!」

「あ、喋れないのね、君達」

 

 

 起きてきた少女達が、驚きから目を見開き両手をぱたぱたさせるのを見て、どうやら相手はマンドラゴラとかではなかった、と一つ安堵の息を吐くことになるのだった。

 で、ここで改めて相手の様子を観察してみたわけなのだけれど……。

 

 

「……んー、なんか見覚えない?この子達」

「ふむ?……うむ、なにやら不思議な既視感があるな、確かに」

「んん?姉ちゃん達、知り合いかってばよ?」

「んー……いや、知り合いだったらすぐにわかると思うんだよねぇ」

 

 

 少女達の姿に、どうにも見覚えがある気がして、思わずまじまじとその顔を眺めることに。

 他の人に聞いてみたところ、どうやら私の他にはライネスが見覚えがある、との回答を寄越してきた。……まぁ、逆を言うとその他の面々は、よく分からないと首を捻っていたわけなのだが。

 

 

「……む」

「どしたのオグリ、なにか気付いた?」

「いや、気付いたというか……この子達、姉妹なのではないだろうか?」

「姉妹?」

 

 

 そんな中、オグリから飛び出したのは、この子達が姉妹なのではないか、という予測。

 ……言われてみると()()()()この少女達、どことなく顔の作りとかに似たようなものを感じるような?

 いやまぁ、仮に彼女達が『東方project』とかに出てくる妖精みたいな存在ならば、全て自然の化身なので似通うというのもわからなくはないのだが……。

 

 

「……ん、視た感じ妖精ってよりは植物系の生き物、ってことで良いみたい」

「じゃあ、似通っているのは偶然ではない、ということか」

 

 

 解析してみたところ、彼女達の種族は……いまいちはっきりとしないが、妖精ではないことは確か。

 方向性的にはドリアードとかの『植物系人型』の類いのようなので、姿に類似性があるのならばなにかしら血の繋がりのようなものがある、と見る方が良いような気がする。

 ……妖精じゃないと断じた理由には、一部の強力な種を除いて同種の妖精は姿がコピペのようになる……というところもあるのだが。

 

 ここにいる彼女達は、確かに繋がりを感じさせる顔立ちをしてはいるものの、コピペと揶揄するほど外見が一致している、というわけでもない。

 髪型もショートカットにおさげ、姫カットにアホ毛の目立つロングなど、明確に個性が見て取れるものとなっているし。

 髪色もピンク・赤系に纏まってはいるものの、完全に同じ色のものはない。五人がそれぞれ、別の存在であると認識できる程度には違いが……って、ん?

 

 

「うわぁ!?急に光りだしたってばよ!?」

「ええっ!?私なにもしてないけど!?」

 

 

 五人が別人であり、けれど姉妹のような繋がりのあるものだ、と断言したその瞬間。

 こちらを見詰めていた少女達は、突然目映い光に包まれ、こちらからでは観測できなくなってしまう。……っていうか眩しすぎじゃないこれ!?

 

 散々に破壊され、視界が開かれたとはいえ……まだ鬱蒼として薄暗かったジャングルの中を、その輝きは影すら消し去るほどに照らしだし。

 そうして暫くジャングルを照らしたあと、彼女達の輝きは忽然と──彼女達の姿ごと、その影も形も消え去ってしまっていたのだった。

 

 

「……ええと、どういうことだと思う?」

「私にわかるわけないだろ……強いて言うのなら、あれが謎解きだったんじゃないのか?ってことくらいかな」

「……あれが?」

 

 

 消えた少女達の気配は、少なくともこの近くにはなく。

 となれば、ここから向かうべきは最早、開かずの間と化したボス部屋くらいしか残っていない……ということになる。

 

 ライネスの言うところによれば、先程の『少女達は姉妹である』と断言したことこそが、今回の謎解きの答えだったのではないか?……とのことだったが、正直どうもピンと来ない。

 なにせ、彼女達が仮に姉妹だったとして、それがなんの謎なのか、ということが全くわからないのである。……偶然答えたモノが、たまたま正解だった時のような納得のいかなさが残っており、どうにも気持ちが悪いというか。

 

 ……まぁ、ここで愚痴っていても仕方ない。

 これでボス部屋に向かって、もしその扉が開いていなかったら……ここはクリア不可、と見切りを付けて、今日のところは解散とする逃れ正しい対処、ということになるだろう。

 上の八百屋には悪いが、なにかしらの不具合が出たのだろう……ということで諦めて貰い、再度ダンジョンの構築し直しを進言するべきだろうな、なんてことを思いながら歩くこと暫し。

 

 

「……本当に開いてるし」

「おー、なるほどなるほど。あの子達のことをちゃんと調べるってのが、ここの鍵になってたんだねー」

「ごまだれー、とでも言っておけばいいか?」

「お~、豚のしょうが焼き~」

「しょうが焼きにごまだれはあわないんじゃないか……?」

 

 

 たどり着いたボス部屋前の扉は、こちらが呆気に取られてしまうほどに、あっさりとその姿を消し去っており。

 開いたその口は、こちらを誘うように風音を響かせているのだった。

 

 ……思わず私が唖然とすることを、誰が責められようか……。

 

 

 

 

 

 

「……罠はなさそう、だね」

 

 

 あまりに呆気なく開いていた扉に、なにかの罠なのではないかと解析を施した私。……返ってきた結果は『無問題』、通るのになんの支障もなし、の言葉であった。

 

 いや、さっきまでの苦労は?……とばかりに疲れがドッと押し寄せてくるが、どちらにせよクリアしないままに地上に戻る、のんて選択肢がない以上、このまま中に進むほかないのもまた事実。

 ゆえに、周囲のみんなに目配せをして、そっとその扉の向こうに体を滑り込ませた私は。

 

 

「……さっきの子?」

「踊っている、のか……?」

 

 

 その部屋の中心で、輪になってゆっくりと跳び跳ねる、先程の少女達の姿を見付けるのだった。

 その姿は、月夜に切り株を囲んで踊る動物達のような、一種の神秘性を持ったものであり。

 その姿が徐々に霞み──否や分身し、ゆったりとした動きながら一つの大きな輪のようになっていく姿に、ようやく警戒態勢を取ることとなり。

 

 その輪が一際強く輝いて、こちらの目蓋を閉じさせたあと。

 吹き抜ける風と共に光が晴れ、ゆっくりと目蓋を開いたその前に──、

 

 

「………」

 

 

 

 大きな──大きな女性が一人、大輪の花が開くように広がるスカートから、その上半身を突き出しているその姿を見て、ようやくそれが何者なのかを理解し、思わずとばかりに言葉を漏らすこととなるのだった。

 

 

「──ユグドラシル・マグナ……?」

 

 

 ──巨大な植物の女性。

 大きなスカートと、背後の不可思議な魔法陣を背負い、こちらに相対するその姿。

 先ほどまでの少女達と、どことなく似た雰囲気のその顔を、今は微笑に染めたその存在は、声とも音とも付かぬモノを響かせながら、こちらにその右手を翳す。

 

 ──地面が槍の如く隆起したのを見て、私たちは彼女がここのボスであることを漸く理解したのであった。

 ……まさかの星晶獣かよぉ!!?*4

 

 

*1
アプリ版が一番プリティ率が高いのは、恐らくこれが一番触れやすいものである為。触れる為のハードルが高くなるほど、『それをわざわざ見に来てくれている』ということになり、遠慮などをせずとも良くなるのだと思われる(競技が主題である以上、どう言い繕っても勝者と敗者が生まれてしまう。アプリならば自身の周囲だけ写して置けばいいが、アニメ→漫画と媒体が変わるごとに、主役以外の描写も必要とされるようになる。つまりそれは、必然的に負けた方も描かなければいけなくなる、ということでもある)

*2
『スーパーマリオ64』のTAS動画にてコメントされた『我を妨げるもの無しって感じだなw』から。一件普通のコメントに見えるが、当時これに類する元ネタがなかった(=つまり、コメント投稿者のセンスによる)こと、滲み出る少々の痛さなどから、面白がられた結果定着したらしい。基本的には言葉通り、障害などないとばかりに縦横無尽に進む姿を称賛する為に使われる

*3
煽りなども戦いを盛り上げる為の華だとされるように、競争とはある種命を賭けているようなものでもある(ないし、それくらいに真剣にするべきだ、みたいな論調がある)。それゆえ、相手を怒らせる『煽り』もまた、相手に真剣になるように促すモノだとも言えてしまう。……無論、煽ることが推奨されるべきか、と言われると別の話になるのだが。ともあれ、競争する時にそれが火種になるのは仕方のない話でもあり、それ故に競争というものは難しいのだ、という話にもなっていく

*4
『グランブルーファンタジー』シリーズに登場する、特殊な存在。『星の民』と呼ばれる存在が造り出した大いなる獣

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。