なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「これって遊んでるのか攻撃なのか、実際どっちだと思う?!」
「どちらもだろう、終始笑顔だから、なっ!!」
突き出て来た土の槍を蹴飛ばしながら、相手を撹乱するように走り回るオグリ。
そんな彼女にバフを掛けながら、私は現状を分析していたのだった。
恐らく、先ほどの少女達はこのユグドラシル・マグナが分割されたもの、ということになるのだろう。
五分割、という部分になにか作為的なものを感じるが、流石にこの状況ではまともな分析は難しい。
──ユグドラシル・マグナ。
グランブルーファンタジーシリーズに登場する星晶獣と呼ばれる存在の内の一体であり、かの作品においては森に包まれた島『ルーマシー群島』に眠る大星晶獣である『ユグドラシル』がその力を解放した姿、として定義されている。
作中描写では、戦いを好まず・優しく大人しい、とされる彼女なのだが……このゆぐゆぐ、めっちゃ笑顔で攻撃してくるんですけど???
それも、現在一番ターゲティングされているのは、どうやらオグリの様子。
ゲームと同じように攻撃回数が多いのか、間断なく土の槍が飛んでくる様は、なんというか普通に怖いとしか言いようがないというか。*1
見た目は確かにゆぐゆぐなのだが、もしかしたら【継ぎ接ぎ】とかの影響で、設定やらなにやらが違っているのかもしれない。
……ともあれ、オグリが走り回っている分には、甚大な被害は受けそうもないというのも確かな話。
なので、オグリには『
……のだが、気のせいだろうか?そうして走り回ることで、余計に嬉々としてゆぐゆぐが彼女を追っかけ回しているような気がするのは。
いやまぁ、彼女そのものは最初からボス部屋の中心に鎮座しているので、彼女の発生させる土の槍がオグリを執拗に追い掛けているように見える、という話になるわけだが。
「……で、ここから俺達はどうする?」
「迂闊に攻撃してターゲットがこっちに移っても困るから、今のところは様子見で!」
「うーん……でもさぁ、最悪私が押さえればよくない?」
「他の人達が創世のルミノックスに呑み込まれてもいいんなら、別に止めないけど?」
「……あ、そっか。単なるユグドラシルじゃないから、全体攻撃も頻繁にしてくるんだっけ」
ゲームでのゆぐゆぐは、戦闘力的にはそこまで高い方、というわけではない。
HLまで行くと流石に話は別となるが、同じ大星晶獣にカテゴライズされるティアマトと同じく、倒しやすい方の敵としてカウントされているのは確かだ。
……とはいえ、だからといって与し易いのかと言われれば、それもまた話は別。
今は通常攻撃で遊んでいるだけだが、弱点である風属性の敵への対抗策であるネザーマントルや、適正レベル帯だと壊滅級の火力となる創世のルミノックスなど、手強い要素は少なからず持ち合わせている。*2
なので、迂闊に他の行動を誘発させる前に、相手がどういうつもりなのかを探る……などの対処をしようという話になったのだった。
で、そういう意味でさやかちゃんに対処させるのは悪手。
確かに彼女の火力は高いし、耐久力も相応に高いので、ゆぐゆぐを抑え込むには丁度いい……という風に言えるのかもしれない。
……が、原作の彼女に比べてどこか好戦的というか手が早いというか、とにかく行動を起こすのに躊躇がない感じのあるここのゆぐゆぐ。
ゆえに、下手に戦力が拮抗してしまうと、容赦なくルミノックスなりネザーマントルなりを連発してきそう……といった懸念があるのだ。
似たような意味で、ゴブスレさんモードのほむらちゃんに対処させるのも却下。
彼もまた攻撃する時に容赦はしないというタイプなので、変に体力を削りすぎてゆぐゆぐの特殊行動のトリガーを引きかねないのだ。*3
他、ナルト君の多重影分身に関しても、的が増えたので全体攻撃を……なんて思考を招きかねないので同じく却下である。
……と、なると。
現状では対処を思い付くまで、何故か一番に狙われているオグリに逃げ回って貰うのが楽、という話になるのであった。
「で、オグリにはそうやって頑張って貰うとして……しんちゃーん!どうにかなりそー?!」
「今のところ、近付くのでせいいっぱーい!」
「そっかー!」
「ぬぉわぁ!?護衛を買って出たのはいいけど、この人……人?すごく危ないのだ!?」
で、その対処法を見付けるために、こういう人以外の存在と心を通わすのが得意なしんちゃんを、アライさんの護衛付きで前線に送り出したわけなのだけれど。
……ああうん、ゆぐゆぐが攻撃のために手を振ると、一緒にバカデカイスカートも盛大に翻ってしまうため、結果として『しなる板』みたいになったスカートによって、周囲のモノが吹き飛ばされ捲っているというか。
なので、彼女の耳元まで近付いて、しんちゃんにコンタクトを取って貰う……という対処法は、今のところ成功の目が見えてこない事態となっていたのだった。
……まぁ、ふざけて読んでいるトランザムと違って、『王の友』の方は負担はほとんどないから連発しても問題ない……ということもあり、早々に捕まることはないだろうというのは救いだろうが。
え?前まではもうちょっと反動とか来てた気がする?
「トップスピードで振り切る……!!」
「そりゃまぁ、あんだけ頻繁に使ってたらスタミナも付くよね、というか」
お前はどこの不死身の男だよ*4、みたいな台詞を吐くオグリが、その辺りの欠点を克服せずにいられるか、って話です、はい。
「う、うおぉぉおおぉっ!!ファイトいっぱつアライさん、なのだぁーっ!!」*5
「おおー、すごいゾアライさん。ひゅーひゅー♪」
それより数分後。
興に乗りまくっているのか、滅茶苦茶楽しそうに腕をぶんぶん振り回すゆぐゆぐにより、ボス部屋内はまさしくどったんばったん大騒ぎ、台風一過もかくやという惨状となっていた。
そんな、一歩間違えれば紙屑のようにバラバラになりそうな暴風圏を、アライさんはしんちゃんを抱えたまま、見事渡りきっていたのだった。やだ、本当にすごい。
ともあれ、これでようやくゆぐゆぐの説得、ないし考えていることの調査ができるというもの。
そう期待してしんちゃんに目配せを送った私は、ぐっとサムズアップをする彼の姿を見詰め。
「ふぅー……」
「~~~~っ!!?!?!?」
「ちょっとぉ!?」
耳元に近付いた、ということで迸る芸人魂的なものが騒いでしまったのか、はたまた作中のお約束みたいなものなのでやらずにいられなかったのか。
ともあれ、ゆぐゆぐのエルフ耳に息を吹き掛けてしまい、彼女の不興を買って吹っ飛ばされることとなるのだった。……いやホントになにやってるの!?
「いやー、ついついやってしまったんだゾ……」
「ああくそぅ、ここに来てギャグ作品の住人であることが裏目に出たか!!」
「いやー、それほどでもー」
「流石にこれは褒めてないってばよ!」
「おっ?」
くるくると空中に放り出された二人を、すかさず増えたナルト君がキャッチ。
安全に地面におろしたあと、頭を掻くしんちゃんにお決まりの文句を、これまた珍しいことに叱る意味を込めて述べたあと。
さて、これは不味いことになったなと目前の相手を睨む私。
さっきまでのゆぐゆぐは、逃げ回るオグリに集中しており周囲のことなんて気にしてなかったが、今のでこっちに気付いてしまった、ということになるようだ。
……こうなってくると、相手を問答無用で止められるだけのスペックを持っているパオちゃんとトキちゃんを、時間も時間だからと先に検査のためゆかりんのところに向かわせたのが、ちょっと裏目った感があるというか。
「あーパオジアンなら百トンの雪を被せて行動不能に、トキなら音波攻撃で強制的に気絶状態に……ということかな?」
「そういうことー……いやまぁ、ここが終わってから検査、ってなると日を跨ぎそうだったから仕方ないんだけどさ?」
ライネスの言葉に、そうだよと頷き返す私。
一応、こちらに残っている面々でも、ナルト君辺りなら似たようなこともできるが……植物に対する雪、ということで強制的に鈍化させられるパオちゃんと、耳がある以上は抗えない音響兵器であるトキちゃん。その二者に比べると、速効性がないというか。
多分止められるのは止められるが、先程言った通りネザーマントルやらルミノックスやらが飛んで来て、こちらにも少なくないダメージを受けかねないというか。
……いやまぁ、最悪ライネス一人くらいは庇えるとは思う。思うのだが、私の庇うって対象一人なので、しんちゃんとアライさんには頑張って避けて貰うしかなくなるわけで。
そういう状況になるのを避けるため、できれば全体攻撃を撃つ可能性は潰して起きたかったのだ。……え?お前増えることができたはずなんだから、それで無理矢理庇えばいいのにって?
「……グラブルと違って、ここのモンスターって体力がモンハン方式で増えるんだよね……」*6
「数で押そうとすると、調整が入ってDPSチェックさせられるんだよね……」*7
パオちゃんとトキちゃんを、早々にパーティメンバーから外したもう一つの理由がこれ。
これらの企業ダンジョンにおいては、難易度の極端な変動を避けるために、挑む人数が増えるとボスキャラの体力が増える、という仕様があるのである。
今の私たちは九人パーティ。……二桁パーティになると九人の時までの伸び幅より大幅に強化されるため、どうしても人数を減らす必要があったのだ。
元々期を見て離脱させる必要のあった二人を、そのまま外してしまうのは仕方のないことだった、というわけである。……いやまぁ、おかげでここから苦労しそうなんですけどね!?
ゆらり、と怪しげに目を光らせるゆぐゆぐ。
その様はまるで、『遊んでくれる人が増えた!』とでも言わんばかりの、少なくとも端から見ている分には微笑ましげに見えるもの。
されどその実態は、ともすればパーティ壊滅の危機を孕んだ、あまりに過酷なもので。
「……ええぃ、とりあえず足下注意!以上散開!」
「ぶ、らじゃー!」
「わわわ、とにかく上にあがるのだー!?」
ゴゴゴ、と地鳴りと共にせり上がってくる溶岩に、一先ず上に逃げろと声をあげる私なのであった。……いやアツゥイ!?