なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

513 / 1297
幕間・聖夜へのカウントダウン・事件が起きぬはずもなく

「……犯行予告ぅ?」

「そうなのよ、ほら見てよこれ」

 

 

 ダンジョン攻略も、ある程度佳境(かきょう)*1を迎えたある日のこと。

 そろそろクリスマス当日、みたいなこの日にゆかりんに呼び出された私は、そこで彼女からとある手紙を見せられることとなっていたのだった。

 

 それは、ある種の予告状。

 聖夜の日に災厄を再演する──という文字の書かれたそれは、しかしその手紙の簡素さゆえに、最初の内は悪戯かなにかかと思われていたのだという。

 

 

「……まぁ、始めはこれがどこから出てきたのか、ってところがあやふやだったものだから……」

「なるほど、これを拾ったのが誰か、ってところが抜けてたんだね」

 

 

 とはいえ、これが本当に悪戯なのだとすれば、彼女がこうして私に見せてくる必要はないわけで。

 そうなると、これを()()()()()()()ということが争点となってくる。……そう、当初は誰が見つけたのか謎だったこれを、彼女の元に届けに来たのは……。

 

 

「もー、コナン君ってば言ってくれればよかったのに」

「言ったらこうなる、って予測が付いてたから言わなかったんだよ、バーロー……」

「あーうん、例え単なる悪戯だったとしても、見つけたのが貴方だったとしたら変に大事(おおごと)になるかも……って心配はまぁ、わからないでもないわね……」

 

 

 そう、この手紙を見つけたのは、なにを隠そうコナン君だったのである。

 そしてそれゆえに、彼の危惧した通りに私たちはことを大事にしてしまった、というわけで。

 

 

「ふむ……確かに、その子が見付けたと言うのであれば、多少なりとも警戒してしまう……というそちらの気持ちもわからないではないな」

「でしょう?そもそもの話、内容もわりと胡散臭いのがねー……」

 

 

 はぁ、とため息を吐くゆかりんの対面の席では、たまたまこちらに出向して来ていたモモンガさんの姿があり、渡された犯行予告の紙を時折裏返したりしながら、矯めつ眇めつ確認していたのだった。

 

 そうしてむぅ、と唸る彼にはわからないことかもしれないが、その手紙の内容は恐らく、去年のクリスマスのあれこれを指しているのだと思われる。なので、微妙に洒落になっていない。

 だから、さっさと手紙を出したやつを突き止めて、とっちめてやらなきゃいけないんだけど……。

 

 

「……しっかり切り貼りして作られているな」

「筆跡鑑定は無理、と。……まぁそもそも、鑑定できたとしても大本にたどり着くかは謎だけど」*2

 

 

 再度、大きなため息を吐くゆかりん。

 

 ……普通、脅迫状とか犯行予告のようなものは、手書きではなく印刷物の文字を切り貼りして作る、ということが多い。

 これは、手書きというものが意外と個人の癖が出るものであるため。*3

 迂闊に直筆にしてしまうと、筆跡鑑定などによって犯人を割り出されてしまう可能性があることからの、犯人側の小細工の一つなのである。

 

 ……ただまぁ、これが本人の切り貼りしたモノであるのならば、まだどうにかなる。

 一部のそういうモノを探知するのが得意な人達ならば、物体に残る記憶から犯人を辿る……みたいなこともできるからだ。

 が、これに関しては期待できない、というのがここにいるみんなの総意である。何故かと言えば、()()()()()()()()()()()だ。

 

 普通の犯人ならば、サイコメトリーなどの話を聞いても鼻で笑うだけだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()、と認知するがゆえに、それに対して対処をしようなどと思い至らないのである。

 が、ここの場合は違う。そういうことができる人間がいる、ということを予め知っているため、迂闊に自分のことを暴かれかねないような愚は犯さないのだ。

 

 

「……んー、ダメだね。ある程度作ってる人とかの姿は辿れるけど、文字毎にバラバラだ」

「んー、お金でも掴ませて手伝いをさせた、みたいな?」

「そこまではなんとも。どうにもこの文字を切った人達、ネットの求人で日払いの仕事として受けた……みたいな感じの一般人ばっかりだし」

「むぅ、触れただけでそこまでわかるのか……」

 

 

 そういうことができる人のうちの一人である、私の目に見えているこれらの文字を切った人々は、一人ではなく多数・かつなにかの作品のキャラとは言い難い、至って普通の人々ばかり。

 ……つまり、犯人そのものの姿は写っていないわけで、これを辿ろうとするとサイコメトリー内にでてきた物品をサイコメトリーする、くらいの荒業が必要となると思われる。

 

 流石にそんな多重検索染みた真似はできないため、現状わかることと言えば、この手紙を作るように指示した人間は、徹頭徹尾自身は関わらないままにコナン君にこの手紙を拾わせた……ということになるだろうか。

 

 

「まぁ一応、こういうことできそうでやりそうな人については、幾つか候補があるんだけど……」

「あら、既に目星が付いてるの?流石ねキーアちゃん!」

「……いやまぁ、結構雑な考察だから、当たってない可能性も普通にあるけどね?」

「それでも、想定できるのとできないのじゃ雲泥の差よ!……で、で?誰なの犯人は?」

 

 

 とはいえ、こうまで本人の匂いがないとすると、逆に誰がやっているのか、ということも大体予想できてしまう。

 無論、それが当たっているかどうかは別問題だが……所詮は予想、聞かれたのだから答えないわけにもいくまい。

 

 

グランドロクデナシ(マーリン)うちの母(キリア)

「……聞かなかったことにしてもいい?」

「ダメでーす、理由を一から聞くようにー」

「いやー!!絶対ろくなことにならないじゃないの!!時間を巻き戻して!さっきのバカな私を誰か止めて!」

「それがキミの願い、と言うことでいいのかい?」<ニュッ

「……いや、どこから出てきてるのよCP君?」

 

 

 そうして明かした犯人候補は、おおよそ問題しか引き起こさない要注意人物二人。……個人的に怪しいのはマーリンの方だと思うが、規模的にはキリアの方でもおかしくはないと思う。

 

 前者に関しては、昨年のクリスマスを復刻……もとい再現することで、再びなにかを産み出そうとしている、みたいな感じだと思われる。

 彼に関しては良かれと思ってやっている節があるので、それによってなにか良い影響があるのだろうな、というか。

 ……まぁそれはそれとして、騒動そのものを楽しみにしている、という部分もあるのだろうと思われるが。流石はロクデナシである。

 

 後者に関しては、完全にノリでしかないだろう。

 暫く姿を見せなかったので、帰って来たことを知らせる意味も込めて、インパクト重視で無茶苦茶やろうとしている……というのがよく似合うというか。

 あと、『去年の再現』をするに当たって、私の役割を代替するのに一番向いている、という部分もあったり。

 

 

「……ん?今年は貴方は関わりがない……と?」

「ぶっちゃけると、去年のあれって結構アドリブなところが多かったからね。復刻ってことはみんな事情は知ってるわけだから、単純な再演なんかできないでしょ……ってことよ」

 

 

 ゆかりんが首を捻っているが……去年の私が敵方にいたのは、半分くらいノリの部分もあったため、今年もう一度同じ事をしろ、と言われてもちょっと躊躇……もとい無理があるのだ。

 具体的に言うと敵対理由が捻出できない、というか。

 

 これに関しては、去年厄災役をやっていた他の面々も、同じようなことを言うと思われる。

 なので、もし仮に去年のあれを無理矢理再演しようとするのならば、それらのメンバーの代役をどうにかして集めるというところから始めなくてはいけない……ということになるのだ。

 ……どう甘く見積もっても、必要な労力が大きくなりすぎるため、最悪先の二名以外だとなんかこう……もやっとした黒い影的なもので、再現っぽいことができたら上々……みたいな感じになりそうというか?

 

 なんでまぁ、先の二人以外の関与を疑うのは、正直無駄感もなくはないのだ。……そうやって考慮から外した結果、見事に足元を掬われそうな気もするのであれなのだが。

 

 

「……私の気のせいなら申し訳ないのだが、先程の映像では龍の翼の生えたあさひ君が空を飛んだり、はたまた白面の者がソードマスターヤマトめいたやられ方をしていたり、そもそもロンゴミニアドとエクスカリバーがぶつかり合ったりしていたような気がしたのだが……」

「何度目を擦っても現実は変わりませんよ、モモンガさん。龍みたいなあさひさんはミラルーツこと祖龍の人化・依り代のようなものですし、白面さんはあの通り呆気なくぶっ飛ばされてあそこでリングフィットしてますし、ロンゴミニアドとエクスカリバーはアルトリアさんとキーアさんのある意味一番の見所です」

「……頭が痛くなってきたのだが」

「安心してください、こっちでは平常運転です」

「……前回の祭の時も思っていたけど、よく滅びないな、ここ」

 

 

 なお、そうしてうんうん言っている私たちの傍らでは、去年の映像を見せられたモモンガさんが、「これが若さか……」みたいな面持ちを感じさせながら、むぅと唸り声をあげていたのだった。

 

 

*1
重要な部分、盛り上がる部分という意味の言葉。基本的に盛り上がる場所は話の最後の方なので、物語の終わりの方、というような意味で使われることもなくはない。語源は中国唐代の歴史書『晋書(しんじょ)』に記された、顧愷之(こがいし)甘蔗(かんしょ/さとうきび)を美味しくない先の方から食べていることを不思議がられた時に、『漸入佳境(ぜんにゅうかきょう)(=だんだん美味しくなる(佳境に入る))』と答えたことにあるとされている

*2
他人の筆跡を真似れば鑑定できないのでは?……という話があるが、実際は余程気を付けて文字を書かない限り(=定規を使っている場合など)、単に真似をしただけでは偽装はバレてしまうのだとか。無論、精度の高い鑑定をできるところならば、という注釈は付くが

*3
文字の書き始めと終わりのうち、人の癖が最も出てくるのは書き始めの方なのだとか。はねやはらいは真似がしやすいので、特徴として参考にすることはあまりないのだとも。なので、定規で文字を書いたり、そもそも字を書かずに切り貼りする、などすると作った人間が誰なのかを判別し辛くできる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。