なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「いえーい、メリークリスマスだよ、キーアちゃん☆」
「ん、メリクリココアちゃん。三名様追加ねー」
「あーもうっ、反応が薄いよキーアちゃーん!」
「はいはい、まだ二次会もあるんだからぐずらないの」
「うー、クリスちゃんも冷たいー……」
「おーい、いいから料理を持っていってくれないかー?」
「ライネスちゃんまで私の扱い酷くない!?」
さて、クリスマス当日の夜。
特に大きな問題が起きることもなく、何事もなかったようにこの日を迎えることができた私たちは、こうしてラットハウスに集まって来ていたのだった。
あー、あれだよあれ、ごちうさのアニメの最後の方で、みんな集まってクリスマス祝ってたあれ。*1
折角似たようなモノがそこにあるのだから、私たちもあれやろうよってことになったのである。
なので、アニメと同じようにお店を手伝うことになるのも、実は既定路線であったり。
「なに、今日は聖夜だが気にすることはない」
「君はいつでもいつも通りだな……」
「あはは……そういえば青山さんポジションの人が居ないのね、ここって」
「そもそも同じ声の人が見当たらないような……敢えて言うのなら楓さんくらい?」
なのでまぁ、原作と照らし合わせた時に人が足りてないような、みたいな気分になるのも仕方ないのである。
で、そうなってくると青山さんと同じ声の人が、そもそもなりきり郷にあまりいない……という事実にぶち当たってしまったのだった。
なんというかこう、ユッキの酒飲み仲間に居たかなー……くらいの認知度というか。
……というか、寧ろなんでいないんだろう同じ声の人。
青山さんだと放火魔を呼び寄せそうだというのなら、他のキャラでも全然構わないだろうに、というか。
ほら、毒使う人とか殺し屋な人妻とかグランド前カノとか。……なんか物騒な奴ばっかりだな?*2
「探せばほら、普通の人も居るから……」
「……まぁいいか。とりあえず今日のところは、はるかさんに代役として頑張って貰うってことで。元々公職だったんだからスーツとかは似合うだろうし」
「えっ」
「わぁ、お姉ちゃんスーツ着るの?じゃあじゃあ、バニーとか用意しちゃう?」
「えっ」
なお、その辺りの話は唐突に話題を振られたはるかさんが犠牲になることで、なんとも有耶無耶な結果に落ち着くこととなるのだった。*3
「しっかしまぁ、こうして見るとなんか凄いわね、今年のサンタ……」
「モモンガさんが協力してくれるってことになって、最初はゾンビホースでも走らせようかって話になってたんだけど……」
「流石に怖すぎるので、他の方法を探して頂くことになったのですよね……」
各テーブルに配膳をしながら、時折窓の外の夜空の中を駆けるサンタ達を見て、呑気に会話をしている私たち。
この辺り、腐っても並列思考くらいはできてしまうスペックを持っていることの証左、とでもいうことだろうか。
……いやまぁ、普通の飲食店ならこんな配膳の仕方をしてれば、普通にクレーム入るとは思うんだけどね。完全に余所見してるし。
それが許されてしまっているのは、窓の外に映る光景があまりにも衝撃的であるがため。……以前サンタ役に互助会の面々が参加している、というようなことを述べていたわけだが。
今外を駆けるサンタ達は、そのほとんどが向こうの人々達。
そのため、プレゼントの配送の仕方も独特で特徴的なのである。
例を挙げると、モモンガさんは自身の種族である『オーバーロード』を生かし、トナカイ役をゾンビホース……デスナイトの騎馬とかで代用しようとしていたのだけれど、うちの子供勢を筆頭に『普通に泣く』とツッコミされたため、渋々別の方法を取ったのである。
で、その別の方法というのが……、
「……教わった時は半信半疑でしたが、人間試してみれば意外となんとかなるものですわね。いえ、私はウマ娘ですが」
「ううむ、ウマ娘って空を飛べただろうか……?」
「トレーナーさん、今度はどちらに向かえば宜しいの?」
「む、待っていろ、今調べる……」
「……うん、そういえばトレーナーさんって呼ばれてる、みたいな話をしてたもんね……」
ウマ娘である
……いや、なんでナチュラルにあの人飛んでるんですかね……?
どうにもオグリからコツを教わった、みたいな話だったが。……コツを教えれば、ウマ娘って空飛べるの……?
「ほら、たぬき達みたいな感じで……」
「ごまかすにしても、既にたぬきって言っちゃってるじゃん!」
なお、クリスがとても苦しい擁護を繰り出したため、この話は一旦打ちきりである。*4
……ともかく、一番目立つのがモモンガさんというのは確かだが、だからといって他の面々が目立たないか、と言われるとそういうわけでもない。
「……なぁ、これって子供の夢を壊しやしねーか?」
「なに言ってやがる、ガキと言えばロボとか電車とか好きだろ?」*5
「これはその区分で語っていいものなのか……?」
別のところでは、ソリを改造してロケットエンジンを積んでしまったハジメ君とソル君の姿があったり。
「むぅ、わし専用に篭でも作ろうかと思ったのじゃが……流石に一度きりとなると予算が降りんかったのぅ」*6
「にょわー☆大丈夫だよミラちゃん、こういう時はきらりのロボが大活躍ぅ、するからにぃ☆」
「……なんでそれの予算は降りたのかのぅ」
また別所では、きらりんと組むことになったミラちゃんが、自分用の篭の製作は許可が降りなかった、ということできらりんロボの手の上で微妙な顔をしているし。*7
「ウマの子達に負けないようにしないと!」
「いやだからって空中でソードスキル発動して無理矢理跳ぶ、ってのは無理があると思うわぁああぁああっ!?」
そのまた更に別所では、こちらからは唯一の参加者となるキリトちゃんが、アスナさんに引っ張られて悲鳴をあげている姿がある。
……ええと、落下しきる前に
いや、狂経脈ちゃうんぞ軽々空跳ぶなや、とは言わない。だってアスナさんだからネ!
寧ろ舞空術とか覚えようとしていない分、幾らか理性的だって風に解釈できなくもないからね!!
……理不尽の塊かなにかなんですかね、あの人。
まぁともかく、互助会組のサンタ家業が、どうにも目に付いてしまう奇抜さであるということに間違いはなく。
店員も客も窓から空を見て一喜一憂する、という不思議な連帯感が生まれているのは確かなのであった。
「……まぁ、流石に見すぎだがね。ほらほら、三番テーブルの料理ができあがったから、きりきり運んでくれたまえ?」
「あ、はーいライネスちゃん、今行きまーす」
「すみませーん、お勘定お願いしまーす」
「はーい、こちらケーキと軽食と飲み物合わせまして、会計千円となりまーす」
まぁ、長時間動きが止まっていると、こうしてライネスが再起動させに掛かってくるわけなのだが。
動きの止まっていた私たちは、その言葉に現状がどうなっているのかを思いだし、早急に作業に戻ることとなるのだった。
で、外の無茶苦茶を眺めて動きが止まり、その度にライネスに再起動させられる……という動きを繰り返したのち──。
「ご利用ありがとうございましたー♪……ふぅ、これで一先ず一段落、ってことかな?」
「そうだね。まだ人が来る予定はあるが、暫くは空き時間だよ」
「やったぁ♪じゃあじゃあ、今のうちに夜の準備をしておこ?」
「大人組に全部任せる、というわけにもいかないしね」
ぱたり、と途絶えた客足に、私たちはようやく一息付くことに成功したのだった。
……普段は原作のラビットハウスに負けず劣らず暇なラットハウスだが、クリスマスのこの日の喧騒もまた、原作に負けず劣らずの規模であった。
なのでまぁ、単なる手伝いながら、思わず額の汗を拭ってしまうわけなのだが……そんな中、ココアちゃんは変わらず元気そうである。
体力お化け、ということなのだろうか?となると貧弱クソザコナメクジである私は、彼女にこう返さなければいけなくなるというわけで。
「こんなところで負けるわけにはいかんきん!」
「んー?キーアちゃん、もしかして千夜ちゃんの物真似?」
「まぁそんなとこ。とりあえず、和菓子とまではいかないけど和っぽい感じのおやつを担当するよー」
「……いやちょっと待て、その砂糖の塊をどうするつもりよアンタ?」
「え?砂糖で鶴を作ろうかと……」
「超絶技巧だと感心するが、そういうのは今はいらないから!」
「なるほど。じゃあ正月に披露するから待っててね?」
「……あー、縁起物として鶴を作るのなら、一応間違いでもないのか……?」
「クリスさん、しっかりしてください。せんぱいは九割方、こちらをからかっているだけですよ?」
なので、ちょっとココアちゃんの友達である、千夜ちゃんの物真似をしてみたのだが……何故か私は、その流れで鶴の砂糖菓子を作ることになってしまっていたのだった。……なんで?
いやまぁ、多分できなくはないのだと思う。
だけどほら、できなくないってのとちゃんとできる、ってのには大きな差があるわけでね?
……え?人のせいにしてるけど、今の流れはどう考えてもお前が勝手に言い出した感じだった?
えー、キーアん貴方がなに言ってるかわかんなーい☆
「気持ち悪い」
「地獄に落ちろ」
「ひでぇ。……いやネタなのはわかるけど、聖夜の日に縁起でもないこと言いすぎじゃない?」
「え?地獄に落ちろキーア、とでも言い直せば良かったかい?」
「……それだと私が崖から離してやったとかされるじゃん!いやまぁクリスマスに
なお、こちらの茶化したような物言いは、ご覧の通りみんなからぶつ切りどころか細切れレベルでぶった切られる羽目になるのでしたとさ。
……うーん、私が私だから良かったものの、人によっては寝込みそうなムーブ……。
え?これで堪えるような柔な精神してないだろうって?ごもっとも。