なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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掃除のプロに、俺はなる

「よおし、次の人を手伝いにいこー」

「わかったん、うちも頑張るん」

「……え、もしかして私も巻き込まれる感じかこれ?」

「頑張ってね、クリスお姉さん」

「うわぁ、面倒事の匂いがする……」

 

 

 ……失礼なやつだな牧瀬くん。そんなこと言ってると、眼球えぐっちゃうぞ?*1

 ……的なことを述べたところ、「わかったからいいけど怖いわよそれ」みたいな言葉を返されたのでした。ですよねー。

 まぁ、なんとなくフレーズが脳裏に過った、というだけなので意味があるかと言われると微妙なのだけれど。

 

 ともかく、クリスの汚部屋を片付けて、束の間の休息を終えた私たちは、次なる未踏の地へと歩を進めることに。

 流石にクリス級の部屋はそうそうないと思うけど、まぁ一応警戒するのに越したことはないというか。

 そんな軽い気持ちで歩き始めた私たちはと言いますと……。

 

 

「うーん舐めてた!わりとみんな片付け下手だなこれ!」

「ははは、これはちょっと言い返せないかなぁ」

 

 

 次から次へとやって来る汚部屋達の本流に、思わず大笑いする他なかったのであった。

 

 まず一番始めに向かったのはCP君の部屋。

 ここはカブト君との相部屋となっており、二人は基本形態がポケモンということもあって、そこまで部屋を汚したり散らかしたりすることはないだろう、と思っていたのだけれど……。

 

 

「まずカブト君!そういえば君って水棲系の生き物だから、どうしたって水槽は汚れるもんだよねそうだよねー!」

「きゅー」

 

 

 カブト君に関しては、彼の安息の地……もといパーソナルスペースとして用意されている水槽。

 それは、どう足掻いても使っているうちに汚れていくものなので、その掃除は必須。……いやまぁ、最先端技術を使った藻とか汚れとか付きにくい水槽にはなってるんだけど、それでも水垢とかは中に生き物が居る以上発生して然るべき、ってわけでして。

 なのでまぁ、これの整備にそれなりの時間が掛かる、というわけなのです。

 

 で、部屋のもう半分であるCP君のスペースなんだけど……。

 

 

「これはひどい」

「インスピレーションとリビドーの赴くままに作ってるからねー。あ、新作あるからその内着てくれる?」

「い や で す !」

 

 

 これが酷いのなんの。……いやまさか、初っぱなからクリスの汚部屋級のものが飛んでくるとは思わないじゃない?

 ……後ろで抗議している誰かさんの声が聞こえてくる気がするが、ここに関してはスルー。

 ともかく、アレを比較対象に持ってくるレベルのものが投げ付けられた、ということに関しては間違いではない。

 

 壁際に増設されたハンガーラックには、作り掛けの服達が所狭しと立ち並び、床には糸やら布やらが散乱し足の踏み場はない。

 確かCP君って、服作りの全工程を一工程で済ませられるはずだから、こういう作り掛けの服とか普通は発生しないはずなんだけど……。

 どうにも彼女の言うところによると、こうして実際に手作りすることでしか得られない経験があるのだとか。……正直よくわからないが、それが彼女のこだわりだというのなら細かいことは言うまい。

 

 ただ一つ問題点があるとすれば、そうして作るのはいいけど全然片付けられてない、ということだろう。

 ……っていうか、さっきのクリスにしてもそうだけど、だったらせめて備え付けのクローゼットに全部放り込む、くらいのことはして欲しいのだが。

 あれ、中の空間が拡張されてるから、ほぼ無限に等しい量をしまいこめるはずなんだけど?

 

 

「いやその……」

「なんでも入れれるから、と色々入れてたら、なにが何処にあるのかわかんなくなっちゃったんだよねー」

「ええ……」

 

 

 そんな感じのことを聞いた二人はというと、無限に入れられるからと言ってそれを把握できるかと言われるとそれは別の話だ……という、なんとも情けない話を口にしたのだった。

 ……要するに、場所が無限だと際限なくなんでも入れてしまうため、却って把握しきれなくなる……みたいな?

 

 そう言いながら彼女達が見せてくれたのは、今までのクローゼットの使用履歴。

 なんでも入れられるため、その総量を把握するために目録が必要だろう……という考え方から、入っているものの預け入れや、引き出しの履歴が記録されるようになっているので、それをリストにしたものである。

 

 それを見ると、なんともまあ恐ろしいことに、一日に放り込まれる物品の数が尋常じゃなかったり、はたまた似たような物品が一日に何度も引っ張り出されていたりと、なんというかちょっと使い方おかしくない?……みたいな気分を引き起こす使われ方をしていたという痕跡が、生々しく残っていたのだった。

 ……で、その辺りの『なんでも入れてしまう』『何処になにがあるのかわかり辛い』『そもそも目で見えないので総量が分かりにくい』という問題について考えた結果、実際に部屋に置いとくのが一番わかりやすい……なんて暴論にたどり着いたのだとか。*2

 

 ……典型的なまでの片付けられない人間の言い訳に、思わず私が頭を抱えたことは言うまでもない。

 いや、CP君はまだしも、クリスは仮にもエリート中のエリートなんだから、これくらいの整理はして欲しいんだけど。

 こうして中の物をリスト化して、端末上で管理しやすくなってるんだからさぁ?

 

 

「いやその……仕事でもないのにパソコンと向き合いたくないなぁって言うか……」

「おお、もう……」

 

 

 なんて言葉は、目を逸らしながらごまかすように小さな声を出す、目の前のクリスの姿によって粉砕されることとなるのだった。……うーん、典型的な仕事中だけ有能なタイプ……。

 

 まぁ、クリスと言えばなりきり郷の中でもごく少数の方に分類される、()()()()()()仕事をしているタイプの人間なので、家では仕事を想起させるものを触りたくない……というその気分そのものは、まぁわからなくもないのだけれども。

 

 なお、やりたくて仕事をしているのではなく、必要があるから仕事をしているタイプは、クリス以外にも琥珀さんのような研究職・それからトキさんとかのような医師が該当する。

 ……なので、そういうことやりながらちゃんと私生活もシャキッとしている、トキさんとかブラックジャック先生とかが居る以上、本当はこの言い訳も微妙と言えば微妙だったりする。まぁ、指摘はしないけど。

 

 

「……ええぃ、こうなると他の人も汚部屋な可能性が出てくるじゃないか……っ」

「流石にこれは疲れるん。また休みに行くん?」

「んー……こればっかりは必要な作業量の問題上、休みを入れないわけにもいかないしねー……」

 

 

 そんなことを言いながら、とりあえずCP君とカブト君の部屋を片付けた私たち。

 今日中に全部終わらせる必要がある、というわけでもないので、最悪他の人は明日でもいいのだが……乗り掛かった船なので、ある程度は終わらせておきたいところでもある。

 

 だがそうなってくると、今度は一緒に付いてきているれんげちゃんの負担について考える必要が出てくるわけで。

 ある程度大人にも張り合えるだけのスペックを持つれんげちゃんだが、スタミナに関してはそうでもない。

 なので、ある程度動いたらしばらく休憩を入れる、という必要があるのだ。

 

 ……じゃあれんげちゃんは別の場所に回せばいいのでは?と思われるかもしれないが、現状他人の手伝いという形ではない大掃除の場所は、実は台所くらいしか残っていないのである。

 外観に関しては、そこまで汚くなるものでもないし、玄関も常日頃綺麗にしているので、そこまで時間の掛かるものでもない。

 

 あとはお風呂場・洗面所と言うことになるが……実は、それらは前回の模様替えの時に個室に一つずつ配置、という形に変更したため、必然的に他人の掃除の手伝いの区分になってしまうのである。

 ……共同スペースとして風呂場を用意するのはよくない、みたいな思惑も含まれていなくもなかった模様替えだが、こうして考えるとよかったのか悪かったのか、微妙な気分になってくるというか。

 いやまぁ、プライベートスペースとして用意するのは、決して間違いではないと思うんだけどね?実際、さっきのカブト君の水槽も、元を正せば個人用の浴槽を転用したものなわけだし。

 

 

「んー……とりあえず台所に戻ってから考えよっか、ほらクリスも燃え尽き症候群みたいになってるし」

「……それは単にキーアお姉さんに色々言われたからなん」

「…………」

 

 

 まぁ、悩むよりも行動する方が易い、みたいなのが私たちである。なので、一先ず一回台所に戻ることにするのだった。……クリスも真っ白に燃え尽きちゃってるし。

 

 そんなわけで、反応を示さないクリスを引き摺りながら、台所に戻った私たち。

 先程から約一時間ほど経過しているわけだが、台所に居た面々からはお早いご帰宅で、みたいな感想を抱かれそうだなぁと思いながら部屋に入り。

 

 

「助けてくれキーアぁぁあっ!!?」

「へぶしっ!?」

「せ、せんぱーい!?」

「き、キーアお姉さんがふっとんだん!?」

「なるほど、つまりはふとんだってことだねれんげ?」

「かようはいったいなにを言ってるん!?」

 

 

 横合いから腰辺りに高速タックルをくらい、そのまま台所の地面をごろごろと転がる羽目になったのであった。……地味に痛ぇ!?

 体の至るところをあちこちにぶつけてしまったため、痛みで地味に悶える私は、そこでようやく腰に飛び付いてきた相手が誰なのか、ということに気が付く。

 

 

「……えーと、ハクさん?」

「聞けぇキーアよ!このままだと我、部屋から追い出されて路頭に迷うことになるぅ!!」

「……はぁ?」

 

 

 それは、まるでどこぞの駄女神のように、顔を涙でぐしゃぐしゃにしたハクさん。その美人な顔が、まさしく千年の恋も一瞬で冷めてしまうほどに無茶苦茶になっているわけなのだが、一体どうしたというのだろうか?

 そうして首を捻る私だったわけなのだが。

 

 

「わーん、吾も追い出されるぅ~(棒)」

「ほぐぇっ」

「せ、せんぱいぃっ!?」

「わぁ、まさかの天丼だぁ」

「かようはなんでそんなに冷静なん?」

 

 

 再びの衝撃。

 半身を起こしていた私は、その頭部分に突っ込んできた何者かと一緒に、再び地面をごろごろ転がることに。……塊魂かな?

 

 思わず現実逃避する私が、改めて揺れる視界の中に映し出したのは、なにを隠そう最近うちのメンバーになったパオちゃんが、なんとも気の抜ける棒読みで私に助けを求める姿なのであった。

 ……つまり我吾(われわれ)コンビだな!(意味不明)

 

 

*1
日日日(あきら)氏の作品、『蟲と眼球』シリーズの主人公・眼球抉子(がんきゅうえぐりこ)のキメ台詞。スプーンが武器なので、これで色々えぐっちゃうぞ☆()

*2
しまうとものが何処にあるのかわからなくなる、というのは片付けができない人間がわりと言う台詞だったり

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