なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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英雄とあやかしの相性はよくないもの

「……ええと、とりあえず離れて貰えるかな、二人とも」

「……はっ!そそそそうでした!うらやま……こほん。お二人とも、せんぱいが苦しそうにしていらっしゃいますので、さっさと離れてくださいっ!」

「ぬ、おおこれは済まんな」

「吾も退けるぞ~」

 

 

 なんで二人して私に飛び付いてきたんです?

 ……という疑問もそこそこに、マシュによってべりべり剥がされていくハクさんとパオちゃんである。……いやまぁ、一応手を貸して立たせた、というのが正解なんだけど、こう……空気感がね?

 

 まぁともかく。私自身もマシュに手を貸して貰って立ち上がり、改めて二人と向き合うことに。

 一人称のよく似ている二人だが、キャラは別物。……ゆえに、そんな二人の行動が重なる、というところに微妙にいやな予感を覚えるのだけれど……。

 

 

「……はっ!そうだった、助けておくれキーア!我このままだと明日から路頭に迷う!」

「そうそう、助けてキーア。住むとこなくなるのは正直つらーい」

「は、はぁ……?」

 

 

 彼女達(主にハクさん)は混乱しているのか、なにを言いたいのかが煩雑としていて理解できない。

 二人とも、なにやら家を追い出される危険性を感じている、ということは間違いではないようだが……?

 と、そんな感じに二人の言葉を聞いた私が、首を捻りつつ考え込んでいると。

 

 

「─まーたーぬーかーあーやーかーしーどーもー!!」

「ほぎゃぁ!?ききき来たぁっ!?」

「わー、見つかったー」

「……んん?」

 

 

 台所の入り口の方から、響いてくる男性の声。

 だが、声こそすれども姿は見えず、一体なにが?……と一瞬困惑した私は、

 

 

「……あっ、なるほどイッスン君」

「如何にも!某はイッスン、一寸法師なれば!」

 

 

 そういえば二人と相性悪そうな人が一人いたな、と思い至り手を叩く。……それに合わせるように、下の方から机の上にぴょんっと跳んできたのは、なにを隠そうイッスン君なのでありました。

 

 うーむなるほど、確かにイッスン君はわりと真面目なタイプの人、なにか問題があればビシバシ指導してくる可能性は、普通に高い方だと言えるだろう。

 ついでに言うと、今ここにやって来た二人は区分けするとすればあやかしの類い、英雄とかの区分になるイッスン君とは相性が良くない、というもの確かな話である。

 ……いやまぁ、それを言うなら私とも相性が悪くなるはず、なんだけどね?

 

 

「いやいや、キーア殿にはそういう隔意はござらんよ。どう見ても善人でしかござらんしな」

「んー?これって褒められてるのかな?」

「ははは。……ところで、そこの二人を引き渡して欲しいのだが、構わぬかな?」

 

 

 なお、本人の反応はこんな感じ。……舐められてるわけじゃないのだろうけど、生暖かい目で見られている気がするのは気のせいかな???

 ……まぁいいや。ともあれ、彼が二人を追い回していた、というのは間違いないらしく。

 じゃあそれはなんで?ということなると……。

 

 

「この二人、部屋の中を無茶苦茶にしておったのだ!」

「無茶苦茶とな……?」

「ええと、イッスンさん?それはどのように無茶苦茶だったのでしょうか?」

「むぅ……口で説明するのは難しいな、実際に見て貰うがよかろう」

「えー……」

 

 

 この二人、部屋は別々で個室なのだが、どうにもどちらにもキレ散らかすほどの酷いことになっていた……というのが彼の主張なようで。

 うーん、さっきのクリスの部屋やCP君達の部屋よりも酷い、となったりしたら、私卒倒しそうなんだけど……?

 そんな気持ちから、ちょーっと行きたくないなー感を醸し出す私なのだが、イッスン君にはどうにも伝わらなかったみたいで。

 

 

「ともかく、一緒に来てくださらぬか?無論、そこの二人も一緒に……だ」

「わかったん!うちたちがついていくん!」

「あっちょ、れんげちゃん?」

 

 

 ついでに言うと、れんげちゃんにも通じてなかったみたいで。

 やる気十分、とばかりに張り切る彼女の姿に、この提案を回避することは不可能だと悟った私は、小さくため息を吐いたあとに彼らへ了承の意を示すこととなったのだった。

 

 

 

 

 

 

「おおう、これは……」

「な、酷い有り様であろう?」

 

 

 先導するイッスン君の背を追い掛ける私は、部屋に近付くごとに元気を失っていくハクさんの姿に、思わず『一体この先なにが待ち受けているんだ……?』と戦々恐々したりしていたわけなのですが。……え?パオちゃん?寧ろなんか元気になってたような。あれだよあれ、『大変()()()()()元気』みたいな?

 

 ……流石の私もここまで情報が出揃えば、彼女に混ざっているもう一つがなんなのか、ということに気付いてくるわけだが。

 そうなってくると、どこぞのスキル沢山系黒幕女子の参戦も秒読み、みたいな空気になってくるので、結局気付かなかったふりを続けることとなるのでした。……流石にあの人まで来ると収拾が付かねー!*1

 

 パオちゃんのことは一先ず脇に置いて。

 二人がどうにも部屋の中を見られたくない、という気持ちを共有している、ということは間違いなさげ。

 それがパオちゃんに限っては、逆説的な感情になっているようだが……ともかく、ここまで露骨な反応だと正直怖いもの見たさ的な気持ちも沸き上がってくるというもので。

 いやまぁ、そう思わないとやってられないって部分もなくはないのだが。

 

 ともあれ、ようやくたどり着いたハクさんの部屋の扉の前で、私は小さく固唾を呑み込むと、その扉を勢いよく開いたのだった。

 で、その時の台詞が、冒頭のものである。……で、なにがあったのかというと。

 

 

「……いや、確かにこっちって空間拡張技術凄い発展してるけどさ?まさか家の中に家を建てるとは思わないじゃんよ……」

「おいなりさまなん。おいなりあげたら喜ぶん?」

「……まぁ、曲がりなりにも狐区分じゃからの、我」

 

 

 扉を開けた時、真っ先に飛び込んできたのは抜けるような()()

 中天に輝く太陽に、その下に設えられているのは、大きな社。

 ……うん、要するに扉を開けたら神社が目の前にあった、というわけである。しかも結構立派なのが。

 

 思わずどういうことだ、と視線をハクさんに向けるが、彼女はふいっと視線を逸らして、こちらに目線を合わせようとしない。

 ……どうにも叱られる、と思っているようで、気まずさがいっぱいいっぱいらしい。

 

 まぁ確かに?こんな社を建てている、なんて話は聞いた覚えがないし、そもそもこれを建てるリソースをどこから捻出したんだ、みたいな疑問もなくはない。なくはないのだが……。

 

 

「まぁうん、別に怒ったりはしないよ?」

「なぬっ!?」

「ま、まことかキーア!?」

「うん、まことまこと。キーアん嘘付かない」

 

 

 正直、()()()()()()()()()()()()()()()ので、ビックリしたものの拍子抜けした部分もあるというか。

 そう口にすれば、ハクさんとイッスン君は対照的な態度を見せるのだった。……イッスン君からしてみれば、人の敷地の中で自身の陣地を引いているようなものなので、これが許されるわけがないと思ったのだろうが……。

 

 

「ちょっと前のダンジョンについてもそうだけど、別に一つの建物の中に別の建物を作っちゃいけない、なんて決まりはないからね」

「……そうなのか?」

「うん。まぁ、あんまり大規模なものになると、届け出くらいはした方がいいってことになるみたいだけど……これに関してはあくまで一部屋の中で完結してて、他の拡張空間に悪影響を及ぼしてる感じもないし、特に問題はないと思うよ?……いやまぁ、社を建ててたのはビックリしたけれども」

 

 

 陣地、と言っても、私たちの立っている場所は、そのほとんどが拡張空間。

 言うなれば実数的に存在しない場所なので、よそに迷惑を掛けたりしない限りは、特に主張されるべき義務も権利もないのである。

 まぁ、家主に相談くらいはして欲しかった、というのは確かだが、区分的には模様替えの規模に収まってしまうので、特に咎める理由もないのだ。

 

 ……というようなことを述べたところ、イッスン君はむむむと唸ったのちにこう返してきた。

 

 

「だが、ハクはかつて厄災だったのであろう?それが自身の陣地を作る、ということに忌避感はないのか?」

「あー、反乱分子になるんじゃ、的な危惧ってこと?それなら大丈夫、結局のところこの家の外にはみ出してないから、最悪うちの内装をリセットすれば全部消し飛ぶから」

「えっ」

「えっ?」

 

 

 それは、かつてこのなりきり郷に敵対した存在が、好き勝手するのを許してもいいのか、というようなもの。

 ……この辺り、ほんのり自分のことも重ねて声をあげているような気がするが……今は置いとくとして。

 陣地を放置していいのか、という疑問に関しては、そもそもここでは地脈を掴むこともそう叶わないので、問題はないと返す。

 何度も言うが、今私たちが立っているのは拡張空間。実際の地面の上に、仮想的な空間を重ねて居住区にしていると考えるのが正しい。

 そのため、陣地を作ったところであくまでも仮想空間内、その仮想空間を破棄するだけであっさりとその陣地は消え去ってしまうのである。

 

 なので問題はない、と言ったのだが……何故かハクさんが滅茶苦茶驚愕していた。……ええと、この驚き方は……?

 

 

「……あー、もしかしてですけど。遥か遠い未来、見知った人が居なくなるような時、自身の依り代にするのに丁度いいなー、とかなんとか思ってらっしゃったとか……?」

「……我は主らとは違い、中身を持たぬ【顕象】。寿命、というものがあるのかも怪しいのでな、なにかしら安心できる場所の一つや二つ、作っておいた方がよいかと思っていたのだが……」

「…………ゆかりんに寿命があったらおじゃんですね」

「ぬわー!!我の三ヶ月分のへそくりがー!!」

 

 

 ……どうやら、半永久的に使える避難先、として建築したものであったらしい。

 まぁ、さっきから言っている通り、意外と脆い場所なので、星が滅ぶよりも先に普通に瓦解する可能性も高い。

 大枚叩いて作ったらしいところ悪いのだが、正直砂上の楼閣以外の何物でもないと言いますか……吹けば飛ぶよな夢の島、みたいな?

 

 そんな感じに現実を突きつけたところ、ハクさんは頭を抱えてのたうち回ることとなるのでした。……あーうん、折角家建てたのに、みたい感じかな、これ。

 

 

*1
『おやおや、僕一人が混ざったところで、君みたいなやつならどうにかできるんじゃないかい?』

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