なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「私がキーア1だ」
「そんでもって私がキーア2」
「最後に私がキーア3ですの」
「みゃ、脈絡もなく前兆もなく突然増えるんじゃないわよ!しかも三枚下ろしになってから別々に再生とか、アホかとバカかと!」*1
キリアの方とはまた違う分裂の仕方だったためか、滅茶苦茶ビビりながらクリスが文句を言ってくる。
……まぁうん、確かに私も縦に裂けてから分裂するのはやりすぎかなー、とは思わないでもない。*2
でもこう、見た目的に三分割された、というのがわかりやすいのは良いと思うのよ。通常スペックより下がってる、ってのがすぐにわかるわけだし。
「……ぬ?下がっておるのか、スペック」
「あくまでも捜索範囲を広げるための措置だからねー。こう、ミラちゃんでも居てくれたら楽だったんだろうけど、生憎ここには居ないし」
ハクさんが不思議そうに首を傾げているが……今の私がスペックダウン状態、というのは間違いではない。
キリアとキーアで別れた時もそうだったが、私の分身はコピペではなく分裂。総量をその分だけわける方式であるため、やり過ぎるとなんにもできなくなるのである。
そういう意味で、現実的な分身の最大数は恐らく五か六くらいになるんじゃないかなー、というか。
……ミラちゃんの手が欲しくなるのも宜なるかな、というか。
いやまぁ、彼女の魔法の真似もできるのはできるんだけど、それってこの分身の延長線上でしかないからねー。所詮は真似だし。
というわけで、現状三人に増えるのが一番場に即しているだろう、という考えから三人に増えた私は、それぞれ他の面々に一人ずつ付いていく、という形に落ち着くのでありました。
「私は全然落ち着かないんだが!?」
「まぁまぁクリスお姉ちゃん、抑えて抑えて」
「だぁれがお姉ちゃんだ!?」
なお、物理的に別れたこともあり、現在の私の背丈は最早幼稚園児レベル。……元が小さい分余計に小さくなってしまっている。
そのため、普通に移動すると他の人に置いていかれる形になるので、常時浮遊移動することとなっているのだった。
……後ろから浮いた幼女が付いてくるって、絵面としてなんか酷い気がするやね?まぁ、それをやってるの私なんだけども。
そんな感じで移動している私・キーア2だけど、現状の同行者であるクリスがなんだかそわそわしていることに、思わず首を傾げる次第なのでありました。
「んー?なんか問題でもある?」
「問題ってわけじゃないけど……ほら、現在マシュさんって、貴女がこうなってるってこと知らないわけでしょ?」
「ん?んんー……いやまぁ、単に見回り行ってくるって風にしか言ってないからねぇ。それがなにか?」
「……年末だから、食材を確保しておかないと正月以降の食事の用意が大変、みたいなこと言ってたでしょ?」
「あー、おせちを自作するにはまだまだ腕前が足りてないって言ってたから、三食は普通のモノを用意する……みたいなこと言ってたね」*3
そうして問い掛けた私に対し、クリスが返答としてこちらに与えてくるのは、一見なんにも関係の無さそうな話。
それは、マシュが元旦以降の料理の用意について、あれこれと話をしていたというものなのだが……なんだろ、それが現状と一体なんの関係が?
「いやその、マシュさんってその……貴女のこと好きでしょ?」
「…………」
「沈黙は肯定と受け取るけど。そんな彼女が、今の貴女を見たらどう思うかしら?」
「んん?……んー、『せんぱいが小さくなってしまいました』とか?」
「もしくは、『せんぱいの……隠し子!?』とかね」
「ぶふっ!!?」
……などと思っていたら、彼女の口から爆弾発言が。いや隠し子て。誰と誰の子供じゃい、誰と誰の。
いやまぁ、確かにパッと見たら実子かなにか、と誤認するかもというのはわからないでもない。でもほら、マシュでしょ?私のことを見抜けない、なんてことはないと思うんだけどなぁ……?
そんな私の言葉に対し、クリスは苦笑いを浮かべている。……いや、気のせいじゃなければちょっと震えてるし、ちょっと顔が青いような……?
「……『マシュはまだまだ忙しそうだね。私はちょっとこの三人連れて、見回り行ってくるよ』……だったかしら、貴女が出掛ける時にマシュさんに言ったのって」
「……そうだね」
「その時マシュさんが、『何故私を連れていってくれないのでしょう……することがまだあると言っても、そこまで時間の掛かるモノでもないのに……』みたいなことを言いたそうにしてたの、多分貴女気付いてないわよね?」
「…………そうだね」
「じゃあ最後にもう一つ、いいかしら?……自分を連れて行かず、他の面々と外に出掛けて行ったことと、その当事者の一人が、愛しのせんぱいと同じ顔をしている子供を連れて歩いているのを、
「………君のような勘の良い研究者は嫌いだぬわぁーっ!?」
「き、キーアッ!!」
そうですね、突撃して来ますね()
最近のマシュは、色々ネジが外れてるなぁ、と乾いた笑みを浮かべた私は、遠くからシールドバッシュしながら突っ込んでくる暴走特急よりクリスを庇うように飛び出し、そのまま轢かれて吹っ飛ばされる憂き目に合うのでありましたとさ。
……うーん、日頃の行いの悪さが返って来た感……。
「キーア2がやられたようだな……ヤツはキーアの中でも最弱の存在……」
「お主らスペック同じって言っとらんかったか?」
遠くでずしん、という振動がしたことを察知した私は、ムチャしやがって……みたいな気分でその方向に敬礼をしていたのであった。
そういうわけで(?)私はキーア1、ハクと一緒に行動を共にするキーアのうちの一人、というわけなのだが。
正直2が一番迂闊なので一番始めに見付かるだろうなー、と思っていた私としては、これは既定路線以外のなにものでもない。
なので、特に話すこともなく見回りを再開しようとしたのだが……そこにハクがツッコミを入れてきたため、その説明をせねばならなくなるのであった。
「スペックが同じ、というのは勘違いだ。
「……ああもういい、今の流れで十分わかったわい」
まぁ、こうして少し口を開いただけで、もうめんどくさいという気持ちを、一切隠さない状態の相手の態度を引き出してしまったわけなのだが。
……この辺り、私の性格の悪さが滲み出た結果、というか。いやまぁ、別に謝ったりしないが。
「……つかぬことを聞くが、お主はなにが核となっておるのじゃ?」
「キーア本人の斜に構えたような部分」
「うへぁ……」
滅茶苦茶いやな顔をしているハクには悪いが、私はキーアの中の悪性情報を圧し固めたような存在。
属性悪同士、仲良くして欲しいものである。……因みに、あさひに付いていった方が善属性、クリスに付いていったのが中立属性である。
「……何故そのような区分けに?」
「三人に分裂する、となった時に真っ先に思い浮かんだのが善悪中立の三則であった。……それ以上の意味はないよ」
「はた迷惑すぎるじゃろお主!?」
なお、それ以外に思い付いたのがいわゆるポケモン方式──火・水・草であったため、仮にそっちであったとしても似たような性格の
ともあれ、私のやることに変わりはない。キーア3の動きが予想できないのが不安点だが、粛々とやるべきことをこなしていくこととしよう。
「ふむ……とはいえ、向かうあてはあるのか?先ほどまでの話だと、そもそも検討も付かぬといった様相であったような気がしたんだが」
「なにを言う、私達が向かうべき場所など、最初から決まっているぞ?」
「はぁ?」
そんな私に対し、ハクは疑念を溢してくる。
それは、ここからどうするのか、というのは先ほどまでの話だと、ほぼ行き当たりばったりのものだったのではないのか、というもの。
……だが、それは大きな間違いである。先ほどの
そう、それは先ほどまでの話をちゃんと聞いていれば、すぐにでも思い付く場所。
酒飲み達の暴力性とは、基本的に普段ひた隠しにされているものであり、そしてそれは身近な権力者に向かうものである。
さて、ではこのなりきり郷において、もっとも身近な権力者とは誰だろうか?
誰もが自身の上であると認知し、普段はそれに文句を言うこともせず、ただ仰ぎ見るだけの存在……。
「……あー、まさかとは思うが、もしかして?」
「もしかしてもなにも、その通りだよ、ハク。私達が真っ先に向かうべき先。新年を迎えるその時に、無用な騒動が起きないように注意すべき場所。──それは、八雲紫の執務室だ」
そう、それこそは我らが愛すべきスレ主、八雲紫の元ということになるのであった。